米連邦取引委員会(FTC)は、COPPA法(Children’s Online Privacy Protection Act)として知られる、インターネットでの子どものプライバシーを守る法律の強化を検討している。この法律は2000年に施行されたが、子どもたちのモバイルデバイスやソーシャルネットワーキング・サイトの使い方の変化に対応して2013年に修正されている。そして今、FTCは、さらなる修正が必要なときが来たと感じている。FTCでは、数々の修正案に対する意見を求めているが、なかでも重視されているのが、子ども向けと明確に指定されていないながら、多くの子どもたちが利用しているサイトの問題だ。
言ってしまえば、YouTubeのようなサイトだ。
このFTCの発表は、アメリカの消費者擁護団体とエド・マーキー(Ed Markey)上院議員(民主党マサチューセッツ州選出)が、COPPA法違反の疑いでYouTubeを捜査するよう規制当局に求めた抗議書簡をFTCに送付して、わずか数週間後に行われた。
擁護団体は、YouTubeが「本サービスは13歳未満の子供による利用を意図していません」との利用規約の陰に隠れていると主張している。この一文は、明らかに破られている。現在、YouTubeは子ども向けに作られた動画で満ちている。Googleでさえ、就学前児童から小学校高学年の子どもをターゲットにしたYouTube Kidsアプリを提供している。これはあくまで自由選択だ。子どもたちはYouTubeを無制限に閲覧でき、YouTube TVアプリから見ることも可能だ。このプラットフォームでは、YouTube Kidsの制約は限定される。
Campaign for a Commercial-Free Childhood(コマーシャルのない子ども時代のための運動:CCFC)とCenter for Digital Democracy(デジタル民主主義センター:CDD)が記した書簡によれば、Googleは2500万人近くのアメリカの子どもたちの個人情報を収集し、そのデータを「非常に高度なデジタルマーケティング技術」のために利用しているという。
これらの団体はYouTubeに対して、子どものデータを削除し、サイトに年齢制限を定め、すべての子ども向けコンテンツを専用アプリに集めて分離し、COPPA法のガイドラインに従うよう求めている。
こうした要求が、今回のFTCの行動を促した。
FTCは、ウェブサイトや、もともと子ども向けではないが子どもが利用しているオンラインサービスに対処するためにCOPPA法を更新すべきか、また「一般向けのプラットフォーム」は第三者が公開する子ども向けコンテンツを特定し監視するべきかについて意見を求めている。
言い換えれば、FTCは、YouTubeを使う子どもたちのプライバシーの保護のためにCOPPA法を修正すべきかどうかだ。
「インターネット上の子ども市場に影響を与える技術の急速な変化に照らして、COPPA法がそのままで有効であるかを確認する必要があります」と、FTC委員長のジョー・シモンズ(Joe Simons)氏は、声明文の中で述べている。さらに、「私たちには、COPPA法の強力な執行、さらにより高いレベルでのCOPPAの準拠を促すための、業界への周知、COPPAビジネスホットライン作りに真剣に取り組んでいます。しかし、私たちは常にルールに立ち返り、必要があれば、見直すことが重要です」と彼は付け加えている。
YouTubeは主要な対象だが、FTCは、学校でデジタル技術を利用する際には保護者の同意がなくてもよいかどうかについても意見を求めている。また、インタラクティブTV(たとえばNetflixの「マインクラフト:ストーリーモード」のような)インタラクティブ・メディアやインタラクティブ・ゲームとCOPPAの関連についても詳しく知りたいと考えている。
さらに広い観点から、FTCは子ども向けのサイトやサービスの有用性に対するCOPPAの影響についても知りたいとのことだ。
COPPAの見直し開始は、FTCの5名の委員による無記名の決定により判断された。このうち3名は共和党員、2名が民主党員だ。
シモンズ氏が率いるFTCは、2月にMusical.ly(現TikTok)に対して行動に出た。COPPA法違反による570万ドル(約6億1500万円)という記録的な罰金を科したのだ。YouTubeと同様、このアプリは、13歳未満の子どもたちが保護者の同意なくして利用していた。同社はその事実を把握していたが、そのまま子どもたちの個人情報の収集を続けていた。
「この記録的な制裁は、子どもをターゲットとするすべてのオンラインサービスとウェブサイトへの警告となるでしょう。私たちは全力でCOPPA法の執行に取り組んでいます。この法律を無視するような悪質な企業は容赦しません」とシモンズ氏は同時に述べていた。
TikTokとは、子どもの動画とデータを削除し、未成年のユーザーの動画撮影を制限することで和解が成立した。
FTCが、同じことをYouTubeに要求できないのはなぜか。この2つのサービスの問題は同じであるにも関わらず、なぜ法律の修正が必要なのか。
「それは現行の法律下でも間違いなく可能であり、YouTubeには罰金を科して、大幅な改善を強制する必要があります」とCCFCの事務局長ジョシュ・ゴーリン(Josh Golin)氏は言う。「YouTubeに関しては、これは今のところFTC史上、最重要のCOPPA法違反ケースなのですが、現行法ではYouTubeに責任を負わせられる権限がFTCにはないような信号を発しているところが非常に心配です」と彼は話していた。
「COPPA法は修正によって強化できるでしょうが、最大の問題は、法律の執行力がFTCに欠けていることです。しかしこれは今すぐ対処できる問題です。長々と能書を垂れている場合ではありません」とゴーリン氏は加えた。
FTCは、2019年10月7日にCOPPA法を考える市民勉強会を開催するとのことだ。
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(翻訳:金井哲夫)