米中の間で進行中の貿易戦争の新たな局面として、中国が米国に報復の総攻撃をかけたことにより、米ハイテク企業の株価は大打撃を受けた。
S&P 500指数は、金額にして約1.1兆ドル(約120兆円)ぶんも下げ、ダウ工業株平均とナスダック総合指数も、それぞれ2.38%と3.41%下落した。
米国時間5月13日の月曜日に、中国は、米国が中国からの輸入品に25%の関税をかけたことへの報復として、約600億ドル(約6兆6000億円)にもなる米国からの輸入品に25%の関税を課すことにした。
6月1日から、中国政府は5000以上の品目に25%の関税をかけることになる。また、それ以外の多くの輸入品についても、税率は20%に上がる見込みだ。以前は、10%または5%だったものからの引き上げとなる。最も高い税率がかけられる品目は、ドナルド・トランプ大統領の政治的な支持基盤に対して打撃となるよう、意図的に選ばれているようだ。つまり、米中西部の畜産物、果物、野菜が相当する。
しかし、この貿易戦争の矢面に立たされているのは、とりわけ米国内のハイテク産業だ。実際に、このニュースはハイテク企業の株価の急降下を招いた。それは元TechCrunchの共同編集長で、今はベンチャーキャピタリストのAlexia Bonatsos氏が「ハイテク企業のレッドウェディング」と呼んだ通りのものだ。
関税の引き上げは、アップルや、その他の米国内のハイテク企業の製品の製造コストを押し上げる。それは結局、そうしたハードウェアメーカーの米国内での製品価格を上昇させることになる。一方、完成品を中国に輸出する際の関税は、中国国内でそうした製品を買おうとする際の製品価格を、法外なまでに高価なものにする。
消費者向けの製品が高価になるということは、特に重要ではない製品に費やす金額が減ることを意味する。それは結局消費者の生活を質素なものにし、オンデマンド経済に対する支出を減らすことになる。それはまた、広告の削減を引き起こす可能性もある。企業は中核ではないと判断される領域への出費を削減し、切り詰めようとするからだ。
こうした状況は、ハイテク株の取引そのものを停滞させることにもなる。市場の低迷が長引くことが予想される中では、アルゴリズムうんぬんではなく、ただ持ち株を処分して利益を確保するという気運になりやすいからだ。
今回の貿易戦争は、すでにUberの新規株式公開に大きな損失を与えている。今日も同社の短期的な株式市場のパフォーマンスを食いちぎっている。
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流血しているハイテク株はUberだけ、というわけではまったくない。Amazonの株価は3.56%下落し、Alphabetは2.66%、そしてAppleも5.81%下げた。さらにFacebookは3.61%下げ、Netflixに至っては4%以上も急落した。すべてこの1日でだ。
ハイテク企業の中には、持ち直すところも出てくるかもしれない。しかし、今回の中国との経済戦で傷ついた米国の農民に対して大統領が与えようとしているような救済策や助成金を、ハイテク企業が受け取ることになるとは考えにくい。議会が、行き詰まっているインフラを含むパッケージに関する交渉を再び軌道に乗せることができない限り、政府の援助によって今回の打撃を和らげられるという希望はほとんどない。2020年の米国大統領選挙が統治の問題に影を落とし始めているの見る限り、交渉の再開は、ますますありそうもないことのように思われる。
「私たちは、この状況は、数カ月ではないとしても、少なくとも数週間はエスカレートしていくのではないかと見ています。問題は、2つの国が再び交渉のテーブルに着いて同意に達することができるかどうかですが、その間にも市場はさらに打撃を受けることになるでしょう。本当の問題は、我々は5%、10%、あるいはもっと大きな市場の調整を必要としているのかどうかということです」と、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのグローバル経済部門の責任者、Ethan Harris氏はCNBCに語った。
画像クレジット:Hiroshi Watanabe
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(翻訳:Fumihiko Shibata)