新型コロナに対抗する投資家たち、アイルランドの投資家へインタビュー(後編)

アイルランドのテクノロジーシーンは過去10年で急速に発展し、ベンチャーキャピタルシーンもそれとともに成長してきた。この国の優遇税制と人材プールが、多数のスタートアップ企業とテック界の巨大企業を引き寄せたのだ。

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Slack(スラック)、Microsoft(マイクロソフト)、Dropbox(ドロップボックス)はいずれもダブリンに欧州本部を置いている。EUに唯一残った英語使用国としてハブの役割を果たすアイルランドは、これまでになく多様な創業者を惹きつけており、さらに一度は海外に出たテクノロジー企業も、アイルランドのエコシステムの成熟とともにその創設の地へと戻るようになっている。

私たちは現地のベンチャーキャピタル5社に対して、今年アイルランドでの雇用、投資、会社設立を検討しているTechCrunch読者に伝えたいと思う知見について尋ねてみた。

アイルランドのベンチャーキャピタルは、自国から遠く離れた地域に積極的に投資することはない。しかし、アイルランドには優れた投資の機会がたくさんある。国内市場が小さく、アイルランドのスタートアップには立ち上げ時からインターナショナルな考え方が求められることから、現在も質の高いシードが存在している。Sequoia(セコイア)など米国の一流ベンチャーキャピタルもアイルランド企業に投資しており、プレシード段階で投資する場合さえある。

投資戦略の多くにとって、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響は限定的であり、影響といえば対面でのやり取りがZoom(ズーム)通話に切り替わったことぐらいだ。ただし、地元の労働市場における競争の激しさを考えると、雇用の面では難易度が上がったといえるだろう。それでも、トップレベルのエンジニアリング人材を米国より安く採用できるため、起業家が優れた企業を立ち上げるうえで余計な手間は少なくて済む。

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後編では以下の投資家の話を紹介しよう。(前編はこちらで読める)

ミシェル・ダーバン氏、リシンクエデュケーションマネジメント社パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

私は教育テクノロジーへの投資を専門にしています。教室向けに特化したズーム代替製品、テクノロジーを活用した職業訓練プログラム、分散型の勤務環境での企業向け学習ソリューションに興味があります。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

中南米で提供されているオンラインのスキルトレーニングプラットフォーム、Crehana(クレハナ)です。

TC:業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。現在まだ見過ごされているチャンスはありますか。

  • 解雇された労働者向けのスキルアップ・スキル習得プログラム。
  • 短期間で安価なトレーニングプログラムと、中程度のスキルが必要な職業向けの資格取得サポート。
  • 高校生が大学・就職に向けて準備するのを助けるソフトウェア。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で失われた学習機会を取り戻すのに役立つ、効果的な救済プログラム。

TC:次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

プロダクトマーケットフィットの特異な兆候、有効性の証拠、ビジネスモデルが持つインパクトについて検討します。またチームに、問題を独自の観点で理解し、その理解に基づいて行動する能力があるかどうかも見極めるようにしています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

  • 幼稚園から高校までの教育を補完するアプリ、ゲーム、コンテンツ。
  • テクノロジーブートキャンプ。
  • 企業の学習管理システム。
  • 他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。
  • 80%が米国内、20%が米国外です。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。

有望だと思う創業者は誰ですか。アイルランドには従来から非常に強力なeラーニング/教育テクノロジーのスタートアップセクターがありました。今後が楽しみな成長企業にはLearnIpon(ラーンアイポン)、Learnosity(ラーノジティ)、Alison(アリソン)、TouchPress(タッチプレス)などがあります。アーリーステージの企業にはAvail Support(アヴェイルサポート)、Zhrum(ズラム)、Robotify(ロボティファイ)などがあります。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ダブリンは実に活気のあるスタートアップエコシステムです。若い人が多く、起業家精神を奨励するための政府からの支援が多数あります。多国籍企業や既存のスタートアップから、優秀で経験豊富な人材プールが生まれています。英語が話され、米国やヨーロッパの他の地域にもアクセスしやすいです。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

私は最近、10年間過ごしたニューヨークからダブリンに引っ越しました。パンデミックの間に、ニューヨークやサンフランシスコといった都市では人口の大規模な流出がありました。居住するうえでの経済的負担やスペースの制約といった犠牲は、長期間在宅勤務が続き、ほとんどの施設が閉鎖されている時にはまったく意味を持たないのです。ダブリンも物価の高い場所なので、規模はそれほど大きくないと思いますが、脱出する動きも見られるでしょう。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

新型コロナウイルス感染症の影響により、幼稚園から高校、高等教育から企業における従業員の教育に至るまで、あらゆる年齢層で教育テクノロジーの採用が大幅に加速しています。これはすでに長年存在していたトレンドでしたが、これまでの導入ペースはかなり遅かったのです。テクノロジーを利用した学習体験への依存が長期化し、将来的にもこの状態に戻る必要が潜在することを考えると、教育と学習の方法への影響は恒久的なものになると思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

私たちの投資戦略は新型コロナウイルス感染症の影響を受けていません。当社の投資先のセクターについては、チャンスが広がり、関心も高まっていると思います。創業者にとっての最大の懸念は、販売ファネルの先行きが予測しにくいこと、消費者による購入の決定に遅れが発生する可能性、およびその結果生じるキャッシュフローへの影響です。コロナ禍が実際には有利に働いた企業にとっても、先行きを予測するのが非常に難しくなっており、創業者にとって大きなストレスとなっています。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい。上述のとおりです。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

米国の大統領選挙でバイデン氏が当選したこと、そして教育長官と内閣について同氏が検討している人選です。

ウィル・プレンダガスト氏、フロントラインベンチャーズ社パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

フロントラインではオポチュニスティックな投資アプローチを採用し、B2B分野内でさまざまなトレンドを受け入れています。全体として、以下のような点に取り組む創業者を支援することを楽しみにしています。

ソフトウェア・製品開発スタックの複雑さ:ますます多くのビジネスがソフトウェアビジネスになり、ソフトウェア製品がいっそう複雑になるのに合わせて、その複雑さを抽象化し、ソフトウェア製品同士をつなぐツールのレイヤーが出現するでしょう。APIを重視する企業が増えるにつれて、他のソフトウェアを使用するソフトウェアの出現が促進されるため、ソフトウェアビジネスは今後10年間、エキサイティングな分野になるでしょう。

埋め込み型金融:金融機関以外の企業が自社のカスタマーベースを活用して金融商品を提供できるよう支援するフィンテックに期待しています。埋め込み型金融を実現するうえで、オープンバンキングが大きな役割を果たします。

プロセスの増強(プロセスの自動化ではない):現在、さまざまなセクターにおいていくつかの重要スキルにギャップが生じており、企業がそうしたスキルギャップを解消できるようサポートするソフトウェアが登場しています。これらのソフトウェア製品は、高度なスキルを持つ労働者が生産性を最大限に発揮するのに役立ちます。

現在の環境においては、新型コロナウイルス感染症によって発生した以下の重要トレンドを広くターゲットにしたスタートアップにもたいへん興味があります。

  • 効率を高め、患者のリモート診察を実施したいと考えている病院やクリニック。
  • 金融犯罪の増加を警戒している銀行。
  • 人事チームや財務チーム向けの、リモート従業員管理ツール。
  • 中小企業の清算に伴う債権回収の自動化。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

最近、金融犯罪のムーディーズになることを目指しているドイツ企業に出資しました。
2008年以降、大手銀行は地方のリテール銀行との取引に消極的になりました。そうした銀行は不当にも、ポートフォリオの中で「リスクが高すぎる」と見なされていたのです。このドイツ企業は、業界に根本的な変化をもたらし、従来の項目チェックによるコンプライアンスから、データ主導のリスク判定方法へと業界を移行させることを目指しています。銀行間の公平性と透明性を高められるのは楽しみです。必ずや大きな価値が消費者に還元されるでしょう。

TC:業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。現在まだ見過ごされているチャンスはありますか。

現在B2B決済はルネサンスを迎えていて、Bill.com(ビルドットコム)のような企業が公開市場を支配しています。製品スタックの中にフィンテックが入り込む側面が増えるにつれて、決済は市場の勝者を決めるうえで取っ掛かりでしかなくなっています。大企業と中小企業の両方は、企業金融の根本にある問題の解決がビジネスチャンスであることを依然として大いに見落としています。

また、中小企業と大企業レベルで、CFOの負担軽減に取り組む企業が増えてほしいと思っています。リアルタイムの給与計算から財務、従業員の年金管理に至るまで、CFOの作業の多くは手作業で、時間がかかるのです。

これまでもCFOの特定の負担を大きく軽減する企業(グローバルな給与自動化プラットフォームであるPayslip(ペイスリップ)など)をサポートしてきましたが、この領域にはまだエンドツーエンドの自動化の余地があると感じます。

TC:次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

大志を抱いて初めて起業する創業者であれ、ビジネスを軌道に乗せることの難しさを知るベテラン創業者であれ、私たちが探しているのは、強い意志を持った同志を求めている挑戦者です。投資する時はいつでも、創業者の自己認識を何よりも重視しており、それが優れたチームを構築し、ビジネスを世界に拡大するための鍵だと考えます。熱意に経験は不要です。私たち自身にもテクノロジーについての深い知識があるので、ヨーロッパ全土において、テクノロジー、コンピューターサイエンス、エンジニアリングの分野のパイオニアに投資したいと思っています。そして投資先の企業には、大西洋両岸で事業を構築し、拡大してきた私たち自身の経験を共有し、創業者がビジネスを軌道に乗せ、世界に羽ばたけるよう支援します。

新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

新型コロナウイルス感染症によって発生した現在の状況に特化して構築された製品は、18か月後に今とまったく異なる環境に置かれる可能性があります。現在の状況よく観察し、今後数年間でそうした状況がどのような影響を及ぼすかについて確かな意見を持つ創業者と関わっていけたらと思っています。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

私たちは大西洋両岸の創業者のうち、グローバルな展開を目指している創業者をサポートしています。Frontline Seed(フロントラインシード)はヨーロッパ全体のアーリーステージ企業を対象としたファンドであり、ヨーロッパ各地に投資しています。Frontline X(フロントラインエックス)は、成長段階にある企業に対して迅速かつスムーズに米国と欧州に拡大していけるよう支援するファンドです。
フロントラインを設立したばかりの頃、私たちの投資先の大部分はアイルランドでした。2012年以来私たちは対象範囲を拡大し、過去数年間はヨーロッパ全体をかなり広くカバーするようになっており、現在アイルランド、英国、ドイツ、オランダ、南ヨーロッパに投資しています。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

Amazon(アマゾン)、フェイスブック、グーグル、Zendesk(ゼンデスク)、Hubspot(ハブスポット)といった(他にも多数ある)米国のテクノロジー企業が、アイルランドに足がかりとなる拠点を持っています。

ほとんどの場合、トップクラスのエンジニアリング人材を米国より安価に調達でき、好循環が生じます。つまり、企業は優れたエンジニアのスキルを高め、エンジニアは優れた企業を作り上げるのです。

結果として、アイルランドではスタートアップの開発者向けツールが盛り上がっています。一例がTines.io(ティネス.イオ)です。Accel-and-Index(アクセル・アンド・インデックス)が支援しているこの会社は、ダブリンにある世界的に有名なセキュリティチームによって設立されました。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

アイルランドには知られざる優れた企業がたくさんあり、私たちもそういした企業に投資してその恩恵にあずかっています。しかし、ティネス.イオ、Intercom(インターコム)、Stripe(ストライプ)などのよく知られた企業もあり、そうした企業は投資家の関心を集めています。

すでに、セコイアのような米国のトップレベルのベンチャーキャピタルが、まだプレシードステージにあるアイルランド企業にも投資するようになっています。当社の投資先にも含まれているエバーバルトはその一例です。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

グローバルファンドである当社において重要な理念の1つは、優れた企業と卓越した創業者は、世界のどの場所からも現れる可能性がある、ということです。新型コロナウイルス感染症により、従来の「テクノロジーハブ」モデルが大きく崩れました。あらゆる段階の創業者が、企業はリモートの世界でもやっていけるというだけでなく、成功も可能であることを認識するようになっていると思います。

とはいえ、地理的要素もまだまだ重要だと考えています。例えば、成長段階にある米国のB2B SaaSビジネスがヨーロッパに進出する場合、法人の重要性はこれまでと変わりませんから、アフターコロナの世界でも拠点をどこに置くかが重要になるでしょう。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

小売店の閉店は、eコマースが驚異的に成長していることの表れです。大小さまざまな企業が、バックエンドとフロントエンドを強化し、サプライチェーンの可視性を高めてカスタマーサービスを向上させようとしています。

オンライン決済は、金融犯罪の増加にもつながります。銀行は不正行為を検出できるツールを必要としています。

消費が低迷すると、人事部門が給与の流動性を高めて従業員の年金積立を助け、経済状況を改善する必要が出てきます。

これらは影響のごく一部にすぎません。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

新型コロナウイルス感染症によって当社の投資戦略が変わることはありませんでしたが、ビジネスの運営と構築の方法には永続的な影響があるでしょう。パンデミックによって、「製品やビジネスモデルについて、アフターコロナの世界における成功の可能性を見定める」という新たな観点が生まれました。
現在、創業者たちが最も気にかけているのは、エンゲージメント(企業文化の維持)と人材(チームの拡張、上級管理職の採用)です。

状況は会社ごとに違うので十把ひとからげな言い方は控えたいと思いますが、創業者たちにとって今時間を取ってすべきなのは、どのような働き方が会社にとって最善かを考え、従業員の意見によく耳を傾けることだ、というアドバイスはできます。事業の拡大を続けながら、企業文化としてインクルージョンとエンゲージメントを維持し、高めていく方法を考える必要があります。

また、可能なうちにバランスシートを改善しておくようにしましょう。信じがたいかもしれませんが、前四半期のヨーロッパでのベンチャーキャピタルによる出資額は過去最高を記録しました。資金を調達して、ランウェイをできるだけ長く確保しておきましょう。今後12か月間に何が起こるか、実際のところ誰にもわからないのです。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

当社の投資先では、3社の回復の兆しが際立っています。

ワークヴィヴォはデジタルを利用して企業文化とコミュニケーションを高めるためのサービスを提供しています。同社は大手顧客からの需要に対応するため、このパンデミックのさなかに、米国の投資会社Tiger Global(タイガーグローバル)からシリーズAの資金調達に成功しました。

Qualio(クオリオ)も当社の投資先に含まれ、ライフサイエンス企業や製薬企業向けの品質管理ソフトウェアを販売しています。同社は第2四半期において目標をはるかに上回り、シリーズAで1100万ドル(約11億6000万円)を調達しました。

Signal AI(シグナルエーアイ):メディアのモニタリングは、騒然とした時代の広報・コミュニケーション担当者にとって魅力的なアプローチです。同社は最近、Deloitte(デロイト)をパートナーとして、新型コロナウイルス感染症がサプライチェーン、ビジネス、社会、旅行に対してどのような影響を与えてきたのか、また今後はどのような影響があるのかを調査し、レポートを作成しました。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

当社の投資先に含まれる企業が、従業員の健康、福祉、安全を非常に重視していること、そして会社の活力を保つために懸命に努力していることです。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー

[原文へ]

(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

新型コロナに対抗する投資家たち、アイルランドの投資家へインタビュー(前編)

アイルランドのテクノロジーシーンは過去10年で急速に発展し、ベンチャーキャピタルシーンもそれとともに成長してきた。この国の優遇税制と人材プールが、多数のスタートアップ企業とテック界の巨大企業を引き寄せたのだ。

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Slack(スラック)、Microsoft(マイクロソフト)、Dropbox(ドロップボックス)はいずれもダブリンに欧州本部を置いている。EUに唯一残った英語使用国としてハブの役割を果たすアイルランドは、これまでになく多様な創業者を惹きつけており、さらに一度は海外に出たテクノロジー企業も、アイルランドのエコシステムの成熟とともにその創設の地へと戻るようになっている。

私たちは現地のベンチャーキャピタル5社に対して、今年アイルランドでの雇用、投資、会社設立を検討しているTechCrunch読者に伝えたいと思う知見について尋ねてみた。

アイルランドのベンチャーキャピタルは、自国から遠く離れた地域に積極的に投資することはない。しかし、アイルランドには優れた投資の機会がたくさんある。国内市場が小さく、アイルランドのスタートアップには立ち上げ時からインターナショナルな考え方が求められることから、現在も質の高いシードが存在している。Sequoia(セコイア)など米国の一流ベンチャーキャピタルもアイルランド企業に投資しており、プレシード段階で投資する場合さえある。

投資戦略の多くにとって、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響は限定的であり、影響といえば対面でのやり取りがZoom(ズーム)通話に切り替わったことぐらいだ。ただし、地元の労働市場における競争の激しさを考えると、雇用の面では難易度が上がったといえるだろう。それでも、トップレベルのエンジニアリング人材を米国より安く採用できるため、起業家が優れた企業を立ち上げるうえで余計な手間は少なくて済む。

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前編では以下の投資家の話を紹介しよう。

アンドルー・オニール氏、アクトベンチャーキャピタル社プリンシパル

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

セキュリティ分野とエンタープライズ向けソフトウェアの分野には、質の高いシード企業に投資するチャンスがあります。そうしたシード企業は、開発者ファーストでボトムアップ型の市場進出戦略を持っており、非常に楽しみです。セキュリティの「シフトレフト」はよく知れ渡っている考え方とはいえ、開発者が設計段階においてセキュリティについて熟考し、セキュリティを実装するという文化はまだ芽生えたばかりなので、この先が非常に楽しみです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

B2BのSaaSデザインツールで、Figma(フィグマ)、Sketch(スケッチ)、Invision App(インビジョンアプリ)などの方面になります。この分野には、興味深いエンジェル投資家たちが投資しています。まだ取引がまとまったばかりで、公式には発表されていませんし、広告会社にもまだ話していないんですが、皆さんにはそっとお知らせしますね。

TC:業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。現在まだ見過ごされているチャンスはありますか。

アイルランドの国内市場は非常に小さいので、英国のようなレベルの優れたB2Cはまだ出現していません。コンシューマー分野に特化し、コンシューマーテックで2回、3回起業する人はあまりいません。それでも、コンシューマー分野にはもちろんまだ大きなチャンスがあると思いますし、Buymie(バイミー)のような企業はアイルランドのコンシューマー分野での成功が可能なことを証明しています。

TC:次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

どの投資でも同じです。その会社は課題を本当に理解しているか、製品に強い思い入れがあるか、事業を続けていくために必要な忍耐力や気力を持っているか、そして最後に、その会社には新たなカテゴリを生み出すポテンシャルがあるか、といった点です。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

競争がないところに、市場はありません。ただ、リモートワーク支援、生産性向上ツール、企業文化の指標に関連した人事関連テクノロジーなどには大量のスタートアップが存在しています。もちろん、働き方の未来に変化の波が起きているところなので、先のことはまだ誰にもわかりませんし、この先新しいカテゴリの勝者も出てくるでしょう。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

アイルランドを非常に重視しているので、50%を超えます。欧州ではシリーズAとBにも投資しますが、シードへの投資はアイルランドだけにしています。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

エンタープライズ向けソフトウェアのスタートアップは、これまでもアイルランド国内で成功を収めやすい位置にありました。20年以上に及ぶアイルランドへの海外直接投資の後押しで大規模な多国籍企業が進出し、そこから出現する優れた人材という2次的効果によって、その傾向がさらに増しています。アクトからは120社以上に投資していますが、その半数以上がエンタープライズ向けソフトウェアの企業です。楽しみなこととして、私たちのポートフォリオにも(つまりアイルランドにも)、Provizio(プロヴィズィオ)のBarry Lunn(バリー・ラン)氏やServisBOT(サービスボット)のCathal McGloin(キャサール・マクグロイン)氏のような、起業を複数回手掛ける人が増えてきています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか

最近のアイルランドのデータを見ると、過去4年間で年間の投資額は4億100万ユーロ(約500億円)から8億6000万ユーロ(約1080億円)と115%増加しています。市場規模が2倍になり、可能性のあるシード企業も出てきていますから、今後が非常に楽しみです。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

個人的には、Cork(コーク)やLimerick(リムリック)といった南部、さらに西部のGalway(ゴールウェイ)などからもすばらしいスタートアップがさらに出現するのを期待していますが、パンデミックや在宅勤務のためにスタートアップハブの人手が大幅に減るとは予想していません。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。

人々がビジネスのやり方を再考し、状況に適応させていかざるを得なくなっている現在、今後どれほどの出張が可能かというのが、現在大きな疑問となっているのは明らかです。業界のこの変化だけでも、長期的には勝者と敗者が大きく分かれる要因となるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

私たちが投資時に検討する長期的な時間枠を考えると、影響はそれほど大きくはありません。消費者の行動の変化、eコマースの採用加速、デジタルトランスフォーメーションなどに関するもっと大きな問題を検討する必要があるのももちろんです。私たちからのアドバイスは必ずそれぞれのスタートアップに合わせたものですし、求められた場合にしか提供しません。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい。私たちの投資先企業は新型コロナウイルス感染症の影響の中でも非常にタフであることを示しています。SilverCloud Health(シルバークラウドヘルス)、Toothpic(トゥースピック)、バイミーなどの企業は、今のパンデミック環境のために強い追い風を経験しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

個人的には、優れた才能や深い専門知識を持つ、シード段階の創業者の存在です。そして、そうした創業者がこれまでに複数の会社を起こしていることです。彼らはこれまで以上に大きな成功を収めるために今回の起業では何をしたいのか、何をする必要があるのかがはっきりわかっているため、きっと以前よりずっと早く結果を出せると思います。

イサベル・オキーフ氏、シュアバレーベンチャーズ社プリンシパル

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

AIや機械学習、サイバーセキュリティ、没入型テクノロジー、ゲームインフラストラクチャです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか

Getvisbility(ゲットビズビリティ)とVolograms(ヴォログラムズ)への投資です。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

テクノロジーを使用して揺るがぬ地位を築きつつある企業や、新しい市場を創造する企業です。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

ライドシェアリング、オンデマンド配信、決済、チャレンジャーバンクです。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

他のスタートアップハブと比較した場合、地元のエコシステムへの投資額は50%を超えます。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

これから成長が続く業界には、金融サービス、不動産・建設、製薬、製造業、巨大テックがあります。VividQ(ヴィヴィッドキュー)、Admix(アドミックス)、バイミー、Nova Leah(ノヴァリア)、WarDucks(ウォーダックス)といった当社の投資先に含まれる企業にとても期待しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ダブリンとアイルランドでは、活気のあるテクノロジーのエコシステムが成長を続けており、投資の大きなチャンスが多数存在しています。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

そういうことが起こるだろう、という点には同意します。ただ、ワクチンが完成すれば、都市が復権し、当然人々は都市生活に再び魅力を感じるようになるでしょう。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

一部の投資先セグメントでは、新型コロナウイルス感染症の影響が見られますが、それは限られたものです。リモートワーク、eコマース、オンデマンド型の食品配達、サイバーセキュリティ、ゲーム、各種没入型テクノロジーといった、今後の働き方に関連した事業を展開する会社にはチャンスがあります。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

多くのプロセスがズーム経由に変わったのに慣れる必要があったことを除けば、新型コロナウイルス感染症による投資戦略への影響はあまりありません。これまでの投資先も比較的影響の少ない分野が多かったので、特定のセクターや業界から引き上げることもしていません。当社の投資先の創業者たちが最も心配しているのは、次の資金調達ラウンド、主要マイルストーンの達成状況、再現可能な市場戦略の達成、優れた人材の採用といったことです。

現状、投資先のスタートアップへのアドバイスとしては、バーンレートを注意深くモニタリングし、資金調達に乗り出す場合は、当初の予想より最低2か月長くかかる可能性を認識しておくことです。また、売上が伸び悩む時期にも、製品や技術の開発を続けておけば、そうした時期から抜けた時には自社の製品や技術も市場で有利な立場に立つことができ、売上もそれに続いて増えるでしょう。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい、オンデマンド型の食品配達企業であるバイミーでは、パンデミックによってサービスに対する需要が急増しており、その勢いに「回復の兆し」が見られます。サイバーセキュリティ企業であるゲットビズビリティについても、金融サービス、製薬、国防関連といった業界の企業からの関心が急激に高まっています。そうした企業は、自宅勤務やサイバー攻撃のリスクが高い場所からの勤務に対応できるよう自社の体制を整えようとしています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ワクチン接種が当初の予想より早まり、来年には元の生活に戻れるかもしれない、という最近の発表は、誰もが待ち望んでいたものだったと思います。

ニコラ・マクラファティ氏、ドレイパーエスプリ社パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

働き方の未来、エンタープライズ向け機械学習アプリケーションのコンシューマー化です。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

コネクテッドホーム向けのカスタマーケアを自動化する、Sweepr(スウィーパー)です。

TC:業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。現在まだ見過ごされているチャンスはありますか。

真のAI、デジタルヘルスです。

TC:次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

その会社に世界展開への意気込みがあるかどうかを検討します。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

Eスクーターですね。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

約20%です。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ソフトウェアアプリケーション、AI、機械学習、ライフサイエンス。注目の企業はWorkVivo(ワークヴィヴォ)、Manna Aero(マンナエアロ)、Open(オープン)、スウィーパー、Roomex(ルーメックス)、Evervault(エバーバルト)です。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

残念ながら、シード段階のスタートアップに対する地元のプレーヤーからのサポートは著しく不足しています。労働市場ではテクノロジー業界の大手多国籍企業との競争になるので、雇用が難しくなる場合があるでしょう。しかし、創業精神の強いカルチャー、企業当初からグローバルな考え方ができること、および非常に豊富な技術者たち(アイルランドの各大学が供給源)は強みです。また、アイルランドに拠点を置こうと計画するヨーロッパの起業家もいますし、ブレグジットによってさらに多くの起業家がこの地に集まることになるでしょう。

TC:パンデミックや先行きの不安、そしてリモートワークの普及から、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、スタートアップハブの人手が不足する可能性があると思いますか。

おそらくスタートアップ経済はもう少し国内に分散するようになると思いますが、これは前向きな変化です。ダブリン、コーク、ゴールウェイなどの都市は引き続き強力なハブとなるでしょう。

TC:投資先のうち、新型コロナウイルス感染症による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮する業界セグメントはどれだと予想していますか。また、そのような変化の影響を他より強く受ける業界セグメントはどれだと思いますか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

トラベル関連のテック企業には非常に厳しい状況でしたが、優れた企業が生き残り、旅行が再び可能になった時には新型コロナウイルス感染症の反動でかなりの勝ち組が出現するでしょう。また、デジタルインフラストラクチャとコストカットに配分される予算が劇的に増えており、さらに生産性が主要な検討事項となれば、エンタープライズ向けSaaSの導入や自動化を促進する企業にとって、大きなチャンスが訪れるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

戦略はほとんどそのままに、企業をサポートするためにさらに準備金が使われるでしょう。直接影響を受けたビジネス(旅行など)の場合、懸念事項はパンデミックからの回復を見極められるかどうかということと、回復のタイミングですが、いずれも創業者がコントロールできることではありません。不確実な時代において他に懸念されるのは、資金のランウェイ(手元の資金が枯渇するまでの期間)です。今後の資金調達において、自社の業績に対して市場からどのような評価が下されるかは予測できないためです。大企業では、営業モデルをどのようにリモートワーク体制に適応させるかがポイントです。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

確実に見えてきています。テクノロジービジネスの多くは非常に順応性が高く、顧客のニーズの変化に対応してきました。第2四半期には大きな変化が見られなかったものの、第3四半期は多くの企業が順調に回復し、力強い成長へと転じています。初期の動揺はすでに終息しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ワクチンについての発表です!パンデミックからの回復への道が見えてきました。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

IPOを果たしたWishの投資家、ウルフソン氏は初日の株価を気にしない

Founders Fund(ファウンダーズファンド)がまだ非常に若いベンチャー企業だったとき、ジャスティン・フィッシュナー・ウルフソン氏を初代社長として迎え入れたことには、何の不思議もないだろう。スタンフォード大学から2つの学位を取得し、学校の学生団体に資産管理サービスを提供する組織のCEOとして2年間過ごしたフィッシュナー・ウルフソン氏は、ベンチャーファンドでためらうことなく自分の意見を述べた。実際、フィッシュナー・ウルフソン氏は、ファウンダーズファンドがSpaceX(スペースX)に対して当初計画していたよりもずっと大きな投資を行ったのは、同氏がスペースXへの投資を推し進めたからだと言っている。

フィッシュナー・ウルフソン氏は、Facebook(フェイスブック)の2012年のIPO以前にフェイスブックで働いていた友人のおかげでもっと良いチャンスを見つけるまでの3年間、ファウンダーズファンドに留まった。その友人たちは所有している株を清算する方法を探し始めていた。選択肢はあったが、同氏の中では適切な選択肢ではなかった。さらに同氏は、フェイスブックのような多くの企業がもっと長く未上場のままでいると予測していたと言っている。フィッシュナー・ウルフソン氏はファウンダーズファンドに別れを告げ、137 Ventures(137ベンチャーズ)を設立して、創業者、投資家、従業員から追加発行分の株式を取得した。

これは10年前のことで、同社は順調にいっているようだ。2019年、同社は4回目のファンドを2億5000万ドル(約259億円)の資本コミットメントでクローズし、運用資産は10億ドル(約1035億円)を超えた。1回の投資をおよそ10社から12社にしぼって行うという同社のアプローチも功を奏しているようだ。2020年9月末以降、同社の投資先企業3社(パランティア、エアビーアンドビー、ウィッシュ)が公開市場に参入した。

TechCrunchは、フィッシュナー・ウルフソン氏から長時間にわたって話を聞き、137ベンチャーズの事業の仕組みや、企業の選別方法から、従業員に既得ストックオプションを長く保有させている企業が及ぼす影響まで詳しく聞いた(「期限が切れようとしている膨大な量の株式を持っている人たちからの絶望的な電話がなくなりました。私は、このような電話がかかってこないことにすっかり満足しています。そういった状況にいる人たちにはとても申し訳なく思うからです」と同氏は語っている)。

私たちは、137ベンチャーズの投資先に含まれているスペースXの早期取引についても話した。

読者はこちらから会話全体を聞くことができるが、今回は、その会話からウィッシュを中心とした内容を抜粋して紹介する。ウィッシュはディスカウントeコマース企業で、2020年に行われたIPOは不発だったと言われている。

TechCrunch(以下TC):137ベンチャーズの投資先企業の2社(パランティアとエアビーアンドビー)は公開市場に参入し、非常にうまくいきました。これとは別に、ウィッシュは上場初日に株価が急落しました。ウィッシュのIPOをどう判断しますか。投資家はこの会社を誤解していると思いますか。

ジャスティン・フィッシュナー・ウルフソン氏(以下JFW):投資界が新規上場企業を理解するには長い時間がかかると思います。結局のところ、IPOは1日だけなんですよね。本当に重要なのは、その企業が今後10年、20年の間にどのように業績を上げていくかです。

私はMicrosoft(マイクロソフト)やAmazon(アマゾン)、もっと最近ではフェイスブックに注目しています。フェイスブックの株価は株式提供後の1、2週間で50%下落しましたが、素晴らしいビジネスを続けています。明日、明後日、市場がどうなるかはまったくわかりません。しかし10年にわたって拡大していく持続可能な優れたビジネスを構築できれば、最終的にうまくいきます。

ウィッシュはビジネスを拡大し、業績を向上させています。 共同創業者兼CEOのPeter Szulczewski(ピーター・シュルチェフスキー)氏は、私がこの業界で出会った中で最高の経営者の1人だと思います。そしてウィッシュはモバイルに関して多くのイノベーションを成し遂げてきました。ウィッシュのプラットフォームには多くの発見があります。店舗でのピックアップの仕組みは非常に革新的でした。ウィッシュは、何百万平方フィートもの倉庫を購入する必要がないアセットライトな方法を採用し、消費者が商品を迅速に入手できるように支援しています。

TC:米国とヨーロッパにある小規模店との間でウィッシュが開始したパートナーシップについてお話ししていましたね。このパートナーシップでは、収納スペースに余裕のある店がウィッシュの商品の引き渡し場所となり、購入者が商品を受け取りに来たときに、その店の客足が少し増えるということですね。これは、ウィッシュのかつての運営方法からの大きな転換です。以前のウィッシュはUSPS経由で中国から非常に安く商品を出荷していましたが、中国の経済状況は今は変わってきています。そうですよね。

JFW:その通りです。ウィッシュは中小企業の客足が伸びるように支援しています。客足は常に大切でしたが、現在の環境ではこうした種類の企業にとってさらに重要になるでしょう。またウィッシュはその地域の消費者が何を求めているかを把握しているため、企業がウィッシュのプラットフォーム全体に蓄積されたデータを活用し、より高い販売収益を上げられるように支援しています。また1か所に商品を出荷するため、非常に多くの人々からの注文を集約できます。これにより物流や出荷にかかる時間、コストが削減されます。消費者は、徒歩または車で5分から15分かけて店舗に出向き、ウィッシュから届いた商品を簡単にピックアップすることができます。こうした仕組みによりウィッシュは、時間は少々かかっても構わないので、商品をより良い価格で手に入れたいという価値観を持った消費者をターゲットにしています。

TC:ウィッシュは中国から安価な商品を手に入れられる場所として知られています。ウィッシュは、主力商品をより多く展開しようとしている今、市場での認識をどう変えていこうとしていますか。

JFW:ウィッシュはまだ市場全体に浸透していないと思います。ですから、その認識を変えるために、多くの取り組みが求められるかどうかはわかりません。率直に言って、ウィッシュのことを知らない人たちはまだたくさんいます。そして市場の進化を見ていると、小売業者がますます増え、小売業者と商品の両者の品質について顧客から返されるデータも増加していることがわかります。そうしたデータはすべて、ウィッシュの非常に優れたシステムで処理されるため、小売業者はそのデータを活用して商品の品揃えを改善し、顧客が求めるものを販売できるようになります。

TC:会社の収益が一定しないのは、サービスの品質にバラツキがあるからだと思いますか。ウィッシュは2018年におよそ57%の成長を遂げ、2019年には10%と成長が落ち込みましたが、今年の最初の9か月で再び成長が上向きました。このような成長の変動があったのはどうしてだと思いますか。

JFW:あらゆる企業は、こうした成長サイクルを経て、効率性に重点を置くようになります。成長だけを重視すると、成長を遂げた後に、それまでの取り組みを台無しにし、効率が低下してしまうという傾向があります。しかし、目を向ける必要があるのは、経営効率を上げる仕組みです。ですから基礎となる指標に注目すれば、2018年から今年にかけての、ウィッシュの成長サイクルにおいても経営効率が改善していることが確認できると思います。

TC:ウィッシュの株式は「急騰」しませんでした。一方、Snap(スナップ)の元幹部であるImran Khan(イムラン・カーン)氏がCNBCに語ったことによると、エアビーアンドビーやDoordash(ドアダッシュ)などが行った最近のIPO後の株価急騰は、株式を引き受けた銀行家の「言語道断な無能力さ」によるものです。これらの株が急騰したのは、銀行家の無能力さが原因だと思いますか、それとも単に市場の不安定性によるものだと思いますか。

JFW:この質問の答えを実際に知っている人はいないでしょう。このケースが示しているのは、結局のところ、初日の株価から有意義な情報は得られないということです。

TC:これらの企業への絶大な支持が流通市場の株価を押し上げているのでしょうか。どのように思いますか。

公開株価は確かに重要です。公開株価は最終的には非公開市場に影響しますし、その逆もまた然りです。非公開市場での評価と公開市場での評価が同時に大きく異なることはありません。ですから、市場が動けば、必ず投資尺度も変わります。ただ、こういったことは平均値で語られる場合がほとんどです。人々は1社または1つの尺度だけに注目しますが、必ずしもすべての企業について調べたうえでそうしているわけではありません。すべての企業に注目することは非常に難しいですからね。

しかし株価が法外な例は必ず存在します。同時に割安な例もあります。確かに投資家としては、より低価格の優良企業により多くの資金を投資したいでしょう。しかし焦点を当てるべきなのは常に優良企業です。長期的に事業を拡大しようとしている企業を見つけることができれば、投資尺度や評価額を気にし過ぎない限り、その企業は投資にうってつけの企業になるでしょう。

TC:現在どの企業を調査していますか。まだWebサイトに掲載されていない投資は何ですか。

JFW:Snapdocs(スナップドックス)です。同社は不動産業者が住宅ローンの処理やその他の文書業務をデジタル管理するのを支援する会社で、2020年10月に6000万ドル(約63億円)の資金調達をクローズしました

同社の創設者兼CEOであるAaron King(アーロン・キング)氏は、人々が本当に求めている製品を開発し、本当に素晴らしい仕事をしてきました。そして今が、同社の成長を大きく加速させる絶好のタイミングです。スナップドックスは2020年、優れた業績を上げました。

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タグ:インタビュー IPO

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(翻訳:Dragonfly)

初期投資家がDoorDashを高評価、10倍の成長が見込めると期待

フードデリバリー会社のDoorDash(ドアダッシュ)が今週鮮烈な市場デビューを果たし、多くの人々に困惑をもたらした。紛れもなく急成長はしているものの、採算が取れていない同デリバリー会社は雇用慣行をめぐって幾度となく炎上しており、他のギグエコノミー企業と同様、そのIPOは多くの経済問題を未解決のままにしている

それではなぜ、2019年に6億6700万ドル(約693億円)、パンデミックによる超成長期のはずであった2020年最初の9か月間に1億4900万ドル(約155億円)の損失を出した会社が、公開市場で投資家から558億ドル(約5兆8000億円)の評価を受けているのか。気でも狂ったのだろうか?

Saar Gur(サール・ガー)氏がその答えを知っているという。アーリーステージのベンチャー企業、CRVで長年ジェネラルパートナーを務めているガー氏は、シード、シリーズA、シリーズBを含む初期の資金調達ラウンドでDoorDashに小切手を切っているが、この小切手の元になった多くのCRVファンドは利益となって戻ってくると我々も踏んでいる。簡潔に言うと、同氏の意見は偏ったものではない。同氏と今日電話で話した際、DoorDashは今後利益を生むどころか、現在の10倍もの規模になると同氏は見込んでおり、非常に興味深い話を聞くことができた。以下の会話は長さの関係上論点を明確にするためにも、多少の編集が加えられている。

TC:DoorDashにシード資金を提供されていますが、DoorDashのことはガー氏が見つけたのですか?それとも同社のチームがCRVに売り込んだのですか?

SG:DoorDashのCEOのTony Xu(トニー・シュー)氏を自ら探しに行きました。[デリバリーサービスのライバル会社である]Postmates(ポストメイツ)は2年半から3年早く事業を開始していましたし、創業者も良いとは思ったのですが、投資するまでにはいたりませんでした。もう一社、パロアルト市で一時期話題になっていたアダムという非常に強気な起業家が経営していたFluc(フルック)という企業があり、チームと会う機会がありました。私は食品ビジネスに携わっており、私の妻は食品起業家でFraiche(フレッシュ)という自家製ヨーグルトのチェーン店を手掛けていることもあり、多くの飲食店オーナーを知っていたのでとても興味があったのです。

そこで、パロアルトのユニバーシティアベニューにあるOren’s Hummus(オレンズ・フムス)のジェネラルマネージャーをしていた友人のミスティにメールをしてみました。「Flucへの投資を考えているんだけど、彼らって実際にどんな感じ?」と訊いてみると、「Flucのチームはまずまずで、技術的にも競合他社より優れている部分はあるけど、本当の意味で我々の問題を理解してくれるわけではない。スタンフォード出身の数人が始めたDoorDashと話してみたら?」と彼女からアドバイスをもらいました。

投資のスキルということでもありませんが、Fluc[後に創設者は立ち去った]への投資に対し確証バイアスに陥ることなく、方向性を変えたおかげでDoorDashチームを探し当てることができました。パロアルトのFraicheで初めて彼らと出会った瞬間から、相手の言いたいことが手にとるようにわかる、ぴったりな感覚がありました。

TC:何について話したのですか?

SG:チームは初日から物流会社を構築するということについて話をしていました。例えば同社はOren’s Hummusのケースをよく理解できていたのですが、当時この店はかなり人気があり、客席には限りがあったものの店内には大きなキッチンを備えていました。そこで[共同創業者兼CEOの]シュー氏と[共同創業者からVCに転身した]Evan Moore(エヴァン・ムーア)氏は「席数が限られていてキッチンが大きいという人気のコンセプトを好む顧客をターゲットにして、キッチンと直接統合することでフロントスタッフとのやりとりが不要になるようにしたい」と言ったのです。

当時PostmatesはiPhoneを手に入れるために列に並ぶというようなサービスから、Fraicheを含む食品デリバリーサービスの会社に転換していましたが、どちらにしても誰かを店舗に送り、実際に注文をして待たなければなりません。一方でDoorDashはキッチンにiPadを置こうと考えたのです。

TC:CRVはUber(ウーバー)を逃したと言っていましたよね。Travis Kalanick(トラビス・カラニック)氏が貴社から去って、Benchmark(ベンチマーク)に向かってしまったと。契約書にサインするまで放してもらえなかったようですが。UberはDoorDashのような企業になれた、またはなるべきだったと思いますか?私はまだDoorDashが創業される前の2011年にカラニック氏に会いましたが、その時同氏はUberは食品やその他様々なものを運ぶ物流会社だと言っていました。現在のDoorDashの圧倒的な市場シェアを考えると、Uberはデリバリー事業に参入するまでに時間がかかりすぎたと思いますか?

SG:当初Uberは飲食とは全く関係ない事業で、配車サービスを変わらず続けていました。UberのシリーズAのプレゼンテーション資料にはタクシーをつかまえようとする男の写真が載っていましたし、飲食に関するビジョンは一切ありませんでした。少なくとも私はそう記憶しています。しかし時と共に、Uberは何でもやるようになりました。

DoorDashはパロアルトでローンチしましたが、多くの企業がサンフランシスコで事業を行っていたため、トニーとチームは次にサンフランシスコを目指すべきか、または別の都市にするべきかを決めなければなりませんでした。私も多くの議論に参加しましたが、その結果サンノゼに焦点をあてることにしたのです。

ほとんどの人は知らないと思いますが、サンノゼはアメリカで10番目に大きな都市で、サンフランシスコよりも他の中堅都市やアメリカ郊外の都市によく似たレイアウトをしています。これは戦略上とても重要な決断だったと思います。当時、[より大きな競合の] Grubhub(グラブハブ)やSeamless(シームレス)が密集した都市での成功を証明していました。サンノゼや郊外でそのビジネスモデルが成功するかはよく分かっていませんでした。

TC:明らかに投資家たちはDoorDashが築き上げたものに対して非常に好意的に感じており、昨日は株価が急上昇しましたね。Bill Gurley(ビル・ガーリー)氏と同様に、出資者によって資金を集め損ねていることに不満を感じていますか?従来型のIPOは崩れてしまっていると思いますか?

SG:私はLehman Brothers(リーマン・ブラザーズ)の投資銀行チームでキャリアを開始しました。そこでIPOのプロセスを見てきたので、企業が価格に基づいて資金を取り損ねてしまったことへ不満を感じるのは理解できますが、戦術的な課題としては予測が非常に難しいということです。個人投資家の手に渡れば市場がどうなるかはわかります。

DoorDashの資金調達は始まったばかりなので今後がとても楽しみですし、5000億ドル(約52兆円)以上の企業になる可能性があると思っています。将来とても有望です。今回の資金調達イベントに関しては、銀行家にとって市場全体のどこに着地するのかを知るのはとても難しいと思うので、私は他の人ほど否定的ではありません。

TC:5000億ドル(約52兆円)とは大きな数字ですね。この数字はどう算出したものですか?

SG:フードデリバリーだけ見ても、DoorDashの郊外市場シェアは60%以上に成長し、米国全体の市場シェアは52%を超えており、フードデリバリーで市場を制覇したと言って問題ないでしょう。[中国のショッピングプラットフォームである]Meituanやその他世界規模のフードデリバリー事業を見てみると、DoorDashが現在の道を歩み続けるとすれば、それだけで1000億ドル(約10兆4000億円)の価値を生み出せるということになります。

しかし、私にとってもっと大きな話は、USPS(アメリカ合衆国郵便公社)が手紙を届けるのに2週間かかっていましたが、FedExの登場によりそれがすごく遅く感じるようになったということです。USPSのネットプロモータースコアはFedExが登場するまでとても高かったのです。インターネットのダイアル回線も同じことで、ブロードバンドの登場までは素晴らしいサービスに感じられました。

画像クレジット:CRV

 

消費者は即時性を望んでおり、ボタンを押すと25分以内にアイスクリームや牛乳、その他様々なものが届くという魔法のような能力を好むのです。そこから商品の幅を広げて行くことができます。例えば12月にはMacy’s(メイシーズ)と提携しているため、シャツやワンピースを購入すると製品が1時間後には自宅に届くようになります。このビジョンを実現するためにDoorDashが構築したインフラを見ると、同社はむしろAmazon(アマゾン)のようにも感じられます。

夢のまた夢のようなビジョンですし、ましてやライドシェアやUberの本業とは程遠い事業体です。

TC:DoorDashとAmazonを比較されていますが、Amazonはより資本集約的なビジネスで、多くのハード資産を持っています。DoorDashもその方向に進むと思いますか?また、DoorDashはどのような買収に興味があると思いますか?

SG:DoorDashは常にテクノロジーを第一に考えています。DoorDash Driveはまだあまり理解されていない製品ですが、これは独自の配送ネットワークを展開するつもりのない企業を支援するものです。例えばWalmart.comで食料品を注文すると、DoorDashがこのための配達を担います。Macy’sは1時間以内の配達を希望していますが、DoorDash Driveがこれを可能にします。またDoorDashは現在、自社のドライバーによる配送と共にエクスペリエンス全体をコントロールしたいと望む大規模チェーンに対して、純粋なSaaSビジネスのような製品も提供しています。[サンドイッチチェーンの]Jimmy John’s(ジミージョンズ)はDoorDashソフトウェアを活用し、自社のドライバーを用いて注文と配送ビジネス全体を運営しています。

DoorDashにはAWSのようなソフトウェアビジネスの要素もあれば、[DoorDashが所有、運営し、今年の夏に展開したコンビニエンスストアの]Dashmart(ダッシュマート)のように資本集約的な要素もあります。7-Eleven(セブンイレブン)やその種のものを買収する可能性があるか否かに関しては、先月[デリバリースタートアップの]goPuff(ゴーパフ)がBevMo(ベヴモ)を買収したのを見ましたが、そうすべき理由がまったくないことはありません。Dashmartを通し、彼らは人々がすぐに手に入れたいものの多くをデータに基づいてすでに把握しています。

TC:DoorDashはゴーストキッチン市場にも参入し、サンフランシスコの南に位置するレッドウッドシティに施設をオープンさせました。これは大きく展開されていく可能性があるのでしょうか?

SG:間違いなくその可能性はあります。DoorDashのデータを活用すれば、[顧客の近くにいられるよう]Long John Silver(ロングジョンズシルバー)や Taco Bell(タコベル)のような新店舗をわざわざ作る必要がないと知ることができますし、その場合レッドウッドシティのキッチンを利用すれば良いわけです。通常なら1時間かかる配達を15分でできるようにする方法を浮き彫りにしたデータをすでにお見せすることもできます。同社はこういったコンセプトにおける収益拡大を促進しています。

他にも、例えば起業家が「パロアルトにはピザ屋がないからそこを狙って『Saar’s Pizza Company』を立ち上げよう。費用対効果を考えると、イートインスペースを備えた店舗や建物なんていらないね」といった具合にデータを役立てることができます。

TC:一方で、DoorDashとの提携に際して、その手数料の高さにレストランオーナーから不満の声も出ているようですが?

SG:私自身レストランを経営した経験があるからこそ言えることですが、ウォートンのMBAを持っている私の妻にとってさえ経営における数字を把握するというのはとても難しいことです。味方がいないような気分にもなりますし、中小企業を経営するというのはとても大変なことです。DoorDashによって増分収益を得ることができていて、限界利益の概念を理解できているのであれば、食品のマージンで儲けることができ、キッチンのキャパシティもあるということが把握できるため、物を売り続けても問題ないということになります。

これこそがDoorDashがクイックサービスの上位50のレストランのうち約45店と契約できている理由です。これはかなりの数字であり彼らがうまくいっていなければ、彼らがこれほど長くサービスを利用したり、このパートナーシップに大金を投資したりするわけはありません。

ただし、もちろん価格の高さに驚かれるというのは常について回るでしょう。

TC:クイックサービスやゴーストキッチンなどは非常に効率的なシステムのため、それによって家族経営の飲食店などが淘汰されてしまうのではという懸念もあります。これに関してはどう考えていますか?

SG:私たち人間は社会性を求める存在であり、誰かと食事を共にするという習慣がなくなるとは思えません。実店舗とオンラインショップを両方持つ小売店のように、より賢いブランドは[オフラインとオンラインの両方を持つように]なると思います。よりスマートなコンセプトはチャネルを越えてブランドを構築する方法を理解していくことでしょう。私は世の中のパブやThe French Laundry(フレンチランドリー)などのレストランがポストコロナの世界で再び調子を取り戻すと信じています。多くの人々がこういった体験を心待ちにしているからです。

TC:DoorDash自体はどのようにして黒字化していくのでしょうか?

SG:実際よく見てみると、この夏DoorDashは利益を出しています。それどころか同社はCOVIDで影響を受けた中小企業を支援するため1億2000万ドル(約125億円)を捻出しているため、これさえなければむしろ結構な額の現金を生み出しているはずです。

DoorDashのような会社では大きなビジョンを掲げて採用を進める必要があり、同時に高度な数字による裏付けも求められますが、シュー氏は常に正確な数字を算出し非常に定量的な目標を設定することができています。また新しい市場では[成長中のため]利益を上げられていませんが、古い市場での利益だけでなく、新市場で時間の経過とともに利益がどのように拡大していくのかを示したコーホート分析が存在します。

既にいつでも成長から利益を得ることにフォーカスを切り替えることもできますが、それは同社の戦略ではありません。

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カテゴリー:フードテック
タグ:フードデリバリー インタビュー

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(翻訳:Dragonfly)

「個人事業主」向けバックオフィスプラットフォームのCollective、シードラウンドで9億円を調達

米国だけでなく世界中で自営業者の数が増えている。数ある中でも特に大きな原因となっているのは、優れたソフトウェアが利用できること、柔軟な働き方が必要とされていること、高いスキルを要するサービスを提供できる場合には特に高報酬が期待できることだ。

ちょうど1年前、フリーランサー向けのデジタルプラットフォームであるFreelancers UnionとUpworkが公開したレポートの推定によると、米国の労働者の35%がすでにフリーランスに転向しているという。国内でも世界中でも新型コロナウイルスの流行が依然として続いており、何千万という人々が働き方を大幅かつ継続的に変えることを余儀なくされているため、フリーランサーの割合は急上昇することが予想される。

大半のフリーランサーは、自身のビジネスの安定的成長には関心を持つが、人や物事を管理する作業は煩わしいと思っている。当然ながら、そうした自営業者の経済力に目を付ける抜け目のないスタートアップが登場している。その代表例が、サンフランシスコを拠点とする、創業2年半、従業員数20名のスタートアップ企業、Collective(コレクティブ)だ。コレクティブは、これまであまり注目されてこなかったが、同社が言うところの「個人事業主」向けに確定申告書類の作成や簿記といった事務管理サービスを構築してきた。同社は最近、シード投資ラウンドで865万ドル(約9億1300万円)の資金調達を終えたばかりだ。

この投資ラウンドをリードしたのはGeneral Catalyst(ゼネラル・カタリスト)とQED Investors(QEDインベスターズ)の2社で、Uber(ウーバー)共同創業者のGarrett Camp(ギャレット・キャンプ)氏、Figma(フィグマ)創業者のDylan Field(ディラン・フィールド)氏、DoorDash(ドアダッシュ)経営幹部のGokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏などの有名エンジェル投資家たちも参加した。

コレクティブの共同創業者兼CEOのHooman Radfar(フーマン・ラドファー)氏に、同社のミッションである「自営業者コミュニティのパワーアップ、支援、つながり形成」や提供しているサービスの内容について話を聞くことができた。

TechCrunch(以下、TC):以前会社を興し、2016年にその会社をOracle(オラクル)に売却する前に、早々とベンチャーキャピタル業界に転身して、ギャレット・キャンプ氏のスタートアップスタジオExpa(エクスパ)で仕事をしておられましたね。起業支援ではなく起業する側に戻ってこられたのはなぜですか。

ラドファー氏(以下、HR):AddThis(アドディス)やエクスパでの経験やエンジェル投資事業を通して、財務管理業務は大変な仕事だということがわかりました。小企業にとって、会計、税務、コンプライアンスといった一連の業務は、本当に厄介なものです。

2年前、[コレクティブの共同創業者の]ウグル[Ugur Kaner(ウグル・ケーナー)氏]がエクスパにやってきて、「お手軽スタートアップ」プログラムなるものを売り込もうとしてきました。起業支援ビジネスを立ち上げる話だったのですが、[どちらかというと起業に伴う事務作業や管理業務を引き受けるのが狙いでした]。ウグルは私と同じ移民で、起業に関する財務に疎く、追徴税を取られる羽目になった苦い経験がありました。フリーランサーにとって、こうした追徴税は企業よりも厳しいのです。我々が提供しているサービスのオーダーメイド版のようなものを提供しようとするスタートアップもありますが、我々から見れば「そんなサービスなんて必要ないんじゃないか」と。このようなサービスはいわば便利な道具のようなものですが、それを1つのプラットフォームにまとめると、非常に強力なサービスになり得るのです。

TC:そうした業務をコレクティブで一手に引き受けるということでしょうか。それともサードパーティーの協力を仰ぐのですか。

HR:両方です。我々は、会計や税務といった事務管理業務をメインに行うオンライン・コンシェルジュであると同時に、S法人(小規模法人)の設立のお手伝いもします。そうすれば、LLCとして起業するよりも資金を大幅に節約できますから[LLCとS法人とでは税金の要件が異なる]。ですから、統合レイヤーがあって、その上にダッシュボードがあるというイメージです。S法人の場合は給与支払名簿が必要ですから、そこはGusto(ガスト)と提携しています。ガストのサービスは当社のサブスクリプション契約に含まれています。QuickBooks(クイックブックス)とも提携しています。コンプライアンス業務についてはサードパーティーと協力して対応しています。当社のビジョンはこうした事務管理業務を簡素化してオートパイロット方式で行えるようにすることです。まさに時は金なりです。起業家には、面倒な事務仕事をしている時間などないことはよく分かっていますから。

TC:料金を教えてください。

HR:税務、会計、企業バンキング、給与のコアパッケージで、月200ドル(約2万円)です。簿記と、より包括的なサービスを含むフルパッケージについても現在試験的に導入中ですが、徐々に[それに近い姿か]その方向に向かうと思います。フルパッケージは追加料金になります。

TC:こうしたサービスが料金に見合うものであることを、個人事業主にどのようにアピールされますか。

HR:米国には、年収10万ドル(約1000万円)以上[の個人事業主]が300万人近くいます。そうした個人事業主が上記の[各種サービスの]うちすでに利用しているものがどのくらいあるのか考えると、当社のサービスは大いに利用価値があります。クイックブックスやガストは、当社経由で利用したほうがお得です。出費を抑えることで節約できます。ポイントは、S法人をすぐに立ち上げることです。S法人には普通所得税がかかりますが、配当は所得と課税方法が異なります。所得税より税率が低くなります。ですから、給与データを取り込み、各州の支出の集計を見て、「キャッシュフローの状態から判断すると、お勧めの方法はこちらになります。これで、この配当を規制に準拠した方法で認識できます」と伝えます。

TC:有益な顧客データを蓄えることになりますね。そうしたデータはどのように利用するのですか。

HR:第一に考えるべきことは、然るべき人だけがデータにアクセスできるよう配慮することです[我々はプライバシーを重視しています]。とはいえ、データの使用権を獲得すれば、そのデータを集約していろいろなことができます。たとえば、理論的には、新しい形の財務スコアを作成することも可能です。個人事業主の場合、住宅ローンや通常のローンを組むのが難しい。クレジット会社側に彼らを査定するためのツールがないからです。ですが、数年に渡る財務履歴があれば、自分が真っ当な人物で、きちんとした会社を経営していることを示せます。

これから会員ユーザー(もうすぐ2000人になる)が増えれば、別の面白い方向性も見えてきます。会員数の力で、会員が安価で保険に加入したり、クレジットを容易に利用[信用が提供される]できたり、401kに対応[サポートを受けられる]できたりといったことが実現します。

TC:プロジェクト管理からグラフィックデザインまで、他にもできることはたくさんありそうですね。

HR:現時点では、コアサービスを確実に提供したいと考えています。

Uber(ウーバー)はライドシェアリングに、Uber Eats(ウーバーイーツ)は食品宅配に、透明性と安心感をもたらしました。調理中とか、配達中とか、到着予想時刻といった情報を確認できるからです。我々は、多くのものについて、そうした高レベルの透明性と説明責任が提供されることを当然と思うようになっていますが、会計処理サービスに関してはそうなっていません。これはおかしな話です。ユーザーのお金を扱っているにもかかわらず、透明性も説明責任も果たされていない。この状態を変えたいと思っています。

TC:「個人事業主」を対象にするということは、断片化の度合いが大きい市場を相手にすることになります。潜在的な顧客にリーチできるよう、どのような企業と提携しようと考えていますか。

HR:現在交渉を進めているところですが、まずネオバンクが浮かびます。他にも、看護師と医師、不動産仲介業者、ライターのための垂直市場などが考えられます。多くの可能性があります。

写真は、コレクティブの共同創業者たち。左から順に、CTOのBugra Akcay(ブグラ・アッケイ)氏、CEOのフーマン・ラドファー氏、CPOのウグル・ケーナー氏。

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VCのコペルマン氏インタビュー:SPACについてはまだ結論を出せないが、いわゆるローリングファンドは威力を発揮すると考えている

TechCrunchは、アーリーステージ投資を専門とする創業16年のベンチャー企業First Round(ファースト・ラウンド)の共同設立者ジョシュ・コペルマン氏に会い、さまざまな問題について話す機会を得た。当然ながらその際に、現在ベンチャー業界で起きている大きな変化、例えば、いたるところで立ち上げられているSpecial Purpose Acqusition Company(SPAC、特別目的買収会社)、勢いが増しているローリングファンド構想、さらに多様性に関するファースト・ラウンドの考えなどについて、同氏に意見を尋ねた(このインタビュー全編は今週末にポッドキャストで皆さんにお届けする予定だ)。

コペルマン氏は創業者たちからも高く評価されているため、前述のような新しい変化に対する同氏の意見を知りたい読者は多いと思う。以下が今回のインタビューの内容だ。長さを調整し、わかりやすくするために、多少の編集が加えられている。

TC:ファースト・ラウンドの設立以来、あなたの業界は明らかに大きく変化しましたね。現在、何百もの企業がアーリーステージの取引を求めています。市場で起こっていることは御社の業績にどのような影響を及ぼしてきましたか。以前と変わらない投資収益率を維持していますか。

過去5年間の変化については、まだ結果は出ていません。そのため過去5年間の未実現のマークアップについて言えば、確かにうまくいっているように見えます。とはいえ、私はこのビジネスに長く携わっているため、実現利益と未実現利益の間には大きな違いがあることはわかっています。ただし中間指標を見ると、一般的には、我々が最初のラウンドをリードする企業は、次のラウンドを調達する可能性が業界平均の2倍高くなっていることがわかります。まだ明るい兆しがあるということです。しかし15年前には逆張り的だと言われていたもの(組織化されたシード投資)が、今では広くコンセンサスを得ているということは認識しています。

TC:結果が出るまでに時間がかかる一因は、ここ10年ほど、企業が上場するまでに要する時間がどんどん長くなってきたことにあります。IPOプロセスは破たんしていると思いますか。スタートアップを上場させるには新しい手段が必要だという意見が多く聞かれます。

IPOが破たんしているとは言い切れないと思います。あなたは、はるかに多くの企業がイグジットするのを目にしていると思いますし、我々は、そのようなイグジットの件数も規模も実際に拡大しているのを目にしています。これは期待できる状況です。

公開市場で発揮されている企業の透明性にはメリットがあると思います。なぜなら透明性こそが真に価値を持続させる方法だからです。非公開市場で実際に評価額Xを獲得した企業を調べたことがありますが、その評価額は、完全に透明性のある公開市場においては、同企業の決定的な価値を正しく反映するものではありませんでした。

現在、SPACの登場によりまったく新しい要素が入ってきています。

TC:SPACについてはどう思われますか。

これは半分冗談ですが、SPACを立ち上げたくなった場合に備えてLastround.comを所有しておこうとあらためて思いました(笑)。とはいえ、SPACの本当のメリットを知るのは難しいです。そして、資金調達要素をともなうダイレクトリスティング(直接上場)を認める方向に市場がシフトし始めた今、あなたはダイレクトリスティングの方がはるかに実行可能性が高く、頻度の高い資金調達または資金繰りの手段だと考えるかもしれません。

TC:SPACと比較して、ダイレクトリスティングのメリットは何だと思いますか。

ダイレクトリスティングの方が経済的だと思います。ダイレクトリスティングなら、キャップテーブル(資本構成表)の多くの部分をプロモーションに配分することはありません。[編集者注: SPACのスポンサーは通常、創業者株式を名目的な対価で取得し、発行済み普通株の20%を保有することになる。]ダイレクトリスティングは業績ベースのワラントではありません。はっきりと言えるのは、ダイレクトリスティングにおける実質的な作業は、企業にとって適切な市場清算価格を見つけることだけだということです。

ここ数年の変化を見ていると、なんとなく自分は[ダイレクトリスティングの提唱者である]Gurley(ガーリー)氏寄りだと思いました。

TC:ポートフォリオ企業が、SPACを使用して株式を公開することに興味があるかどうかを尋ねられた場合は…

実際に今、そのようなことが起きています。

TC:そのことについてどう思いますか。どのようにアドバイスしますか。

1つのことについて選択肢がないまま話し合うのは意味がないと思いませんか。腰を据えて、「何の解を求めようとしているのですか。流動性ですか。それとも資本増強、公共通貨ですか。最古参の従業員に流動資産と現金を提供して、彼らが会社にささげた時間の恩恵を受けられるようにすることはできますか」といった話をすべきです。あらゆる選択肢を検討する必要があります。選択肢を検討せずにSPACについて検討するのは意味がないと思います。また、ダイレクトリスティングを熟考しているのなら、SPACの利点や欠点も検討すべきです。

TC:四半期ごとのサブスクリプションベースで運用担当者がファンド投資家とディールフローをシェアできるローリングファンドについて、どう思われますか。

とてもクリエイティブだと思います。私自身もリミテッドパートナーとして、いくつかのローリングファンドに参加したことがあります。私が2004年にHoward Morgan(ハワード・モーガン)氏とファースト・ラウンドを創業したときには、どちらもいつまで続けるのかわかりませんでした。創業時には、3つの課題がありました。1つ目は「起業家ではなくVCであることを楽しめるか」、2つ目は「地理的ハンディキャップを克服できるか」でした。当時私たちはフィラデルフィアに住んでいましたが、出資していた企業の大部分は西海岸にあったからです。そして3番目の課題は「私はVCに向いているか」というものでした。従来型の資金調達には本当に苦労しましたが、資本市場では苦労知らずでした。また、この仕事を10年続ける、と最初からコミットすることはなかなかできませんでした。

FRC Iは、実際には1年ファンドを積み重ねたものです。当社は「2005年に投資して様子を見る。気に入ったら2006年にも資金を調達する。そして2007年にも同じことを繰り返す」というように、1年の期間で資金を調達しました。そして3年後、前述の3つの課題に対応できるという十分な自信を得たので、安心して10年間の任務に就くことができました。ですので、投資の分野でキャリアを積みたい人が、最初から10年契約を結ばなくても、キャリアを追求し模索できるようにすることは、本当に効果的だと思います。

TC:先ほどハワード・モーガン氏について言及されましたが、同氏はその後、投資会社Bキャピタルの会長になりましたね。VCの多くはアクティブに投資を行う立場から脱却しつつあります。ファースト・ラウンドの継承についてはどのようにお考えですか。ファースト・ラウンドは、今から20年後も存在すべきだと強く感じているブランドなのでしょうか。この業界は、個々のプレイヤーとドアの上の看板に重きを置く形で発展しているようです。

個人的にはすぐにどこかに行くつもりはありません。今やっていることが楽しいのです。当社には将来性を持つ非常に強いチームがあると思っています。当社は現在、積極的に新しいパートナーを探しています。ますます資本が調達しやすくなる世界で、何よりも差別化できるのはブランドだと思います。

ファースト・ラウンドをスタートした頃は、シードファンドがあまりにも少なかったため、Footlocker(フットロッカー、アメリカのスポーツ用品店)に入り、棚に並んだスニーカーを3足だけ見るようなものでした。創業者は3足すべてを試し、どれが合うかを確認してから選ぶことができました。しかし現在は、靴屋に入り、棚に並ぶ1000足の靴を見て、最初にどれを試せばいいのかわからなくなっている状態です。私たちは、これまで勝者を生む能力があることを証明してきたブランドこそが本当に重要だと信じています。例えば、Nike(ナイキ)の価値は、その製品から利益を得た企業家によって決まります。同じように、実のところブランドは今まで以上に重要になっていると思います。

TC:現在、新しいパートナーを募集していますね。スタートアップの世界のVCや起業家にとって多様性が明らかに大きな課題になっています。あなたのファンド内だけでなく、ポートフォリオ企業内でも多様性を促進するために、どんな取り組みを実施していますか。

当社は実際にパートナーの職務内容を掲載し募集をかけるという手段を取りました。大抵の場合、パートナーの採用活動は独自のネットワーク内で行われるからです。そのような方法は良くないと思います。他の3人の投資パートナー、Bill(ビル)氏、Haley(ヘイリー)氏、Todd(トッド)氏を見ると、彼らには以前ファースト・ラウンドの創業者だったという共通点があります。

そのため、自分たちのコミュニティの中だけで採用活動を行うのではなく、それ以上のことをしようとしていますし、採用活動をフェアでオープンなプロセスにしようと非常に熱心に取り組んでいます。私たちは、Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)のBrian Dixon(ブライアン・ディクソン)氏のブログ記事から強く影響を受けました。その記事の中で同氏は「自分のベンチャー企業の求人情報を公開しないのは、意図的に排他的になっているためだ。人はその存在を知らない仕事に就くことはできない」と述べています。

当社もディクソン氏と同じ意見です。それで、パートナーとなる有望な人材の新たなソースを見つけることに注力しており、会社全体で多くの取り組みを行っています。その一環として、先日、当社が提出するすべての条件概要書において有色人種の資金提供者や過小評価された資金提供者に対する配分が確保されるようにするための誓約書を作成して署名しました。このように当社は、事務所や会社内での多様性だけでなく、キャップテーブル(資本構成表)における多様性についても考えています。

さらに当社では多くのトレーニングプログラムも実施しています。また採用時に多様な人材パイプラインを構築することに注力できるよう新たな投資を行い、かなり強力なプロセスを用意しています。なぜなら、一般的にはネットワーク内から採用する傾向があるため、最初の10人を採用する時点で多様なチームを構築することに注力しなければ、多様性を拡大するのはますます困難になるからです。多様性が欠けた状態でスタートすると、後から苦労するだけです。

TC:ここ数年、シリコンバレーの文化について多くの問題が提起されてきましたが、投資家と、テクノロジーを取材するジャーナリストとの間で衝突することが急に増えたような気がします。なぜだと思いますか。

そのことについて私個人は特に深い考えはありません。以前は別個のエコシステムだったテクノロジーが、今ではあらゆるものに関与しているということを、私たちは目にしているのだと思います。医療テクノロジーは医療と同じようになり、消費者向けテクノロジーやソーシャルテクノロジーは世界の一部にすぎなくなりました。

これまでエコシステムに縛られていたであろうジャーナリストが、テクノロジーの世界で起きていることに今まで以上に懐疑的な目を向けなければならなくなったのは、当然のことだと思います。成熟段階にあるだけだと思います。テクノロジーは発達すればするほど、あらゆる業界を象徴する存在になっていくのではないでしょうか。近い将来、すべてのジャーナリストがテクノロジーを取材するのを目にする日が来ると思います。

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(翻訳:Dragonfly)

Facebook共同創業者サベリン氏が語る「シリコンバレー後のイノベーション戦略」

Eduardo Saverin(エドゥアルド・サベリン)氏が16年前、ハーバード大在学中に同学の学生たち4人と共同でFacebook(フェイスブック)を創業したことを、人々が忘れることはない(そのうちの1人が今でも同社を経営している)。

しかし、サベリン氏は、2009年にフェイスブックの所有株式を持ってシンガポールへ移住する前から、スタートアップへの投資に注目していた。そして、2015年からは、Bain Capital(ベイン・キャピタル)の元コンサルタント兼元副社長で友人でもあるRaj Ganguly(ラジ・ガングリ)氏と共同で創業したB Capital(ビー・キャピタル)での投資活動に集中的に取り組んでいる。

やるべきことはたくさんある。サベリン氏とガングリ氏は現在、3人のジェネラルパートナーと共に、4つのオフィスと2つのファンドで合計10億ドル(約1100億円)以上を扱っている。ちなみにこの2つのファンドはどちらも、経営コンサルタント大手のBoston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ、BCG)と提携している。実は、ビー・キャピタルは、BCGとの関係が深いこともあって、創業当時から、興味深いスタートアップやトレンドを世界中から探し出すことを経営理念としている。これは創業5年の企業としては異例のことだ。例えば、東南アジアで配達サービスを提供するNinjaVan(ニンジャ・バン)、ロサンゼルスを拠点とするスクーター会社のBird(バード)、ワシントン州のベルビューを拠点とする契約管理ソフトウェアメーカーのIcertis(アイサーティス)など、そのポートフォリオを少し見てみただけでも、どれほど広い範囲に網を投じているかがよくわかる。

TechCrunchは今年2月、ガングリ氏にビー・キャピタルのアプローチについて詳しく話を聞く機会があった。さらに先週、同社が中南米を拠点とするスタートアップ(Yalochat(ヤロチャット))への最初の投資契約を締結したことがきっかけで、サベリン氏にインタビューする機会があり、ビー・キャピタルの今後の成長について同氏がどう考えているか、詳しく話を聞くことができた。以下がインタビューの内容だ(長さの関係で一部編集してある)。

TechCrunch(以下、「TC」):ご出身はブラジルですね。

サベリン氏:はい、生まれも育ちもブラジルのサンパウロです。その後、欧米(最初はフロリダ州、続いて進学を機にボストン)に移住しました。現在はアジアに移住して10年以上になります。

TC:中南米企業に投資するのは今回のヤロチャットが初めてだということに驚きました。間違っているかもしれませんが、中南米で時間を過ごし、人脈を築いたことがきっかけになったのですか。

サベリン氏:良いことには時間がかかります。私の場合、エコシステムを理解しないと投資準備ができません。ビー・キャピタルは、本当の意味でグローバルな方法で長期的に投資したいと考えています。そして、1つの国や地域で創業して実績を積み、それを足掛かりとして世界へと拡大するという、ボーダーレスな世界での成長ビジョンを持つ起業家を探しています。ヤロチャット(メキシコシティを拠点とする会話型オンラインショッピングアプリ)の場合、中南米発のビジネスですが、すでにアジアに進出しています。そして、確実に世界の別の地域にも拡大していけるビジネスだと思います。米国企業や中国企業が世界展開する話は有名ですね。ならば中南米企業やアフリカ企業にも世界展開は可能だ、というのが当社の考えです。

私自身も中南米出身で、米国に移住したことがあり、現在はアジアに住んでいます。この経験を通して、世界は同じではないと気づかされました。ビー・キャピタルは会社として「グローバル・ファースト」の方針を持ってはいますが、すべての国や地域が同じだと考えているわけではありません。それぞれの地域における物事の動き方とビジネスの進め方を学び、それに順応し、スキルを磨いて熟達していく必要があります。それが当社の経営理念です。そのため、世界のどこでもすぐに投資を始める、ということはしてきませんでした。

TC:先日ガングリ氏にインタビューさせていただいたとき、ビー・キャピタルは米国内では投資先を探していないのに、現在の投資先の1つに、シリコンバレーにビジネス開発マネジャーと少数のスタッフを置いているスタートアップがあるとお聞きしました。ガングリ氏によると「より高い評価を得るため」とのことでしたが、他の共同創業者も同じようにしているのですか。そもそも、そのようなことは必要なのでしょうか。

サベリン氏:シリコンバレー後のイノベーション戦略については、社内でもよく話題になります。しかしそれは、シリコンバレーを無視すべきであるという意味ではありません。ただ、シリコンバレーは長年にわたりイノベーションの聖地として必要以上にあがめられてきたと思います。起業家にとって非常に重要で、今後も大きな役割を担い続けるシリコンバレーを無視することなんてできません。そのため、ビー・キャピタルはシリコンバレーから完全に目を背けることはしません。ただ、いつまでもシリコンバレーが頂点に君臨し続けるわけではないことを認識することが重要だと考えています。これは、シリコンバレーが衰退していくという意味ではなく、世界の他の場所が台頭してくるという意味です。

シリコンバレーにオフィスを置くべきかどうかという点についてですが、特定のビジネスにとって必要なのであれば絶対にそうすべきです。シリコンバレーは巨大なイネーブラーですが、同時に難しい面もあります。例えば、人材を探している場合、シリコンバレーでは潤沢な資金を持つ企業との奪い合いになります。これは当社が投資している欧州企業の実例ですが、自律運転技術を開発するその企業が人材を探す場合に、欧州とシリコンバレーではどちらが目的を達成しやすいか、かかる費用はどれくらいか、ということを比較検討し、ビジネスを動かすのに必要なボトムラインについて考えると、当然のことながらエンジニア系人材の大部分は創業地である欧州に置くべきだという結論に達します。しかし、この企業はシリコンバレーにオフィスを置いています。その理由は、才能やスキルセットを持つ人材に対して影響力を持つ非常にユニークなエンジェル投資家がシリコンバレーにいるからだと思います。

TC:ビー・キャピタルはかなり大きな会社ですが、巨大な企業というわけではありません。世界中にいる創業者とどのようにスムーズにやり取りするのですか。例えば、ビー・キャピタルは欧州にも中南米にもオフィスを置いていません。この状況は今後変わる予定ですか。

サベリン氏:確かにビー・キャピタルは(欧州にも中南米にも)いわゆる専任スタッフを置いていませんが、それは、パートナーシップベースのアプローチを取っているためです。例えば、当社の主要パートナーの1つであるBCGは中南米各地にオフィスがあり、地元に密着しています。そこから投資案件を紹介されたケースも多々あります。

もっと広い意味で言うと、投資先が見つかる方法はさまざまです。当社と付き合いのある創業者が知り合いの創業者や投資家を当社に紹介し、そこから投資案件が生まれる場合もあります。

TC:ヤロチャットに関心を持った理由は何ですか。

サベリン氏:ヤロチャットはメッセージング業界だけでなく、大企業のイネーブラーになることを目指している企業で、それはビー・キャピタルが真剣に注目してきたモデルでもありました。アジアには、メッセージングアプリと会話型オンラインショッピングのおかげで大企業が今までにない方法で消費者と関わることができるようになっている事例がたくさんあります。このパターンを、メッセージングアプリの利用者が多い世界の他の地域や、中南米の経済国でも展開できないかと考えるようになりました。

例えばブラジルの場合、フェイスブックの利用者数がインド、米国に次いで世界第3位という、巨大なソーシャルメディア市場があります。非常に大きなメッセージングアプリ市場があるということです。

TC:中南米以外で会話型オンライショッピングアプリ事業に投資したことはありますか。

サベリン氏:いいえ、ありません。1つのカテゴリーにつき1社に投資して、その企業が世界展開できるように支援するのがビー・キャピタルの方針です。

TC:でも、ビー・キャピタルは、それぞれの市場の特性が大きく異なるという理由で、2社のスクーター企業(米国のバードとインドのBounce(バウンス))に投資していますね。これは例外ですか。ローカル企業に投資する方が合理的な場合もあるのでしょうか。

サベリン氏:この例に限って言うと、新しいモビリティソリューションのイネーブラーについて社内で話し合っていたときに、インドが抱える問題と必要とされるソリューションは、バードが先進国で解決している問題とは大きく異なると考えました。バードはほぼ世界全域に展開できる企業だと思いますし、グローバルに展開できる能力があることをすでに証明しています。しかしインドのバウンスの場合は少し異なる方程式が必要になりました。なぜならバウンスは非常に低コストのサービスを提供することで公共の交通機関になることを目指しており、それを、数十年にわたって使用され、その有用性が証明されてきたなじみ深いVespas(ヴェスパ)や二輪車タイプのスクーターを使って実現しようとしています。バードとバウンスは、提供するサービスの価格が大きく異なるまったく別のタイプの企業であり、これ以上なく補完し合える関係にあると私は考えています。

TC:ビーキャピタルはインドとインドネシアで数多くのフィンテック企業に投資していますが、銀行・金融サービスがまったく、もしくは十分に受けられない人がインドやインドネシアのように大勢いる中南米ではフィンテックへの投資にさらに力を入れる計画のようですね。このような好機を捉えるために、BCGとの関係はどの程度重要だと思われますか。

サベリン氏:ビー・キャピタル社内に大きなチームを置く予定ですが、イネーブラーとなるのは、当社のスタートアップが他社と関係を築けるように助けてくれる、BCGをはじめとするパートナー企業との関係です。考えてみると、ここ数十年間は消費者インターネットを普及させることに注意が向けられてきた時代でした。次の数十年は従来型の巨大な業界をどのようにデジタル改革していくか、という時代になると思います。フェイスブックやGoogle(グーグル)がはじめに取り組んだ業界、つまり広告業界よりもはるかに大きい業界です。医療、金融サービス、物流、技術イノベーションなどの大型業界に比べれば、広告業界がGDPに占める割合はほんのわずかです。

起業家は、自分が起業する分野に属する大企業と提携せず、大企業ならではの流通網、規制ノウハウ、資本力を活用せずに起業することを考えるべきでしょうか。確かに、物事を進めるスピードは、スタートアップと大企業とでは大きく異なります。しかし、ビー・キャピタルは、業界間の翻訳エンジン、パートナーシップエンジンとなって、ウィンウィンの関係を構築することを目指しています。

これは、学生が寮の部屋にこもって「イノベーションのさらに先を目指し」、世界的大企業を追い抜くという話ではなく、多くの場合は「大企業の資産や流通網、規制対策の実績を活用した方が速いスピードで目的を達成できるだろうか」と考える、という話です。ビー・キャピタルはイノベーションを引き起こそうと努めていますが、ディスラプション(創造的破壊)だけではなく、もっとポジティブでニュートラルな改革を引き起こすことを考えています。それが成功へのヒントになるかもしれません。ただし、語り継がれるようなサクセスストーリーがいつも生まれるわけではありません。でも、イノベーションが(消費者インターネットではなく)従来型の大型業界を変革していく様子が見られるようになれば、それが成功への重要な鍵となるでしょう。

関連記事:プログラミング本で有名なオライリー氏「一獲千金を目指すベンチャー投資は有害無益」

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(翻訳:Dragonfly)

プログラミング本で有名なオライリー氏[一獲千金を目指すベンチャー投資は有害無益

Tim O’Reilly(ティム・オライリー)氏には、投資家が投資額の何倍ものリターンを期待して初期段階のスタートアップに賭けるような従来型のVCモデルにダメ出しをするビジネス上の動機がある。アーリーステージのスタートアップに特化したVCであるO’Reilly AlphaTech Ventures(オライリー・アルファテック・ベンチャーズ、OATV)で長年にわたりオライリー氏の投資パートナーとして活動しているBryce Roberts(ブライス・ロバーツ)氏が今、OATVの投資先を選ぶ際にいわゆるハイリスクの企業を避け、すでに収益を上げているが必ずしもブリッツスケール(極めて短期間での爆発的な規模拡大)を目指してはいない会社を米国全土から探し出して投資する方向に意識的に舵を切っているのだ。

しかし、TechCrunchが先週実施したインタビューの中でオライリー氏が語った、純粋に持続可能なビジネスを築こうとする創業者が増える中でベンチャーキャピタルが今のまま投資を続ける意義が薄れ始めている理由は、非常に説得力があるものだった。オライリー氏によると、今のベンチャー業界は、いつか世界を変える可能性を秘めた中小企業を発掘することよりも、富裕層が資産を運用して増やすための金融商品のような感覚で投資を行うことに力を注ぐようになっており、この変化が実際に悪影響を及ぼし始めているという。

今回のインタビューの中から、新規でVC資金調達あるいは追加調達を検討している読者や、VCから出資を断られて綱渡りをするような危機を経験したことがある読者にとって興味深いと思われる部分を以下に抜粋してみた。いずれにしても、42年前に自身もO’Reilly Media(オライリー・メディア)を立ち上げ、今や年間収益が数億ドル規模の企業になるまで成長させた実績を持つオライリー氏の言葉は大いに参考になると思う。

TechCrunch:今年は多くの企業がジューンティーンス(奴隷解放日)を祝いました。これは大きな出来事です。これまでベンチャー業界におけるインクルージョンの推進について多くの議論がなされてきました。実際には、ベンチャー業界のインクルージョンはどの程度まで進んでいる(あるいは進んでいない)のでしょうか。

ティム・オライリー氏:VC、さらにはテック業界全体について言えるのは、この構造的な人種差別の概念は本当に問題だということです。人は「自分は良い価値観を持っているし、悪いことをしたいとも思わない。慈善団体に寄付もしている」、だからそれで十分だと思っていて、問題の根源となっているシステムを修正しようとはしません。

VCが起業家たちを探し出してくるネットワークは今も昔もあまり変わっていません。さらに重要なのは、VCモデルの目標も変わっていないという点です。VC業界には目標があり、それはある特定の財務状態の形をとるのですが、これが本質的に排他的なのです。

なぜそう言えるのですか。

典型的なVCモデルでは、大きく成長する可能性とイグジットできる見込みのある企業を探します。IPOや買収から得られる巨額の財務リターンを求めているからです。すると、創業者は特定のタイプに限定されてしまうのです。私の投資パートナーのブライスは前々回のファンドから、キャッシュフローと収益を確保して持続可能なビジネスを構築しようとするライフスタイル系企業のような、過小評価されている企業を探すことにしたようです。そのような中小企業も、それを創業する起業家も米国から消えてしまいました。VC業界がベンチャー投資を富裕層向けの金融商品のように扱ってきたことがその一因です。

ブライスはある種の「SAFE(将来株式取得略式契約)」を考案しました。ベンチャー企業が十分に収益を上げられるようになったら、創業者は事前に同意された額でそのベンチャー企業をバイアウト(企業売却)できるというものです。ただし、同時に他のオプションも用意されています。一部の創業者はロケットのように電撃的な大成功を収めることがあるからです。しかしこれは、創業者がひたすら走り続けたあげくに使い捨てにされるという意味ではありません。

「持続可能な事業を行う企業を探す」と言って米国全土を探し回ったブライスは最終的に、半分以上が女性創業者、30%が有色人種創業者というポートフォリオを構築することができ、これが素晴らしい投資戦略となってきました。

それは、シリコンバレーの典型的な高度成長VCモデルに該当する企業を経営することはアフリカ系アメリカ人や女性には不可能だ、ということではないですよね。

もちろん、そんなことはありません。そうした人たちも高度成長VCモデルに該当する企業を経営することは可能です。ただ、シリコンバレーの外に目を向けると、本当に大きな人材プールが存在していることに気づきます。シリコンバレーにはある種のブロカルチャー(体育会系的男性優位主義)があり、その文化に馴染めないと(何かしら解決策が見つかる場合もあるとはいえ)、いろいろな障害にぶつかることになります。これが構造的な人種差別です。

先ほどおっしゃった、ネットワークが閉鎖的であるという点についてですが、有名な黒人ベンチャー投資家のCharles Hudson(チャールズ・ハドソン)氏が、従来型VCの多くは日常生活やビジネスライフの中で黒人と付き合いがなく、そのことが投資先の企業を発掘する際に障害となっていると指摘しています。ブライス氏はそうした付き合いに必要な人脈をどのようにして築いたのでしょうか。従来型のVCも今、ブライス氏のように人脈を広げる方法を探っているようですね。

シリコンバレーの地理的な孤立主義を壊すことです。「この特定のプロフィールに一致する企業だけが投資に値する」というシリコンバレービジネスモデルの孤立主義を壊すのです。ブライスはシリコンバレーを出て「有色人種の起業家を探しているんだが」などと言ったわけではありません。そうではなく「米国内のさまざまな場所でさまざまな種類の投資がしたい」と言ったのです。そうしたら、米国が持つ多様性を反映する起業家たちが自然に見つかりました。

われわれが考えなければならないのはその点です。「この壊れたシリコンバレーのビジネスモデルの中に黒人やブラウン人種の創業者を入り込ませるにはどうすればよいのか」ではなく、「彼らのコミュニティでビジネスを成長させるにはどのような機会を提供することが有益なのか、どうすればそれを把握できるのか」ということを考える必要があるのです。

リミテッドパートナー(LP)はこのようなモデルに興味を示していますか。このモデルにはLPの出資に見合う成長を遂げる可能性があるのでしょうか。

この新しいモデルに注力した4号ファンドでは少し苦戦しました。3号ファンドの3分の1の資金しか調達できませんでした。しかし5号ファンドでは、資金調達は大成功すると思います。このモデルの価値が証明されたので投資希望者が殺到しています。

実名は挙げませんが、このポートフォリオには同業種の企業が2社あります。1社は3号ファンドで出資した企業で、従来のシリコンバレー型投資でした。もう1社はシリコンバレーからはるか遠く離れたアイダホ州の会社です。最初の企業には、従来のシードラウンドを経て最終的に25%の持ち分で250万ドル(約2億6900万円)を出資しました。アイダホ州の企業には25%の持ち分で50万ドル(約5386万円)を出資しました。この企業は現在、先ほどのシリコンバレー型投資の企業に比べて2倍の規模まで拡大しており、非常に速いスピードで成長しています。

つまり現状では、従来のシリコンバレー型ベンチャー企業よりもうまくいっているということですね。

先ほども言いましたが、私はシリコンバレー型の投資に長い間幻滅していました。2008年のリーマンショックに向けて暴走していたウォール街を思い出すんです。彼らは「この債務担保証券(CDO)が売れさえすれば、それでよい」と考えます。誰も「これは良い製品なのか」などとは考えていない。

VCが創り出したものの大半は、CDOのような金融商品、つまり資産を増やすための道具です。「この企業は顧客からの収益で生き残っていけるのだろうか」とは考えません。投資案件の要はイグジットが達成できるかどうか、それだけです。そのために利用できる創業者が見つかればそれでよいと考えているのです。例えば、多くの買収が失敗に終わっていますが、VCは満足している。なぜだと思いますか。イグジットは達成できたからです。

しかし、今は非常に短期間で資金が調達されるため、VCはより大きなトラクション(牽引力)を示す必要があります。それでブリッツスケールなどの手法が登場していますね。

ほら、その質問の仕方です。何かがおかしいのですが、気づきませんか。すべてVCのため、なんですよね、VCがトラクションを示す必要がある、と言っている。起業家ではなくてね。

でも、LPはそのトラクションに夢中になっていませんか。LPは即効性のある財務的トラクションを求めていますよね。

そうですね。ですが、VCのリターンはもう40年間も公開市場に追いついていない。宝くじみたいなものです。唯一の確実な勝者はVCです。VCはファンドの資金を回収できなくても、運用報酬を毎年受け取れますからね。

巨額のVC資金が回収されずに終わっています。誰もが一獲千金を狙っているのです。確かに、それができればすばらしいでしょう。でも、めったに起こらないその大勝利のためにあまりにも巨額の投資が行われ、その他の投資に回す資金がなくなってしまっている。社会への利益還元のためではなく、財務リターンを最大化するためにビジネスが組み立てられており、それが社会の構造的不平等につながっています。

関連記事:アップルのフィル・シラー上級副社長は「アプリ内課金を回避したHEYアプリの削除後もApp Storeのルールを変える予定はない」と説明

カテゴリー:VC / エンジェル

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(翻訳:Dragonfly)

Apple上級副社長へインタビュー: 「HEYアプリへの対応もApp Storeのルールも変える予定はない」

TechCrunchは米国時間6月18日、Basecamp(ベースキャンプ)がiOS App Storeで販売しているHEY Emailアプリの件について、Apple(アップル)のPhil Shiller(フィル・シラー)上級副社長に電話取材を行った。取材の中でシラー氏は「問題のアプリが今のままApp Storeで販売を続けることを可能にするようなルール変更を行う予定はない」と語った。

「現時点で、App Storeに関して変更を検討しているルールはない。App Storeの現行ルールの範囲内でこのアプリを機能させるために開発者にできることはたくさんある。それをぜひ行っていただきたい」とシラー氏は言う。

HEY Emailアプリに対するAppleの対応に世界中が注目している。HEY Emailアプリの完全版の利用料金をアプリ内課金ではなくHEY(ヘイ)のウェブサイト経由で支払うようにしたことを理由に、App Store審査の初期承認をすでに受けていた同アプリのアップデートがApp Storeによって繰り返し拒否されていたことを、2人の創業者David Heinemeier Hansson(デヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)氏とJason Fried(ジェイソン・フリード)氏を含むベースキャンプの開発者たちがツイートしたためだ。

HEY Emailアプリは現在、App Storeからダウンロードするだけでは使うことができない。ヘイのウェブサイトでサブスクリプション料金を支払ってはじめて使えるようになる。

「ユーザーがアプリをダウンロードしただけではそのアプリが機能しないのは、われわれの望むことではない」とシラー氏は語り、アプリ外にあるのと同じ決済機能をアプリ内でも利用できるようにすることをApp Store登録の条件にしているのはそのためだ、と説明した。

誤解のないように言うと、HEY EmailはApp Storeに登録されている大半のアプリに課されているルールに違反している。このルールの例外は、音楽、書籍、映画など特定の外部コンテンツを表示するための「リーダー」と呼ばれるアプリと、エンドユーザーではなく組織や企業を対象とする一括購入料金オプションのみを提供しているアプリだけである。

シラー氏はTechCrunchの電話取材に対し、HEY Emailはそのような例外アプリではない、とはっきり答えた。

Nextflixをはじめとする「リーダー」タイプのアプリについてシラー氏は「例外アプリとしての扱いはすべてのソフトウェアを対象としたものではない」と語り、「メールアプリが例外として認められることはなく、これまでも認められた前例はない」と説明する。

実は、HEY EmailのMac用アプリは、現在iOS用アプリがApp Storeで警告されているのと同じ理由ですでに拒否されている。iOS用アプリのオリジナルバージョンは誤って承認されただけであり、そもそもApp Storeに公開すべきではなかった、とシラー氏は言う。

そうなると問題は、現行のApp Storeルールを専門的に分析すればHEY EmailがApp Storeから削除されずに済む方法が見つかるのか、ということではなく、そもそもアップルの対応が妥当なのかどうか、という点になる。

私はシラー氏に、アップルは、App Storeにアプリを公開しているすべての企業から、その企業がiOSファーストであるかどうかにかかわらず、収益の一部を受け取る権利があると考えているのか、と質問してみた。

「そう質問したくなる気持ちはわかるが、われわれはそのように考えているわけではない」とシラー氏は答えた。

現行ルールの範囲内でApp Storeでの公開を継続させるためにベースキャンプが導入できたであろう決済方法はいくつもある、とシラー氏は語り、実際に「アプリ内とウェブサイトで異なる料金を課金する」、「追加機能付きの無料版を提供する」などの方法を例として挙げてみせた。

とはいえ、ユーザーに課金するデジタルサービスを開発するのであれば、アプリのユーザー体験向上と決済システムの安全確保のために、アプリ内課金の仕組みとアップルの決済システムを使ってほしいと考えている、とシラー氏は語る。

シラー氏によると、HEY Emailは1つの方法として、まずは基本的なメール閲覧機能を持つアプリの無料版または有料版をApp Storeに公開した後で、そのiOS用HEY Emailアプリを使って利用できるアップグレードされたメールサービスをiOSまたはHEYのウェブサイトで提供することができたはずだという。さらに別の方法として、すべてのフィードを読み込むことも別サイトで課金できる有料フィードを読み込むこともできるRSSアプリを使う手もあった、とシラー氏は語る。いずれの場合でもApp Storeからダウンロードした時点ですぐに使えるアプリができたはずだ。

多くのユーザーにとってよりなじみ深い別の方法は、やはりアプリ内課金によって有料版にアップグレードできる無料版アプリである。

もちろん、残念なことに現行ルールの下では、ヘイはアプリ内で何らかのアップグレードサービスを宣伝することも、それに言及することさえもできないため、そのようなサービスはアプリ外のチャンネルで売り込むしか方法はない。

現在繰り広げられているこの議論についてTechCrunchのSarah Perez(サラ・ペレツ)が記事にまとめてTechCrunchウェブサイトに投稿したので、最新の情報を確認するためにぜひご一読いただきたい。そして、米国時間6月18日、Facebook(フェイスブック)のゲームアプリがルール違反を理由にApp Storeの公開承認を5回も拒否されていたことをThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)が報じた。こうしたニュースはすべて、アップルの開発者向けイベント「WWDC」が開催直前であるうえに独占禁止法違反の疑いでEU(欧州連合)がアップルの捜査を始めるのも目前という、まさに最悪のタイミングで飛び込んできた。

普段からアップルに関する記事を書く機会が非常に多く、App Storeに関するルールの個人的解釈のせいでアプリがアップルから拒否されるのではないかと舞台裏でいつも心配する開発者の姿をこれまで頻繁に目撃してきた者として、私はこの問題について自分なりに真剣に考えてきた。

個人的に、今回の件は、突き詰めるといくつかの明快な事実で成り立っていると思う。HEY EmailがApp Storeのルールに違反しているのは事実だ。つまり、問題は「HEYによる違反を正当化するためにはどのようにルールを歪曲あるいは拡大解釈すればよいか」ということではなく、「そもそもそのようなルールは存在すべきなのか」ということである。

アップルがこのような状況であえて地雷を踏むような対応をしているのは、自分たちは正しく公平なことを行っているという認識がアップル社内にあるからだと思う。App Storeというプラットフォームを作ったのはアップルなのだから、デジタル領域にも現実世界にも多大な経済的利益をもたらしているそのプラットフォームの収益を受け取る権利がアップルにはある。さらに、アップルが決済プラットフォームを管理することがセキュリティおよびプライバシー保護の観点から有益であることは疑う余地がない。

「でも確かにアップルは世間の反応を見て対応を変えている」と反応する人は、スケールの力を過小評価していると思う。アップルは毎週10万件ものアプリを承認しており、承認が拒否される理由のほとんどは簡単に修正可能な問題によるものだ。大海原に白く砕ける波がちらほら見えると、どうしても海より波の方に目が行ってしまう。それと同じように、メディアも承認が拒否されたアプリにばかり注目する。アップルが持つスケールの大きさが世間の見方を組織とそれをリードする人々に都合のよい方向に曲げてしまうことがしばしばある。

だが私はこの件について以下のように感じており、そこには世間一般で見落とされがちな点が含まれているように思う。

  1. App Storeに対する嫌悪感や苛立ちを自分の中に鬱積させる人が増えている気がする(私の情報筋のみならず他の記者の情報筋もこれが事実であることを裏付けている)。人々がその感情を表に出さない理由は、そうする度胸がないことと、App Storeには存続してもらう必要があるためだ。
  2. 誰に批判されるかによって反応が大きく異なる場合がある。ハンソン氏は声高に不満を叫ぶ面倒な人物かもしれないし、あんな意見の伝え方では言われた方も聞く気が失せるだろう。しかし、変化と自省のきっかけになるのは、何も友人や仲間からの言葉だけではない。そして、怒りに燃えて不親切に見える人から発せられた助言を当てはめて変化するのは、2倍辛い。しかし、そのような人の意見こそが正しい場合もある。

青臭いことを言っていると思われるかもしれないが、アップルはその偽りのない誠実な価値観を、大企業として他に類のない真に独特な方法でビジネスにおいて実践していると私は感じている。この意見に同意できない人がいくらかというよりも大勢いることはわかっている。しかしこれは、長年にわたってアップルへの取材を重ねる中で数えきれないほどの役員やあらゆる部署・役職の社員と公私にわたって実際に会って話してきた私が目撃してきたことである。John Gruber(ジョン・グルーバー)氏が書いているように、「われわれは正しいことをしている」という論点を「何が正しいことなのか」という論点にすり替える無駄な努力に意味があるとは思えない。

この電話取材の直前に、TechCrunchはアップルから1通のレターを受け取った。アップルがフリード氏とヘイに宛てて書いたレターと同じものだ。

このレターでは、ヘイがApp Storeの現行ポリシーに違反しているというアップルの主張が繰り返されていた。以下はその抜粋だ。

「iOS用Appを開発してくださり感謝いたします。App審査委員会は、ベースキャンプがこれまで長年にわたり数々のAppとその後継バージョンを開発してApp Storeで提供してくださり、そしてApp StoreがそうしたAppを幾百万ものiOSユーザーに配布してきたことを理解しています。これらのAppではApp内課金の機能が提供されていません。結果として、過去8年間にわたりApp Storeには何の収益ももたらされませんでした。現行の『App Store Reviewガイドライン』とすべての開発者に順守が義務付けられている条件を貴社が順守してくださる限り、App審査委員会は今後も貴社のAppビジネスを支援させていただきたいと考えており、貴社のサービスを無料で提供するためのソリューションを提案させていただく所存です。

この文面からわかるとおり、今のところアップルの姿勢が変わる気配はない。

以下がこのレターの全文である:

ジェイソン・フリード様

貴社のAppであるHEY Emailに関する申し立ての審査結果についてご報告いたします。

App Review Board(App審査委員会)は、貴社のAppについて審査を行った結果、先日の承認拒否は有効であると判断いたしました。貴社のAppは、下記に詳述するApp Store Reviewガイドラインに抵触しています。お気づきのとおり、HEY Emailが2020年6月11日にMac App Storeに提出された際に拒否されたのも同じ理由によるものです。

HEY EmailはApp Storeにおいてメール用Appとして提供されていますが、ユーザーが同Appをダウンロードしても使うことができません。ユーザーは、ベースキャンプのHEY Email用ウェブサイトでHEY Emailの使用ライセンスを購入するまでは、同Appを使うことができません。これは、App Store Reviewガイドラインに記載されている以下の条項に違反します。

ガイドライン 3.1.1 – ビジネス – 支払い – App内課金

Appのコンテンツまたは機能をリリースするには、App内課金を使用していただく必要があります。貴社のAppでは、ユーザーはコンテンツ、サブスクリプション、機能をアプリ外で購入することが必要ですが、そうしたアイテムをApp Store Reviewガイドラインに従ってApp内でApp内課金を使用して購入できるようになっていません。

ガイドライン 3.1. 3(a) – ビジネス – 支払い – 「リーダー」App

リーダーAppは、ユーザーがApp外ですでに購入したコンテンツやコンテンツのサブスクリプションにApp内からアクセスできるようにするものです。貴社のメール用Appは「リーダー」Appに関するこのガイドラインの下で許可されているコンテンツタイプ(具体的には、雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、動画、プロ向けデータベースへのアクセス、VoIP、クラウドストレージ、授業管理Appなどの承認済みサービス)には該当しません。そのため、貴社のApp内でApp内課金を使用してコンテンツまたは機能へのアクセスを購入するオプションをユーザーに提供する必要があります。

ガイドライン 3.1. 3(b) – ビジネス – 支払い – マルチプラットフォームサービス

複数のプラットフォームで動作するAppでは、ユーザーは別のプラットフォーム上または開発者のWebサイトで入手したコンテンツ、サブスクリプション、機能にアクセスできます。ただし、そうしたアイテムをApp内のApp内課金アイテムとしても購入できるようにする必要があります。貴社のHEY Email Appでは、コンテンツ、サブスクリプション、機能がApp内のApp内課金アイテムとして購入できるようになっていません。実際のところ同Appは、ユーザーがベースキャンプのHEY Email用ウェブサイトにアクセスして無料トライアルを開始するか、意図された用途で同Appを使用するための別途ライセンスを購入するまで、メールや他のいかなる用途でもAppとして機能しません。

対策

この問題を解決するために、App Store Reviewガイドラインのいかなる条項にも違反しないように貴社のAppを修正していただくようお願いします。

App Store Reviewガイドラインを順守するよう貴社のAppまたはサービスを修正する方法はいくつもあります。これまでにコンテンツ、サブスクリプション、機能をApp外で購入したユーザーは、App内でも引き続きこうしたアイテムを利用できます。ただし、App Store Reviewガイドラインに従って新規のiOSユーザーがApp内課金を使用してアクセスを購入するオプションが提供される場合に限ります。

貴社がユーザーにApp内課金のオプションを提供することを希望しない場合は、提示されているApp機能のとおりに、標準的なIMAPとPOPのメールアカウントを使用するメールクライアントとしてAppを提供し、ユーザーが任意でメールサービスプロバイダーとしてHEY Emailサービスを使う設定ができるようにすることも可能です。これにより、コンテンツや機能を使用するためにユーザーが追加の支払いを行わなくても、同Appはメールクライアントとして機能します。このアプローチでは、貴社が貴社のWebサイトで販売するメールサービスは、App Storeで提供されている貴社のAppとは明らかに別のメールサービスとなります。

App審査委員会は、貴社がこうした方法や別のアイデアを活用し、HEY Email AppをApp Store Reviewガイドラインに準じたものにするために役立つ情報を提供したいと考えています。

iOS用Appを開発してくださり感謝いたします。App審査委員会は、ベースキャンプがこれまで長年にわたり数々のAppとその後継バージョンを開発してApp Storeで提供してくださり、そしてApp StoreがそうしたAppを幾百万ものiOSユーザーに配布してきたことを理解しています。これらのAppではApp内課金の機能が提供されていません。結果として、過去 8 年間にわたりApp Storeには何の収益ももたらされませんでした。現行の『App Store Reviewガイドライン』とすべての開発者に順守が義務付けられている条件を貴社が順守してくださる限り、App審査委員会は今後も貴社のAppビジネスを支援させていただきたいと考えており、貴社のサービスを無料で提供するためのソリューションを提案させていただく所存です。

App審査委員会は、貴社がHEY Email AppをApp Storeで提供できるよう、今後もサポートさせていただきたいと考えております。

どうぞよろしくお願いいたします。

App審査委員会

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カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Apple App Store インタビュー

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(翻訳:Dragonfly)

米ベストセラー作家が語る、テック業界における人種差別

「多くの人がテクノロジーの分野における人種と人種差別について話すことの価値を過小評価しています」。そう話すのは『So You Want to Talk About Race』の著者、イジェオマ・オルオ氏である。この本は、2018年1月の初版発行から2年半で、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストのペーパーバック・ノンフィクション部門でトップに躍り出た。「人種や人種差別について話すのに、テクノロジーほど重要な分野はないと思います」と同氏は続けた。

オルオ氏と私がOne Cup Coffeeで話をしたのは、世界的パンデミックが発生する直前の1月のことだ。教会と店先を共有するこのOne Cup Coffeeは、メタドンクリニックのすぐそばにあり、余分なサービスを提供せずに「単なる利益以上のもの」を追求するコーヒーショップである。このカフェは、ワシントン州シアトルのすぐ北に位置するショアラインにあるオルオ氏の自宅からほど近い場所にある。

「私はWeb上で、アメリカにおける人種と人種差別に関する最高と最悪を見てきました」とオルオ氏は続ける。「私と私が愛する人たちは、Web上で実際に影響を受けてきました。(インターネットは)対面の空間と同じくらいリアルな空間です。私たちは、互いの見方や付き合い方がインターネットによってどのように影響を受けるか、そして不平等と不公正の問題にどう対処するかについて、必ず政治的、社会的に考えてみる必要があります」

私はシアトルの高級住宅地で、拡張を続けるAmazon(アマゾン)本社キャンパスについて調査してきた。同社のキャンパスは、建物の豪華さという点で、私が牧師として勤務するハーバード大学とMITの2つのキャンパスを凌駕している。その高級住宅地からショアラインまで車で移動するには、おそらく今まで見た中で一番大きなホームレスの野営地のすぐ近くを通らなければならなかった。私は、宗教がそれぞれ異なる学生たちで構成されるグループを率いて、ホームレスの大規模な野営地で勉強やボランティアを行ったことがある。

宗教と信仰についていえば、オルオ氏との90分間にわたる会話は、無神論者、不可知論者、および信仰心を持たずに善を行い有意義に生きようとする人たちによる半組織化された運動である「ヒューマニズム」への共通の関心をきっかけとして始まった(主な内容は以下に記載している)。私はハーバード大学とMITでヒューマニズムに基づく牧師として勤務しており、宗教に代わる一種の世俗的な選択肢としてヒューマニスト哲学について執筆している。

オルオ氏は、2018年にアメリカのヒューマニスト協会からフェミニストヒューマニズム賞を受賞した。同氏は、観衆のほとんどが自らを聡明で寛大だと考えがちな白人リベラル派という中で受賞スピーチを行った。彼らは黒いテーブルクロスの上の白い皿に盛りつけられた鶏の胸肉を食べながら、ロールパンとバターを忙しく回し、誤って水飲みグラスをカチンと鳴らしていたとき、同氏が「腰を下ろしてください」と言ってスピーチを始めてもうまく受け流していた。しかし、オルオ氏が「私が皆さんに求めるのは、他人がもたらす害をいつも探すことではなく、自分がもたらす害を探すことです」と話したとき、私の友人Ryan Bell(ライアン・ベル)が当時ツイートしたように、「そこは水を打ったように静まりかえった」。

ここで今年の1月に話を戻そう。コーヒーと紅茶を飲みながら、私はTechCrunchの「Ethicist in Residence(倫理学者・イン・レジデンス)」として1年余りにわたって執筆してきた論文についてオルオ氏に話した。その内容は、私たちが「テクノロジー」と呼ぶ世界はどの業界よりも大きく成長し、単一の文化よりも大きな影響力がある。テクノロジーは世俗的な宗教となった。おそらく人間がこれまでに作った最大かつ最も影響力のある宗教である、というものだ。

以下に続く内容からわかるように、オルオ氏は親切にもこのアイデアを大目に見て楽しんでくれたようだ。そしてとっさに、考えられるいくつかのテクノロジーと宗教の比較について話してくれた。このような話だ。

テクノロジーと多くの宗教の根本的な共通点の1つは、少なくともアメリカでは、テクノロジーは白人男性が考えるユートピアであるということだ。テクノロジーにおいては特に、白人男性のユートピアビジョンに対するカルト的な支持があり、根本的に女性や有色人種の権限を奪い、脅かしている。

私は自分自身をこのテクノロジーという新しい宗教に対して不可知論者(必ずしも無神論者ではない)であると考えている。なぜなら伝統的信仰を見ようとしていた方法で(状況に応じて善と悪の両方を行えるものが入り混じったものとして)テクノロジーも見たいからである。しかし、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏やJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のような超億万長者の起業家がますます権力を強めるとき、ソーシャルメディアの誤った情報が民主主義の運命を左右する一方で人工知能が司法制度に介入するとき、そして現在のパンデミックによって私たちの生活がますますオンライン化するとき、私自身が「予言」と言っているものを見直さざるを得なくなるのではないかと思うことがある。注意を怠れば、テクノロジーは史上最も危険なカルトになるかもしれない。

以下のインタビューの前にもう少し詳しく状況を説明すると、オルオ氏と私はこの記事(原文)のタイトルを同氏の著書と同じタイトルである「So You Want to Talk About Race in Tech」にすることで合意した。同書はすでにヒットしていたが、George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の死を受け、今では全米で象徴的な地位を獲得している。

この記事は、私がTechCrunchのために執筆してきた約1年におよぶシリーズの最終回であり、テクノロジーの倫理における人と課題について詳細に分析する。これまで編集者と私は文字数15万にもおよぶ38の記事を作成してきたが、そのほとんどが、期せずしてテクノロジーの新たな世界の倫理を改革し再考するための取り組みを主導している女性と有色人種を紹介したものだ。

このシリーズでは、Anand Giridharadas(アナンド・ギリダラダス)氏とのインタビュー「Silicon Valley’s inequality machine」、Taylor Lorenz(テイラー・ローレンツ)氏とのインタビュー「the ethics of internet culture」、James Williams(ジェームズ・ウィリアムズ)氏とのインタビュー「the adversarial persuasion machine」を取り上げている。とりわけ、ジェームズ氏とのインタビューは、同氏の前雇用主Googleによる取り組みを取り上げたもので、これは私たちをひどく混乱させた。

シリーズの特集では、CEOと投資家が幼少期のトラウマを話したうえで、自らが生み出したものの道徳的価値について議論する。また、従業員ギグワーカーが、権力を握る雇用主について痛ましい真実を語る。さらにテクノロジーフェミニズム交差性社会主義に関する知見に加えて、業界における虐待荒々しい入国管理政策に立ち向かう勇敢な取り組みについても深く踏み込んでいる。

それではオルオ氏とのインタビューを紹介しよう。前述のとおり、このインタビューは現在の危機が発生する数週間前に行われたものだが、その内容は今こそ重要なものとなっている。自称「億万長者」の投資家であり、オルオ氏と同じ週に会ったもう一人のシアトル在住者、Nick Hanauer(ニック・ハナウアー)氏の言葉を借りれば、不満の矛先がいよいよアメリカの富豪に向けられた。端的にいえば、この国で白人の仲間や私が人種や人種差別について話すのは、人種差別に対して敏感だからでなく、この世界を「より良い場所」にするために行えるすべてのことをやりたいからでもなく、どうしてもそうしなければならないからである。Kim Latrice Jones(キム・ラトリス・ジョーンズ)氏が今の時代を象徴する自身の拡散動画で言っているように、「幸いにも、黒人が求めているのは復讐ではなく平等である」。

テクノロジーの世界ではおそらくいっそう、そう言えるだろう。今のところ私たちの近隣やオフィスがすべて文字通り炎上しているわけではないかもしれない。しかし炎上する可能性があるテクノロジーの世界は、失うものが最も多いのだ。テクノロジーは、新型コロナウイルス感染症やそうした不満による影響も受けることはない。もし黒人が今後数年間のうちに、テクノロジー業界でさらに持続可能な形の平等を実現できなければ、復讐が次のゴールポストになるかもしれない。そして復讐は正当化され得るのだ。

しかし私は、そこに向かいたい人は誰もいないと信じている。かつてMalcolm X(マルコムX)氏は、Martin Luther King, Jr(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)氏がバーミンガムの刑務所に収監されていたとき、Coretta Scott King (コレッタ・スコット・キング)氏を訪ねて次のように言った

キング婦人、キング牧師に話してくれませんか… 私は彼の仕事をもっと困難にするために来たのではありません。白人が別の選択肢は何かを理解すれば、キング牧師の話に耳を傾けてくれると思うのです。

現在では、MLKはほぼ文字通りの公民権運動の神になっているが、それは当然のことである。しかし私たちはいつか、願わくばこれから長く平和な時代の中で、少なくともキング牧師に匹敵するほどの影響力とインスピレーションを持つイジェオマ・オルオ氏の人生と仕事を、同氏の幾人かの仲間(その多くが黒人女性)と併せて振り返ることができるかもしれない。

一部の読者は、オルオ氏が伝えることを心ならず受け入れる必要があるかもしれないが、同氏のビジョンは今後数年間の成り行きに関するさらに楽観的な選択肢であることを覚えておいていただきたい。

では、オルオ氏に話を聞いてみよう。

編集者注:このインタビューは読者の理解を助けるための編集がなされている。

Greg Epstein(グレッグ・エプスタイン):これまで仕事においてどの程度テクノロジー業界に関わってきましたか。特に著書『So You Want to Talk About Race』が出版されてからはいかがですか。

イジェオマ・オルオ氏:私はテクノロジー産業の中心都市、シアトルで育った黒人女性として本書を執筆しました。執筆活動をする前は、テクノロジー業界で10年以上働いていました。つまり私の本は、人種や人種差別を超越したと考えられていながら明らかにそうではない環境、さらに有色人種、特に有色人種の女性が極めて少数派である環境によって大きく形付けられています。

そのため、テクノロジーについて語っていないときでも、本書の中ではテクノロジー業界が大きな存在感を放っています。なぜならテクノロジー業界の多くの人が、本書で使われている例の中に自分自身や同僚がいることを認識したからです。

私が行った講演の中で最も再生回数が多かった動画の1つは、おそらくGoogleで行ったものでしょう。テクノロジー業界の多くの人、特にここシアトル在住の人は、「ああ、彼女はここに住んでいるんだ。これを読んでみよう。人種や人種差別についていえば、今年はこの本を読むことにしよう」というように、すぐにこの本を読みました。

しかし私はテクノロジー分野に足を踏み入れるとき、この分野をリベラル派の白人優位の分野と同じように考えます。つまり私がその分野においてできることは非常に限られています。私ができる最大限のことは、その業界にいる最も少数派の有色人種が感じ、経験していることを補強することです。なぜなら私は、他の講演者では経験し得ないほどの少数派としての人生を生きてきたからです。

[テクノロジーに関連する本というアイデア]についても同様です。なぜなら私は黒人女性として、作家として、もしソーシャルメディアがなかったら、ソーシャルメディアにアクセスできなかったら、今の私はいなかったからです。

一方で、[ソーシャルメディアがもたらす]代償と、まさに同じこのソーシャルメディアで、テクノロジーを通じて、大きな場ではないにせよ、特に有色人種、有色人種の女性、LGBTQコミュニティを憎み、差別し、虐待する場が提供される方法については、議論する必要があります。

多くの人がテクノロジーの分野における人種と人種差別について話すことの価値を過小評価しています。私は人種や人種差別について話すのに、テクノロジーほど重要な分野はないと思います。私はWeb上で、アメリカにおける人種と人種差別に関する最高と最悪を見てきました。私と私が愛する人たちは、Web上で実際に影響を受けてきました。Webは対面の空間と同じくらいリアルな空間です。私たちは、互いの見方や付き合い方がWebによってどのように影響を受けるか、そして不平等と不公正の問題にどう対処するかについて、必ず政治的、社会的に考えてみる必要があります。

エプスタイン:非常にうまくまとめてくれました。テクノロジーは最高でも最悪でもあります。と言うのは、私はBlack Twitter(黒人ユーザーで構成されているTwitter)から非常に多くのことを学び、大きな力をもらいました。それからWhite Supremacist Twitter(白人至上主義のTwitter)もあります。またWhite Supremacist Lite Twitter(白人至上主義のライト版Twitter)のようなものもありますね。

オルオ氏:[テクノロジーを]宗教のように見るという[エプスタン氏の]話は興味深いですね。テクノロジーと多くの宗教の根本的な共通点の1つは、少なくともアメリカでは、テクノロジーは白人男性が考えるユートピアであるということだと思います。テクノロジーにおいては特に、白人男性のユートピアビジョンに対するカルト的な支持があり、根本的に女性や有色人種の権限を奪い、脅かしています。

エプスタイン:そのイメージが気に入りました。私とブレインストーミングをしていただけませんか。 テクノロジー業界の文化で見られる白人男性のユートピアビジョンには、どのような特徴があるのでしょうか。

オルオ氏:ユートピアはテクノロジー業界の文化の中心にいる白人男性の戦いの神話化から始まります。この考えでは、こうした男性はゼロからモノを築き上げた落ちこぼれで、孤立した存在です。また、行く手を阻む問題を解決しようとします。これが彼らのサクセスストーリー、エリートコースの驀進です。では、彼らの行く手を阻むものは何でしょうか。有色人種、彼らとベッドを共にしない女性、自動的に手に入らない人気と富、白人男性が持つスキルを誰が持っているかという判断基準で新しい階級構造から白人男性を遠ざけている古い階級構造でしょうか。

こうした考えを中心に作られた神話は非常にカルト的で非常に宗教的であるように感じます。この起源を伝える物語の一部始終は真実ではありません。

テクノロジーにおける最も大きな進歩の誕生に目を向けるなら、過剰な多くの権限があること、ルールがあるという考え、純粋に優れたメリットもあること、物事を変革するこの分野において出世するために行えることが見えてきます。そしてテクノロジーの分野で「採用基準はコーディングの腕前です」と言っているのは、実はこうした人たちです。このような人よりもうまく議論することができるでしょうか。

テクノロジー業界でまず行うことは、白人男性を根本的に中心に据えることです。そして目標は白人男性の昇進です。有色人種はそれをサポートすることも、模倣することもできます。あるいは彼らが克服すべき障害になることもできます。テクノロジー業界では誰もが成功できるという議論があります。そう言う人たちは成功への境界線をすべて取り払いました。しかし実際は自分たちの個人的な境界線を動かしただけで、有色人種と女性の境界線はすべて残したままにしています。起源を伝えるこの物語では、有色人種と女性は道具として存在しているに過ぎないからです。

私が笑ってしまうのは、教義の中でテクノロジーと同じくらいよく語られるのは変化と適応であるということ、彼らが実際の変化、特にイデオロギー的な変化に対してどれほど徹底して閉鎖的かということ、室内を見渡して自分と同じような人がいないことをどれほど恐れるか、そして物事を徹底的に突き止めて、これはうまくいっただろうかと尋ねることをどれほど怖がっているかという点です。

現在テクノロジー業界の多くの人が革新的と呼んでいるものに、革新的なものはありません。そして「私たちは、2000年前のルールにまだ固執しているのか。変化と進歩をまだ恐れているのか」といった、人々が組織化された宗教に対して抱く多くの不満は、すでにテクノロジー業界でも見られています。そして[テクノロジーのリーダーが]「いえいえ。これは従来どおりの方法です」と言っているのを目にすると心配になり、この業界はどれほど新しいのだろうかと考えます。

それでは変化が入り込む余地はどこにあるのでしょうか。私たちは試作段階を続けながら、「これは従来どおりの方法です」と言っているのでしょうか。この20年~30年間は何だったのでしょう。おかしな話ですよね。

しかし、白人男性が[ここ20~30年間の現状を]擁護するときの情熱、また変化に対する脅威を語る様子は、宗教的な情熱、インターネットを立ち上げた同じ情熱があることを目にしてきました。宗教を超えた人々についてもそう言えます。

エプスタイン:テクノロジー業界における自身の仕事について、どの程度まで公に話したり書いたりしていますか。

オルオ氏:私は[テクノロジー業界での自分の経験については]あまり書きません。私の著書には、仕事についての逸話が多少含まれています。仕事について書くときは、テクノロジー業界について書いている可能性がありますが、具体的ではありません。

間違いなく言えることは、私はこれまでの人生で、テクノロジー業界で働いていたときほどセクシャルハラスメントを受けたことがないということです。テクノロジー業界にいたときほど、自分の人種について、そしてそれが自分のキャリアに役立つか妨げとなるかについて、あからさまな非難を受けたことはありません。私は「黒人だから昇進したと思っているのか」と面と向かって言われたことがあります。

私はテクノロジー業界にいたときほど部外者であると感じたことはありません。テクノロジー業界は、すべてを理解しているように見せかけるのが好きなので、ガスライティングがひどく横行している環境なのです。

私は人種や性別に厳しい職場で働いたことがあります。そうした職場において、習得する内容を知っていることは、明らかにいらだたせる行為です。私は自動車業界で働いていました。私はそこで習得したことを知っていました。しかしテクノロジー業界では、「いや。そんなことはここでは重要ではない。それはここでは問題ない」ということになります。そしてそれが間違いなく問題なのです。多くの人は、テクノロジー業界に入る人はすべてテクノロジー好きで、それが皆を1つにまとめると思っているのではないでしょうか。この大きな情熱が、性別もセクシャリティも人種も問題とはならないということを気付かせてくれると思っていないでしょうか。

それは絶対に間違っています。なぜなら、テクノロジーが陥る落とし穴は他のあらゆる企業や、実際のところアメリカの他のあらゆる団体が陥る落とし穴と同じだからです。つまり、真の多様性と人種間の平等は白人にとって痛みを伴うものではなく、まったく調整は生じないという考え、有色人種は白人とまったく同じものを必要とし、白人と同じものに価値を置くという考え、そして最後には、有色人種は何らかの点で白人は優れていると見なす、という考えに陥るのです。真の多様性、人種間の真の平等、男女平等において、この考えはどれも誤っています。

私たちはこの問題について話す必要があります。これは単なる作業環境の問題ではないからです。私は世界最大規模のテクノロジー企業やテクノロジー関連企業の数社と話をしたことがあります。そうした企業では、スタッフが実際に毎日オフィスに出社し、人種差別と性差別の問題を認めようとしない場で現実に向き合うだけでなく、人種差別と性差別の問題を再現するような形で、私たちが世界で互いにどのように関わり合うかを方向付ける製品を作っています。

何よりもまずオフィス内のスタッフの環境を整えなければ、提供する製品をうまく扱うことはできないでしょう。白人男性しかいない環境や、白人男性が多数派を占める環境を作ることはできません。また自分が持つ製品で偏見と悪意が再現されないと考えることもできません。

そして製品を作っているスタッフの作業環境に極度の脅迫、排除、悪意に対する苦悩があるのに、偏見と悪意を根絶すると考えられる製品を作ることはできません。どちらも一度に取り組まなければなりません。そして多くの場合、どちらか一方に取り組むと、うまくいかず失敗します。そしてテクノロジー業界でこうした問題に取り組んでいない結果、小さな作業スペースで仕事をしている人以外にも、多くの人を傷つけています。あらゆる人々を心底傷つけているのです。

エプスタイン:「あらゆる人々を心底傷つける」と言うのは、真の平等に対する責任が欠如しているということですか。

オルオ氏:そのとおりです。そして社会的弱者に対する尊重も欠如しているということです。「隣人が好きか」という観点からだけでなく、利益水準の観点から見る場合も同じです。

人種間の平等には、将来的に利益があると思いますか。人種間の平等に関する製品と目標を構築できると思いますか。有色人種は白人の顧客であると思っていますか。そうした顧客が製品に適応するのではなく、製品が顧客に適応すべきだと考えていますか。顧客の子どもたちや孫たちにも製品を使って欲しいと思いますか。歓迎されている、十分なサービスを受けていると顧客に感じてもらいたいですか。

もし私たちが資本主義に目を向けているなら、そして資本主義企業であるなら、私たちは資本主義とは無縁であるように振る舞うことはできません。これは重要な点です。

もっと言えば、資本主義と無関係のプラットフォームであればモノを販売することはないはずです。そんなことはでたらめです。すべては資本主義世界に属しています。資本主義は私たちが尊重している世界です。有色人種の声は重要だと思いますか。もしそうなら、ハラスメントや虐待の問題に取り組む方法が、白人男性の声を重視する場合とはまったく違ってきます。

エプスタイン:倫理に関するこのTechCrunchシリーズでインタビューしたすべての方に尋ねる最後の質問です。人類共通の未来の見通しについて、どれほど楽観的に考えていますか。

オルオ氏:見通しは変わっていません。心配しています。テクノロジーを利用している欧米の人々が、テクノロジーを使うことによって、実際に人と対面することも、人との深いつながりを形成することも、本当の同盟関係を構築しようとすることも、そして自分の未来、安心感と共同体意識、他者への帰属意識を結び付けることも不要ではないかと、いかに感じやすくなっているかについて懸念しています。

間違いなく言えることは、驚くほど欧米中心のテクノロジー観があるということです。私はナイジェリア系アメリカ人です。ナイジェリアでテクノロジーを利用する方法は、ここでの方法とはまったく違います。ナイジェリアでは、まず第1に実用性を重視します。またアフリカのビジネスをより円滑に運用するため、物理的インフラを奪ってきた植民地政策の遺産を取り払うため、そしてそのインフラをオンラインで構築してどこかで存在できるようにするために、人々が1つにまとまり直接集うことも重視します。

ナイジェリア人がインターネットを使い、離散を越えてつながっている様子を見るとき、インターネットに対するナイジェリア人の考え方は、インターネットの存在理由、その使用方法の点で欧米の考え方とは根本的に異なっています。そして私はそこから学ぶべきことは多くあると感じています。真の開拓がどこで行われているかを調べたいのであれば、中米、南米、アフリカ諸国、多くのアジア諸国でテクノロジーやインターネットがどのように使用されているかを見るとよいでしょう。有色人種のコミュニティが、「白人至上主義構造の制限下で私たちが抱える問題を解決するテクノロジーを構築するつもりだ」と言うとき、インターネットはどのようになるかについて考えてみてください。

個人よりも集団を尊重する社会で、インターネットを構築するときどのようになるかについて考えてください。その時インターネットはどうなっているでしょうか。ナイジェリアでは徹底的な独立が夢ではないので、独立はインターネットが構築される目的でも、目標でも、子どもや家族のために手に入れたいものでも、目指しているものでもありません。では社会構造が違うと、インターネットはどのようになるのでしょうか。私たちは自らを自力で引っ張り上げているのではなく、もしかしてコミュニティを引っ張り上げているのかもしれないと考える場合、プラットフォームを構築しているとしたら、インターネットはどのようになるでしょうか。すべてのプラットフォームはインターネットのために構築されるのでしょうか。インターネットこそが、テクノロジーでできることに希望を持ちたいと思う場所であり、私たちがいるべき場所なのです。

エプスタイン:すばらしい答えです。ありがとうございます。私は多くの優秀な方々にこの質問をしてきましたが、いろいろな意味でこの質問に対する最高の答えを受け取りました。

オルオ氏:ありがとうございます。

エプスタイン:お時間を頂きありがとうございました。TechCrunchを代表してお礼申し上げます。

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(翻訳:Dragonfly)

インタビュー:多様性促進のために企業が取るべきアクションとは

BLCK VCは2024年までに黒人のベンチャーキャピタリストを現在の2倍に増やすという目標の実現に取り組んでいる。その理由は説明するまでもない。パートナーレベルのベンチャーキャピタリストのうち黒人が占める割合はわずか2%にすぎない。黒人のパートナーが全くいないVC企業も全体の81%に上る。この数字を踏まえると、VCコミュニティの下に構築されたスタートアップエコシステムが、非常に多様性に欠けるものであるのも驚くにあたらない。

私たちは、Extra Crunch LiveのエピソードでBLCK VCの共同創業者兼共同議長のSydney Sykes(シドニー・サイクス)氏と共に、現在進行中の抗議運動、VC業界の多様性や開放性に関する現状、また我々がテックエコシステムのあらゆる面でより非排他的になるための実践可能な洞察と戦略について話し合った。

これは非常に重要な会話であるため、我々はこのエピソードとQ&Aすべてを無料で公開することとした。

下記に、かわされた会話の中から重要な部分を文字起こしし、それに簡単な編集を加えたものをまとめた。また会話全体はYouTubeでご確認いただける。また、BLCK VCの「We Won’t Wait(私たちは待たない)」 アクションデーの動画もそこでご覧いただける。

現在テック企業に充溢するエネルギーが持続し、継続的な変化をもたらすことができるかどうかについて:

これらのテック企業すべてが「Black Lives Matter(黒人の命は重要である)」と言い、そして寄付をしているのをご存知だと思います。寄付をし声明を発表しても、企業のあり方は変わらない、というのが私の考えです。そのような方法では、業界のあり方を変えることはできません。ですから、そうした声明を聞くと、うんざりして悲観的になり、状況は今後も変わらないと感じてしまいます。私が本当に楽観な気分になれるのは、これらのテック企業の従業員、そして市民が「ただ Black Lives Matterというだけでは足りない。それを実現させなければ」と発言するのを聞く時です。

現在、ボトムアップの、本当の意味での草の根レベルで「今までのやり方で問題が解決しないのなら、現状を変える必要がある」という声が上がっています。私はこれらの企業は今後とも従業員や顧客の声に対応していく必要があると思います。ですから、私は今までにないほど楽観的です。そうは言っても、私は依然としてアメリカに暮らす1人の黒人女性ですし、今起こっていることが人種差別を是正するとは考えていません。しかし、将来的には事態が改善すると楽観的に考えています。今から1ヶ月前と1ヶ月後を比較して、どれだけ事態が改善されているかを知るには、もうしばらく待つ必要があります。でもどのような変化が起きるのだろうかと、わくわくしています。

企業の内側と外側から変化を引き出し促進することについて:

私が初めてベンチャーに興味をもったのは大学の後半でした。あらゆるVC企業の様々なページを閲覧しましたが、白人男性投資家の白黒写真ばかりでした。この業界に属し、黒人女性の投資家としてベンチャー企業で働くだけで変化をもたらし違いを生み出せると感じました。個人的には、行動を起こし変化をもたらすには、内側から働きかけるのが最良の方法だと感じました。しかしそれが誰にとっても正しい選択だとは思いません。また、有色人種たちが彼らが内側にいてこそこれらの業界や企業を変えられると考えているからといって、常に彼らに現状を変えるという重荷を背負わせ、不快な立場にいるようにすべきだとも思いません。ですから、そこはバランスだと思います。

一方で、過去にはボイコットが変化をもたらしたことがありました。これは完全な断絶です。不正なシステムから完全に離れることです。一方、企業には内部に従業員がいて、彼らがその環境内で変化を促進しています。

どのように変化を促進するかについて、正しい答えはないと思います。耳を傾けてもらえる立場にいて、意見があるならば、可能な限り最も強力な形で発信する必要があります。Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏の場合、辞任することで意見を伝えたわけですが、これは大変強力なやり方だと思います。内側から声を挙げるのも有効なやり方だと思います。しかし同時に、彼がずっと発言していたにもかかわらず何も変わらないのであれば、彼が辞任することでより強く意思を伝えることができます。おそらくそれも1つの方法です。内側から変化を起こす事ができないのなら、なぜいつまでもそこにとどまって時間を無駄にする必要があるでしょう?変化を推進できる別の場所へ行くべきではないでしょうか。

VC企業の多様性を示す数字をトラッキングする重要性について:

企業内の人々、既存のGPや投資家がどれほど問題が大きいかを認識するためには、数字をトラッキングすることが非常に重要です。書き出してみなければ、何が足りていないか、何が欠落しているかを認識する必要に迫られません。数年後企業がデータを書き出すようになるか、企業の従業員比が突然米国の人口比を反映したものになるか、多様性の価値を認識するか、と言われれば私は楽観視していません。しかし、雪だるま式に変化が起こる効果もあると思います。すぐには変化は起きないでしょうが、より多様性のある人材を社内またはネットワーク内に確保できていれば、あるいは最低でもどこにいるか把握できていれば、投資を行うとき、イベントを主催するとき、エコシステムを拡大するとき、多様性についてより考慮するようになります。

率直に言って、当社にコンタクトを取ってくる多くの企業は、制度化した人種差別を既にある程度認識し理解しています。彼らは暗黙の偏見を理解し、人材に欠落があることを理解しています。これらの企業が最も支援を必要としている人々や企業でないのは確かです。

しかし、当社と積極的に関与する意思のある企業と出会ったとき、あるいは多様性に欠ける企業や、雇用している投資家に人種的多様性のない企業と接触することになったときこそ、多様性がもたらす価値について話し合うチャンスです。多くの研究で、多様性があるほどビジネス、投資家、企業は優れた業績をあげており、彼らがその多様性を保持できれば企業はさらに業績を上げていけることがわかっています。このことは、繰り返し示されています。

ですから、自社のポートフォリオや投資家について、これ以上望めないほど優れていると思っていても、おそらくそれは正しくないでしょう。また、多様性を持つということは情報に基づいた視点を持つことである、という事実強調したいと思います。

自社の投資家、話をする周囲の人々、共に投資の決定を行う人々、これらの人々に多様性があるほど、視点にもその分の多様な情報がもたらされます。ですから、投資委員会に多様性がなければ、資金の投入について決定を下す際、視点が欠け、情報が不足します。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)のトラッキングに関するベストプラクティスについて:
VC企業については、トップレベルの従業員をトラッキングすることをお勧めします。地位の高い従業員について、そのうちの何パーセントが少数派に属するバックグラウンドを持っているかや、性別、LGBTQなど、すべての種類のデータをトラッキングします。そして、シニオリティレベル、つまりアソシエイト、コントローラー、GPについてトラッキングすることもおすすめします。これらの人々のうち何人が、少数派に属しているでしょうか。そして、それに加えて、パイプラインをトラッキングすることも重要だと思います。採用候補者のうちどれくらいが少数派に属しているか、または異なる学校の出身であるか。これらの指標もやはりすべて重要です。パイプラインの不足している箇所を見出すことができるからです。イベントを主催する際、登壇者の顔ぶれはどんな感じでしょう?パネリスト全員が、あなたと同じ人種ということはないでしょうか?

また、起業家側としては、どれだけの費用を費やしたかを確認するのが非常に重要です。何人の少数派に属する創業者に投資したかよりも、彼らにいくら投資したかが重要です。

また最後に、これはやや掴みどころのない部分なのですが、投資する起業家をどこで見つけるかです。他の投資家から薦められた起業家でしょうか?電話やeメールであなたにコンタクトを取ってきた起業家でしょうか?様々なカレッジや大学へ行き、そこの学生を説明会に招待す予定はありますか?そこでもパイプラインのトラッキングを少なからずすることができ、これは非常に重要です。

伝統的に白人が大多数を占めるVC企業で黒人のパートナーの数を増やすことvs黒人のVCに自らの企業を起こすことを薦めることについて:

これには、2つのアプローチがあります。

1つ目は、白人が大多数を占める非常に大規模なこれらの企業が、ベンチャーキャピタルに分配される資産のうち極めて多くの部分を管理しているという考えです。年間800億ドル(約8兆6000億円)を超える資産の大部分は、上位10社からのものです。ですから、新しいファンドを立ち上げても、大手企業による投資額と同等にすることは非常に困難です。

また黒人が率いるこれらのVC企業が上位のGPに気兼ねせず、投資することが非常に重要だと思います。彼らは大変貴重な視点を持っています。どちらも必要なのです。

黒人の投資家は自らのファンドや企業を立ち上げ、また肌の色に関係なく、自らが信じる創業者に投資する必要があります。また私たちは最大規模のファンドを扱う人々に、彼らの行う大規模な富の創造と雇用の創出が、我が国の多様性と黒人の投資家の視点を反映した形で行われるようにしてもらうべきだと思います。

ソフトバンクa16zが行っているような、少数派の起業家への投資に特化した個別のファンドについて:

かつてよく「パイプラインの問題」という言葉を聞いたものです。今でもこの言葉を聞くことがあります。これは、過去によく使われた、黒人の人材が十分いないという意味の婉曲表現ですが、これは真実ではありません。パイプラインの問題は確かに存在しますが、それは企業側が多様性に富んだパイプラインを持たないために発生する問題です。企業が多様性に富んだパーソナルネットワークを持たず、またそうしたネットワークを築こうとしてこなかったことが原因です。彼らは投資をするにしても、話をするにしても、彼らの同種の人々を対象に選ぶ傾向があります。これこそがパイプラインの問題です。これらの企業がどのように変わるか、私にはわかりません。

先程ソフトバンクについて言及されましたね。現在、少数派の起業家への投資に特化したファンドがいくつかあります。黒人の創業者に資金が流れるのはどんな形であれ良いことだと思います。私は、少数派の創業者に投資するための個別のファンドの必要性が理解できないでいます。少数派に属する創業者へ投資した経験がない場合、個別のファンドがなんらかの変化をもたらすでしょうか?私にはわかりません。そこで、それについて調べ、なにが問題なのかを尋ねる必要があります。なぜ、あなたは少数派に属する創業者に投資してこなかったのでしょう?

投資に値する企業ではないからでしょうか?優秀な人材が十分に揃っていないからでしょうか?彼らの経験が十分でないからでしょうか?どれもが真実ではありません。私がお薦めするアプローチは、なによりも、パイプラインを変化させることです。パイプラインが上手く機能していなければ、機能するように変えて下さい。創業者に会いに行き、また、あなたとは異なる方法で少数派の企業に投資をしている投資家に会って下さい。このように行動している企業が実際に存在します。すぐにこのようにできないと感じる場合は、少数派に属するスカウトを連れてきて、投資のための資金を与えてはどうでしょう?企業に代わって投資し、それらの資金を実際に投入することができる、スカウトとして素晴らしい能力を発揮するであろう優れた黒人創業者、CEO、投資家、エンジェル投資家が大勢います。これで瞬時に状況が変わるでしょう。

自分にはできないと感じているなら、現在そうした活動を実践しているファンドに資金を投入してください。Precursor(プリカーサー)が良い例です。すばらしい多様性に富んだ人材を見出すことのできるファンドが他にもたくさんあります。Backstage Capita(バックステージキャピタル)もそうです。たくさんのファンドがあります。これらのうちのどれもできないという場合は、そうですね、それは、やってみようとしていないのだと思います

VCコミュニティに幻滅を感じている、あるいは締め出されていると感じている、志ある黒人投資家へのアドバイス:

諦めないで挑戦を続けて欲しいと思います。常に返事があるとは限りませんが、売り込みのeメールを送り、自分のネットワークの中に友達の友達といったつながりを見出すよう心がけ、ベンチャー企業の中にネットワークを築くよう努めます。大変だとは思いますが、挑戦を続けてください。また、起業家と協力し、その仕事がどのようなものかを学び、スキルの構築にどういったことが役立つかを学んでください。あなたの周囲に起業家がいたら、彼らと共にプロジェクトに取り組むにはどうしたらよいか尋ねたり、彼らにインタビューをしてください。現場を見学したり実際にインターンをする機会をあなたに提供してくれるアクセラレーターやインキュベーターは大勢います。 これは大変良いアプローチで、そちら側により多くの仕事があるはずです。

正直に言うと、ベンチャーの仕事の多くは投資銀行の担当者が扱います。これが唯一のアプローチではありませんが、投資銀行システムあるいはスタートアップエコシステムの中にいると、ベンチャー業界そのものよりもややアクセスしやすいベンチャーキャピタリストとつながりを持つのに役立ちます。大変な道のりですが、一番良い方法は、自分のネットワークを拡大し地に足を付け
積極的に取り組むことです。

この問題を認識し現状を変えたいと考えているが、日和見主義、あるいは単なる見せかけのパフォーマンスになってしまうことを恐れている企業について:

見せかけのパフォーマンスは問題です。

言っていることに行動が伴っていません。これがすべての問題です。行動が伴っているなら、それは見せかけのパフォーマンスではありません。あなたが自分の言っていること、ソーシャルメディアに投稿していること、語っていることを本当に信じているのなら、その行動は本物です。少数派を取り込む形で採用を始めること、これは日和見主義、あるいは単なる見せかけのパフォーマンスには見えません。見識のある啓蒙された行動に見えるでしょう。それは劇的な変化かもしれませんが、あなたがついにこの問題を理解したように見えるでしょう。私はどの企業も行動を起こすこと、特にネットワークを多様性に富んだものにすることに関して、恐れるべきではないと思います。

ここで問題となるのは、あなたが投資した資金やあなたの行った採用について、良いPRになるとか、慈善事業である、と考えるようになる場合です。大勢の黒人の起業家がいますが、彼らがあなたのポートフォリオを向上させてくれるから、という理由で彼らに投資をすべきです。彼らがきっとあなたにより条件の良い投資家を紹介してくれるからという理由や、彼らがあなたの資金をより良いものに改善する機会を与えてくれるからという理由。彼らがあなたのネットワークを広げ、問題について、別の視点から考える機会を提供してくれるから、という理由で黒人投資家の雇用に資金を投入すべきです。彼らは異なる視点、意見をもたらし、あなたにとって最も優れた投資家そして投資対象の一部となるでしょう。彼らを雇用したのに投資を行う権限を与えず、発言し意見を共有する機会を与えないのであれば、それは見せかけのパフォーマンスです。これでは現状を変化させる力にはなりません。見せかけのパフォーマンスでは、生活、人種差別、企業のあり方を変えることはできませんし、ポートフォリオや企業の改善につながりません。

過去数年で見られた前進について:

素晴らしい例の1つがElliott Robinson(エリオット・ロビンソン)氏です。彼は私たちの創設したBLCK VCの取締役会の役員で、現在はBessemer(ベッセマー)のGPです。彼は意見は、黒人のVCコミュニティだけでなく、VCコミュニティで尊重されています。これは前進の印だと私は思います。彼は資金を動かす権限を持っています。

また白人の同志が取締役から降りて、黒人のアドバイザーが独立した取締役会のメンバーとなれるよう議席を空けるという動きがあるといいと思います。これは非常に重要です。これは継続していくべき重要な動きです。取締役会の議席というのは大変な影響力とリソースがあり、多様性を取り入れていくために非常に重要です。

また、私はテック企業につとめる白人従業員の同志からのサポートのうねりをみて興奮しています。彼らは「私たちはあなた方の方針を支持します。私たちは黒人の投資家や黒人の従業員を白人と同じ割合で昇進させない方針を支持しません。私たちは制度的人種差別を促進する動きをサポートする方針を支持しません」と声をあげてくれています。私はこれらは大きな力になると思います。本当に、この運動が今後どうなっていくのか興味があります。とても期待しています。現在緊張感が溢れ行動が起こされ、そして今までにない興奮が沸き起こっていると感じています。今後もこの運動を頑張って前進させていく必要があります。

Image Credits: Courtesy of Sydney Sykes

関連記事:VCを真に21世紀らしい姿へと導く方法

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VCを真に21世紀らしい姿へと導く方法

TechCrunchは過去の記事で、真に多様性のあるベンチャー業界を築くためには、VCに投資資本を出資するリミテッドパートナー(大学や病院などの機関)自体に多様性の義務を徹底する必要があるということに言及した。あるベンチャーファームがテキサス大学からの投資を確保したいとする。この場合、資本の一定割合を、女性や人種的マイノリティなどの過小評価グループによって設立されたスタートアップに投入するということに、あらかじめ書面にて同意を得ることが求められる。

機関投資の世界がいかに細分化されているかを考えると、この考えは非現実的に聞こえるかもしれない。しかし、シリコンバレーで少数派ながら増え続けている黒人VCの1人であるLo Toney(ロー・トニー)氏は、これが必然となる可能性は十分にあると提唱している。例えば、カリフォルニア州職員退職年金基金は160万人の職員の資産を管理しているが、この160万人の多くが「私のような見た目の人々」だとトニー氏は言う。こうした職員たちが、彼らの資産を誰が管理しているのか知ろうとするとどうなるだろうか。

トニー氏はこの進展をただ待っているわけではない。その必要がないのだ。Comcast Ventures、GVでパートナーを歴任したトニー氏は、ベンチャーチームへの資金提供とスタートアップへの直接投資を実施してきた自身の投資会社であるPlexo Capitalのアンカー投資家として、Alphabetを確保している。

そして、スタートアップ業界全体において有色人種が少ないという事実が新たに関心を集めている今、LPらは再びPlexoに関心を寄せ始めている。Plexoの2つ目のファンドでは、ファンドマネージャーをサポートするだけでなく、彼ら自身のベンチャーファームを形成する有色人種の投資家を支援することも計画に含まれている。

これはすでに行っている事業の延長線上にある。Ford Foundation、Intel、Cisco Systems、Royal Bank of Canada、HamptonUniversityなどから2018年に4250万ドル(約46億円)のデビューファンドを調達してクローズしたPlexoは、Precursor VenturesIngressive CapitalKindred VenturesEqual VenturesBoldstart VenturesWork-Benchなどすでに20のファンドに出資している。

出資先のほとんどが、完全または部分的に有色人種によって運営されているものだ。「ハーバードやマッキンゼーによる研究でも、すべてのレベルで多様性がいかに重要であるかが証明されています。多様な取締役会を持つ企業や多様な経営チームを持つ上場企業など、マネジメント層が多様な組織の方が優れたパフォーマンスを発揮しているのです」とトニー氏は説明する。

2つ目のファンドでは、さらに多様性を重視した方向へ進みたいと同氏は考えている。具体的に言うと、Plexoは「優れた投資家」を「優れたファンドマネージャー」に変える、「ある種のYコンビネーターの開発」を目指していると言う。

そのアイデアの一環は、マネージャーがマーケティング資料の準備をするのを手伝い、富裕層や機関などに戦略を売り込み、投資家の基盤が整った後にLPとのコミュニケーションを管理するという、Plexoがすでに臨時的に行っている作業を制度化することだ。そしてこの3点はPlexoが手助けすることのできるほんの一部であると同氏は言う。

Plexoはまた「ファンドを開始するためには平均して100万ドル(約1億7000万円)かかるという事実を前提に、若いGPの多くを運転資金の面で支援し、必要な費用を負担できるようするための戦略を検討している」という。これは、資金調達プロセス中の無給期間、旅費、サービスプロバイダー、GPが通常資金に投入しなければならない金額など、すべてを考慮した上でのことだ。

これは個々の企業に投資するよりも、この方法の方が物事を迅速に進めることができるだろうと考えるPlexoのビジネスモデルである。しかしこれはPlexo単体で実現できるものではない。Bessemer Venture PartnersのElliott Robinson(エリオット・ロビンソン)氏、Storm VenturesのFrederik Groce(フレデリック・グロース)氏、小売スタートアップであるDolls KillのSydney Sykes(シドニー・サイクス)氏など、黒人ベンチャー投資家を結び付け、前進させることを目的としたBLCK VCと呼ばれる若い組織を率いるPlexoの友人や協力者においても同様のことが言える。

トニー氏は特に大規模で後期ステージにあるベンチャーファームにいる少数の有色人種に関して懸念し続けている。スタートアップが成熟するにつれ、黒人の起業家をサポートするためのネットワークとノウハウを保有しているであろう投資家たちである。

これは当然の懸念である。デジタルメディアThe Informationの2018年の報告によると、運用資産2億5000万ドル(約270億円)以上のベンチャーファーム102社において、黒人の意思決定者はわずか7名しか存在せず、この数字は現在もほぼ変わっていない。女性の黒人投資家にとってはより深刻なものである。

この業界も時間の経過とともに徐々に、過小評価グループをより受け入れて行くことになるだろう。しかし、連邦政府の資金を得ている機関や公務員の資産を管理している機関がこの問題により注力することを決めれば、はるかに早く解決へと向かうはずだ。実際に、こういった機関の構成要素(年金基金拠出を通じての援助資金供与者や職員を含む)が最終的にはそれを主張するはずである。

「団体として資産クラス内で実際に変化をもたらすような力と影響力を実現している例はあまり見られません。私自身はいかなる取り組みにも参加していませんし、想像でしかありませんが、今後より多くの年金基金が明確な姿勢を示し、職員から発生するボトムアップによるシフトが訪れると思います」とトニー氏は言う。

ことが進むまでにはそれほど時間がかからないかもしれない。「例えば『黒人のパートナーは何人いますか?』『女性は何人?』『ポートフォリオの構成はどういったものですか?』など、単に質問するだけでも私たちの業界に圧力をかけることができるでしょう。」

「最初のステップとして、こういった質問をするだけでも状況を変えるよう影響を与えることができます。なぜなら、このような質問に答えるときには誰も悪者になりたくないからです」とトニー氏は語る。

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