ストックホルムの成熟したスタートアップエコシステムについて8人の投資家に聞く(後編)

日本版編集部注:本稿は日本と同じようにコロナ禍で揺れるギリシャで投資を行うVCへのインタビューとその回答を掲載するシリーズ記事だ。前半はこちらで読める。

後半では、以下の投資家のインタビュー回答を掲載する。

Ted Persson(テッド・ペルソン)氏、EQT Ventures(EQTベンチャーズ)、パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

一番好きなのは、本物の問題を本物のテクノロジーで解決しようとする野心のあるチームを支援することです。ですから、かなりディープテックになることもあります。「ほとんど同じ問題をほとんど同じ方法で解決しようとする、二番煎じのB2B SaaS企業」とは正反対です。少数の恵まれた人々にしか提供されてこなかったものを優れたユーザーエクスペリエンスによって民主化して誰でも使えるようにする、製品およびデザイン中心型のチームにも興味があります。今は、創造的な産業、マーケティング、製品設計の未来について考え、研究することに多くの時間を費やしています。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

この春にリードまたは参加した投資案件は、量子コンピューティング、グループコラボレーション分野の4案件、デザインおよび開発ツール分野の2案件ですが、いずれも未発表です。直近に発表した案件はSonantic(ソナンティック)とFrontify(フロンティファイ)の2つです。どちらもすばらしい企業です。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

EdTech分野は見過ごされていると思います。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

投資家は通常から外れた考えを持つ人たちを探しているため、一般化するのは難しいのですが。いくつかAPIを組み合わせただけの誰でもできるようなことではなく、もっと難しい問題を解決しようとしている企業には大きな期待を寄せています。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

個人的には、地理的に特定の地域を重視しているということはなく、欧州および世界中にいる当社のチームと仕事を楽しんでいます。とはいえ、私はスウェーデンに住んでいますから、スウェーデン国内のほうがネットワークが若干強いのも事実です。当社独自のAIプラットフォームMotherbrainによって、地元のエコシステムとネットワークの外に存在する急成長中のスタートアップや認知度の低いスタートアップも確実に見つけられるようになっています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業界、または適していないと思われる業界は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

北欧地域はゲーム、エンターテインメント、ミュージック、フィンテック分野で優良な企業を輩出しています。また、欧州の他の地域と比べて、優れたデザイナーを見つけやすい地域だと思います。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

はい、そう思います。まだ具体的にはお話しできないのですが、当社のポートフォリオ企業の中にも、物理的なオフィスを廃止した企業がいくつかありますし、多くのスタートアップの社員たちが国内各地からリモートで働いています。これにより、スタートアップの国際化が進むことになると思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス慣行の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

この点についてすでにさまざまな記事が書かれていますが、当社は、他の投資会社と同様、この春にかなりの時間を費やして詳しく分析しました。全体的に見て、テック業界は前途有望です。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社の戦略に変わりはありません。パンデミック発生初期の頃は当然いくらか混乱もありましたが、短い休暇を取り、ポートフォリオ企業がこの難局を切り抜けられる良い状態にあることを確認しました。今は正常な状態に回復し、投資先のチームと対面で会うことができない中で、いくつかの企業への新規投資を決めました。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。食品配達、ゲーム、リモートワーク、リモートコラボレーションなどの領域では、回復の兆しが見られます。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

私自身の周りの人たち、両親や高齢の親戚たちが、デジタルツールや、自分でできる範囲を最大限に高めるさまざまな方法を突如として受け入れるようになったことには希望を感じました。

Sofia Dolfe(ソフィア・ドルフェ)氏、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、プリンシパル

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

強いコミュニティ帰属感、共通した意識を持つ人たちのグループに所属している感覚、そしてその成功に投資している感覚を人に与える製品が好きです。ユーザーは、そのような製品には夢中になります。そのため、そのブランドがだんだん成長してくると、友人や好きな人に勧めるのをやめることができないのです。こうしたタイプのビジネスを探していると、多くの場合、消費者ビジネス、顧客中心型でコミュニティを1つにまとめるマーケットプレイスに行き着きます。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

従来の学習方法を再考することへの抵抗感が以前よりも弱くなるであろうコロナ後の世界で、教育に関するどのような新しい試みが出てくるのか興味があります。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

私はいつも、人を惹きつけるストーリーを語ることができる創業者を探しています。ビジネスを創り上げるという作業の大部分は、新規入社の上級管理職から、若くてまだ実績のないビジネスに賭けてみる顧客、創業者と野望を共有し、創業者を信じて思い切る投資家まで、あらゆる人たちにどんどん組織に関わってもらうということです。優れた語り部であり、最初から目標を高く持って飽くなき向上心を抱き、謙虚な姿勢で知識を蓄積していく創業者こそ、大成功する可能性が最も高い創業者だと思います。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業界、または適していないと思われる業界は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ストックホルムはこれまで、フィンテック業界とゲーム業界の最前線に立ってきました。これらの分野は繁栄に適していると思います。金融サービスでは引き続き変革が続くでしょうし、北欧地域の近代的なバンキングインフラストラクチャーのおかげで、この地域はフィンテックビジネスを起業するのに魅力的な場所となっています。ゲーム分野でも、北欧地域は確固たる実績を持ち、スタジオと開発者のどちらのプールも集中しているため、彗星のごとく出現した企業が大成功を収めるのに格好の土壌が整っています。最近、北欧地域で注目を集めているテーマは「意識ある消費」です。環境への優しさという点で、ストックホルムには長い歴史があります。また、CSR(企業の社会的責任)、レスポンシブルショッピング、グリーントラベル、植物由来の代替食品などの領域における長年の実績も、これらの分野の企業が急成長するのを後押しするでしょう。こうした試みについて深く考えている創業者に会いたいですね。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

ストックホルムは強力なテックハブであることを自ら証明してきましたし、継続的に成功するのに必要な要素をたくさん備えています。例えば創業者たちは起業当初から大きくグローバルに考えています。スウェーデンの人口は1000万人程度ですから、新しいカテゴリを規定するような企業を立ち上げる創業者たちは、優位に立つには他国の市場に参入する必要があることを理解しています。King(キング)、Spotify(スポティファイ)、iZettle(アイゼットル)といった企業の規模を見れば成功は手の届く範囲にあるとわかりますし、こうした成功例が意欲的な企業家たちに勇気を与えています。世界はスウェーデン人を過小評価するリスクを冒すことがあります。これはスウェーデン人の自己評価が低いからですが、実際には、その実績が示すとおり、スウェーデン人はすでに十分以上の結果を出しています。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

数週間前、ストックホルムのアパートの入り口に手書きのメモが貼ってあるのを見つけました。住人の1人が、アパート内の具合が悪い人や妊娠の可能性がある人に、食料品や薬やその他の必需品などの買い物を代行すると申し出ていたのです。大変な時期にこそ、地元のコミュニティと他者への配慮の大切さや、ちょっとした親切が関係性の構築にどれほど有益であるかを再確認できたことに希望を感じました。

Staffan Helgesson(スタファン・ヘルガソン)氏、Creandum(クリーンダム)、パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

輸送、建築、不動産といった古くからある大規模な産業に変革をもたらす案件にはワクワクしますね。デジタルヘルスもそうです。現在の健康産業には変革が必要です。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Mavenoid(メイヴノイド)。テックサポートの自動化をグローバルに行っている企業です。創業者は元Palantir(パランティア)の社員です。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

フィンテック業界全般で見られるようなスタートアップの波が、保険市場にはまだ訪れていません。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

グローバルな市場でディスラプションを起こそうとしている、無謀なくらいの野望を持っている起業家であるかどうかを見ます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

多くの消費者業界は、テック大手と関連企業の寡占状態で、参入は難しくなっています。それでも、このようなことをいうたびに、新しい驚異的な企業が登場します。例えば当社のポートフォリオ企業であるKahoot(カフート)は、オスロ株式市場に上場し、時価総額は15億ドル(約1610億円)に達しました。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社はEU諸国全般を投資対象としています。特定の地域を重視することいったことはありません。優れた起業家を見つけたいだけです。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業界、または適していないと思われる業界は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

当社が期待している産業を1つ選ぶとすれば、デジタルヘルスでしょうか。ストックホルムに本拠地を置くFirstvet(ファーストヴェット)やKry/Livi(クライ/リヴィ)といった企業ですね。どちらも人またはペット所有者向けの遠隔治療サービスを提供する企業です。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

ストックホルムと北欧地域には洗練されたエコシステムがあり、世界的に成功した企業を定期的に生み出し続けています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

優れた企業はどこでも増え続けるでしょう。投資業界はそれに対応していく必要があります。適切かつ迅速に対応するベンチャー企業がいずれは勝者となるでしょう。個人的には、70年代のようなグリーンウェーブの第二波がやってきて、人々が都会から離れる、あるいは、都会と田舎の二重生活をするようになると予想しています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス慣行の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

観光とエンターテインメントはいうまでもなく対応に苦慮するでしょう。ただし、これらの業界でも、(例えばチケットやイベントなどの)デジタル化の波に乗ることができれば、将来的には勝者となる企業も出てくると思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

重要なのは長期資本が利用できて実績を上げられるかどうかです。当社の戦略はまったく変わっていません。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、特にデジタルヘルス業界で回復の兆しが見えます。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

完全にリモートで投資案件をクローズさせたことでしょうか。Meditopia(メディトピア)という会社です。しかも、メディトピアはなんと、トルコの会社なんですよ。

Tanya Horowitz(タニヤ・ホロヴィッツ)氏、Butterfly Ventures(バタフライ・ベンチャーズ)、パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

ディープテック、AI、機械学習、ヘルスケア / メドテック、産業IoTと関連クラウドサービスおよび通信ソリューション、エネルギー保存、高エネルギー効率発電、ロボティクス、知的生産、付加製造技術などです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Uute Scientific(ウート・サイエンティフィック)は特殊な微生物混合体を含む自然製品を開発しました。これは、さまざまな消費者向け製品に応用できます。これらの製品は、ぜんそくや1型糖尿病などの免疫介在性疾患を発症する可能性を低下させ、結果として、クオリティ・オブ・ライフを改善します。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

北欧では、エネルギー保存、発電、エネルギー / 二酸化炭素削減テクノロジーをもっと見てみたいと思います。食品テックとアグリテックは、世界の人口増加を考えると、注目すべき分野ですね。EdTechもコロナ危機のせいで関心が高まっています。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

世界の市場を目指す独自のテクノロジーを持つ、強固なチームを探しています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

本当に独自の技術を持っているケースを除き、メディアとアドテックは飽和状態だと思います。健康 / フィットネス関連アプリなども飽和状態ですね。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

フィンランドが40~50%、スウェーデンが30%強、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、バルト海諸国が残り20%です。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業界、または適していないと思われる業界は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

業界、ヘルス / メディカル。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

フィンランドおよび北欧全体では、グローバルな市場を持つ輝かしいチームとテクノロジーに投資する機会が十二分にあります。人材プールとスタートアップエコシステムの支援も最高レベルです。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

北欧地域でスタートアップハブが人手不足に陥いることはないと思います。ただ、大都市以外の地域で起業する創業者が出ていることは増えていることは確かです。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス慣行の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

小売、レストラン、サービス業界は明らかに対応に苦慮しています。教育(EdTech)は大いにチャンスがあると思います。オンラインエンターテインメント(OTT)や物流(食品、商品配達)などもそうです。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社は新型コロナウイルス感染症の影響をほとんど受けていません。投資期間がほぼ終了する時期にあたっていたこと、当社のポートフォリオ企業が現在のファンドビンテージに設定されていたことが幸運でした。当社は北欧地域でトップクラスのシードステージのディープテック投資家であるため、当社のほとんどのポートフォリオ企業は問題なく経営を続けています。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、当社のポートフォリオの中にもパンデミックが追い風となった企業があります。他の企業も、パンデミック発生当初は苦戦しましたが、現在は回復しているようです。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

現在、Butterfly Ventures Fund IVの資金調達を行っています。このファンドは、パンデミック発生前に始動しました。そのため、ビジネスは若干低調になりましたが、当社のアンカー投資家とLPは動揺することなく、チームとしてできるだけ早く最初の調達をクローズさせることに専念し、その調達資金で2021年前半に企業への投資を実現させるつもりです。パンデミックで大きな被害を受けた方々にはお気の毒に思いますが、私個人は幸運にもパンデミックによる直接的な被害は受けずに済みました。私の息子も幸せで健康に過ごしており、それだけでも毎日希望を感じることができています。

TC:TechCrunchの読者のみなさんに何か伝えたいことはありますか。

グローバルなLPたちは欧州をもっと開拓するべきです。特に北欧地域を!

Sanna Westman(サンナ・ウェストマン)氏、Creandum(クリーンダム)、プリンシパル

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

そうですね、トレンドに乗って投資したのではもう遅いとよく言われますが、ワクワクするようなマクロ的な動きはもちろんありますし、そうした動きは当社でも注意深く観察しています。個人的に、デジタルヘルスはそうした分野の1つだと思います。目新しくはありませんが、常に成長を続けてきた分野であり、2020年は当然、急成長しました。

もう1つ本当に興味深いのは、より良いリーダー / マネージャー / 企業になるための支援をする製品です。こうしたサービスを製品化する方法についてはよくわかりませんが、リーダーシップの強化については大きなビジネスチャンスがあります。個人ユーザーに高い能力を与えるツール(ノーコードツール、生産性ツールなど)を提供する企業が何社か成功していますが、自分自身またはチームの成長を支援してくれるサービスはあまり見かけません。リモートワークには多くの利点がありますが、その分、マネージャーは新しい課題を背負うことになります。また、さまざまな方法で気候変動と戦う優良企業がもっと出てくると思います。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

SafetyWing(セイフティウィング)ですね。ソーシャルセキュリティとリモートワークが重なる部分にあたる分野です。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

B2Bコマースの世界でもまだまだ足りない領域はたくさんあります。マーケットプレイス、eコマースイネーブラー、新しいファイナンシングなどです。もちろん、そのような領域にも企業は存在しますが、数の点でも質の点でも、十分というには程遠いと思います。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

すぐに「これはすごい」と思えるかどうかですね。ユーザーに即座に価値を与えることができ、その製品を使えば使うほど価値が累積され続けていくようなソリューションかどうかという点を見ます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

モビリティとデリバリ分野は全般に飽和状態です。オープンバンキング決済ソリューションにも多数のスタートアップが集中しています。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

北欧地域は、DACH(ドイツ、オーストリア、スイス)とともに、当社の主要なマーケットの1つですが、特定の地域に一定の割合を投資するといったことはありません。場所に関係なく優良な企業を支援するようにしています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業界、または適していないと思われる業界は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

他のハブと比較して、一般に製品へのフォーカスが非常に高く、スウェーデンの市場規模が小さいこともあって、最初から海外市場に進出するという考え方を持っています。これは、業種によっては大きな違いになります。有望だと思う企業としては、Kive(カイブ)とDepict(ディピクト)は本当に初期のステージから注目に値すると思います。より成熟したスタートアップとしては、Kry(クライ)とFirstvet(ファーストヴェット)はデジタルヘルス分野の初期イネーブラーとしてすばらしい実績を上げています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

競争は激化していますが、多くの優れた人材もいます。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

パンデミック発生前も、ストックホルムのスタートアップの労働力が1つの場所に集中しているということはありませんでした。大都市以外のさまざまな地域も合わせた混合型の雇用市場がこれまでも一般的でしたし、それは今後も変わらないと思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス慣行の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

ファンドは10年以上の長期的な視野で投資するため、短期的な影響は主要な関心事ではありませんが、とはいえ、たとえば出張旅行などへの長期的な影響については考えます。ただし、マイナス面よりもビジネスチャンスのほうを探すことが多いです。パンデミックで大きな損害を被った業界にも起業のチャンスが出てくるでしょう。むしろディスラプトには良いタイミングになるかもしれません。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当初はランウェイが尽きることを警戒し、ポートフォリオ企業と密接に連携して、収益が低下して資金調達できなくなっても長期間生き残れるように対策を講じました。しかし、2020年を振り返ってみると、多くの企業が例年を上回る業績を残し、多数のラウンドで資金調達できています。どのような時期でも優れた企業は創られるものです。我々も最高のシード企業およびシリーズA企業の発掘に尽力しました。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、確実に回復しています。業績がV字回復している企業もあります。収益もコロナ前のレベル以上に回復し、その勢いを維持しています。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

起業家たちのやる気と楽観主義には希望を感じますし「不可能なことなどない」という姿勢には本当に元気づけられます。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

Kry CTOのJoachim Hedenius(ジョアキム・ヘデニアス)氏やJohan Crona(ジョアン・クローナ)氏など、新世代を支援している「表立った活動はしないが」アクティブなエンジェル投資家やメンターたちを挙げたいと思います。また、Susanna Campbell(スザンナ・キャンベル)氏やCristina Stenbeck(クリスティーナ・ステンベック)氏も極めて活発に共同出資を行っており、VCが見逃してしまうような投資機会をたくさん見いだしています。

関連記事:ストックホルムの成熟したスタートアップエコシステムについて8人の投資家に聞く(前編)

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュースウェーデン

画像クレジット:Everste / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

 

ストックホルムの成熟したスタートアップエコシステムについて8人の投資家に聞く(前編)

欧州のスタートアップエコシステムの中でも、スウェーデン、主にストックホルムは、ロンドン、パリ、ベルリンなどの巨大都市にほぼ匹敵するくらいの規模がある。人口1000万人のスウェーデンは、明らかに自国より大きな国と競争しながら、Spotify(スポティファイ)やKlarna(クラーナ)などのユニコーン企業を生み出してきた。

そのせいだろうか、2020年の後半にスウェーデンのパンデミック対策がより厳しくなったにもかかわらず、インタビューに応じてくれた8人の投資家たちには、未来について強気な見方を持っているという特徴が見られた。

スウェーデンの新型コロナウイルス感染症対策は当初、緩やかなものだった。そのため、テックエコシステムはこの不安な時期を乗り切ることができたようだ。「スウェーデンは開放的な政策を採用しており、パンデミックの推移の先を見越して策を講じています。そのため、入国者数が出国者数を上回っています」とLuminar Ventures(ルミナー・ベンチャーズ)の創業パートナーJacob Key(ヤコブ・キー)氏はいう。

何人かの投資家たちが「創業者がパンデミックに順応する中、ポートフォリオ企業の収益とリテンションに回復の兆しが見られる」と話してくれた。デジタルヘルスやリモートワークといった分野にとってパンデミックが追い風になっていることは間違いないが、スウェーデンがフィンテック分野やゲーム分野に強いことを考えると、それらの分野は伸びる条件をもともと備えていたと言える。

サステナビリティ、レスポンシブル・ショッピング(社会的責任を考慮したショッピング)、環境に優しい旅行、植物由来の代替食品を要望する消費者が増えるにつれて「そうした分野の企業が急成長することになるだろう」とIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)のSofia Dolfe(ソフィア・ドルフェ)氏は説明する。

飽和状態の分野は、メディア / アドテックと健康 / フィットネスアプリだ。

インタビューに応じてくれた投資家たちが大きな期待を寄せているトレンドには、ディープテック、AI、機械学習、ヘルスケア / メドテック、産業IoT、エネルギー保存、高エネルギー効率発電、ロボティクス、知的生産、付加製造などがある。

「ストックホルムからはたくさんの興味深いモノが登場しており、最近のサクセスストーリーとともにその数も急増している」とVNV Global(VNVグローバル)のBjorn von Sivers(ビヨルン・フォン・シルバーズ)氏はいう。

以下の投資家たちが、TechCrunchのインタビューに応じてくれた。

Jacob Key(ヤコブ・キー)氏、Luminar Ventures(ルミナー・ベンチャーズ)、創業パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

AIオートメーション、民主化、SMB SaaS。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Hiberworld(ハイバーワールド)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

サステナビリティの状況をリアルタイムで追跡できる、消費者およびビジネス向けサステナビリティトラッカー。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

大きな問題を解決しようとひたむきに取り組んでいる、優れた才能を持つチームであるかどうかを見ます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

アドテック企業、消費者金融業、eコマース小売業、ニッチ問題ですね。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

広い意味でスウェーデンのエコシステムに100%投資しています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業界、または適していないと思われる業界は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ゲーム産業、フィンテック、応用AI、セキュリティ、eヘルスなどは長期的に繁栄する業界だと思います。Mindler(マインドラー)、Insurello(インシュレロ)、Hiberworld(ハイバーワールド)、Greenely(グリーネリー)、Normative(ノーマティブ)、Marcus Janback(マーカス・ジャンバック)、Tanmoy Bari(タンモイ・バリ)などの企業に期待しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

投資環境は力強く、連続起業家や経験豊富な創業者が増えています。エコシステムは強くて数多くの分野を網羅しており、グローバルな視野を持つ、製品とテック主導の創業者たちが多数出現しています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

スウェーデンは開放的な政策を実施しており、パンデミックに起因する推移の先を見越して策を講じています。そのため、入国者数が出国者数を上回っています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス慣行の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

観光、モビリティ「あれば便利」程度のSaaS、人材採用などの分野は対応に苦慮するでしょう。スタートアップは、ビジネス、イベント、Travel 2.0、セキュリティ、サステナビリティ、eヘルス、エンターテインメントといった分野に注力する必要があります。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

あまり影響はありません。豊富な資金での投資、デジタルファースト販売、ランウェイの延長に注力しています。最大の懸念事項は、パンデミックが長引いて投資環境が現在よりも大幅に冷え込むことです。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

eヘルス、ゲーム、リモートワーク、フィンテック。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

創業者は以前よりもさらに熱心に仕事に取り組んでいるように思います。また、デジタル革命が思ったよりもずっと早く進んでいることにも希望を感じます。

Bjorn von Sivers(ビヨルン・フォン・シルバーズ)氏、VNV Global(VNVグローバル)、パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

強固なネットワーク効果を持つビジネスモデルですね。モビリティおよびマイクロモビリティサービス、デジタルヘルス、オンラインマーケットプレイスなどです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

SWVL、Babylon Health(バビロン・ヘルス)、Voi Technology(ヴォイ・テクノロジー)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

気候変動に直接的または間接的に取り組むスタートアップです。この分野は今後大きく成長すると思います。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

強力なネットワーク効果を持つビジネスモデルかどうかを見ます。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社はグローバルな投資委託案件を扱っています。ポートフォリオのうちスウェーデン / ストックホルム本拠の企業は10%程度です。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業界、または適していないと思われる業界は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ストックホルムのエコシステムから輩出されたすべての消費者向けサービスは長期的に繁栄すると思います。当社のポートフォリオ企業では、Estelle Westling(エステレ・ウェストリング)氏によって創業されたVoi Technology(ヴォイ・テクノロジー)、Fredrik Hjelm(フレドリック・イェルム、マイクロモビリティ)、Grace Health(グレース・ヘルス)、および新興市場で女性向けのデジタルヘルスクリニックを構築しているThérèse Mannheimer(テレース・マンハイマー)に期待しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

ストックホルムからはたくさんの興味深いものが登場しており、最近のサクセスストーリー(SpotifyやiZettleなど)とともに、その数も急増しています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

大都市以外の地域で起業する創業者は、多少は増えるでしょうが、急増することはないと思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス慣行の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

海外旅行はまだ不安要素が多く、先が見えません。デジタルヘルスとマイクロモビリティは間違いなく、かつてないほどの需要を見込めるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社の投資戦略はあまり大きな影響は受けていません。創業者たちは、資金調達環境や、先が見えない状況における最善策について、いろいろと考えていると思います。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、ポートフォリオ企業全体に回復の兆しが見えています。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

モビリティビジネスが急速に回復したことには希望を感じました。3月後半から4月初めにかけて業績は大幅に悪化しましたが、5月以降は力強く回復しました。

Ashley Lundström(アシュレー・ルンドストーム)氏、EQT Ventures(EQTベンチャーズ)、パートナー

TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

個人的には、重要な問題の解決に取り組んでいるチームに投資することに関心があります。具体的には、恵まれない人々、社会全般、環境などに影響を与えるチームです。こうしたチームがどんどん増えているので、この先がとても楽しみです。特に、いくつも会社を立ち上げてきた連続起業家にそうした人がたくさんいます。彼らは、イグジットを達成して高い利益を獲得し、今度はそのスキルを意味のある活動に活かしたいと思っています。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

この案件は数日前にクローズしたばかりでまだ発表していないのですが、当社のAIプラットフォームMotherbrainの判断で出資した企業です。誰もが「ああ、あれは本当に使いやすいよね」というようなものを作っている企業です。製品主導の企業が世界規模のユーザーベースを基盤に本業で力強い成長を遂げている典型的な例で、今すぐにでもこの企業と仕事を始めたくてウズウズしています。これより前に出資した企業で最も期待しているのは、Anyfin(エニーフィン)です。エニーフィンはストックホルムの第二世代チームの潜在能力を示す典型的な例で、スウェーデンのユニコーン企業iZettle、Klarna、Spotifyからスピンアウトしたチームです。エニーフィンは、最も必要としている人たちに向けにファイナンシャル・ウェルネス・サービスを構築するフィンテック企業です。借り換えによって利子率の軽減に真正面から取り組むサービスから始めて、この春にシリーズBの資金調達ラウンドで獲得した資金を元に、製品の拡充とマーケットの拡大を図ろうとしています。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。次の投資先を判断する際、通常どのようなことを検討しますか。

市場での経験とスタートアップとしての経験を兼ね備えたチームをぜひ見てみたいと思います。大半のチームは、どちらか一方の経験しかないのですが、私が見てみたいのは「この問題なら裏側まで知り尽くしているよ。その世界で生きてきたからね」という共同創業者と「このアイデアを形にする方法ならわかるよ」という共同創業者がどちらもいるようなチームです。この組み合わせは本当に強力です。また、消費者であれロングテール戦略を取るB2Bであれ、膨大な数の人や企業が直面している問題の解決に取り組んでいるチームに投資することにも注力しています。私にとっての絶対条件は「製品はコンシューマーグレードでなければならい」ということです。これは消費者にとっては当たり前ですが(ただし常にそうなっているとは限らない)、当社はB2Bの世界でも必ずこの条件に基づいて投資判断を下してきました。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

型にはまらない企業や人を見つけることが投資家の仕事です。そのため、競争が厳しいからといってあるカテゴリを完全に投資対象から除外することは難しいのですが、それでも、構造上の理由から勝者が全部または大部分を獲得することが簡単には想像できないセクターは常に存在します。人材採用や人材派遣、D2C、デジタルヘルスサービスなどがそうです。

TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

当社の戦略は、地元エコシステムへの投資は局所的に行い、欧州全体、特殊なケースでは米国にも投資するというものです。ですから、私が個人的に費やす時間は北欧地域の案件が多いものの、一緒に仕事をしている投資対象企業の半分以上は北欧諸国外の企業です。Motherbrainによって、投資対象企業が所在する地理的範囲はさらに広がり、所在地とは無関係に優れたスタートアップが見つかるようになりました。ですから、地元のエコシステム外の優れたチームにも定期的に投資しています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業界、または適していないと思われる業界は何ですか。御社のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

北欧諸国には優れた消費者向け製品を提供している企業が多数あります。具体的には、ストックホルムのフィンテック企業であるTink(ティンク)、Anyfin(エニーフィン)、Brite(ブライト)、フィンランドのゲーム企業であるSmall Giant Games(スモール・ジャイアント・ゲーム)、Reworks(リワークス)、Traplight(トラップライト)、コペンハーゲンのEdTech企業であるEduflow(エデュフロー)や、同じくコペンハーゲンのヘルステック企業であるCorti(コーティ)です。また、北欧地域の優れたエンジニアリング系の人材は、信じられないくらい強力なテックチームを作り出しています。例えばフィンランドのVarjo(ヴァルジョ)、Speechly(スピーチリー)、Robocorp(ロボコープ)などです。また、北欧では量子コンピューティングの分野でも興味深い企業(IQMなど)が登場しています。さらには、当社が長期にわたり大きな期待を寄せている北欧発のムーンショット企業もいくつかあります。Solein(ソレイン)、Einride(アインライド)、Heart Aerospace(ハート・エアロスペース)、Northvolt(ノースヴォルト)などの企業がその例です。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の投資環境と投資機会全体についてどのように考えるべきでしょうか。

北欧諸国は自国より大きい国々と競争を続けていますが、この傾向は今後も続くと思います。つまり投資機会はたくさんあるということです。エコシステムの成熟にともない、その質も向上していくことが、この傾向が継続する根拠になると思います。歴史的に見て、景気が悪化した時期には強いテック企業が登場してきました。経験豊富な起業家たちは、間違いなく、この大変な時期を最大限に活かす方法を模索していくでしょう。ですから、そうした起業家を支援するチャンスを逃さないように投資家たちがこの地域に注目しているのは当然のことだと思います。

今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

リモートワークを導入するチームはこれからますます増えていくと思います。ですが、ハブは、エコシステムの中で強力かつ重要な役割を果たし続けると思いますし、大都市での起業が大幅に減少することもないと思います。とはいえ、生活費の高い大都市を離れる人たちを責めることはできません。とはいえ、これまで地元だけで営業してきたチームが、新しい地域に進出していく傾向はどんどん強まっていくと思います。その結果として、新しい人材プールが出現し、それが長期的にはハブの数を増やすことになるでしょう。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス慣行の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

テック企業は全般的に有利な位置にいます。というのは、全般的にどのテック企業も、デジタル化に取り組んでいる(新型コロナウイルス感染症のせいでデジタル化が加速されているため、テック企業はその時流に乗っている)か、現代または未来の未開拓分野に取り組んでいるからです。後者の場合は当然、そうした未開拓分野のアイデアの中に「あれば便利」というものもあるため、消費者が経済的に苦しい状況では苦戦することになりますが、多くのサービスは長期的にはうまくいくと思っています。もちろん、イベントやエクササイズなど身体的な動きに関わるサービスの場合は、パンデミックに迅速に対応できないため、一時的に落ち込むでしょうが、こうした企業はもともと長期的なトレンドに賭けてきたため、状況が回復すればチャンスが巡ってくると思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も懸念していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社の戦略は新型コロナウイルス感染症の影響を受けていませんが、常に戦略に忠実にビジネスを行い、ランウェイにも留意するという意味で、油断を怠らないようにする契機にはなりました。そう、ファンドにもランウェイはあるのですよ。創業者に対しては、(1)選択肢を持ち続けられる(廃業という事態だけは回避できる)ようににランウェイを延長し、(2)その上でできる限り積極的になるように、とアドバイスしています。チームには、社内の意思決定においても、製品を市場に出してテストする場合も、迅速に行動するよう勧めています。当社のポートフォリオ企業の創業者たちにとって最大の懸念事項は「この状況」がいつまで続くのかという不安です。それに対しては、通常どおりに会社を運営して変化が起こるのを待つのではなく、自社が今いる市場で求められていることに意識を集中するようにアドバイスしています。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、そう思います。今、非常に好調な会社が何社かあります。当社が支援した食品配達のWolt(ウォルト)やモバイルゲーム企業のPopcore(ポップコア)、Reworks(リワークス)、Traplight(トラップライト)などです。こうしたタイプの企業にとっては特に、現在の状況は追い風になっています。そして、与えられた機会を活かして、驚異的な成長を遂げた優れた創業者たちがいます。

TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

医療提供者を含む公共部門がデジタル化を急ぐ努力をしている姿は新鮮でした。対応の遅れや保守的であることについて言い訳ばかりしてきた公共部門が突如として飛躍的な前進を遂げたのですから。彼ら自身、そのことを誇りに思っています。こうした動きを見ると、状況が回復すれば新たな意欲が生まれてくるという希望が持てます。

TC:TechCrunchの読者のみなさんに何か伝えたいことはありますか。

北欧諸国には、一般の人がデジタル化された日常を送るためにすばらしいデジタルツールを使用している事例がたくさんあります。創業者とビジネスリーダーのみなさんには、ぜひこれらの事例を見ていただき、他の地域でもこうしたツールを実装できないか検討していだきたいと思います。スカンジナビア諸国発のトレンドはファッションやインテリアデザインだけではありません。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュースウェーデン

画像クレジット:Everste / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

スウェーデンの自動運転車両開発EinrideもSPAC上場を検討中か

スウェーデンの自動運転車両開発スタートアップEinride(アインライド)は追加資金を模索することで、Oatly、Lidlとの提携で火がついた勢いを継続させようとしているようだ。

Einrideの計画に詳しい人物によると、同社は新たな資金ラウンドで7500万ドル(約81億円)を調達しようとしており、同時に特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じての上場の可能性も検討しているという。

未上場の企業と合併する上場企業というメカニズムのSPACは、モビリティの電動化に注力しているスタートアップによって米国の資本マーケットで存在感を増している。

Nikolaのような企業の上場の成功例(疑わしい主張にもかかわらず)がSPACブームに火をつけた。Canoo、Fisker Inc、ChargePoint、Lordstown Motorsなどは、2020年SPAC経由で上場した米国拠点のEV企業の一例だ。

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新しく作られたSPAC企業と異なり、Einrideはいくつかの基礎を持っている。同社はすでにスウェーデンのオーツミルクメーカーOatlyとの提携を通じて自社のテクノロジーの試験を行った。

Oatlyは2020年10月に、スウェーデンにある生産施設からの出荷にEinrideの電動トラックの使用を開始した。両社の声明によると、これまでにトラックは8600km超走行し、その結果、ディーゼルトラックに比べて1万500kgの二酸化炭素の排出を抑制した。

「持続可能性は我々が行うすべての根幹です。全面的に二酸化炭素排出を抑制するために懸命に取り組みます。ここには輸送にかかる二酸化炭素排出も含まれており、だからこそ電動車両への移行を進めています。電動車両の活用により輸送ルートでの二酸化炭素排出を87%抑制できます」とOatlyのサプライチェーン担当ディレクターSimon Broadbent(サイモン・ブロードベント)氏は当時の声明文で述べた。

Oatlyとの提携は始まりにすぎなかった。その提携が終了すると、Einrideは食品配送・ロジスティック会社Lidlや電気機械メーカーElectroluxといった他のスウェーデン企業とすぐに提携した。

大手自動車メーカーはそれぞれに電動と自動走行の計画を持っている。自動運転テクノロジーのデベロッパーArgoはFordとVW Groupからの投資のおかげでいまや企業価値は75億ドル(約8166億円)だ。VWのTraton Groupは2019年に発表した22億ドル(約2395億円)の投資を通じて低排出と電動化を推し進めている。

関連記事:フォードとVWが出資する自動運転スタートアップArgo AIの評価額は7830億円

Daimler、Paccar、Volvoもそれぞれ計画を持っている

それは自動走行の電動化された輸送に注がれている資金のうわべを撫でているにすぎない。もちろん、Teslaもセミトラックでこのゲームに参加している。そして中国ではPlus AIがManbang、Suning、FAW Jiefangの数多くの車両を自動化している。

これらの資金のすべては自動走行の電動化された車両マーケットでのシェアを獲得するのが目的だ。コンサル会社McKinseyはこの手の車両がトラック産業で1000億ドル(約10兆8876億円)超を節約すると予測した。2600億ドル(約28兆3075億円)の米国のトラック市場だけでもかなり大きな潜在的機会だ。McKinseyによると、世界規模では事業者はトラック輸送に約1兆2000億ドル(約130兆6500億円)を費やしている。

業界にもたらされるメリットは財務上のものだけではない。トラック輸送は陸上、鉄道、航空の運輸を含む輸送部門における温室効果ガス排出量の大きな部分を占める。2016年にトラック輸送と交通は世界の温室効果ガス排出の約24%を占めた。その数字は着実に大きくなってきている。

輸送部門からの二酸化炭素排出の削減は、環境上持続可能な未来に向けた大きな一歩となるはずだ。

ベンチャー投資家がこうした企業へ投資しようと先を争うのは不思議ではない。EinrideはEQT VenturesとNordicNinja VCに頼っている。NordicNinja VCはパナソニック、ホンダ、オムロン、国際協力銀行などが支援しているファンドだ。Ericsson Ventures、Norrsken Foundation、Plum Alley Investments、Plug and Play Venturesからの出資も含め、Einrideはこれまでに3200万ドル(約35億円)を調達している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:EinrideSPACスウェーデン自動運転資金調達

画像クレジット:Einride

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

スウェーデンのデジタルバンクNorthmillが31.4億円を調達

欧州3カ国で約20万人の顧客を持つスウェーデンのチャレンジャーバンクNorthmill Bankが、新たに約3000万ドル(約31億4000万円)を調達した。

このラウンドをリードしたのはRutger Arnhult傘下のスウェーデンの投資会社であるM2 Asset Managementと、資産運用会社のCoeliだ。今回の資金投入は、今後の地域拡大や新製品の開発を加速させるために使われる。注目すべきは、Northmillは天然ガス市場への参入を目指しており、新たに10の市場に参入する計画が含まれていることだ。次はノルウェーを予定している。

2006年に設立されNorthmill Bankは、現在のところスウェーデン、ノルウェー、フィンランドで利用可能で、実店舗を持つ既存の銀行やLunar、Revolut、Klarna(母国スウェーデンとドイツで銀行を営業している)などと競合している。

顧客が既存のローン、クレジットを統合し、金利の支払いを下げることを約束するNorthmillの 「Reduce」はAnyfinの製品と競合する。「現在、最も急速に成長している製品であり、主な原動力となっているReduceは既存のクレジット、分割払い、クレジットカードへの関心を低下させています」と、Northmillの広報担当者は説明している。

約15年前に設立され、以前はクレジットプロバイダーとして営業していたNorthmillは、2019年にスウェーデン金融監督庁の規制を受け、完全な銀行ライセンスを確保した。同銀行は150人の従業員を抱え、貯蓄、クレジット、支払い、保険を提供している。より一般的にいえば、同社は欧州の新規参入企業の大半とは異なる緩やかな道を歩んでおり、その成長を投資に頼ることは少なく、ほぼ最初から利益を上げていると主張している。

M2 Assets Managementの取締役会会長であるRutger Arnhult(ルトガー・アーンハルト)氏は次のように語っている。「NorthmillはBankは実績ある持続可能なビジネスモデルを持つ収益性の高い企業であり、今日のテクノロジー投資の中でも際立っています。私たちはしばらくの間、彼らの経過を追ってきましたが、創業者や会社に感銘を受けています。銀行市場は変化の途上にあり、新しいデジタルの現実に最もうまく適応できる者が勝者となるでしょう。私にとって、これは長期的なオーナーがいるテック企業への投資であり、彼らはまだ旅の始まりにいます。この銀行には大きな成長の可能性があると思います」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Northmill Bankスウェーデン銀行

画像クレジット:Northmill Bank

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(文:Steve O’Hear、翻訳:塚本直樹 / Twitter