1200万人の科学者が集うソーシャルネットワーク―、ResearchGateが5260万ドルを調達

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プロフェッショナルの世界では、LinkedInがソーシャルネットワーク最大手の座に君臨し続けているが、それぞれの業界に絞ってLinkedInに対抗しようするサービスも増えてきた。ベルリン発のスタートアップResearchGateは、科学者たちがつながり合い、研究に関する議論を交わせるようなソーシャルネットワークサービスを提供している。同社はシリーズDで5260万ドルを調達したと本日発表し、これでResearchGateの累計調達額は1億ドルを超えた。

最新のラウンドには、戦略投資家から金融機関までそうそうたる顔ぶれが揃い、Wellcome TrustやGoldman Sachs Investment Partners、Four Rivers Group、Ashton Kutcher、LVMH、Xavier Niel、Bill Gates、Benchmark、Founders Fundなどが参加していた。なお、この中には(Bill GatesやBenchmarkFounders Fundなど)以前のラウンドに参加していた投資家もいる。

ResearchGateは、既に調達資金を使ってProjectsなどの新機能を開発し、プラットフォームの機能拡大に努めている。

「既に調達資金を使って」というのは重要なフレーズだ。というのも、ResearchGateの共同ファウンダーでCEOのIjad Madischによれば、実はシリーズDは2015年の11月の時点でクローズしていたのだ(さらに、科学者が進行中の研究をアップロードしたり更新したりできる先述のProjectsという機能は、2016年3月にローンチされていた)。それにも関わらず、同社はこれまで資金調達には触れず、この度2015年の決算をまとめなければいけない段階(ドイツでは全ての企業が対象となっている)になって初めて詳細が明らかになった。

ユーザー数という観点で見れば、ResearchGateの1200万人という数字は、LinkedInのユーザー数4億6700万人には遠くおよばない(なお、ResearchGateのサービスは全て無料で、同社は求人などの広告から収益を挙げている。そして広告主はResearchGateを利用することで、自分たちがリーチしたいと考えているターゲットに直接広告を表示することができる)。

しかしユーザー数で劣っている部分は、エンゲージメントの高さや素晴らしいターゲット層、さらには科学論文に対する新たなアプローチ、情報共有といったサービスの質でカバーされている。ResearchGateのユーザーである科学者には、一般的に「科学」というカテゴリーに含まれるさまざまな分野をカバーした、営利・非営利両団体の学者や学生、研究者や博士が含まれており、月々にアップロードされる論文の数は250万本におよぶ。

Madischは同社が急速に成長を続けていると話しており、実際に250万本という研究論文の数はResearchGate設立から4年間の間にアップロードされた論文の数と同じだ。そういう意味で、同社は科学者向けのソーシャルサービスでありながら、データのレポジトリとしても利用されている。

(そう考えると、科学者にとってResearchGateは、LinkedInのようなサービスに比べると大変便利なものだ。というのも、LinkedInのコンテンツは、彼らの仕事の核となるデータよりも、仕事探しであったり、考えやイメージを形作るところに重きが置かれている)

次に重要なのがコンテンツの性質だ。科学者がアイディアを共有したり、議論を交わしたり、他の科学者の研究内容にアクセスしたりできるようなサービスは、もちろんResearchGate以外にも存在する。具体的には、オンライン・オフラインの学術誌や、Google Scholarなどが彼らの競合にあたるだろう。しかし、これまでの科学の世界では、成功した研究を公開することが重視されてきた一方で、ResearchGateは失敗した研究の内容も共有できるプラットフォームであり、そこが他のサービスとは違うのだとMadischは説明する。

「ResearchGateのファウンダーは全員科学者で、私たちは今日の学術誌の問題点を理解しています。数ある問題の中でも1番大きなものが、一般に知れ渡っている成功例ではなく、公になっていない失敗例が共有されていないことなんです。ResearchGateはまさにその問題を解決しようとしています」と彼は話す。それを可能にする機能のひとつがProjectsだ。ユーザーは現在取り組んでいる実験内容をアップロードし、その進捗を公開することができるため、結果がどうなるかは誰にもわからない。

なぜこれまで誰も失敗に終わった研究を公開してこなかったのだろうか?「それは難しい質問ですね。少なくとも言えるのは、科学者としてどの研究を発表して、どれを発表しないかというのを決めなければならず、これまでは失敗したものよりも、成功したものに価値があると考えられてきました」と彼は語る。「しかし個人的には、その考えはおかしいと思っています。失敗経験は、成功経験と同じくらい大切で、これこそ私たちが変えようとしている考え方なんです」。

ResearchGateは、これからも科学者の考え方を変えることに注力していく傍ら、将来的には他のどのような分野に進出していきたいかということについても考えはじめている。そしてターゲット候補には、教育や法律以外にも、テクノロジーなどの分野が含まれている。その一方で彼らが進出を検討している分野は決して目新しいものではなく、ある分野「専門」のソーシャルネットワークというもの自体も以前から存在しており、釣りからコーディングまで、共通のトピックについて語り合ったり、データを収集・共有したりしている強固なコミュニティは見渡せばいくらでもある。

しかし、それだけ他のサービスが存在するということはチャンスがある証拠でもあり、投資家はそこに注目しているのだ。

「ResearchGateは革新的かつ広範に利用されているプラットフォームで、世界中の研究者たちをつなぎ合わせています。研究のアイディアや結果を共有できるスペースを提供することで、彼らは科学者が研究を発展させ、社会のためになる応用方法を開発する手助けをしているんです」とWellcome Trustの投資部門のシニアメンバーであるGeoffrey Loveは声明の中で語った。

「科学の世界におけるイノベーションの発生過程は、個々人による実験からネットワークを活用したコラボレーションへと急速に変わってきています。1200万人ものユーザーを武器に、ResearchGateはこの変化を促進する主要なプレイヤーへと成長しました」とGoldman Sachs Investment Partners Venture Capital & Growth Equityの共同代表であるIan Friedmanは声明の中で語った。「研究方法と同じくらい重要な事項に変化をもたらそうとしているチームとパートナーを組むというのは、めったにない機会ですし、科学の進歩のスピードを加速させるというミッションをResearchGateが実現していく手助けができることを、大変光栄に思っています」。

「ResearchGateのように、ネットワーク効果がビジネスモデルの核にあるような企業が成功するためには、いかに提供するサービスがユーザーのためになるかということを常に念頭に置かなければいけません」とBenchmarkジェネラルパートナー兼ResearchGate取締役のMatt Cohlerは声明の中で語った。「そして同時に、彼らは収益もあげなければいけません。ResearchGateは自分たちのミッションに忠実に、科学が進歩する場としてのネットワークの成長に寄与する、持続可能なビジネスモデルをつくり上げてきました」。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

SpaceX、回収したFalcon 9の再利用も「間もなく」

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SpaceXといえば、打ち上げたロケットを安定的に回収している。しかし目的は回収ではなく再利用だ。その再利用がいつになるのかと期待して待っている人に朗報がもたらされた。回収したロケットの再利用に向けてのステップとして、Falcon 9ロケットの静止状態におけるエンジン点火実験に成功したそうなのだ。

点火実験に成功したのは、昨年4月に行った国際宇宙ステーション補給ミッションで使用したもので、海上のドローン船によってはじめて回収に成功したロケットだ。共同ファウンダー兼CEOのElon Muskは、当時からこのロケットを再利用に用いる可能性について言及していた。はやければ2016年の6月にも再利用を行えるのではないかというような楽観的な見通しも語っていた。予定日については大幅に遅れているわけだが、これは無理めの予定を発表するElon Muskにとって、とくに珍しいことではない。

もちろんMuskたちも、予定の遅れを当然であると開き直っているわけではない。SpaceXは「人生はままならぬものだ」というようなことを言っている。Muskの徹底的楽天主義以外にも、9月にはロケットの爆発事故があり、これによって5ヵ月の間はロケットを飛ばすこともできなくなった。

それはとかく、ロケットの再利用はヨーロッパで衛星事業を手がけるSESのミッションで行われる予定だとのこと。詳細は現在詰めているところだが、はやければ3月にも発射を行いたい(今年1月に行われたIridium-1のミッション中にも、初めてとなる再利用を間もなく行う予定である旨をアナウンスしていた)としているようだ。

現在のロケットについて、再利用回数は2、3回の予定となっている。回数が少ないようではあるが、SpaceXはそれにより打ち上げコストは30%程度に抑えられるようになるとしている。すなわち打ち上げを繰り返すほどに、SpaceXのコストメリットが出てくると期待されているわけだ。

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(翻訳:Maeda, H

わずか20セントの子どもの回転おもちゃで1000ドル相当の医学用遠心分離器を作れた

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高速回転により液体中の物質を分離する遠心分離器という器具は、世界中の医学研究所にある。しかしその良いものは2000ドルぐらいするし、もちろん電気が必要だ。お金も電気も、世界の最貧国の田舎の病院にはないだろう。スタンフォード大学の研究者たちが作った代替品は、わずか数セントの費用でできるし、充電も要らない。彼らのヒントとなった子どもの玩具は、遠心分離器として意外にも高品質なのだ。

その回転玩具は、単純な構造だ。ボタンのような小さなディスク(円盤)に、糸を2本通す。その糸をゆっくり引くと、ボタンは相当速く回り始める。子どものころ自分で作った方も多いと思うが、研究者の一人も、自分の子どものころを思い出しながら、そのPaperfugeと呼ばれる器具を作った。

彼は大学が作ったビデオの中でこう言っている: “これは、ぼくが子どものころ遊んだおもちゃだ。でも、その回転速度を測ったことはなかった。そこで、試しに高速カメラで撮ってみたんだが、それを見たときは自分の目が信じられなくなった”。

その回転おもちゃは、10000〜15000RPMで回転していた。それはまさに、遠心分離器の回転速度だ。その後チームは、回転おもちゃの動きを詳しく研究し、それが。線形の動きを回転運動に変換する、すばらしく効率の良い方法であることを発見した。

チームは独自の回転おもちゃを作り、それに紙製のディスクを取り付け、そこに血液などの液体を入れたバイアル(小型ガラス瓶)をはめられるようにした。糸には扱いやすいようにハンドルをつけ、1〜2分糸を引き続けると、1ドルにも満たないその器具が、その何千倍以上もするデバイスの仕事を見事に演じた。回転数は125000RPM、30000Gに達した。

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“このような、お遊びのような試行方法はきわめて有意義だ。正しい解はどうあるべき、という固定観念から、われわれを解放してくれる”、指導教授(TEDのフェロー)のManu Prakashはそう語る。

実用試験は、マダガスカルで現地のパラメディカルたちと一緒に行った。そこでは、血液からマラリア原虫を分離することに成功した。次は、もっと公式の臨床試験が待っている。

このようなシンプルで安上がりな実験器具は、前にもあったな、と思われた方は、きっとFoldscopeを見た方だろう。これもやはり、Prakashのプロジェクトだ。それはボール紙を折りたたんで作った顕微鏡で、製品化されたものでも数ドルで買える。これを使えば、安い費用で科学研究や医学の研究を行うことができる。

PrakashらのチームによるPaperfugeとその開発の詳細は、最新号のNature Biomedical Engineeringに載っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

NASA、GIF公開のためGiphyにNASA公式チャネルを開設

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NASAの仕事は太陽系を探索したり、地球についてさまざま重要な研究を行うにとどまらない。宇宙の様子を多くの人に伝えることも彼らのミッションのひとつだ。その中でビジュアルな「動き」を伝えるにはGIFが最適ツールのひとつだろう。NASAもそれに同意するようで、GiphyのNASAチャネルができた。過去のものから最新のものまで、数百ものGIFが掲載されている。

過去のアーカイブといえば、まずこうしたものが頭に浮かぶだろう。


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あるいは「魅惑的」という言葉はきっとこういう写真のためにあるのだと思う。


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NASAはもちろんお堅いばかりではない。


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出典となる科学情報ないしニュースへのリンクのついたものも多い。GIFを眺めながらお勉強までできてしまうことになる。

現在のところは500枚程度が公開されているようだ。もちろんこれは増えていくことになるのだろう。ソーシャルメディアなどで共有しようとする場合、#nasagifというタグを使っている人が多いようだ。

参考までにお伝えしておくと、Pinterest上にもNASAページがある。

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(翻訳:Maeda, H

元素周期表に加わった最新4元素

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ニホニウム、モスコビウム、テネシン、そしてオガネソンの名前が公式に決定されることとなった。国際純正・応用化学連合(IUPAC)が、周期表上の113番、115番、117番、および118番の元素名を公式に認めることとなった(114番および116番はフレロビウムとリバモリウムで、2012年に周期表に登録された)のだ。

今回、公式に名前が認められた4つの元素はいずれも2002年から2010年の間に初めて生成されたもので、IUPACが昨年12月に公式に認めたものだ。それぞれ命名権を認められた研究者たちが、名前の候補を申請していた。

ここ5ヵ月は、上記の超重元素についてパブリックコメント期間とされていた。期間中にはニューヨーク・タイムズの記事にもある通り、それぞれの名前についてもいろいろと意見を述べる人たちが多かった。たとえばテリー・プラチェットにちなんだ「オクタリン」や、モーターヘッドの創設者で最近亡くなったレミー・キルミスターの名前にちなんだ「レミミウム」とすべきであるとする声もあった(「リケニウム」や「アダマンチウム」、あるいは「トランピウム」が良いという意見もあった)。

結局は、言ってみれば常識的な線に落ち着いたと言うこともできよう。「ニホニウム」はJapanを日本語で表現する際の「ニホン」から来ているものだ。「オガネソン」はロシアの科学者であるYuri Oganessianからとったもので、「モスコビウム」と「テネシン」はそれぞれ都市や州の名前から生じたものだ。

今回の元素はいずれも周期表で7行目に位置し、元素記号はNh、Mc、Ts、そしてOgとなる。

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(翻訳:Maeda, H

デザインベース学習が子供たちに主体性を獲得させる

TORONTO, ON- JANUARY 17 The "Neat Freaks" from Donwood Park Jr. P.S. in Scarborough (L-R) Muskaan Butt, and Aneekah Sattar (both 11 years old) prepare their teams robot.  LEGO robots designed by some of Ontario's brightest young minds take over the joint Durham College (DC) and the University of Ontario Institute of Technology (UOIT) campus, as both institutions host the annual FIRST LEGO League's (FLL) Ontario East Provincial Championships.    January 17, 2015.        (David Cooper/Toronto Star via Getty Images)

【編集部注】著者のGian Paolo Bassi氏はSolidWorksのCEO

その年代の子供たちのほとんどが、デジタル機器に触れながらも、しばしば愚かなゲームをしたり猫の動画を見たりしている一方で、8つの小学校の教師たちと164人の4年ならびに5年生たちは、同じデバイスを新しい学びのために使っている。テキサス州とバージニア州の15の教室では、生徒たちは製造デザインとデジタル製造プロセスを使って、物理的なモデルを作成し、基礎となる数学的概念を学習して、意味のある文脈でそれらを利用している。

このFabLab Classroomは、STEM教育における「E」(Science、Technology、Engineering、MathのE)に焦点を当てた全米科学財団のパイロットプロジェクトである。このプロジェクトはノーステキサス大学で始まった。マサチューセッツ工科大学(MIT)で始められたNeil GershenfeldのFab Labの縮小版をモデルにしている。生徒たちはコンピュータ上で自分たちのプロジェクトを3Dで設計し、その後シンプルな素材を使用してアイテムを作る。

生徒たちや教師たちに利用可能な広い範囲のデジタルツールと設備が、K-12教育システム(小学校1年から高校3年までの12年間の教育システムの総称)を変容させている。Fab Labsとメイカースペースが子供たちに、設計し考案し学ぶことができる創造的な場所を提供する。ビデオゲーム(例えばMinecraft)とバーチャルリアリティ(VR)が、デザインベース学習ツール(design-based learning tools)として採用されている。学校で、共同作業スペースで、そして自宅で、3Dプリンタはより容易に利用可能になっている。こうしたすべてのツールとSTEM教育における幅広い取り組みが、とても若い年齢の子供たちに3D設計を行わせている。

自分自身が単なる消費者ではないことに子供たちが気がつくことを、いかに学校が手助けできるかが焦点である。

STEMに対する国家的な興味と熱意に不足はない。 オバマ大統領はよりSTEMに焦点を当てたカリキュラムが、アメリカの教育の困難とアメリカの製造業の衰退の是正を助けることができると考えている。米国教育省の事務次官Jim Sheltonはこう語る「STEM教育は全ての生徒にとって、彼らがこの先何をしたいかに関わらず重要です」

STEMの支持者たちは、新しい種類のツール、機械、および方法へのアクセスが増えることで、若者たちが触発されていると信じている。それは単に製造の民主化だろうか?それとも、メイカーマインドセットとハンズオン手段の更なる開放と、デザインベース教育による消費者から生産者への急激なメンタルシフトを引き起こすのだろうか?

「行動主体性の感覚」によって動かされる

子供の学問的な旅の早期に、これらのツールを提供するようにシフトすることで、私たちは単にデザインベース学習の大いなる機会を与えているだけではなく、生徒たちが自信をもってデザインと製作に取り組む能力の開発を助ける「行動主体性の感覚*」を身につけさせているのだ。ハーバード教育学大学院のAgency by Design(デザインによる行動主体性)プロジェクトによれば:

「メイカー中心教育の重要な目標は、若者や大人たちに、自分の世界を構築し形を整えるための力が与えられた(エンパワーされた)気持ちにさせる手助けをすることです。こうしたメイカーエンパワーメントの感覚の獲得は、個々人の物理的概念的環境の中のデザインを捉え関わることを学ぶことによって(別の言い方をすれば、デザインに対する感受性を磨くことによって)強く促進されます。この感受性は、若者や大人たちが物やシステムのデザインを間近に観察し熟考するとき、デザインの複雑さを探求するとき、そして自らを自分たちの世界のデザイナーであると理解するときに身に付くのです 」。

私はこれらのテーマを日々3D CADの顧客との会話の中で見聞きする。特に最近の大学卒業生たちからだが、K-12セグメントで働く私たちの教育チームからも見聞きするのだ。

それがSTEMと呼ばれようが、より包括的にSTEAM(AをArtのために追加)と呼ばれようが、生徒たちは真に学びに打ち込んでいる。生徒たちが教育レッスンを活気のあるものにする新しい仕組みで触発されている姿を見ることは心強い。たとえば新しく急速に拡張されているGoogle Expeditionsパイオニアプログラム(Google Cardboardを使って教師たちが生徒たちにVR体験を与える手助けをする)などだ。この没入的3D体験は、海底から火星の表面に至る仮想の旅を可能にする。

FIRSTロボット競技会では、Agency by Designが「デザインへの感受性」と呼ぶ活動に、米国の78000人以上の生徒が活発に参加している。生徒たちは、ボールを救い上げて投げたり、障害物を飛び越えたり、一見不可能な動作を行ったりといった、すべてが膨大なSTEM学習の成果を編みあげたメイカー精神の下で実現されるロボットを作るために、実世界に対する計算を行っている。

米国の教育ニュースをカバーする非営利、無党派のサイトThe 74によれば、ニューオーリンズのBricolage Academyの教室には欠けているものがあるらしい:椅子だ。最近では、The Maker Movement Is About More Than Science and Math — But Is All This Tinkering Really Effective?(メイカー運動は科学と数学以上のものだ — しかしこのティンカリングは本当に効果的なのか?)という表題のもとに、Mark Keierleberが次のような記事を書いている、「机の前に紙と鉛筆を持って座る代わりに、生徒たちは作業台の前に立ちLEGOやロボット、木のブロック、そして回路基板でティンカリング(いろいろ工夫しながら作ったり試したりすること)をしています」。

Bricolage Academyの生徒たちは、テキサス州とバージニア州の164人の生徒たちと同様に、氷山の一角に過ぎない。その氷山はいま、STEMのパワーやメイカー運動、そして新しいパーソナライズド学習を混ぜあわせた教育方法などを体験させることを始めることで、何百万人もの更なる生徒たちを海面へと浮かび上がらせようとしている。

これらの生徒たちと教師たちが使う言葉は、オバマ大統領や、教育省、 Agency by Designプロジェクトが使っているものとは異なるかもしれないが、伝えているメッセージは同じである:「驚くようなものを作る方法を学びたい」。

それは単にテクノロジーあるいはSTEMにフォーカスしたものではなく、それどころかメイカーマインドセットにだけ注目したものでもない。そうではなく、自分自身が単なる消費者ではないことに子供たちが気がつくことを、いかに学校が手助けできるかが焦点である。 彼らはデザイナーで、クリエイターで、メイカーで、そしてプロデューサーなのだ。今日の5年生は、生涯を通したSTEM学習者となるだろう。

訳注:*行動主体性の感覚:sense of agency(自分自身の行動を人からの指示ではなく自分自身で決めていく感覚)

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(翻訳:Sako)