2024年発売予定の新型電動4ドアGT「Polestar 5」は軽量で高剛性のアルミニウム接着構造プラットフォームを採用

2024年末に発売されるPolestar 5(ポールスター5)は、それ以前のモデルとはまったく異なる作りになるようだ。スウェーデンに本拠を置く電気自動車メーカーのPolestar(ポールスター)は現地時間2月15日、今後登場するこの電動パフォーマンス4ドアGTが、Polestar 1や2のようなスチール溶接ではなく、まったく新しい軽量なアルミニウム接着構造プラットフォームを採用すると発表した。

画像クレジット:Polestar

アルミニウムを溶接すると一般的に降伏強度が半分になるため、同じ性能を得るためには2倍の材料を使用しなければならず、そもそも軽量な金属を使用する目的が失われてしまう。一方、アルミ製の部品を接着(ネジや接着剤で取付)すると、材料の使用量は減るが、生産時間は長くなる。

「接着剤を硬化させるためのサイクルタイムは、一般的な溶接セルと比較するとかなり長くなります」と、Polestarの車両エンジニアリング担当ディレクターであるSteve Swift(スティーブ・スウィフト)氏はEngadgetにメールで語り「製造の一貫性をコントロールする戦略は、従来の製造方法とは大きく異なります」と続けた。

アルミニウムを使用することによる素材の優位性を維持しつつ、部品を接着することによる生産上の不利を最小限に抑えるために、Polestarのエンジニアリングチームは、ボディとプラットフォームを一斉に組み立てる、より高速な製造プロセスを開発した。

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「プロジェクトの初期段階で、我々が求める運動性能を実現するために必要な構造剛性の目標値を固めることができました」と、スウィフト氏は述べ、ユニボディ構造の利点を説明する。

「そのため、性能を実現するために後から設計を変更する必要はなくなります」と、同氏は認めている。「従来の戦略では、プラットフォームとボディの性能に対する貢献度がアンバランスであることが判明した場合、妥協や修正が必要になります」。

この設計による時間短縮の効果はすでに生まれており、開発開始からわずか18カ月で、初期段階の一連の試作品を製造・納入することができたという。スウィフト氏は、このプロセスによって「必要となる一部の生産ツールの製作期間も短縮できる」と期待している。さらに、Polestarは火曜日の発表で、5は「伝統的な2人乗りのスポーツカーやスーパーカーよりも優れたねじり剛性を持つように設計されている」と言及し「より小さなセグメントの車よりも軽い重量になることが予想される」と述べている。これによって移動する車両の質量が減るため、航続距離が伸び、ハンドリングも改善されるはずだ。

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この技術は、Polestar 2の生産にさかのぼって適用することはできないが、Polestar 5での成功をきっかけに、将来のプロジェクトにも適用される可能性はある。「まだ何も研究開発していませんが、私たちはその可能性を夢見ています」と、スウィフト氏は語っている。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したAndrew Tarantolaは、Engadgetの編集主任。

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(文:Andrew Tarantola、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

九州大学ら研究チーム、水素による破壊を防止し高強度アルミニウム合金をさらに高性能化する方法を確立

九州大学ら研究チーム、水素による破壊を防止し高強度アルミニウム合金をさらに高性能化する方法を確立

九州大学(戸田裕之主幹教授、王亜飛特任助教)は2月7日、岩手大学京都大学高輝度光科学研究センターと共同で、高強度アルミニウム合金に脆弱化をもたらす水素に対処し、さらなる高性能化をもたらす手法を確立したと発表した。これにより、20世紀初頭からあまり進んでこなかったアルミニウム合金の高強度化が大きく発展することになる。

金属に水素が入り込むと、「水素脆化」という現象により強度が低下するという。アルミニウムも水素脆化の影響を受ける。水素を取り除くことができれば強度は増すが、水素はもっとも小さな元素であるため、その存在の可視化や解析は極めて困難であり研究は進まず、1900年代初頭から飛躍的に強度を増した鉄鋼に対して、アルミニウムの進化は鈍かった。

九州大学ら研究チーム、水素による破壊を防止し高強度アルミニウム合金をさらに高性能化する方法を確立

金属材料の強度向上の歴史

そんな中、同研究グループは2020年、大型放射光施設SPring-8で3D画像を連続的に撮影する4D観察と、スーパーコンピューターによる原子シミュレーションにより、水素脆化を引き起こしているのがナノ粒子であることを突き止めた。このナノ粒子には、アルミニウム内のほとんどの水素が集まっていた。その水素の集中によりナノ粒子は自発的に崩壊し、アルミニウムが破壊される。アルミニウムから水素自体を取り除くことはきわめて難しい。そこで研究グループは、ナノ粒子よりも水素を引く付けやすいものを添加することを考え、研究を進めた。その結果、意外にもアルミニウム、鉄、銅という平凡な元素を含むミクロ粒子に、水素を強力に引きつける力があることがわかった。

この「水素脆化防止剤」を導入すると、ナノ粒子に引きつけられた水素は、94.5%から34.6%に減少した。しかし、今度は大量の水素を引きつけたミクロ粒子が水素脆化を引き起こすのではないかと疑問を抱いた研究グループは、再び4D観察によりミクロ粒子の破壊挙動を確かめたところ、水素脆化防止剤による破壊は見られなかった。

九州大学ら研究チーム、水素による破壊を防止し高強度アルミニウム合金をさらに高性能化する方法を確立

特に航空産業では、アルミニウムに代わって炭素繊維複合材料が使われるようになっているが、製造・加工・修理のコストと信頼性の面から、軽量で高強度なアルミニウム合金への期待は高い。この手法を用いることで、アルミニウム合金はより強くなり、より薄く延ばすことも可能となり、利用価値は高まる。

また、リサイクルされたアルミニウムの場合、どうしても鉄が混入しアルミニウムの性能を落とすという課題がある。そのためにアルミニウムのリサイクルが拡大しない要因になっているという。しかしこの研究成果を応用して、「リサイクル時に増える有害な鉄を有益な水素脆化防止剤として活用することで、高強度なアルミニウムのリサイクルを促進する効果も期待されます」と研究グループは話す。

現在は、アルミニウムの水素脆化を防ぐさらに有効なミクロ粒子を探すべく、原子レベルの大規模シミュレーションによる探索を進めているとのことだ。