ニオイを可視化する「小型ニオイセンサー」のアロマビットが3億円調達、高度化技術開発と量産化加速

ニオイを可視化する「小型ニオセンサー」のアロマビットが3億円調達、高度化技術開発と量産化加速

小型ニオイセンサーと同センサーを用いたサービスを企画・開発するアロマビットは2月9日、第三者割当増資による3億円の資金調達を発表した。引受先はエプソンクロスインベストメントの出資するEP-GB投資事業有限責任組合、京セラ、テックアクセル1号投資事業有限責任組合(テックアクセルベンチャーズ)。

2014年2月設立のアロマビットが開発する小型ニオイセンサーは、従来からある特定物質を検知するガスセンサーと異なり、生物の嗅覚のように、様々なニオイを入力すると可視化パターンを出力する、ニオイの情報化を初めて実現する小型ニオイセンサー。

調達した資金は、今後の小型ニオイセンサーの高機能化・量産化、事業開発などにあてる。高度なもの作りで強みを持つ大手電子機器企業と協業を進め、小型ニオイセンサーの高度化技術の開発と量産化を加速していく。

また、ニオイセンサーによって初めて実現できるデジタルニオイデータベースを駆使した新製品・新サービスの開発、営業・マーケッティング体制のグローバル対応化、などについても強化・拡充していく予定。

アロマビットが掲げるビジョン「ニオイイメージング技術を通して、ニオイ・カオリが可視化された世界を実現し、より豊かな社会を実現する」を追求していくとしている。

またアロマビットは、6×3mmのシリコンチップ上に80素子(ニオイ感応膜5膜種類×1、膜種あたり16素子)を配したシリコンCMOS型センサーモジュール開発キット「5C-SSM-H1」を1月より販売済み(アロマビット子会社アロマビットシリコンセンサテクノロジーが販売担当)。

アロマビットは現在、QCM(水晶振動子)型とシリコンCMOS型の2種類のセンサー素子を用いたニオイセンサーを開発しており、シリコンCMOS型ニオイセンサーの販売開始によって、QCM型ニオイセンサーでは価格面や使用環境面の理由から搭載が困難であったモバイル、モビリティ、家電、などハイボリュームのコンシューマー用途向けに用途市場の拡大が期待されるとしている。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:アロマビット資金調達(用語)ニオイセンサー日本(国・地域)

ニオイ可視化センサーのアロマビットがソニーの新設ファンドから1億円を追加調達

ニオイを可視化するセンサーを開発し、関連サービスを提供するアロマビットは11月11日、Sony Innovation Fund by IGV(ソニーと大和キャピタル・ホールディングスが合弁で6月に立ち上げた新設ファンド)を引受先とした第三者割当増資の実施により、1億円を調達したことを明らかにした。

アロマビットは10月21日に日本たばこ産業およびEast Venturesから総額3.5億円の調達を発表しており、本ラウンドの調達金額は合計で4.5億円となる。また同社は3月にもソニーが運営するSony Innovation Fundから出資を受けたと発表している。

本誌でも何度か紹介してきたとおり、アロマビットが開発する小型ニオイイメージングセンサーは、さまざまなニオイの成分を複数の吸着膜で吸着し、重さの変化をセンサーで読み取ってパターンとして出力することで、ニオイのパターンを「可視化」するというものだ。従来のガスセンサーが特定の成分にだけ反応していたのと比べて、より生物の鼻に近い判断が可能となる。

同社は7月に、半導体素子を使った、より小型で高解像度のニオイセンサーの開発強化を発表している。感度が高い従来の水晶振動子型と並行して、高解像度・超小型のシリコンCMOS型センサーにより、スマホやIoT機器にも搭載可能なニオイセンサーの実用化を目指している。

アロマビット代表取締役の黒木俊一郎氏は、「顧客からのヒアリングによれば、次世代モビリティや自動運転、スマートファクトリー向けに、ニオイセンサーでなければ解決できない需要が明確になってきている」と述べている。世界的なハイテク機器メーカーやIT企業などから、ニオイセンサーのハードだけでなく、ニオイデータの活用についても協業案件が増えているとのことで、「今まさに、小型ニオイセンサー市場は立ち上がりのフェーズを迎えている」と黒木氏は見ている。

調達資金については前回発表と同じく、ニオイイメージングセンサーの開発強化・量産体制の整備とニオイデータベースによる新製品・サービスの開発強化、営業・マーケティング体制のグローバル展開へ投資していくということだ。

なお、アロマビットでは今回の発表に合わせて、ニオイの可視化・データ化テクノロジーがもたらす暮らしをイメージした動画を公開した。動画では、同社が実現しようとしている「ニオイ・カオリが可視化された世界」の一端を垣間見ることができる。

ニオイ可視化センサーのアロマビットが日本たばこ産業、East Venturesから資金調達

ニオイを可視化するセンサーを開発し、関連サービスを提供するアロマビットは10月21日、日本たばこ産業(JT)および既存株主のEast Venturesを引受先として、総額3億5000万円を上限とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

アロマビットが開発するのは、小型ニオイイメージングセンサー。さまざまなニオイの成分を複数の吸着膜で吸着し、重さの変化をセンサーで読み取ってパターンとして出力することで、ニオイのパターンを「可視化」するというものだ。従来のガスセンサーが特定の成分にだけ反応していたのと比べて、より生物の鼻に近い判断が可能となる。

2014年12月の創業以来、水晶振動子をセンサー素子として利用した高感度ニオイセンサー製品の開発・実用化を行ってきた同社は、より小型でニオイ解像度の高いシリコンCMOS型センサーを豊橋技術科学大学と共同開発し、7月に設立を発表した子会社を通じて実用化を図っている。

アロマビットによれば同社の製品・サービスは、ニオイが密接に関連しそうな業界、例えば食品、日用品、コスメといった領域だけでなく、産業機械やロボティクス、モビリティや見守り・ヘルスケア、農業、マーケティングといった分野からも問い合わせや商談が増えているとのこと。国内だけでなく国外からの引き合いも多いという。

アロマビットは、2015年にEast Venturesと個人投資家からシード資金を調達。2017年2月にはみらい創造機構と個人投資家らから1億5000万円を調達している。その後、匿名の事業会社からの調達に続き、今年の3月には、ソニーのCVCであるSony Innovation Fundと既存株主の匿名事業会社から総額2億5000万円の資金調達を行ったことを明らかにしている。

今回の調達により、アロマビットはニオイイメージングセンサーのさらなる高機能化・小型化に向けた開発強化、量産体制の整備を進める。またハードウェアであるセンサーにより収集したニオイデータのデジタル化、データベース化による新製品・新サービスの開発強化や、海外展開も視野に入れた営業・マーケティング体制の強化も図る予定だ。

新株主であるJTとの協業の有無については、今回、具体的には明らかにされていない。ただ、主力のたばこ事業だけでなく、農業・医薬・食品など、アロマビットのセンサーが活用できそうな事業をほかにも多く展開する同社とは、いろいろな面での協業が考えられそうではある。

スマホ搭載可、犬の鼻レベルの新「ニオイセンサー」事業化へアロマビットが子会社設立

ニオイを可視化するセンサーを開発し、関連サービスを提供するアロマビットは7月23日、スマホ搭載も可能な超小型で、犬の鼻と同レベルのニオイ解像度を実現できる、新センサーの開発事業化を目的とした子会社設立を発表した。

アロマビットは2014年12月の創業以来、水晶振動子をセンサー素子として利用し、小型のニオイイメージングセンサーを開発・実用化してきた。ソニーCVCからの資金調達を報じた記事でも紹介したが、センサー素子の上にニオイ分子を吸着する膜が設置され、ニオイ分子が膜の表面に付いたり離れたりするときの質量の変化を素子の共振周波数で読み取る、というのが大まかなセンサーの仕組みだ。

同社では2018年12月に、センサーを搭載したデスクトップ型のニオイ測定装置「Aroma Coder – 35Q」を製品化。35種のセンサー出力データを一度で1つのパターンとして取得でき、合計で約5京通り(5×10の16乗)以上の「ニオイ可視化パターン」出力を可能にしている。

ただ、水晶振動子型センサー素子の素子サイズは5mm×20mm。従来製品より小さいとは言え、例えばスマートフォンなど、より小型で低コストが求められる機器への搭載は難しかった。

そこでアロマビットでは、豊橋技術科学大学の澤田和明教授らが開発した超高感度シリコンCMOS型イオンイメージングセンサーのセンサー基盤技術に、同社開発のニオイ受容体膜を応用。素子サイズでは1mm角とより小型でニオイ解像度の高い、低コストなシリコンCMOS型次世代ニオイセンサーの開発に成功していた。

新たに設立された子会社アロマビットシリコンセンサテクノロジーでは、この新たなニオイセンサーの開発事業化を進めていく。感度が高い従来の水晶振動子型と並行して、高解像度・超小型のシリコンCMOS型センサーにより、スマホやIoT機器にも搭載可能なニオイセンサーの実用化を目指す。

ニオイ“可視化”センサー開発のアロマビット、ソニーらから2.5億円を調達

ニオイを可視化するセンサーを開発、サービスを提供するアロマビットは3月4日、総額2億5000万円の資金調達を行ったことを明らかにした。第三者割当増資の引受先は、ソニーのコーポレートベンチャーキャピタルSony Innovation Fundと、既存株主で名称非公開の事業会社だ。

アロマビットは2014年12月の創業。小型のニオイイメージングセンサー、つまりニオイを可視化できるセンサーを開発し、センサーを使った製品や、取得したデータをもとにしたサービスを提供するスタートアップだ。

アロマビット代表取締役の黒木俊一郎氏によれば、社名には「共通言語による情報共有が難しかったニオイ(アロマ)を、データというデジタル言語(ビット)を使うことで言語化し、ニオイに関するコミュニケーションを楽にしたい」という思いが込められているそうだ。

目には見えないニオイを可視化する、と言われてもイメージが湧かない人も多いかと思うので、少しそのセンサーの仕組みを説明してみたい。

従来のガスセンサーは、ニオイに含まれる特定の成分(分子)に反応する。アロマビットが開発するニオイ識別センサーは従来型センサーと異なり、生物の鼻のように、さまざまな成分を含むニオイをパターン認識することが可能だ。

ヒトの鼻なら約300〜400のセンサー(嗅覚受容体)があり、ニオイ分子に反応する。生物はその複数のセンサー反応の組み合わせパターンで、嗅いだニオイを判断する。アロマビットのニオイイメージングセンサーは、これを機械で模倣したものだ。

このセンサーは、クォーツ時計やコンピュータのクロック発振回路にも使われる水晶振動子をセンサー素子として、その上にニオイ分子を吸着する吸着膜が設置されている。ニオイ分子が膜の表面にくっついたり離れたりして質量が変わると、素子の共振周波数も変化するので、その変化を計測することでニオイ分子の様子をデータとして捉えることができる。

アロマビットでは3年半ほどの初期開発を経て、この1〜2年は企業向けにニオイセンサーやシステムなどの提供を行ってきたが、2018年12月にはデスクトップ型のニオイ測定装置「Aroma Coder – 35Q」を製品化した。Aroma Coderでは、35種類のニオイ吸着膜が35素子に搭載されている。35種のセンサー出力データを一度で1つのパターンとして取得でき、合計で約5京通り(5×10の16乗)以上の「ニオイ可視化パターン」出力が可能だ。

Aroma Coderでは35素子を1つの装置に搭載したことで、測定時間を数分に短縮。よりニオイの「解像度」が高く、複雑なニオイを可視化できるようになっているという。

またアロマビットではデスクトップ型製品と同時に、企業が自社製品にニオイセンサー機能を搭載できる組み込み型センサーモジュールを、システム開発キット(SDK)として提供開始している。これは顧客企業がターゲットとなるニオイを指定すれば、それに応答しやすいニオイ感応膜5種類の組み合わせをアロマビットで選定し、カスタム化したセンサーモジュールと測定ソフトウェアを提供してくれるというもの。製品開発が進んだあかつきには、月産数個〜数万個で標準センサーモジュールの量産化も可能だ。

黒木氏は「この精度のニオイイメージングセンサーを小型軽量・低コストで、量産型で提供できる企業は、グローバルでもまだ出ていないので引き合いも多い。理論や実験段階でなく、製品が出ている点が我々の強み」と話す。

水晶振動子を素子に採用したのは価格弾力性の高さと量産可能性の高さからだというが、黒木氏は「今後はMEMS(微小電子機器システム、マイクロマシン)や半導体などにも応用したい」とも話している。

これまでに累計400社での採用がある同社プロダクト。導入されている業種は食品、日用品、コスメなど想像が付きやすいものから、産業機械、ロボティクス、モビリティ、農業など、ニオイの情報をどう使うのか、にわかには想像が付かない分野にも広がっている。

用途としては品質管理、商品開発などがあり、「これまで人に頼ってきた製品の品質管理を、データとして客観的に判別する」「ある香りにAという成分が含まれていることは分かったので、作りたい香りから逆算して足りない成分Bを知るために分析する」といった使われ方をしているそうだ。

産業機械、ロボティクスの分野では、産業油の変化をニオイで感知することでクオリティコントロールを行うといった例も。またモビリティの分野では今、MaaS(Mobility as a Service)展開が盛んで、車内外の異常検知などを目的にさまざまな車載センサーが積まれるようになっている。その一環としてニオイセンサーも取り上げられているようだ、と黒木氏は述べている。

黒木氏は「ニオイの可視化、センサーによるニオイデータのデジタル化は、五感の中でも一番遅れていたが、今後、大手企業が参加し、AIや機械学習によるニオイのビックデータ分析も始まることで、市場ができ、ニーズも一層増える分野になる」と述べ、「このトレンドを捉え、ニオイの可視化分野で、グローバルでデファクトスタンダードとなることを目指す。ニオイ可視化で世の中の役に立ちたい」と話している。

アロマビットでは、2017年2月にみらい創造機構と個人投資家らから1億5000万円を調達。その後、今回のラウンドにも参加している匿名の事業会社から資金調達を行っており、今回の調達はそれに続くものとなる。

今回の調達により、アロマビットでは既存製品の高機能化や小型化、量産化など開発を進めるほか、「セールスマーケティングのグローバル化を図り、北米、ヨーロッパなどにも進出したい」と黒木氏は述べている。また、ニオイのデータベース拡充を自社で行うことで、「ニオイセンサリングと可視化の分野で、世界レベルの競争優位性を確立したい」ということだった。