「NFT」セッションでスタートバーンの施井泰平氏がTC Tokyo2021登壇決定

「NFT」セッションでスタートバーンの施井泰平氏がTC Tokyo2021登壇決定12月2、3日にオンラインで開催される「TechCrunch Tokyo 2021」。本年度は、期間中、7つのテーマで国内・海外のスピーカーを招いたセッションが行われる。

このうち「NFT」をテーマにしたセッションでは、スタートバーン代表取締役の施井泰平氏が登場する。

同社は、「アート×テクノロジー」を理念に掲げアート領域でのブロックチェーン活用に取り組むスタートアップ。ブロックチェーン技術およびNFTを利用し、アート作品の証明書や来歴の管理などアートの流通を支えるインフラ「Startrail」、アート作品の真正性と信頼性を守るためのブロックチェーン証明書「Cert.」、またコンテンツを取り扱う企業を対象にNFT事業の構築支援サービスを展開している。

NFT事業では、コンテンツの価値継承においては権利や情報の長期的な管理が重要となることから、現状のNFT市場の課題であるサービス同士の互換性と、サービスを横断した二次流通・利用の管理を実現したという。

施井氏は1977年生まれで、少年期をアメリカで過ごす。東京大学大学院学際情報学府修了。2001年に多摩美術大学絵画科油画専攻卒業後、美術家として「インターネットの時代のアート」をテーマに制作、現在もギャラリーや美術館で展示を重ねる。2006年よりスタートバーンを構想、その後日米で特許を取得。大学院在学中に起業し現在に至る。2021年にアートビート代表取締役就任。講演やトークイベントにも多数登壇。

すでに参加者チケットは発売中。参加者チケットは2日間の通し券で、他の講演はもちろん新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチを繰り広げるピッチイベント「スタートアップバトル」もオンラインで楽しむことができる。

チケット購入

本記事執筆時点では「超早割チケット」は税込2500円、2021年12月31日までアーカイブ配信も視聴できる「超早割チケット プレミアム」は税込3500円となっている。また、スタートアップ向けのチケット(バーチャルブース+チケット4枚セット)は後日販売予定だ。

オンラインでの開催で場所を問わず参加できるため、気になる基調講演を選んで視聴することもしやすいはず。奮ってご参加いただければ幸いだ。また、10月18日まで「超早割チケット」で安価で購入できるのでオススメだ。

アート領域でブロックチェーン活用に取り組むスタートバーンがアート媒体「Tokyo Art Beat」とタッグ

アート領域でブロックチェーン活用に取り組むスタートバーンがアートメディア「Tokyo Art Beat」とタッグ

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2021年1月31日~2月6日の情報から。

「アート×テクノロジー」を理念に掲げアート領域でのブロックチェーン活用に取り組むスタートバーンは2月5日、東京のアートシーンを伝えるメディア「Tokyo Art Beat」を運営するアートビートをグループに迎えることを発表した。両社は、さらなるアート業界の活性化を目的としたエコシステムの構築の推進を目指す。

2014年設立のスタートバーンは、アート作品の証明書や来歴の管理などアートの流通を支えるブロックチェーンインフラ「Startrail」(スタートレイル。旧アート・ブロックチェーン・ネットワーク。ABN)の構築をメインに事業を展開するスタートアップ。「アートの民主化」を目的としており、ブロックチェーン技術を用いることで、アート作品の取引や利用をより安全でスムーズに行える世界を目指している。

今回、スタートバーンがグループに迎えたアートメディア「Tokyo Art Beat」は、日本語と英語によるバイリンガルメディアとして、アートファンやアートにこれから興味を持つ人などに向けて、世界中の人々が東京のアートの魅力に触れるきっかけとなる情報を発信し続けている。NPO法人だったアートビートは、2020年10月1日より会社法人として活動している。

2004年創設のTokyo Art Beatは、月間平均500件におよぶ日英バイリンガルの展覧会情報と、最新アート情報を伝える記事を発信。同時に、YouTubeでの映像コンテンツ配信、人気イベントや最新ニュースほか展覧会検索サービス機能を搭載するiPhone向けアプリも展開している。また、ウェブのみならずリアルなアートイベント企画も行っているという。

Ethereum(イーサリアム)上で、美術品の所有情報などをまとめたERC-721準拠証明書を発行

スタートバーンは、2018年10月よりABNをテストネットで運用してきた。Ethereum(イーサリアム)上でスマートコントラクトを用いて構築されたABNは、ERC-721準拠証明書の発行とともに、美術品の所有情報をブロックチェーン上に書き込む。ブロックチェーンの耐改ざん性を生かして情報をセキュアに管理しつつ、また、流通による二次的な収益をアーティストへ一部還元する機能なども備えるなど、アート作品の所有権と来歴を電子的に管理できるとしている。

ABNは、SBIアートオークションが主催する美術品の競売会などで実際に利用されるなど1年超の実証期間を経て、2019年10月にABNの仕様や今後の開発計画を記したホワイトペーパーを公開。2020年3月には本格的稼働に入り、それに伴い名称をABNから現在のStartrailに改名。2020年8月にメインネットでの公開となった。

アート業界の活性化を目的としたエコシステムの構築

両社は協働で、さらなるアート業界の活性化を目的としたエコシステムの構築を推進していく。スタートバーンにとってアートビートは「アート業界のエコシステム構築を推し進める上で、美術館やギャラリーとのつながりを強めるハブとして、国内外で重要なシナジーを発揮していくことが想定される」と、スタートバーン代表取締役の施井泰平氏は コメントしている。

またアートビートは、スタートバーンとジョインすることで、新たなテクノロジーによって「ユーザーにとって利便性の高い機能や情報を提供し、地方や海外への展開を積極的に押し進めることが可能になります。これまでのファンの満足度を高め、さらなるファンを生み、ひいてはアート業界全体を活性化していくことでしょう」「単独では創り得なかったような価値を、お互いを高め合いながらであれば創っていけると強く確信しています」と、両社の関係性について述べている。

また、これを機にアートビートの株式会社化とスタートバーンへのグループ参加について、Tokyo Art Beat共同設立者の藤高晃右氏、ブランドディレクターの田原新司郎氏、スタートバーン代表取締役で美術家の施井泰平氏が、Tokyo Art Beatにて鼎談(ていだん)記事を公開。三者がTokyo Art Beatの今後について語っている。「アート×テクノロジー」について興味がある方は、一読するとよいだろう。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:アート(用語)アートビートERC-721Ethereum(製品・サービス)NFTスタートバーンブロックチェーン(用語)日本(国・地域)

ブロックチェーンでアート市場を変えるスタートバーンが3.1億円を調達、元Anypay CEOの大野氏が取締役に

ブロックチェーンを活用すれば、長年自分が模索してきたアートの民主化を実現できるかもしれない——。自身も美術家として活動を続けてきた施井泰平氏が代表を務めるスタートバーンの「アートブロックチェーンネットワーク」構想を紹介したのは、2018年7月のこと。

あれから約8ヶ月、同社が次の段階に向けて新たな一歩を踏み出すようだ。スタートバーンは3月19日、UTEC、SXキャピタル、電通、元クリスティーズジャパン代表の片山龍太郎氏を引受先とした第三者割当増資により、3億1000万円を調達したことを明らかにした。

また同社は3月1日付で元AnyPay CEOの大野紗和子氏が取締役COOに、片山氏が社外取締役に就任したことも発表している。

今回調達した資金を活用してブロックチェーンネットワークや接続ASPの開発を加速させつつ、事業提携・共同事業を含めた国内外のビジネス展開や組織体制の強化を進める計画だ。

サービス横断で作品の来歴・流通をマネジメント

スタートバーンが現在開発するアートブロックチェーンネットワークは、世界中のアートサービスをつなぐ“インフラ”の役割を果たすものだ。

ここで核となるのは、ブロックチェーンの非改ざん性・相互運用性を活用した「証明書」を発行できること。この証明書には売買の履歴に加えて、美術館での展示、貸し出し、鑑定など作品の評価と信頼性に関わる様々な履歴が連続的に記録されていく。

それも特定のサービスだけではなく、ネットワークに参加する全サービスを横断して「各作品がどのような道のりを歩んできたのか」、その来歴を自動的に記録し、参加者が閲覧できる環境を整えるという試みだ。

前回も紹介した通り、アート業界では「これまでに誰が所有してきたのか、どこで展示されてきたのか」が作品の価値にも大きな影響を及ぼすため、来歴情報をトレースできることは非常に価値が高い。加えて、作品の足取りや今の在り処がわかることは、各プレイヤーにとって別のメリットもある。

「アーティストやマネジメント層の場合、いざカタログを作ったり展示会をやろうと思った際に自分の作品を誰が保有しているのか把握できず、苦労するということがよくある。またセカンダリーのオークションハウスでは、偽物を売ることが1番のリスクとなるからこそ、来歴の調査にものすごく神経を使っている」(施井氏)

これまではアート作品の証明書に関する共通のフォーマットやルールが存在しなかった。その観点では「電子化された、同じフォーマットの証明書」をブロックチェーン上で簡単に発行できるだけでも意味のあることだが、そこに来歴が自動的に記述される仕組みも紐づいているのがアートブロックチェーンネットワークの特徴だと言えるだろう。

施井氏はこのネットワークをあらゆるステークホルダーが使えるものにしたいと考えていて、Eコマースやオークションサイトだけでなく、保険、真贋鑑定、融資サービスなど様々なプレイヤーと連携していくことを目指しているという。

還元金の仕組みもアップデート、数社との提携も決定

上述したように「サービスをまたいで来歴を追える」ようになれば、アート作品の流通手段やアーティストの収益構造にも新しい可能性が生まれる。

たとえば二次販売、三次販売とユーザー間で作品が売買される度に、作品を生み出したアーティストに還元金が支払われる仕組みを作ることも可能だ。

そもそもスタートバーンは2014年3月に施井氏が「アートの民主化」を目的に創業したスタートアップだ。

既存の仕組みでは、マーケットに流通するアーティストになれるのはほんの一握りの人たちのみ。その状況を改善するには、作品の価格決定の仕組みから変える必要がある。そう考えた施井氏は2015年に「Startbahn.org」を立ち上げた。

アート特化のSNSとオークションを組み合わせたようなこのプロダクトの特徴は、サービス上で作品の来歴が記録され、ユーザー間で作品が売買されるごとに作者へ還元金が支払われること。このサイクルが回れば、初期の販売価格を抑えながら、最終的に相応の対価を受け取れるチャンスが生まれる。

ただ当時のStartbahn.orgには大きな穴があった。外部のサービスで作品を売買されてしまった場合、来歴をトレースできたいため還元金も発生しなくなってしまうのだ。

なんとかその状況を打破できないか。いろいろと試行錯誤をしていた時に施井氏が出会った技術こそがブロックチェーンだった。そこから約2年に渡ってアイデアをブラッシュアップした結果、今のブロックチェーンネットワーク構想と、このネットワークに参加する1サービスとして新生Startbahn.orgのアイデアが生まれることになる。

7月に話を聞いた際は全ての作品において還元金が発生する仕組みを考えていたようだったけれど、還元金の存在が二次流通を阻害する要因になると考える人もいるため、アーティストや各サービスがスマートコントラクトによりルールをカスタマイズできる仕様へとアップデートしたという。

たとえば証明書を発行する際にアーティストが「還元金が発生する場所でのみ販売できる」というルールを設定しておけば、この作品は「売買時に還元金が発生する」と規定されたサービス上でのみ流通することができ、常に還元金が生まれるようになる。

同じように「この作品は3年間、日本の販売所でのみ売ることができる」「アート保険に入っていない作品はこの展示場に出せない」など、アーティストやサービス提供者が、自分たちの意思を込めて流通の仕方をコントロールすることも可能だ。

「(昨年7月の)シード調達は、自分たちの構想が実際に形にできるのか、そこに賛同してくれる企業がどれだけいるのかを試すためのものでもあった。結果的には各方面の企業とディスカッションする機会に恵まれ、新しい可能性に気づいたり、アイデアをよりブラッシュアップすることができた」(施井氏)

昨年9月にはあくまでテストネット上ではあるが、アートブロックチェーンネットワークを公開。11月には同ネットワーク上でサービス展開を予定する丹青社など5社との提携も発表した。

金融以外のブロックチェーンのユースケースへ

スタートバーンのメンバー。前列の右から4人目が代表取締役CEOの施井泰平氏、その左隣が取締役COOに就任した大野紗和子氏

業界内外の企業と連携を深めながら、構想をアップデートし続けてきた中で迎えた今回の調達。夏頃にはブロックチェーンネットワークのメインネット公開も予定しているが、これからは一層社会へのインパクトを追求するフェーズになっていくという。

その上ではボストン・コンサルティング・グループやGoogleを経て、前職のAnyPayで取締役COO、代表取締役CEOとして決済やブロックチェーン事業の立ち上げに携わった大野氏。そして産業再生機構で執行役員を務めるなど、ビジネス経験豊富な片山氏の参画は非常に心強いだろう。

特に大野氏はスタートバーンの新たな取締役COOとして、事業連携や海外展開、アートブロックチェーンネットワークの社会実装をリードしていく役割を担うことになる。

「これからの時代『オンラインで完結するものから一歩外に出て、リアルなものや場所とテクノロジーを絡めないと新しいものが生まれづらいのでは』という考えがあった。(その点、実世界と交わるアート領域には興味を持ったことに加え)スタートバーンはブロックチェーンありきではなく、アート市場に対する課題意識から始まった会社。いかにアーティストへ収益を還元するか、来歴管理の仕組みを作るか考えた結果、ブロックチェーンと相性が良かったのでアートと融合させようというアプローチが面白いと感じた」(大野氏)

「土地の登記のように最終的に国のデータベースに届け出が必要な領域の場合、それを代替するのは法律や市場のハードルもあって難しい。一方でアートは来歴管理のニーズが高いにも関わらず、明確に定められたルールやデータベースがない。非常に珍しい領域であり、金融に次ぐブロックチェーンのユースケースになる可能性も秘めている」(大野氏)

もちろん本格的に社会へと普及させていくためには、乗り越えなければならない壁もまだまだ多いという。例えばアート作品の場合、仮想通貨などと違ってブロックチェーンの外にある情報をインプットさせる必要があり、その際に間違った情報が登録されてしまう恐れもある。いわゆるオラクルの問題だ。

これについては今のところ「後から編集できるようにしておいた上で、編集した場合は必ず履歴が残る仕様を検討している」(施井氏)そう。オラクルの問題ひとつとっても、様々な業界で課題となるポイントなので、アートという切り口からその最適解を追求していきたいというのが2人に共通する考えのようだ。

今後スタートバーンでは幅広いアート関連サービスとの連携を進めるほか、従来のアート流通における活用に加えてデジタルコンテンツの流通や販売管理、美術品のレンタルビジネス、高級ブランドの二次流通管理、美術品の分散所有など、各種事業との連携も見据えていく計画。

日本発のアートブロックチェーンネットワークがこれからどのように社会と交わっていくのか、今後の展開に注目だ。

「アートとブロックチェーンは相性がいい」美術家が創業したスタートバーン、UTECから1億円を調達

アート×テクノロジーを軸に複数の事業を展開するスタートバーン。同社は7月5日、UTECを引受先とする第三者割当増資により、約1億円を調達したことを明らかにした。

同社では今回の調達も踏まえ、以下の3つの事業に取り組む方針だ。

  • 文化・芸術品の管理に特化したアート×ブロックチェーンネットワークの構築
  • ネットワークと連動する自社サービス「Startbahn BCM(仮称)」の開発
  • アート領域以外の事業者も含めたブロックチェーン事業の共同開発

ブロックチェーンネットワークは9月末より試験運用を開始、Startbahn BCMも同様に9月末より提供を開始する予定だという。

油絵専攻の現代美術家が立ち上げたアートスタートアップ

スタートバーンが今後取り組む事業には、同社がこれまでやってきたことが大きく関わっている。ということで、まずは同社の成り立ちや手がけてきたプロダクトについて紹介したい。

スタートバーンは現代美術家として活動していた施井泰平氏が、東京大学大学院に在学していた2014年3月に立ち上げたスタートアップだ。施井氏は多摩美術大学の絵画科出身。大学で油絵を専攻した後、美術家として「インターネットの時代のアート」をテーマに制作活動を行ってきた。

ギャラリーや美術館での展示に加えて、複数のオンラインプロジェクトも発表。東京藝術大学では教鞭をとった経験もある。

そんな施井氏が起業するきっかけとなったのが、かねてから構想を進めていた「Startbahn」のアイデアだったという。

「テーマとしていたのは『アートの民主化』。インターネットの時代では、様々なジャンルで名もない多くの人たちが業界を盛り上げ、それが中心となって新たな市場を開拓してきたという背景がある。ただしアートに関しては限られたトッププレイヤーだけしか市場に関わっていなかった。結果的に一部の作品だけがやりとりされ、情報も広がっていかない。そんな状況を変えたいと思っていた」(施井氏)

たとえば毎年1万人以上が美術大学を卒業するのに、マーケットに流通するアーティストになるのはわずか1〜2人程度なのだそう。そう考えるとほんの一部の人だけがチャンスを掴めるシビアな市場だ。もちろんネットによる民主化が進まなかったのには、アート市場特有の理由もある。

「通常、多くのマーケットでは基本的に中古市場より新品市場の方が商品価値が高い。一方でアートは新品が最も値段が安いというケースがほとんど。アーティストのキャリアや、その作品がどんな人に買われたか、どんな展覧会に展示されたかによって価値が高まっていく。そのような情報を管理するのが困難だったため、簡単にネット上で自動化もできず、アートをやりたい多くの人たちの作品が流通してこなかった」(施井氏)

転売されるごとにアーティストへ還元金が分配

2015年12月にリリースした「Startbahn.org」は、これらの課題を解決するために作ったプロダクトだ。

同サービスはアート特化のSNSとオークション組み合わせたような仕組み。アーティストが自身の作品を掲載したり、レビュワーが作品のレビューを投稿するSNS機能に加え、アーティストとコレクター間だけでなくコレクター同士でも作品を売買できるオークション機能を備える。

特徴は再分配システムを搭載していること。Startbahn.orgでは作品の来歴がトレースされるほか、コレクター間で作品が売買されるごとに(n時販売時に)オリジナル作者へ還元金が支払われる仕組みになっている(日米間で特許を取得済み)。

これは上述した「トッププレイヤー以外の作品が流通しやすくなるための仕掛け」のひとつだ。

「まず作品の価格決定の仕組みを変える必要があった。従来の仕組みでは若手のアーティストの作品が高いと感じられがち。たとえば30日かけて作った作品が30万円で売られていても、多くの人は高いと思うはずだ。そこで初期の価格を落とす一方で、転売されるごとにアーティストに還元されるようにすれば、ひとつの作品から同じくらい、もしくはそれよりも多くの収益が得られるのではと考えた」(施井氏)

ブロックチェーンを活用すれば課題を解決できる

ところが実際にサービスの運用を続けていると、いくつかの課題が明確になった。特に頭を悩ませていたのが、外部サービスで作品が売買されてしまった場合、来歴のトレースも還元金の徴収もできなくなってしまうことだ。

どうすればこの問題を解決することができるのか。ずっと打開策を考え続けていた時に施井氏が出会った技術こそが、ブロックチェーンだったという。

還元金や証明書の情報はブロックチェーンに記録し、かつブロックチェーンネットワークを通じて外部サービスとも連携できる仕組みを作れば、サービスをまたいで来歴の管理や還元金の徴収も可能になる。

約2年に渡ってその考えを磨き続けた結果生まれたのが、現在開発を進めているアート×ブロックチェーンネットワーク構想であり、自社サービスのStartbahn BCMだ。

アート×ブロックチェーンネットワークでは、アートマーケットの発展のために共有すべき「作品のタイトルやサイズ、制作年度、作者情報、来歴情報」といったデータをブロックチェーン上でオープンにする。

一方で所有者の個人情報や販売管理者のための管理情報など、共有したくない情報については自社で管理できる仕組みを整備。双方のバランスをとりつつ、ネットワークを活用すれば参加機関が独自の作品証明書発行サービスを立ち上げたり、既存のプロダクトをアップデートできる環境を作る。

ネットワークの参加機関として想定しているのは、アーティストやクリエイター、ギャラリー、オークションハウス、管理業者など、文化や芸術作品に携わるあらゆるプレイヤー。まずは第一段階として9月末から一部のパートナー企業と共に試験運用を始め、2019年初には正式版を公開する予定だという。

同じく9月末の公開を予定しているStartbahn BCMは、アート×ブロックチェーンネットワークに参加するサービスのひとつという位置付け。Startbahn.orgのコンセプトや特徴を引き継ぎながら、従来抱えていた課題をブロックチェーンの活用で解決し大幅にアップデートしたものだ。

Startbahn BCMでは外部サービスとの連携だけでなく、独立性やカスタマイズ性を重視。作品や商品管理機能をバージョンアップし、ギャラリーやショップ、イベント、教育機関での利用も視野にいれている。

施井氏いわく「イメージとしてはBASEやSTORES.jpにも近い」部分があるそう。それぞれのユーザーが独自性のある作品サイトを作成でき、裏側では各サイトがStartbahn BCMに紐付く仕組みだ。

またスタートバーンではアート×ブロックチェーンネットワークの構築を通じて培った知見を、文化や芸術以外の領域にも応用していく方針。来歴管理や証明書発行、真贋鑑定技術などを必要とする事業者と共同で、オリジナルのブロックチェーンネットワークを開発していきたいという。

アート界隈でも注目度の高いブロックチェーン

海外ではすでにブロックチェーンをアート市場の課題解決に用いたスタートアップが増えてきた。特に作品の真贋鑑定や来歴管理はブロックチェーンと相性がよく、「Codex」や「Verisart」を始めとしたサービスが注目を集めている。

施井氏の話ではアート界隈の人と話していても「トレーサビリティだけでなく国際送金やエスクローの仕組みなど、ブロックチェーンへの関心度や期待値は高い」そう。特にアート業界は贋作が多いと言われていて、それが業界の透明性を下げてきた部分もあるからだ。

その一方でギャラリーやオークションハウスとしては自分たちの情報を守りたいという思いもあり、従来は双方のバランスをとりながら情報公開を進めることができていなかった。

スタートバーン代表取締役の施井泰平氏

「自分たちの強みがあるとすれば、このような問題をもう何年も前から現場で考えてきたこと。(各プレイヤーに)ヒアリングを重ねながら、どのようなインセンティブ設計や再分配の仕掛けがあればみんなが参加したくなるのか、どうすれば機関を横断して情報共有ができるかずっと模索してきた」(施井氏)

それだけにブロックチェーン技術が台頭してきたことは、スタートバーンにとっても大きな追い風だ。同社では今回調達した資金も活用して、アート×ブロックチェーンネットワークの構築、展開の加速を目指す。