ミミズ型ロボや蠕動運動ポンプロボなどソフトロボットを手がけるソラリスが1.6億円調達、累積調達額3.7億円に

ミミズ型ロボットや蠕動運動ポンプロボットなどソフトロボットを手がけるソラリスが1.6億円調達、累積調達額3.7億円に

生物に学んだ柔らかいロボット(ソフトロボット)を開発するソラリスは1月19日、第三者割当投資による1億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、三菱UFJキャピタル6号投資事業有限責任組合(三菱UFJキャピタル)、MSIVC2020V投資事業有限責任組合(三井住友海上キャピタル)、科学技術振興機構。累積調達額は3億7000万円となった。

2017年9月設立のソラリスは、中央大学バイオメカトロ二クス研究室の研究成果をベースとする大学発スタートアップ。高出力で軽量・柔軟な軸方向線維強化型の空気圧人工筋肉をコア技術とし、蠕動運動ポンプロボット、ミミズ型ロボット、パワーアシスト装置を開発している。

粘度の高い固液混合体の混合や搬送が行える「蠕動運動ポンプ」

蠕動運動ポンプ」は、独自開発の人工筋肉を使い、腸管の蠕動運動を再現するロボット。粘度の高い固液混合体の混合や搬送が行える。土砂や粉体の搬送、ロケット用個体燃料の生成装置などに応用できる。

人間や他のロボット機構では侵入が困難な細い管の中を進める「ミミズ型ロボット」

ミミズ型ロボット」は、ミミズの蠕動運動を模したもの。移動に必要な空間が非常に小さく、人間や他のロボット機構では侵入が困難な細い管の中などを進むことができる。内部は空洞になっているため、カメラやメンテナンス装置を装備することが可能。インフラやビル配管の点検、清掃などが行える。

腕を長時間上げたままで行う作業を支援、電源不要のパワーアシスト装置「Tasuki」

パワーアシスト装置「Tasuki」は、農業・建設業・保守点検など腕を長時間上げたままで行う作業(上向き作業や腕上げ作業)を支援する。バネの力を利用した機械式自重補償という仕組みのため電源を必要としない。ロボット技術を応用した装置で、スマート農業に貢献する。

ソラリスは、調達した資金により、複雑な細管を可視化・点検するミミズ型ロボット、防爆性に優れ固液混相流体の混錬・搬送を行う蠕動運動ポンプロボットの製品化を促進し、インフラ・工場・プラント・ビル配管の点検・清掃や、化学品・食品製造現場や土木・建設現場の省人化など、ソフトロボットの実用化を目指すとしている。

NVIDIAがエッジコンピューティング向け超小型AIスーパーコンピューター「Jetson AGX Orin」を発表

NVIDIAは11月9日、ロボットや医療機器などのAIエッジコンピューティング機器に組み込める超小型の「AIスーパーコンピューター」Jetson(ジェットソン)シリーズの新世代機種「AGX Orion」(オライオン)を発表した。

前世代のAGX Xavier(ゼイビアー)とフォームファクター(100x87mm)は同じながら処理速度は6倍、200TOPS(1秒間に200兆回の命令処理が可能)という性能を誇る。NVIDIA AmpereアーキテクチャーGPUとArm Cortex-A78AE CPU、次世代の深層学習セラレーター、ビジョンアクセラレーターを搭載し、複数の並列AIアプリケーション・パイプラインにフィードできるため、高速インターフェース、高速なメモリー帯域、多彩なセンサーのサポートが可能になっている。消費電力は15W。最大でも50Wとのこと。

ソフトウェアは、NVIDIA CUDA-Xアクセラレーテッド・コンピューティング・スタック、NVIDIA JetPack SDK、クラウドネイティブな開発ワークフローを含むアプリケーション開発と最適化のための最新のNVIDIAツールが利用できる。また、トレーニング済みのNVIDIA NGCカタログもある。

またJetsonには、85万人の開発者、Jetson搭載製品を製造する6000社以上の企業からなる巨大なエコシステムがあり、センサー、キャリアボード、ハードウェア設計サービス、AIおよびシステムソフトウェア、開発者ツール、カスタムソフトウェア開発といったサービスや製品が利用できる。これにより、「かつては不可能と思われていた自律動作マシンとエッジAIアプリケーションを開発および展開できるようになる」と、NVIDIAのバイスプレジデント、ディープゥ・タッラ氏は話している。

NVIDIA Jetson AGX Orinモジュールと開発者キットの発売は、2022年第1四半期を予定している。

Jeston AGX Orionモジュール仕様

  • AI性能: 200 TOPS (INT8)
  • GPU:2048基のNVIDIA CUDAコアと64基のTensorコア搭載、NVIDIA Ampereアーキテクチャー
  • GPUの最大周波数:1GHz
  • CPU:12コア Arm Cortex A78AE v8.2 64ビットCPU 3MB L2+6MB L3
  • CPUの最大周波数:2GHz
  • DLアクセラレータ−:NVDLA v2.0×2
  • ビジョンアクセラレーター:PVA v2.0
  • メモリー:32GB 256ビットLPDDR5 204.8GB/秒
  • ストレージ:64GB eMMC 5.1
  • CSIカメラ:最大6台のカメラ(仮想チャネル経由で16台)。16レーン MIPI CSI-2。D-PHY 1.2(最大40Gbps)| C-PHY 1.1(最大164Gbps)
  • ビデオエンコード:2x 4K60 | 4x 4K30 | 8x 1080p60 | 16x 1080p30(H.265)
  • ビデオデコード:1x 8K30 | 3x 4K60 | 6x 4K30 | 12x 1080p60| 24x 1080p30(H.265)
  • UPHY:2 x8(または 1×8+2×4)、1 x4、2 x1(PCIe Gen4、ルートポート&エンドポイント)。USB 3.2×3。シングルレーンUFS
  • ネットワーキング:1GbE×1、10GbE×4
  • ディスプレイ:1x 8K60 マルチモードDP 1.4a(+MST)/eDP 1.4a/HDMI 2.1
  • その他の I/O:USB 2.0×4、4×UART、3×SPI、4×I2S、8×I2C、2×CAN、DMIC&DSPK、GPIOs
  • 消費電力:15W | 30W | 50W
  • サイズとコネクタ−:100mm×87mm、699ピンMolex Mirror Mezzコネクター、一体型熱伝導プレート

電気通信大学が自己センシングが可能なマッキベン型人工筋肉を開発

電気通信大学が自己センシングが可能なマッキベン型人工筋肉を開発

電気通信大学は10月5日、自己センシングが可能なマッキベン型人工筋肉の開発を発表した。マッキベン型人工筋肉とは、空気の出し入れによって長さ方向に収縮するアクチュエーターのこと。その変化量の測定は、これまで外部のセンサーに頼っていたが、柔軟なセンサーを埋め込むことで、人工筋肉自身が変化量を検知できる自己センシングの可能性が開けた。

マッキベン型人工筋肉は、ゴムチューブを空気で膨らませる(入力する)と長さ方向が縮むことを利用した人工筋肉。柔らかく軽量で安全性が高く、ロボット用のアクチュエーターや人工装具などにも使われている。しかし、その構造上の理由から、同じ入力でも、過去の入力の影響を受けて変化量が不安定になる「ヒステリシス」という現象が発生する。そのため、正確に変化量を把握するには、レーザー変位計などの外部のセンサーを備える必要があり、装置が複雑化する難点があった。

そこで、電気通信大学機械知能システム学専攻の新竹純助教を中心とする研究チームは、柔らかい膜を柔軟な電極で挟んだ構造のエラストマーセンサーをマッキベン型人工筋肉に統合することを考えた。人工筋肉のチューブにエラストマーセンサーを貼り付けると、人工筋肉の収縮に伴い静電容量が変化する。それを測定することで、長さ方向の変形を検出できるというものだ。

実験では、コンプレッサーから空気が送り込まれ、人工筋肉のチューブが膨らんで長さ方向に収縮すると、その変化がセンサーの応答に表れることがわかった。さらに、各センサーとの計測値の誤差は小さく、解析モデルとセンサーの出力は一致するなど、精度に問題はなかった。1000回以上の繰り返し動作での安定性も確認でき、この方式の有効性が示された。電気通信大学が自己センシングが可能なマッキベン型人工筋肉を開発

この方式を使えば、マッキベン型人工筋肉の導入がより容易になり、「さまざまな機械システムの実用化を促進する」ことが期待されるという。今後は、ロボットデバイスの研究開発を行う予定だと研究チームは話している。

論文「Self-Sensing McKibben Artificial Muscles Embedded With Dielectric Elastomer Sensor」はIEEE Xploreに掲載されている。

高度医療ロボのリバーフィールドが30億円調達、執刀医にリアルタイムで力覚を伝える空気圧駆動手術支援ロボの上市加速

高度医療ロボのリバーフィールドが約30億円調達、執刀医にリアルタイムで力覚を伝える空気圧精密駆動手術支援ロボの上市加速

高度医療ロボット各種の開発を手がけるリバーフィールドは9月10日、第三者割当増資による総額約30億円の資金調達を発表した。引受先は、東レエンジニアリング、第一生命保険、MEDIPAL Innovation投資事業有限責任組合(SBIインベストメント)をはじめ、事業会社、ベンチャーキャピタルなど。調達した資金により、同社独自の空気圧精密制御技術を用いた手術支援ロボットの上市を加速させる。

執刀医に鉗子先端にかかる力をリアルタイムで伝える力覚提示が可能な手術支援ロボットの上市を2023年1月に予定。またその他、次世代内視鏡把持ロボット、眼科用ロボットを2022年中に順次上市していく計画としている。

2014年5月設立のリバーフィールドは、大学で培ってきた技術を活かした医療ロボットを開発している大学発スタートアップ。東京大学大学院 情報理工学系研究科教授の川嶋健嗣氏が創業者代表および会長、また東京工業大学准教授の只野耕太郎氏が代表取締役社長を務めている。

同社は、2003年から東京工業大学において手術支援ロボットの研究をスタート。当時、低侵襲外科手術支援用ロボットは優れたシステムである一方、操作を視覚に頼っており、触った感覚が操作者に伝わらないとの声が挙がっていたことから、空気圧システムによる精密駆動技術を手術支援ロボットに適用することでニーズに応えられると考えたという。

その後、先に挙げた力覚フィードバック実現のニーズと、研究室で有していた空気圧の計測制御技術のシーズを合わせ、空気圧駆動の手術支援ロボットを研究試作として完成させた。これらの研究成果を研究として終わらせず、社会・医療現場に実際に役立てたいとの思いから同社を起業したという。

マイクロ流体バルブ利用の「空気圧ランダムアクセスメモリー」を採用したピアノを弾くソフトロボットが公開

カリフォルニア大がマイクロ流体バルブを使用し「空気圧ランダムアクセスメモリー」開発、ピアノを弾くソフトロボットを公開

UC Riverside

カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者らが、トランジスタの代わりにマイクロ流体バルブを使用し、空気圧で動作する8ビットのRAM(ランダムアクセスメモリ)を開発しました。このRAMを使用し、ピアノ演奏を行うロボットの動画も公開しています。

空気圧で動作する、いわゆるソフトロボットというのは古くから利用されており、柔らかいゴム製のボディは人間が接触しても安全なことから、人に近い場所での利用が期待、あるいは実際に使用されています。しかし、これらのロボットも、動作には多くの電子機器が利用されており、それがコストやサイズなどの制約になっています。

これを解消するために開発されたのが、空気圧を利用したRAM。従来のトランジスタや電気回路の代わりに空気圧を制御するマイクロ流体バルブを利用します。大気圧(何もしていない状態)を「0」、真空状態を「1」として、8ビットのRAMとして動作するもので、加圧していないため、機器が破損したとしても飛散すいる心配がないのもメリットとなっています。

実際にこの空気圧RAMを利用し、ピアノを演奏するロボットも披露。3Dプリンタで作られた指を持つこのロボットは、真空の場合に指が曲がるようになっており、「Mary Had a Little Lamb(メリーさんの羊)」をゆっくりと演奏します。

ただし、現状では動作が遅く実用する上では様々な改善が必要です。それでも、理論的には電子機器を一切使用せず、バッテリーで操作する真空ポンプだけでロボットの制御が可能だとしています。

(Source:UC RiversideEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:カリフォルニア大学(組織)ソフトロボティクス(用語)マイクロ流体バルブ(用語)