Canopyがユーザーのプライバシーに配慮したニュースアプリを公開

パーソナライズのテクノロジーにより、一人ひとりのユーザーに応じてアプリのコンテンツがカスタマイズされ、アプリの体験が向上する。しかし同時に、ユーザーのプライバシーは徐々に失われかねない。Canopyという企業はこの状況を変えようとしている。同社は、ユーザーのログインもメールアドレスの提供も求めないパーソナライズのエンジンを開発した。デバイス上の機械学習と差分プライバシーを組み合わせて、アプリのユーザーにパーソナライズされた体験を提供する。この技術の実例として、同社はニュースリーダーアプリの「Tonic」を公開した。

この新しいアプリは、完全にプライベートでありつつ、体験をカスタマイズするためにユーザーの好みを学習し続けていく。しかし、ほかのパーソナライズのエンジンとは異なり、操作や行動の生データはデバイスから出ていかない。したがってCanopyも、コンテンツプロバイダやパートナー企業も、生データを一切見ることができない。

Canopyは次のように説明している。

(生データの代わりに)個人の操作と行動のモデルを差分プライバシー技術で処理して、当社サーバに暗号化通信で送信する。Canopyに送信されるあなたのローカルモデルは、あなたの操作と直接結びつくことは一切なく、代わりにあなたと似た人々の好みの集合を表す。これがほかとは異なる、我々のアプローチのきわめて重大な特徴だ。暗号化のエラーがあった、あるいはサーバがハッキングされたといった最悪の事態が起きた場合でも、このプライベートなモデルは個人を表していないので、誰も、何もすることができない。

もうひとつの大きな特徴は、Tonicはパーソナライズの設定をユーザーが制御できるようにしているということだ。これは、ほかにはあまりない。パーソナライズのテクノロジーを利用したアプリを使ったことがある人なら、おそらく曲、ビデオ、ニュース記事などのおすすめが表示されたが自分の好みとはまったく違うし、自分が本当に好きなものを表してはいないという経験があるだろう。ほとんどのアプリはこのような情報を詳しく説明していないため、なぜそれがおすすめになったのかわからない。

一方、Tonicではユーザーがパーソナライズの設定をいつでも見ることができ、変更やリセットをすることもできる。

Canopyの目標はTonicの公開ではなく、テクノロジーのライセンス供与だ。Tonicの主な目的はパーソナライズのエンジンがどのように動作するかをデモンストレーションすることだが、このアプリにはほかにも注目すべき特徴がある。

Canopyは人間の編集チームを雇用して、ニュースコンテンツを選んでいる。クリックべイトやヘイト記事といったノイズの山を提供しないようにするためだ。ニュース速報や、裏が取れていないような速報記事も提供しない。同社は、緊急性を求めて最新のニュースを追いかけるアプリを作ったのではないという。

Tonicは、情報を知り発想を得るために毎日読むべき記事を幅広い情報源から厳選し、パーソナライズして届けることに力を入れている。デジタルウェルビーイングという観点では、無限のニュースフィードではなく、記事の数は有限であることが重要と考えられる。

CanopyはTonicの公開にあたり、「おすすめを知るためにデジタルの自分を犠牲にするのは、もううんざりだ。それに、エンゲージメントを最大にすることを目的に最適化された無限のニュースフィードや速報、乱暴な記事に代わるものを作りたかった。そこで我々はTonicを開発した」と説明している。

テック企業大手がユーザーデータの不注意な扱いについて調査を受け、ユーザーのプライバシーへの関心が一般に高まっているこの時期に、こうした技術が公開された。例えばアップルは、同社のハードウェアやソフトウェアがユーザーのプライバシーを尊重していることをセールスポイントとして強く打ち出している。

ニューヨークを拠点とするCanopyは、Brian Whitman(ブライアン・ウィットマン)氏が創業した。同氏はEcho Nestの創業者であり、Spotifyの主任サイエンティストだった。CanopyにはSpotify、Instagram、Google、ニューヨーク・タイムズの幹部だった人々もいる。CanopyのシードファンドはMatrix Partnersが主導し、Spotify、WeWork、Splice、MIT Media Lab、Keybaseなどからも投資家が参加して、450万ドル(約4億8000万円)を調達した。

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(翻訳:Kaori Koyama)

エンジニア版NewsPicks目指す「AnyPicks」が1200万円を調達

エンジニア向けの情報共有コミュニティ「AnyPicks」を展開するロケッタは5月9日、複数の投資家より1200万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回同社に出資したのは、nanapiの創業者で現在はアルの代表取締役を務める古川健介氏など6名の個人投資家とプログラマー起業家ファンドのMIRAISE。ロケッタでは調達した資金を活用してプロダクトの開発体制を強化する。投資家陣は以下の通り。

  • MIRAISE
  • 古川健介氏
  • 和田修一氏
  • 柄沢聡太郎氏
  • 高野秀敏氏
  • 樫田光氏
  • 梶原大輔氏

ロケッタが2018年12月にローンチしたAnyPicksはエンジニア向けのソーシャルメディアだ。各ユーザーは気になったテクノロジー関連のニュースを自身のコメントと共に共有(ピック)したり、他のユーザーをフォローすることで最新の情報や有益な見解をチェックすることができる。

機能面などを踏まえると「エンジニア版のNewsPicks」と言えるサービスで、代表取締役の清水風音氏も自身のnoteで「ギークのためのNewsPicksを作りたい」と書いている。エンジニア向けの情報収集サービスとしては「TechFeed」などもあるが、エンジニアによるコメントを軸としたテックコミュニティを目指している点がAnyPicksの特徴になりそうだ。

冒頭でも触れた通り、今後ロケッタでは調達した資金を用いて開発体制を強化するほか、テクノロジー有識者のピッカー採用なども予定しているという。

左からロケッタ共同創業者の鳴瀬涼氏、代表取締役の清水風音氏

ニュースを記事単位で購入できるBlendleが100万ユーザーを獲得

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ニュースを記事単位で購入できるBlendleが100万ユーザーを獲得した。Blendleは複数の新聞社から発行されたニュースを同社の広告フリーのプラットフォームにまとめ、そのニュースを記事単位で販売している。1記事あたりの金額は数セント程だ。

Blendleがこのユーザー数を獲得するまでにかかった時間は、たったの2年ほどだ。記事を読むために会員費を支払う必要のあった従来のデジタルメディアのビジネスモデルを一から作り直すことを目的に、Blendleはジャーナリズムのマイクロペイメント・プラットフォームを2014年4月にヨーロッパでローンチした。

月間アクティブユーザーの数は公表していないものの、Blendleの編集マネージャーのMichaël Jarjourによれば、現在のアクティブユーザー数は「数十万人」だという。また、有料会員へのコンバージョン率はこれまでと変わらず20%のままだと彼は付け加えた。

同社の出身地であるオランダとドイツにおいて出版社とのパートナシップを築き上げたのちに、今年3月にはアメリカ市場にもビジネスを拡大したベータ版)。この1年間の成長率は300%にものぼり、今年末までには2000万記事の販売を達成する見通しだ。

Jarjourによれば、Blendleは今後しばらくの間さらなる地域拡大はせず、アメリカとドイツ市場にフォーカスをしていく方針だという。「今、私たちが最も注力している市場はアメリカとドイツです。この二つの市場を攻略するのは非常に難しいのです」と彼は話す。

Blendleユーザーの大半は30歳の人々で構成されている。これまでの最大の年齢グループは35歳であり、同社がより若い世代に読まれる記事を提供してきたことを表している。

Blendleのユニークな特徴の一つは記事の払い戻しに対応しているという点だ。読んでみて気に入らない記事があれば、ユーザーは料金の払い戻しを要求することができる。ただし、その場合には気に入らなかった理由を明確にする必要がある(そして明らかに払い戻し機能を悪用していると考えられるユーザーはプラットフォームから追放される仕組みだ)。Jarjourによれば、プラットフォーム全体の払い戻し率は約10%であり、アメリカ市場においてはそれ以下であるという。払い戻し率は「ほとんど一定の数字」だと彼は話す。

Blendleはユーザーの購入履歴のマネジメントもしている。例えば、ユーザーがある新聞社から発行された記事を複数購入し、その合計の購入金額がその発行元の定期購読料を超えた場合、その発行元の他のコンテンツが無料で読めるようになる。その背景にあるのは、記事をえり好みするために余分なお金を払う必要はないという考え方だ。

人気度だけをベースにしてニュースを発信するソーシャルサービスとは違い、Blendleでは人の手によって記事を選別しているのも特徴だ。Blendleは専門の編集チームを抱え、彼らが記事を選別することで「ハイクオリティのジャーナリズム」を実現しているのだ。

また、ユーザーの好みによってコンテンツをカスタマイズするBlendle Premium Feedと呼ばれるフィードも開発中だ。購入履歴からユーザーの好みを予測するアルゴリズムと、社内編集チームによる記事の選別を組み合わせることで実現されている。アルゴリズムによるオススメ機能を人の手で補完することで、コンテンツのクオリティを確保しているのだ。そして、ユーザーの視野を狭めるフィルターバブル(ユーザーが自分の考え方や思想に合った情報しか受け取れず、それ以外の情報から隔離されること)という現象を避けるのが目的でもある。

Blendle Premium Feedで提供される記事のほとんどはアルゴリズムによって選別された記事だ。その数は12記事ほどだが、それに人の手によって選別された「フィルターバブル防止用の」記事が3つほど加えられる。この新機能を発表したブログ記事で書かれている通り、Blendle Premium Feedはユーザーの好みと情報の多様性の両天秤策であることに間違いはない。この機能はまだテスト段階であり、そのテスト結果については「励みになる結果だった」と話している。

「フィルターではなくクオリティー」が独自のセールスポイントであるとすれば、アプリにフィルタリング機能を取り入れるのには非常に慎重なアプローチが必要だ。既存のユーザーをがっかりさせることなく、新機能の良さを理解してもらう必要があるのだ。だからこそ、Blendleのカスタマイズ・フィードの今後の成り行きには注目だ。

Jarjourはこの新機能について、「Blendle Premium Feedでは(アプリ内で答える)ユーザーの好みと、過去の購読履歴を分析することで得るユーザーの好みの予測を組み合わせることで、ユーザーの記事に対する興味の度合いを割り出します。新しい記事を一つ一つ分析することで(記事のタイプ、複雑さ、感情)この予測機能を実現させているのです。数カ月に及ぶアルゴリズムのトレーニングの結果、記事のカテゴライズの精度を高めることに成功しました」と説明する。

「編集者が選別した記事をフィードに加えることによりフィルターバブルを防止しています。また、記事の人気度やユーザーの好みという要素だけではなく、サプライズの要素も加味するようにアルゴリズムが設計されているのです」。

少なくとも「近い将来」に限っては、純粋なアルゴリズムによるオススメ機能がBlendleに導入されることはないだろう。「人間によるキュレーションはBlendleのコア要素であり続けるでしょう。15人のジャーナリストが合計で1日40時間、週7日の時間を費やして記事を選別することで、読まれるべき記事でありながら、定期購読料という壁の向こう側に隠れてしまっている記事を見つけ出そうとしているのです」。

Blendle Premium Feedは「今後数カ月中には」導入される予定となっている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

「ニュースをより簡単に」Discorsが120万ドルを調達

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銃規制は必要ない(いや、必要ある)。EUに加盟することは素晴らしいことだ(いや、最悪だ)。トランプ氏は天才だ(いや、地球上で最悪の人間だ)。世間に出まわるニュースは複雑で、ある意見があれば常にその逆の意見もある。本日(現地時間7月14日)、資金調達の完了とiOSアプリの公開を同時に発表したDiscorsを使えば、世界中で起こる様々な出来事を深く理解することができるだろう。

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現地時間7月14日、DiscorsのアプリがiPhoneとiPad向けにリリースされた

「私たちのミッションとは、世界中の優れたジャーナリズムの敷居を低くすることで、忙しい日常の中でも簡単に情報が入手できるようにすることです」。そう話すのは、Discorsの共同創業者兼CEOのBasil Enanだ。今日公開されたアプリでは、Discorsが独自に報じるニュースに加えて、それに対する洞察やコメント、分析、そしてエキスパートたちの意見を読むことができる。

彼らのアプリに掲載されるトップニュースは、あるアプローチに基づいて掲載されている。それは、「事実だけを頂きます、よろしく」というものだ。同アプリに掲載される記事は世界最大級のニュース通信社であるAssociated Press、Reuters、AFPなどを情報源とし、その後自社の編集チームによって選別されたものだ。

創立間もない同社はさらに、エンジェル投資家や創業者、Matter Venturesなどから120万ドルの資金を調達したことを発表した。この資金によって出版社とのパートナシップを強化する方針だ。

「どのようにすれば読者に分かりやすく、かつ効率的にニュースのwho、what、where、whenを伝えられるのか。私たちは6ヶ月もの時間をそれを考えるのに費やしました。」とEnanは語る。「しかし、ニュースを理解するということは、同時に”なぜ?それで何?”を理解することでもあり、それこそがDiscorsの強みなのです」。

Discorsはコメンテーターやアナリストとタッグを組むことで、記事により深みを持たせようと試みている。彼らは皆、The Economist、CNN、The Guardian、Bloomberg View、Foreign Policy、Tronc、The Washington Postなどに在籍する一流のエキスパートたちだ。

「私たちが考えるに、ニュースを理解するための最良の方法とは、有識者の意見を聞くことなのです」とEnanは話し、自分の意見を持つことの重要性も強調した。

同社はニュースの提供元とパートナーシップを結んでいるため、ユーザーは個々の出版社の記事を購読するために追加的な料金を支払う必要はない。Discorsの記事はすべて全文読むことができる。なんとも嬉しい限りだ。

現在のところ、同アプリは無料でダウンロードすることができる。しかし、今年末には会員制の料金体系が導入される予定となっている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook