Estimoteが新型コロナ接触者を追跡するウェアラブル端末を発表

Bluetoothを使ったビーコン端末のスタートアップであるEstimote(エスティモート)は、その専門技術を活かし、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を抑えるための一連の新製品を開発した。同社は、社会的距離の確保や隔離が要請されている間も物理的に狭い場所に集まって作業しなければならない人たちの職場の安全性を高めると共同創設者Steve Cheney(スティーブ・チェイニー)氏が確信する、新分野のウェアラブル端末を作り出したのだ。

ストレートに「Proof of Health」(健康の証)ウェアラブルと呼ばれるこのデバイスは、接触者の追跡を目的としている。言い換えれば、それぞれの職場の施設レベルで、人から人への新型コロナウイルスの感染経路をモニターするものだ。その狙いは、従業員の間で万一感染が発生した場合、状況を把握し、手遅れになる前に拡大を抑制する手立てを提供することにある。

このデバイスには、パッシブGPSによる位置追跡システムに加え、Bluetoothと超広帯域無線(UWB)接続を利用した近接センサー、充電式バッテリー、LTE通信機能が備わっている。さらに、装着者の健康状態や、健康の保証、症状、感染の確定といった記録状態の変更を手動で行える。装着者が、感染の可能性または感染確定に自身の状態を変更すると、接近した距離と位置情報の履歴を基に、接触した相手の情報が更新される。これらの情報は、接触の可能性のある人たちの詳細情報を保管し集中管理するための健康ダッシュボードにも記録される。現在は、ひとつの組織内での使用を想定してデザインされているが、この情報を企業全体あるいは一般社会での追跡に役立てることができないか、WHOを始めとする保健機関と協力する道を探っているとチェイニー氏は話している。

このデバイスは、さまざまな形態で展開できるよう作られている。現在すでにある丸い小石のようなタイプ(紐を取り付けることで首に装着して情報を確認できる)、調整可能なバンドで腕に巻くタイプ、施設の入出管理でよく使われている従来型のセキュリティーカードと一緒に携帯しやすいコンパクトなカード型タイプがある。小石型タイプはすでに生産に入っており、これから2000ユニットが展開される。近い将来、同社のポーランドにある製造資源を生かして、さらに1万ユニットを生産できるよう態勢を強化する予定だ。

Estimoteは、ほぼ10年間、企業向けにプログラム可能なセンサー技術を構築し、AppleAmazonといった巨大グローバル企業とも協力関係にある。チェイニー氏が私に話してくれたところによると、彼はその技術を、パンデミックによって生じたこの特異な問題に応用する必要性を即座に認識したというが、Estimoteはすでに18カ月前から、別の目的でその技術の開発に取り組んでいた。サービス業界の従業員向けに、安全対策や非常ボタンを提供するというものだ。

「このスタックは18カ月間、フル稼働しています」と彼はメッセージで話してくれた。「私たちは、すべてのウェアラブルのプログラムを遠隔で操作できます(LTE接続されてます)。工場に配備する場合、そのウェアラブルに遠隔でアプリを開発します。これがプログラマブルIoTです」

「ウイルスのおかげで、人と人が間近に接する場所での健康確認の診断技術が必要になるなんて、誰も思いませんでしたよ」と彼は言い足した。

接触者追跡をテクノロジーで実現しようという提案は数多くある。スマートフォンで収集された既存のデータを利用する方法や、カルテを転送する消費者向けアプリの応用などだ。しかし、それらの取り組みには、プライバシーの問題が大きく関係してくる。しかも、スマートフォンを使うことが前提だ。人の行き来が激しい環境では、正確な位置追跡をスマートフォンで行うのはほぼ不可能だとチェイニー氏は指摘する。専用のウェアラブルを作ることで、Estimoteは従業員同士の「侵害」的な行為を避けることができるとチェイニー氏は言う。その目的に合わせて作られたデバイスを使用し、従業員の間だけでデータを共有するからだ。さらに、取り外しができる形態で、部分的に自分でコントロールができる。また屋内では、モバイル機器は専用ハードウェアのように精度の高い追跡が行えないとも彼は話している。

しかも、このようにごく限られた領域での接触者追跡は、感染拡大を、他の方法よりも早く徹底的に抑制するための早期警報を雇用主に伝えるだけのものではない。実際、センサーデータから得られた大きなスケールでの接触者追跡情報により、新型コロナウイルス対策に、新しい優れた戦略がもたらされている。

「一般的に、接触者追跡は、個人の記憶や、高レベルの想定(例えば、その人の勤務シフトなど)に依存しています」と、ジョン・ホプキンズ大学応用物理研究室のBrianna Vechhio-Pagán(ブリアンナ・ベッキオペイガン)氏は言う。「新しいテクノロジーによって近距離、つまりおよそ2m以内での接触を追跡できるようになり、他の方法でもたらされる誤差が減りました。BlurtoothやUWB信号からの感染状態や症状を含む濃厚接触者追跡データにより、患者や医療従事者の安全を守る新しい優れた方法が発見されるでしょう」。

人との距離を保つ方針がいつまで続くかは今のところは不明だ。何カ月も続くという予測もある。感度に差があったとしても、Estimoteのようなソリューションは、リスクを回避して従業員の健康と安全を守るための最大の努力を払いつつ重要なサービスや業務を遂行する上で、欠かせないものとなる。さらに大規模な対策も必要だろう。一般市民を対象とした接触者追跡計画などだ。Estimoteの取り組みは、そうした計画の設計や開発の参考になるはずだ。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

英ガトウィック空港、屋内ナビゲーション用に2000個のビーコンを設置

空港やショッピングモールなど複雑な構造をした施設の中では、なかなか目的の場所にたどり着けないことがある。Googleは3Dセンサーを搭載したスマートフォンを使って、GPSでは測定しきれない場所でもナビゲーション機能を使えるようにしようとしているが、それ以外の解決策になり得るのがビーコンだ。施設のいたるところにビーコンを設置すれば、スマートフォンがその信号を拾って現在地を特定できるようになるので、ユーザーはスムーズに目的地へ向かうことができる。

イギリスで2番目に利用者数の多いガトウィック空港は、数年間にわたる改革プログラムの一環として、この度ビーコンを使った屋内ナビゲーションシステムの導入を決めた。

ふたつのターミナルには、既に合計約2000個のバッテリー駆動のビーコンが設置されており、今後地図アプリを開くとより正確に現在地が表示されるようになる。さらにこのビーコンはARナビゲーションツール(冒頭の写真)にも利用される予定で、ユーザーはスマートフォンのスクリーン上に表示される矢印に従って進むだけで目的地にたどり着けるようになる。なお、このシステムではユーザーの現在地を誤差3m以内で特定できるとされている。

また、ガトウィック空港は自分たちのアプリだけでなく、各航空会社のアプリやサービスとも屋内ナビゲーションシステムを連携させようとしている。もしもこれが実現すれば、航空会社は搭乗口に現れない乗客に通知を送ったり、位置情報をもとにその人の荷物をおろすかどうかといったことを決めたりできるようになる。

空港内の小売店やテナントもこのシステムを使うことで、ユーザーが店舗の近くにきた際にマーケティングメッセージや割引情報を送れるようになる(少なくとも通知を受け取るよう設定しているユーザーに対しては)。

なお、ガトウィック空港はビーコン経由で利用者の個人情報を集めることはないが、列の長さを見たり、混雑を解消するために人の流れをコントロールしたりといった運営上の理由で「エリア別の人の密度」に関する情報は集める予定だと話している。

システムの開発にあたり、ガトウィック空港はイギリスのスタートアップPointrの協力を仰いだ。ソフトの開発やシステムの保守以外にも、Pointrは3D ARナビゲーションをサポートしたSDKをサードパーティに提供していく予定だ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

そこらのテレビがビーコン端末になってしまうEstimoteのMirror、商店などではとても便利

靴屋さんへ行って、一足の靴を手にとった。するとその靴のスペックが、そばのテレビに表示される。あるいは、空港で出発便の表示を見ている。あなたのフライトが現れると、ゲートまでの案内地図が横のテレビ画面に表示される。こんな例はおそらく、ビーコンというもののキラーアプリ(決定版のアプリケーション)だと思うが、ついに、その夢が実現した。

その快挙を実現したのはEstimote社のMirrorだ。そのシステムは要するに、SnapdragonのプロセッサーにHDMIとUSBのジャックをつけたものだ。それをスマートテレビに挿入すると、ビーコンをサポートしているスマートフォンの持ち主が近づくと通知を表示する。ビーコンをMirrorに近づけてもよい。たとえば商品の中にビーコンを隠しておくと、客が持ち上げてMirrorに近くなったとき、その商品のビデオが表示されたり、お客が対話的に機能を調べたりできる。

EstimoteはすでにMirrorをデベロッパーに提供しており、商用ユーザーへの展開は来年開始する。上のビデオでは、Estimoteの協同ファウンダーSteve Cheneyがこの製品について語り、使い方を説明している。なかなかクールな製品だし、その利用はすごく広まりそうだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))