ホームページ制作SaaSのペライチがラクスルから4.9億円を調達

ホームページ制作SaaSのペライチがラクスルから4.9億円を調達

ペライチは9月11日、第三者割当増資により、4.9億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はラクスル。調達した資金をもとに、ホームページを制作できるSaaS「ペライチ」の事業拡大および採用強化を進める予定。

ペライチとラクスルは両社の顧客基盤の親和性が高く、ラクスルの印刷ECサービスを利用している顧客に対し、ウェブ予約・決済サービスを利用してもらうなど、企業/サービス間で相互に補完することで、両社の成長を互いにサポート可能と考えているという。

2014年4月設立のペライチは、「『つくれる』のその先へ」というビジョンのもと、「誰でも・カンタンに・素早く」ホームページを制作できるSaaS「ペライチ」を開発・運営。ウェブ予約・決済などDXに必要な機能が一通り揃っており、かつリーズナブルな価格で利用できるという。2015年のリリース以降、40代・50代のユーザーを中心に中小企業の経営者・個人事業主が利用しており、2020年3月時点で会員登録数が22万を突破した。

また、ユーザーをサポートする「47都道府県サポーター制度」を運営。総勢300名を超えるペライチのプロが、日本全国でホームページ制作セミナーや勉強会を開催するなど、様々なサポート体制をとっており、どんな方でも「つくれる」という体験を提供できるとしている。

2009年9月設立のラクスルは、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」という企業ビジョンのもと、印刷や物流、広告といったデジタル化が進んでいない伝統的な産業に、インターネットを持ち込み産業構造を変え、より良い世界にすることを目指している。現在、印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」と、物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」、広告のプラットフォーム「ノバセル」のサービスを提供している。

スタートアップ企業がテレビCMを放映する狙いとその効果

独立系ベンチャーキャピタルのB Dash Venturesが主催するB Dash Campは、例年春と秋に開催されるスタートアップの祭典だ。業界の著名人が数多く登壇するセッションが多いことでも知られる招待制のイベントで、今年の春は5月23日、24日に北海道・札幌で開催されている。

そのイベントで開催された「テレビ広告のベストプラクティスを探る」というテーマのセッションには、GOの三浦崇宏氏、ヘイの佐藤裕介氏、ラクスルの田部正樹氏、マネーフォワードの辻庸介氏が登壇した。

同一ジャンルで真っ先にCMを放映し純粋想起を促す


まずは、数々の広告を手がけているPR/マーケティング会社のGOでクリエイティブディレクターを務める三浦氏は「CMには驚きがないと視聴者は反応しない」とコメント。最近のCMでは「ハズキルーペのCMは素人くささの残る演出だが、それが逆に視聴者の驚きになって結果的には大きな宣伝効果を生んだ」と語る。

さらに「サービスへの信頼、好意を持たせるためにはタレントを起用するべき」とも。特にあまり知られていないサービスほど、タレント起用の意義は大きいという。最近の視聴者はどんどん疑い深くなっているが、知っているタレントが出ているCMであれば安心感を持つ人が多いとのこと。

例えば、三浦氏が手がけたクラウドファンディングのCAMPFIRE(キャンプファイヤー)のCMについては「(CAMPFIREのほか、MakuakeやReadyforなど)3大プレイヤーがいる業界なので、その中でいち早くCMを打って認知を高めたかった」という。クラウドファンディングといえば、CAMPFIREという純粋想起を狙ったCMだという。そのため「15秒版よりも30秒版のほうを多く配信している」とのこと。このCMの出演者は、タレントののんと、チャップリンパフォーマーのジェイソン・アーリンという、多くの人が知っているタレントを起用している。

ほかにもさまざなタレントと交渉したそうだが、金銭面での折り合いが付かなかったり、「自分が責任が持てないサービスには出演できない」「夢を叶えるサービスに夢をすでに叶えた人間が出るのかどうか」などの理由で断られたそうだ。

さらに三浦氏は、CMとタレントという文脈で最近の面白い会社として、腹筋などを低周波で鍛えるトレーニングギアの「SIXPAD」で有名な名古屋を拠点とするMTGを紹介。「MTGはCMにクリスティアーノ・ロナウドを使っているが、あれはロナウドに自社の株式を分けたことで成立した案件」とのこと。同社はスキンケアブランド「MDNA SKIN」も展開しており、このイメージキャラクターになっているマドンナにも同様の契約を結んでいるそうだ。

さて、CAMPFIREのCMについて三浦氏は「CAMPFIREなどのクラウドファンディングを始めたいと考えるターゲットユーザーはテレビの前にはいない」とも言う。テレビの前の99%の人はクラウドファンディングでプロジェクト始める人ではないが、そういう人に向けてクラウドファンディングが健全なサービスであることを周知するという狙いもあったという。実際にクラウドファンディングには「お金がないから支援してください」という負のイメージをもたれることもまだまだあるそうだ。

続けて三浦氏は「CM業界では、宣言編のあとに展開編が続くことが多いが、今回手がけたCAMPFIREのCMはクラウドファンディングを認知させる宣言編」だったという。CAMPFIREはまだ展開編のCMは作ってないそうだが、宣言編のCMを流したあとに鉄道駅などにポスターを掲示したところ、ポスターを見たユーザーがYouTubeでCMを見直すという現象も起きたそうだ。そしてCMを作る側の人間は「こういった宣言編のCMをやりたい人がいっぱいいる」とのこと。

同業他社にぶつけて認知度を上げるコイニー


ヘイの佐藤氏は、同社が提供しているキャッシュレス決済サービス「コイニー」のCMを紹介。このCMは、ナレーターなどを除くとほぼ社内で制作したそうだ。CMの目的は、キャッシュレス決済というカテゴリーと、コイニーの付加価値を訴求すること。より大手の同業他社がCMを放映している時期を狙い、一定期間は放映期間を被せつつ、CM内でサービス名を連呼して認知を高める作戦だったそうだ。

この戦略を採ることで、コイニーよりも資金を投下してタレントを使った他社CMを見た視聴者が「○○が出ているコイニーだよね」といった勘違いを誘導する狙いもあったそうだ。そのほか、トヨタなどの大手企業のCMのあとに流してもらって安心感を高めるという施策も実行したそうだ。ちなみにコイニーのCMについてラクスルの田部氏は「視聴者は上戸彩が出てるのは紳士服のアオキとコナカのどっちだっけ?というレベル。それならCMを打ちまくってやりきるのが大事」とコメントした。

ラクスルはABテストで放映CMを決定


そのラクスルの田部氏は自社のCMについて、コストを抑えられる地方、地方大都市、首都圏・関西圏にフェーズを分けてCMを配信したとのこと。第1フェーズではCM放映後にどういったキーワードが検索されるかをチェック、第2フェーズではタレントは女性がいいのか男性がいいのかを複数のCMを流して比較。こういったABテストを各2カ月、計4カ月繰り返したうえで、評価が高かったものを首都圏などに配信するという手法を採ったそうだ。

地方でCMを打ったところ「ネット印刷」というキーワードはさほど検索されず、「チラシ印刷1枚1.1円」や「ラクスル」という言葉への反応が高かったとのこと。そして好感度については、男性タレントよりも女性タレントのほうがウケがよかった。

その結果、首都圏など放映されているCMには「チラシ印刷1枚1.1円」のキーワードやタレントののんが起用されている。田部氏は、チラシなどの印刷市場は3兆円ほどと言われていて、最近はネット印刷が1年100億円規模で増加している。競合大手がいる中でラクスルはこの年間の増加額の過半数をとっているとのこと。「一度CMをやりきって認知させておけば、その広告費を減らしても売上が落ちない。こういった数字は資金調達の際にも重要」と語る。

タレント起用で認知度を高めたマネーフォワード


マネーフォワードの辻氏は、自社のCMについて「当初私は、タレントなんて使わなくていいのはないかという反対派だったが、実際に放映してみるとタレントを起用したCMのほうが圧倒的だった」とのこと。本当は会社の使命などの想いをCMでも伝えたいが、詰め込んでも視聴者の頭からは抜けてしまうのが悩みどころとのこと。理想としているのは、巨人軍の終身名誉監督である長嶋茂雄氏が出演しているセコムのCMとのこと。ちなみに辻氏の「これから起用するなら誰?」という問いに、クリエイティブディレクターの三浦氏は「イチロー氏」と即答。


マネーフォーワードCMは、チュートリアル徳井、オリエンタルラジオ、ローラなどを起用してきたが、現在では藤田ニコルをはじめさまざまなタレントやキャラクターが出演している。現在のCMは出演するタレントに実際にお金に対する考えて書いてもらってからCMに臨んだそうだ。ちなみに「つば九郎のCMは社内で評価が高かったのですが、つば九郎はしゃべらないというキャラ設定のため、CMでもフリップをめくるだけで音がなく、視聴者に刺さらなかった」と苦笑いした。

そのうえで、CPA(顧客獲得にかかる広告の費用対効果)は2年できっちりと刈り取るため、CMを受けてのウェブのほうにはかなり力を入れたそうだ。「なぜCMを放映したのか?」という問いには、「競合のプレーヤーがいるカテゴリーで真っ先にCMをやりたかった」とのこと。辻氏は続けて「そのために、資金調達したらすぐにCMに投下していた」と振り返る。CAMPFIREのCMと似た傾向だ。

プロダクトやサービスが一定水準に達したあとに、スタートアップ企業が新たな資金調達に成功するとテレビCMを打つというのは、最近では当たり前になってきた。今回のセッションを終えて個人的に感じたのは、至極当たり前だが「とにかく目的を持ってやりきることが大事」ということだ。

ドライバーシェアリングで物流業界の効率化を目指すラクスルの「ハコベルコネクト」

印刷・広告のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」や物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を提供するラクスルは1月24日、一般貨物を取り扱う運送会社向けに物流業界全体を効率化するための新サービス「ハコベルコネクト」の提供を開始すると発表した。

ハコベルコネクトのローンチは2月12日。2015年12月にローンチしたハコベルは名称を改め「ハコベルマッチング」として提供される。

新サービスのハコベルコネクトは一般貨物事業者及び大手物流荷主向け求配車サービス。ハコベルマッチングは軽トラックやカーゴなどを扱う軽貨物事業者と荷主のマッチングに特化したサービスという位置付けとなる。

ハコベルコネクトは“物流業界最大の課題”であるというドライバー不足、そしてアナログなコミュニケーションによる低生産性を解決するために開発された。

泉雄介氏

ラクスルの取締役CTOでハコベル事業本部長を務める泉雄介氏は当日開催された記者会見で「ドライバー不足は日本の物流の最大の課題の一つだ」と話し「次の10年でおよそ24万人の不足が出ると言われている」と説明。

泉氏氏いわく、ラクスルがハコベルコネクトを通じて解決を目指す“ドライバー不足”の原因は大きく分けて二つある。まず、ドライバーの“なり手”不足。同氏は報酬や労働環境を改善していくことが必要だと述べた。低い報酬の原因は業界の多重下請構造による中抜き。二つ目の原因は低い生産性。膨大な事務作業があるのでドライバーが有効活用ができていないのだという。

ラクスルの情報によると、多くの一般貨物事業者は案件を受注したとしても自社のトラックだけでは配車しきれず、案件の7割以上を他の運送会社に求車している会社も存在する。そのため、運送会社は互いに配車協力をしなければ運送業務が成立しないのが実情だという。

だが各運送会社が持つシステムは自社の配車情報のみを管理する極めてクローズドなもの。加えて協力運送会社との配車のやり取りは紙や電話、FAXなどで行われている。

結果、一つの配送案件の情報が複数の運送会社でバラバラに管理されることとなり情報の断絶が発生し、物流業界の生産性の低さにつながってしまっている。

そこでラクスルが生み出したのが、各運送会社が保有する案件情報や運送業務に関する情報をオンライン上で可視化し、運送業務に関係する複数の企業が情報をスムーズに連携できる仕組みであるハコベルコネクトだ。

アナログな業務をデジタル化し、情報を複数の運送会社やドライバーと共有することで、コミュニケーションを効率化、また、伝達ミスを軽減する。

具体的には、取引リクエストや配車・運行管理、免許証や車検証などの証書のクラウド管理などが同プラットフォーム上でできる。

また、iOSとAndroidの両方に対応予定のドライバーアプリを使えば、ドライバーは配車情報をリアルタイムに確認し、確認ミスや待機時間を削減することができる。同アプリでは車両の動態管理や配送ステータスの共有ができ、無駄な電話連絡を減らすことも可能だ。

泉氏は「ハコベルコネクトが目指すのは、関係者間あるいは企業間を越えて情報を共有しスムーズにし、情報摩擦を限りなく減らすことで効率を上げていく仕組みだ」と話していた。

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オンライン印刷のラクスル、フィデリティ投信などから20.5億円を調達——既存事業のほか海外展開も強化

ラクスル代表取締役の松本恭攝氏(写真は2015年3月撮影)

ラクスル代表取締役の松本恭攝氏(写真は2015年3月撮影)

オンライン印刷サービス「ラクスル」などを手がけるラクスル。2015年2月に40億円の大型調達を実施した同社が8月4日、新たにFidelity Investments(フィデリティ投信)、日本政策投資銀行(いずれも新規株主)のほか、オプト、グローバル・ブレイン、GMOベンチャーパートナーズ、Global Catalyst Partners(いずれも既存株主)から第三者割当増資により20億5000万円の資金調達を実施したことを発表した。

ラクスルでは今回調達した資金をもとに、主力である印刷事業に加えて、2015年12月にスタートしたCtoC型配送サービスの「ハコベル」事業(詳細はこちら)の2つの事業領域の成長に向け、マーケティング投資、人員拡充、システム投資を進める。加えて、海外投資と新規事業への投資も進めるとしている。

またラクスルは2015年11月にインドネシアで同様のサービスを手がけるPrinzioに出資しているが、これに続いて、インドのInkmonkへの投資も実施しているという。両社に対しては日本のナレッジを共有するほか、ベトナムや中国に持つオペレーション部隊のシェア、システムAPIの提供などを行い、事業面でのバックアップを行っているという。

ラクスルの創業は2009年。印刷所の非稼働時間を利用して、安価な印刷サービスを展開。これに加えて中小企業向けにチラシポスティングなどのマーケティング支援、前述のハコベルによる配送サービスなどを手がけている。7月末時点での中小企業ユーザーは30万アカウント、売上高は非公開だが3年間で50倍に成長した。またハコベルは現在2000台のトラックを登録しており、マーケティング支援事業と合わせて急成長しているという。

以前の資金調達時、ラクスル代表取締役の松本恭攝(やすかね)氏は「『投資をすれば拡大する』ということが見えてきたので、小さく上場するより赤字を掘ってでもより成長しようと考えた」といった話をしていた。今回の調達について尋ねたところ、「掘った後の大きな利益成長、Jカーブ(事業開始からしばらくの間は投資フェーズで赤字になるが、その後は投資した分大きく成長していくというスタートアップの成長モデル)を実現する。むやみに掘ってるわけではなく、資本効率の良い範囲で、最大の投資をしてる」という回答を得た。また今後の上場に関しては「ノーコメント」とのこと。

なおフィデリティ投信は年金基金や機関投資家の資金をもとに、上場株や債権などに投資を実施している。また傘下のベンチャーキャピタルであるEight Roads Venturesの日本チームがUI/UX改善ソリューションを手がけるKAIZEN Platformやグルメサイト運営のRettyなど国内スタートアップに投資を行ってきているが(厳密にはKAIZENは米国登記)、フィデリティ投信本体での国内スタートアップへの投資は公表されている限りこれが初めて。CrunchBaseにもあるが、フィデリティではこれまでSpotifyやUber、Airbnb、SnapChatなどへの出資を行っている。