生徒や保護者、教師から大量のデータを収集、新型コロナで孤立する生徒を学校が理解するのを助けるPanorama

幼稚園から高校までの教育ソフトウェアプラットフォームを構築しているPanorama Education(パノラマ・エデュケーション)は、General Atlantic(ジェネラル・アトランティック)が主導するシリーズCラウンドで6000万ドル(約65億7900万円)の資金を調達した。

既存の出資者であるOwl Ventures(オウル・ベンチャーズ)、Emerson Collective(エマーソン・コレクティブ)、Uncork Capital(アンコーク・キャピタル)、Chan Zuckerberg Initiative(チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ)、Tao Capital Partners(タオ・キャピタル・パートナーズ)もこの資金調達に参加し、ボストンを拠点とする同社の2012年の創業以来の調達額は1億500万ドル(約115億1400万円)となった。

Panoramaは、今回のシリーズCの調達額や、具体的な財務成長指標については明らかにしていない。しかし、CEO兼共同創業者のAaron Feuer(アーロン・フォイヤー)氏は、同社が現在、米国内の2万3000の学校で1300万人の生徒にサービスを提供しており、これは米国の生徒の25%がPanoramaのサービスを受けていることを意味すると述べている。

また、国内最大100の学区および州機関のうち50以上が同社のプラットフォームを使用しているという。合計で1500以上の学区がPanoramaの顧客となっている。顧客には、ニューヨーク市教育局、ネバダ州クラーク郡学区、テキサス州ダラスISD、ハワイ州教育局などが含まれる。

フォイヤー氏によると、2020年3月以降、Panoramaの顧客には700の学区が追加され、18カ月前に提供していた800の倍近くになったという。

では、Panoramaは具体的にどんなことをしているのか?ひと言でいうと、生徒や保護者、教師を対象に調査を行い、実用的なデータを収集するSaaSビジネスだ。イェール大学の大学院生だったフォイヤー氏とXan Tanner(ザン・タナー)氏は、学校が生徒からのフィードバックを収集し、理解するための最良の方法を見つけるために、Panoramaを設立した。

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により、多くの生徒がバーチャルで学校に通うようになった今、生徒の社会的・感情的なニーズに対応する必要性は、かつてないほど高まっている。多くの子どもたちやティーンエイジャーが、仲間から孤立したことで、うつ病や不安症を患っており、そのメンタルヘルスへの影響は、学業への悪影響以上のものがあると考えられている。

例えば、生徒には学校でどれくらい安心できるか、教師をどれくらい信頼しているか、自分にはどれくらいの可能性が秘めていると感じるかなどについて質問する。

「私たちは、学校が生徒、教師、保護者を対象に調査を行い、学校の環境や経験を理解する手助けをしています。そして、学校が社会的・感情的な発達を把握することを支援し、数学の厳密なデータと同じように、社会性と情動の学習(SEL)や健康状態に関する情報を得ることができるようにしています」とフォイヤー氏はTechCrunchに語っている。

例えば、過去1年間に全国で2500万人がPanoramaの調査に参加しており、かなりの量の情報が得られている。Panoramaは、地区の既存のデータシステムすべてと統合することができ、地区データの「全容(文字通りパノラマ)」と生徒の情報をまとめて提供することができる。

「教師がログインして、生徒に関するすべての情報を一か所で見ることができるので、とてもパワフルです。しかし、最も重要なのは、教師が生徒のために行動を計画するためのツールを提供することです」とファイヤー氏は語っている。

Panoramaは、同社のソフトウェアを使用することで、卒業率の向上、学生態度を照会する回数の減少、学習時間の増加、生徒が「大人や仲間とのより強い協力関係」を築くなどの効果が得られると主張している。

Panoramaは今回の資金を、製品開発の継続、地区とのパートナーシップのさらなる強化、そして当然ながら雇用にも充てる予定だ。Panoramaには現在、約250名の社員が在籍している。

Panoramaはここ数年、資金調達を行っていなかったが、それはファイヤー氏によると、資金を必要としていなかったからだそうだ。

「私たちはGeneral Atlanticと出会い、学校に次のレベルのインパクトを与える機会があることを実感しました。しかし、私にとって重要だったのは、資金を調達する必要がなかったということでした。事業に投資できるようにするため、資金調達する道を選びました」と彼はTechCrunchに語った。

General AtlanticのマネージングディレクターであるTanzeen Syed(タンジーン・サイード)氏は、Edtech(EdTech)はこの会社にとって重要な分野であると述べている。

「米国の教育システムに目を向けたとき、そこには大きなチャンスがあり、ソフトウェアやテクノロジーを使って学生の体験を本当の意味で向上させることができる、非常に初期の段階にあると考えました」と彼は語っている。

また、Panoramaについては「単なるビジネスではない」と考えている。

「Panoramaは、学生や管理者に、学生生活をより良いものにするためのツールを提供することを、本当に真剣に考えています。そして彼らは、それを可能にする製品の開発に夢中になっているのです。それに加えて、多くの学校や地区と話をして得られたフィードバックは、一貫してポジティブなものでした」とサイード氏はTechCrunchに語ってくれた。

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オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」など社会人教育SaaSのスクーが約7億円のシリーズD調達
画像クレジット:Panorama

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」など社会人教育SaaSのスクーが約7億円のシリーズD調達

オンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」など社会人教育SaaSのスクーが約7億円のシリーズD調達

大人たちがずっと学び続けるオンライン生放送学習コミュニティ「Schoo」(スクー)を手がけるSchooは8月25日、シリーズDラウンドにおいて、総額約7億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のBonds Investment Group、インキュベイトファンド、SMBCベンチャーキャピタル、鎌倉投信・フューチャーベンチャーキャピタル、山口フィナンシャルグループ傘下の山口キャピタル。

調達した資金により、Schooや2021年6月に提供を開始した高等教育機関DXプラットフォーム「Schoo Swing(β版)」(スクー スウィング)のサービス向上に向けた人材採用やマーケティング投資を行う。また、地方エリアへの遠隔教育普及によって実現する「未来の暮らし」の確立も推進するという。

Schooは、2012年のサービス開始以来「未来に向けて、社会人が今学んでおくべきこと」をコンセプトとした生放送授業を毎日無料提供している。過去の放送は録画授業として約7200本を公開している。法人向けには社員研修と自己啓発学習の両立を実現する「Schoo for Business」を提供。

また、個人と法人合わせての登録会員数は約65万人にのぼり、導入企業実績は2000社を突破するなど、昨今のデジタル化の影響を受けて事業は急拡大を続けているという。

高知高専が中学生対象に情報セキュリティの技量・知識を競うクイズ形式CTFコンテストを9月4日オンライン開催

  1. 高知高専が中学生対象に情報セキュリティの技量・知識を競うCTFコンテストを9月4日にオンライン開催

高知工業高等専門学校(高知高専)は8月12日、中学生を対象とした、クイズ形式の問題を解くことで情報セキュリティの技量や知識を競う「高専に挑もう! 中学生向けCTFオンラインコンテスト」を9月4日に開催すると発表した。参加費は無料。オンラインなので、インターネットに接続できる環境があれば、全国どこからでも参加できる。

CTFとは、もともと旗を取り合う陣取りゲーム「キャプチャ・ザ・フラグ」(Capture The Flag)のことだが、それが転じて情報セキュリティー分野では、「フラッグ」と呼ばれる隠された文字列やサーバーの権限を奪い合って得点を競うゲームの総称として使われている。ゲームを通じて、情報セキュリティーやハッカー攻撃からの防御法などを学ぶことが目的。

高知工業高等専門学校は、日本で唯一「情報セキュリティーコース」のある国立高専だ。国立高等専門学校機構が推進する「高専発!『Society 5.0型未来技術人財』育成事業」のプロジェクトのひとつ「COMPASS 5.0」(次世代基盤技術教育のカリキュラム化)のサイバーセキュリティー分野で中核拠点校にもなっている。このイベントは、高知高専が2020年から実施しているもので、中学生向けに同校の教員や学生が作った問題や、高知や高知高専にちなんだご当地クイズなどが出題される。

2020年のコンテストの様子(写真は井瀬潔校長)

2020年のイベント中継画面

高知高専は、これからの社会の変化と時代のニーズに対応できる人材を育成する1学科制の高等専門学校。1・2年次では、教養科目・専門基礎科目・実験実習で基本力を身に付け、3年次からは専門分野5コースのいずれかに進み、コアな専門分野と多面的な知識を融合、幅広い学識・技術が活かせるハイブリッド型の人材を育成している。自らの力で新しい社会をデザインする「みらい人」の輩出を高知高専は目指している。

「高専に挑もう! 中学生向けCTFオンラインコンテスト」概要

  • 開催日時:2021年9月4日10:00~12:00
  • 対象:中学1~3年生(全国から参加可能)
  • 参加費:無料(通信費は各自負担)
  • 表彰:ゲーム終了後、高得点者のユーザー名・得点をオンラインで発表
  • 申込方法:高知高専ウェブサイトのイベント情報ページ(下記)から申込フォームに記入
    <申込必要項目> 氏名、フリガナ、郵便番号、都道府県、住所、電話番号、学校名、学年、当日使用するユーザ名、当日使用する機器の種類
    ※申込には保護者の承諾が必要
    イベント情報ページ:https://www.kochi-ct.ac.jp/event/archives/165
    ※ 申込多数の場合は先着順
  • 申込期間:2021年8月1日~25日17:00まで
  • 推奨環境:
    <ハードウェア> PC、タブレット、スマートフォン
    <ソフトウェア> Microsoft Edge、Google Chromeなどのウェブブラウザーがインストールされていること

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全国14の教科書出版社と提携、有償導入600校超の中高生向けデジタル教材・問題集「リブリー」が資金調達

全国14の教科書出版社と提携、有償導入600校超の中高生向けデジタル教材・問題集「リブリー」が資金調達

デジタル教材とAIドリルの特性を併せ持つデジタル教材プラットフォーム「リブリー」を展開するLibryは7月21日、グロービス・キャピタル・パートナーズ、凸版印刷などを引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施したことを発表した。調達金額は非公開。

「一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮できる社会をつくる」をビジョンとするLibryは、2017年にプラットフォーム「リブリー」をリリース。ひとつの端末で複数の教材や問題集を管理でき、学習履歴に基づいた「類似問題」機能などで、生徒ごとの学習状況や理解度に合わせた個別最適化学習を行うというものだ。同時にLibryは、全国14の教科書出版社と提携し、数学、物理、化学、生物、地学、英語の教科書と問題集260冊をデジタル化して提供している。特に高校理数科目では、教科書会社5社中の4社と提携しているという。有償導入している学校は全国600校以上。2022年には複数の出版社が「リブリー」上でデジタル教科書の提供をすることになっている。

今回の資金は、次の目的に使われる。

  • 営業体制の強化による導入校数の拡大
  • 操作性の高いUIへの改善およびカスタマーサクセス体制の強化による顧客の活用促進
  • 「生きるチカラを育むデジタル教科書」に向けた新機能開発
  • 地理・歴史・公民科目など、対応科目の拡張に向けた新機能開発

2012年5月設立のLibryは、共同創設者で代表取締役CEOの後藤匠氏と取締役テクリードの中村文明氏が東京工業大学在学中に立ち上げたスタートアップ。その成り立ちから今日までの記録が、「note」の記事で紹介されている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:学生(用語)学校(用語)教育 / EdTech / エドテック(用語)教科書(用語)問題集(用語)Libry(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

ハーバード大コンピューターサイエンス講座を日本語化・無償公開した、エンジニア養成学校CODEGYMを手がけるLABOTが3.1億円調達

ハーバード大コンピューターサイエンス講座を日本語化・無償公開した、エンジニア養成学校CODEGYMを手がけるLABOTが3.1億円調達

オンライン・プログラミング学習サービスCODEGYM(コードジム)を運営するLABOT(ラボット)は5月19日、3億1000万円の第三者割当増額を発表した。引受先は、サイバーエージェント・キャピタル、Mistletoe Japan、​PERSOL INNOVATION FUND、NOW、F ventures、新生企業投資が運営・関与するファンド、その他の個人投資家。このラウンドには、2021年4月のプレシリーズAラウンドに伴う、第1回J-KISS型新株予約権、第2回J-KISS型新株予約権の転換が含まれる。

CODEGYMは、2020年1月に設立されたコンピューターサイエンスとプログラミングの学校。日本で初めてISA(Income Share Agreement)を採用した。ISAとは、学資ローンに代わるシステムとして登場した所得分配契約のこと。在学中、学生は入学金や授業料の支払いが免除され、就職後に年収に応じた額を支払うという制度で、日本では、CODEGYM以前にこれを導入した教育機関はなかった。「これまでの家庭環境や学歴・年収などによらず、誰もが平等に挑戦できる教育機会の提供、社会の実現を目指し事業を展開しています」とLABOTは述べている。

2021年5月からは、新型コロナ禍で家計や進路に問題が生じた10代の若者に対して、NPO法人CLACKと共同で「CODEGYM Academy 2021年コロナ学生緊急支援」を実施し、503人の高校生、大学生を入学させた。毎週土曜日のプログラミング教育の講義が半年間続くが、40社以上のIT企業を中心とするスポンサー企業からの協賛金とクラウドファンディングによる100人を超える支援者からの寄付によって、学費はかからない。

創設者の鶴田浩之氏は、大学在学中に起業し、大学生向けスケジュール管理サービス「すごい時間割」を開発したという経歴の持ち主。

同氏は、日本は国民皆保険や生活保護など諸外国と比べても社会保障が充実しているものの、介護・育児などで一度でも職歴にブランクが出たり大学を中途退学したりしてしまうと、独力では正社員としてキャリアアップすることが難しいと話す。そこで「リカレント教育と転職支援をセットにし、初期費用がかからず誰もが平等に挑戦できるISA は、今の日本社会にとって必要不可欠な産業になると考えています」とリリースで述べている。

画像クレジット:LABOT

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