アニメーションと音声で写真に生命を吹き込む、MyHeritageとD-IDが提携し故人が話す動画が作成可能に

2021年、家系調査サービスのMyHeritageが、故人の顔写真を動画化できる斬新な「ディープフェイク」機能を導入して話題になった。TikTokのユーザーたちはいち早くその技術に反応して、動画を投稿し、自分が会ったこともない親戚やまだその死を悲しんでいる故人を蘇らせて、「ディープノスタルジア」と呼んだ。今日まで、1億枚以上の写真がこの機能で動画になった。そしてその機能が進化した。米国時間3月3日、MyHeritageはパートナーのD-IDとともに「ディープノスタルジア」を拡張した「ライブストーリー」機能をローンチした。写真の人物を生き返らせるだけでなく、彼らに話をさせるのだ。

MyHeritageが技術をライセンスしたD-IDはテルアビブのスタートアップで、AIとディープラーニング利用した再現動画の技術で特許を取得している。

D-IDの技術は、APIを通じて開発者に提供され、メディア、教育、マーケティングなど、さまざまなライセンシーに利用されています。例えばWarner Bros.(ワーナー・ブラザーズ)は、D-IDを利用して、ユーザーが映画の予告編をアニメーション写真でパーソナライズできるようにしたり、ハリー・ポッター展のために協力した。Mondelēz International、広告代理店のPublicis、Digitas Vietnamは、地元の祭りのマーケティング活動でD-IDと提携している。インドの短編動画アプリJoshは、顔アニメーションの技術をクリエイティブツールとして統合した。また、非営利団体や政府も、さまざまな啓発キャンペーンにこの技術を利用している。

MyHeritageは、こライブストーリーでD-IDの最新AI技術をユーザー向けに利用している。この機能を使うためには、ユーザーはまず無料でMyHeritageのアカウントを無料で作成することができ、その技術を何度か無料で試用できる。その後は、有料のサブスクリプションでライブストーリーを無制限に利用できる。

本技術で先祖の人生を物語にしたり、それを本人に語らせることもできる。それを可能にするのが、D-IDの特許取得技術Speaking Portrait Technology(肖像発話技術)だ。アップロードされた写真をもとにナレーション入りの動画を作り、それを合成音声生成装置にかける。語られるストーリーは、ユーザーが提供したテキストだ。

 

言葉と唇の動きが同期するためにD-IDは、人が話している動画のデータベースでニューラルネットワークを訓練した。言語は、どんな言語でもよいというが、MyHeritageは10種ほどの方言や、性による声の違いを含む31言語をサポートしている。

D-IDの共同創業者でCEOのGil Perry(ギル・ペリー)氏によると「優秀な技術であるためドライバービデオは不要です」という。つまり、本物の人物の動きを動画で撮影し、それを静止画像にマップする処理は不要だ。「テキストと写真があれば、その人が話している動画ができ上がります」という。「ただし、まだ完璧な技術ではありません。現状は、本当に良質なリップシンクらしいものを作ったにすぎません」とのこと。

そうやって作成されたライブストーリーは、それを見たり、友だちと共有したり、ソーシャルメディアに投稿することができる。テキストを編集し、さらに話をカスタマイズし、別の声を選んだり、自分が録音したオーディオをアップロードしてもいい。

画像クレジット:D-ID

D-IDの長期的な展望は、この技術をメタバースの環境で使うことだ。メタバースであれば顔だけでなく、デジタルアバターを動画にできるし、体全体の動きを3Dで表現できる。ペリー氏はユーザーが自分の幼児期や家族、歴史的人物の写真をアップロードして、それらをメタバースで動かし、会話をさせることもできると考えている。

「子どもたちがAlbert Einstein(アインシュタイン)と会話して、彼の話を聞いたり、彼に質問したりすることもできるでしょう。しかも彼は疑問に答えてくれます。さらにユニバーサル翻訳であれば、アインシュタインはユーザーの母国語で会話することもできるはずです」。

もちろんそんな技術は何年も先のことだが、実現するとすれば、それらはディープノスタルジーやライブストーリーのような、今日開発したコンセプトに基づいて作られることとなる。

MyHeritageとD-IDはそれぞれ、この技術を別々のやり方でデモする独自のアプリを世に送り出す。D-IDによると、それは数週間後だという。

MyHeritageのライブストーリー機能は本日、米国時間3月3日、家族史テクノロジーのカンファレンスRootsTechで発表された。デスクトップとモバイルウェブ、MyHeritageのモバイルアプリで利用できる。

MyHeritageの創業者でCEOのGilad Japhet(ギラッド・ジャフェ)氏は、ライブストーリーのローンチに関する声明で次のように述べている。「最新機能で、MyHeritageは今後もオンライン家族史の世界をビジョンとイノベーションの両方でリードし続けることになります。AIを利用して歴史的な写真に新しい命を吹き込むことはユニークな機能であり、何百万もの人が先祖や愛する故人との感情的な結びつきを掘り起こし一新することができます。家系の本質は家族史の表現と保存にあり、私たちは世界に向けて家系の楽しさと魅力を伝えていきたい」。

D-IDは、Sella Blondheim(セラ・ブロンドハイム)氏とEliran Kuta(エリラン・クタ)氏が創業。現在、チームは32名で今後は米国や英国、シンガポール、そしてイスラエルでそれぞれ現地の人数を増やし、社員数を倍増したいと考えている。

画像クレジット:D-ID

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

いつでも家族の思い出を整理・共有できる、プライベートソーシャルアプリ「Honeycomb」

Honeycombの共同創業者Amelia Lin(アメリア・リン)氏とNicole Wee(ニコル・ウィー)氏(画像クレジット:Honeycomb)

Honeycomb(ハニカム)という女性主導のスタートアップが、Stellation Capital(ステレーション・キャピタル)のPeter Boyce(ピーター・ボイス)氏主導によるシード資金400万ドル(約4億5200万円)の支援を受け、家族向けのプライベートソーシャルアプリをローンチする。今回プライベートベータが終了した同アプリは、Facebook(フェイスブック)やグループメッセージといった、写真や動画を見失いやすい、よりパブリックなソーシャルメディアプラットフォームを利用する代わりに、スマートフォンを介してお気に入りの瞬間や思い出を収集し共有する手段を家族に提供する。

注目すべきは、ボイス氏がGeneral Catalyst(ジェネラル・キャタリスト)を去った後に2021年設立した新しい会社Stellation Capitalが支援する最初のスタートアップがHoneycombであることだ。今回のラウンドには、Kyle Lui(カイル・ルイ)氏のDCM、Ben Ling(ベン・リン)氏のBling Capital(ブリング・キャピタル)、Charles Hudson(チャールズ・ハドソン)氏のPrecursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)、そしてAncestry(アンセストリー)のCEOであるDeborah Liu(デボラ・リュー)氏、Giphy(ジフィー)の創業者であるAlex Chung(アレックス・チャン)氏、Twitter(ツイッター)のエンジニアリングVPで以前はReddit(レディット)で同職務を務めていたNick Caldwell氏(ニック・コールドウェル)などのエンジェル投資家も参加した。

Honeycomb自身は、Udacity(ユダシティ)とOptimizely(オプティマイズリー)の元CEOであるAmelia Lin(アメリア・リン)氏と、Instagram(インスタグラム)の元プロダクトマネージャーNicole Wee(ニコル・ウィー)氏によって共同設立された。共同創業者たちは、プライベートなソーシャルネットワークを通じて家族をつなぐアプリを作ることに着想を得ていたが、当初はSagaという別のプロダクトでアプローチしていた。この最初のアプリは、家族が自分たちの人生のストーリーを記録できるソーシャルオーディオ体験だった。例えば、祖父母が最初に出会ったときの話や、子どもの誕生日の願い事を後で聞くことができるオーディオ日記のようなものだ。

しかし、このアプリは初期多くメディアに取り上げられたものの、必ずしも家族が望んだものではなかった。その代わりにチームは、アーリーアダプターたちから、音声だけではなく写真やビデオも保存したいという要望を聞いていた。そこでチームはこの秋、アプリの方向性を転換し名称をHoneycombに変更した。

画像クレジット:Honeycomb

この新しい体験は、9月にプライベートベータテストがローンチされたところで、家族がお気に入りの写真やビデオを保存し、それをテキストと組み合わせ、一種のデジタルストーリーに仕立て上げる方法を提供する。現時点用意されている体験は必ずしも、例えばiMessage上のグループチャットと比べてはるかに堅牢だとは言い切れないが、テキストメッセージングを使用するときには難しいような、古いシェアに立ち戻るための簡単な方法を提示している。ユーザーはリマインダーを設定して、その日のお気に入りの思い出のキュレーションを忘れないようにすることもできる。この機能は、赤ちゃんが新しいマイルストーンに達するのを見守りながら、毎日何十枚もの新たな写真をスマートフォンに次々とアップしていくような新米の親たちには最適かもしれない。

画像クレジット:Honeycomb

「その日の最高の思い出を整理していく、とても簡単な日課となるように手助けしています」とリン氏は説明する。「お気に入りを選択すると、自動的にこのストーリーに編集され、家族と共有されるだけではなく、このコレクションに永久に保存されます」。ただし、この体験はGoogle(グーグル)フォトやApple(アップル)の写真アプリ、あるいはDropbox(ドロップボックス)のようなユーザーの既存の写真サービスを置き換えるものではない、と同氏は指摘する。

「私はそれを、家族と交流するような、キュレーションされた美しい場所だとは思いません」とリン氏。「そしてFacebookやInstagram(を持つユーザーもいるかもしれませんが)、それは自分の赤ちゃんの写真をまさに公にさらしているように感じられます」。一方、Honeycombはデフォルトでプライベートだ。

「家族だけがここにいる人を選ぶことができる、それはかなり異なる哲学的アプローチだと思います」とリン氏は語り、次のように言い添えた。「ユーザーの写真やデータをサードパーティに販売するようなことはしていません」。

画像クレジット:Honeycomb

Honeycombは、広告で収益化するのではなく、サブスクリプションベースのサービスになるという点でも、主流のソーシャルアプリとは異なる。ただし同スタートアップは今のところ、新しいアプリを軌道に乗せるという観点から無料提供を行っている。

同社は、家族の年配ユーザーをどのようにプラットフォームに取り込むかについて検討を進めている。コンテンツをエクスポートして他の場所で共有できるようにすることも考えられるだろう。一方でチームは、赤ちゃんや子どもの新しい写真という魅力的な要素が、祖父母たちに対して、テクノロジーに詳しくなくても、スマートフォンにアプリをインストールする方法を理解する必要性を促すだろうと考えている。

ユーザーはHoneycombをダウンロードすると、まず基本的な機能セットへのアクセスを得る。しかしそう遠くない時点で、家族や友人と思い出を共有するためのより魅力的なストーリー形式を含む新しいベータ版へのオプトインを促される。(このオプトインは即時には行われないが、すでに展開されていることを同社は明らかにしている。)

AIではなく人間のキュレーションに立ち返り、ユーザーが最高の写真やビデオを見つけられるようにするという発想は、最近では確かに違いのあるアイデアだ。しかし、人々が日々のスナップ写真を整理したいのかどうか、特に「赤ちゃんが生まれた」という話題が消えた後にそうするのかは、依然として未知数である。

画像クレジット:Honeycomb

さらに、AIが役に立つこともある(おそらくスマートAIなら、筆者がアプリで誕生日の写真アルバムを作成した後、カバー写真としておもちゃの写真ではなく人物の写真をフィーチャーすることを知っていただろう)。AIはまた、照明の弱い写真や露光量が低い写真を廃棄することで、ユーザーが写真を自動的に分類することにも貢献する。

一般的にユーザーが望まないことは、自分の「最高の」写真についての最終決定権をAIに持たせたり、自らの生活や自身が重要だと考えていることに関するコンテキストなしにAIがアルバムを作成したりすることだ。そして自動化された「記憶」を通じて、自分たちが忘れたいと思う時間をAIに思い出させたくはないのである。

だが最良の解決策は、AIと手動キュレーションとのバランスを取ることかもしれない。ただしプライベートな社会的環境で行われるものとなろう。

Honeycombは事実上新しいアプリであるため、同スタートアップはユーザー数を公開していない。ただリン氏によると、Sagaから方向転換して以来、エンゲージメントは3倍になったという。

「Honeycombは、私たちの最も基本的かつ長期的な人間の欲求の1つ、家族の思い出をアーカイブし共有したいという願いを実現するためにテクノロジーを利用する、真にミッション駆動型の企業です」と、Stellationのピーター・ボイス氏はこのスタートアップへの投資について語った。「Honeycombはファミリーアルバムを21世紀にもたらす可能性を秘めています。イノベーションの段階的な機能変更の機に熟している、これほど大きな問題空間を見出すことは希少です。家族は、個人に向けた、親密になることを意図したソーシャルアプリの次の進化への準備が整っています。そしてこのチームはそれを構築しているのです」と同氏は付け加えた。

Honeycombは現在7人で構成されているが、この新たな資金を、同社のサンマテオオフィスで直接働くエンジニアを含む雇用に充てる計画だ。約10人の増員を見込んでいる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

アマゾンが子供向けのインタラクティブな小型プロジェクター内蔵ビデオ通話デバイス「Amazon Glow」を発表

米国時間9月28日、Amazon(アマゾン)は新しいインタラクティブデバイスのAmazon Glowを発表した。離れている大切な家族などと子どもがビデオ通話で交流できるようにしたいと考える家庭向けのデバイスだ。競合製品には同様にビデオで家族がつながることを主に狙うFacebookのPortalデバイスシリーズがあるが、Amazon Glowは画面を通じたつながり以外の機能も搭載して差別化している。テクノロジーを活用してデバイスの前にインタラクティブに操作できるプロジェクター映像を映し出し、ゲームやアート、パズルなどのバーチャルなアクティビティを楽しんで、人と対面しているような感覚を与える。

これを実現するために、Amazon Glowには没入型プロジェクション、センシング技術、ビデオが組み合わされている。市場にある他のスマートスクリーンとは異なり、Glowは小さなテレビのような外観ではない。8インチのディスプレイが縦に立っていて、ディスプレイの前にはタッチ操作に対応する19インチの空間がプロジェクターによって作られる。このプロジェクター映像の空間で、バーチャルゲームをプレイしたり、離れた場所から各自のタブレットで参加する家族とアクティビティを楽しんだりすることができる。

ゲームは、デバイスに同梱されている専用マットの上でプレイする。

画像クレジット:Amazon

Amazon Glowを使って子どもは仲の良い人とチェスやチェッカー、釣り、神経衰弱などのゲームを楽しめる。子ども向けの本を選んで一緒に読んだり、デジタルの鉛筆、クレヨン、ブラシ、スプレー缶でお絵描きをするなどの楽しみ方もある。離れている人とデジタルで遊ぶことを、まるで同じ部屋にいるかのように感じさせようとしている。

Amazon Glowで実際の物体とデジタルの遊びを組み合わせる楽しみ方もある。例えば、子どものお気に入りのおもちゃをスキャンしてデバイスの前の平面にプロジェクターで映し出し、オリジナルのジグソーパズルにすることができる。子どもはスキャンしたものの映像を叩いて壊し、パズルにする。あるいは、紙に描いた絵をスキャンし、家族の手を借りてアートワークに変えたり、スキャンした絵にデジタルで描き足したりすることもできる。

「Glow Bits」も同梱される。これはデバイスと連携して操作するように作られた実際の「物体」だ。最初のGlow Bitsキットはパズルゲームのタングラムで、子どもは実物のピースを使ってパズルを解き、離れている家族は自分のタブレットの画面でデジタルのパズルピースを使ってプレイする。

画像クレジット:Amazon

Glowの発売時には、子ども向けエンターテインメントの人気キャラクターと遊べるスペシャルアクティビティが用意される。「アナと雪の女王」のアナとエルサ、ディズニー&ピクサーの「トイストーリー」のウッディとバズ、マテルの「バービー」や「ホットウィール」、ニコロデオンの「スポンジ・ボブ」や「ドーラといっしょに大冒険」「セサミストリート」のエルモやゾーイなどが登場する予定だ。

Amazon Glowは離れている人ともっと親しくつながっていたい家庭を主なターゲットにしている。親のどちらかが頻繁に出張したり、祖父母が離れて暮らしていたりする家庭で使われることになるだろう。コロナ禍で感染防止のために家で長い時間を過ごす時期であることからも有用と思われる。

Amazon Glowで子どもが任意の相手と通話をすることはできない。保護者が最初に、子どもが通話できる連絡先をあらかじめ承認してAmazon Glowを設定する。このようにして保護者はデバイスの通話先を家族や信頼できる友人だけに制限できる。そして保護者はいつでもデバイスに備え付けられている物理的なプライバシーシャッターを閉じてカメラやマイクを無効にできる。

また、Amazon GlowはAlexaデバイスではないため、音声やビデオの記録が収集されることはない。位置情報データや描いたものを追跡したり保存したりすることもない。

ただしAmazonはプロフィールの設定やアクティビティの履歴を保存し、Glowに付属するAmazon Kids+サブスクリプションで利用できる関連性の高いアクティビティやコンテンツを紹介する。

画像クレジット:Amazon

デバイスの価格は299.99ドル(約3万3000円)だが、早期アクセス期間は249.99ドル(約2万8000円)で提供される。マット、マットケース、タングラムのBitsの他、1年間のAmazon Kids+サブスクリプションが付属する(Amazon Kids+は子ども向けの本、映画、テレビ番組、教育アプリ、ゲーム、そしてAlexaの子ども向けプレミアムスキルを無制限で利用できる有料サービス)。

Amazon Glowはまだ販売が広く開始されているわけではない。

購入希望者は、www.amazon.com/glowで早期アクセスプログラムへの参加をリクエストする必要がある。Amazonは、最初のデバイスは米国の顧客に数週間以内に発送されるとしている。

開発者は2022年前半に公開される予定のSDKへのアクセスを申し込むことができる。

画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

プライバシーに配慮し家族全員は良い信頼関係を築ける位置情報アプリ「Life360」を著名人投資家も支援

家族のためのコミュニケーション / 位置追跡アプリ「Life360(ライフ360)」が、新たな投資ラウンドを発表した。このラウンドでは、Life360の今後の製品の方向性やマーケティングを決定するために、多くの著名な投資家やインフルエンサーを招き、新たに「ファミリー・アドバイザリー・カウンシル(家族諮問委員会)」を設立する。約210万ドル(約2億3000万円)規模となった今回のラウンドは、故Kobe Bryant(コービー・ブライアント)氏とビジネスパートナーのJeff Stibel(ジェフ・スティーベル)氏が共同で設立した会社であるBryant Stibel(ブライアント・スティーベル)が主導し、Vanessa Bryant(ヴァネッサ・ブライアント)氏、Joanna & Chip Gaines(ジョアンナ&チップ・ゲインズ)氏、Tony Hawk(トニー・ホーク)氏、Chris & Jada Paul(クリス&ジェイダ・ポール)氏、TikTok(ティックトック)のインフルエンサーであるBilly Perry(ビリー・ペリー)氏、Nicole & Michael Phelps(ニコル&マイケル・フェルプス)氏が参加した。

Life360は2年前に上場して以来、オーストラリア証券取引所(ASX)で取引されており、今回のラウンドでは、Life360のサービスに注目を集めることもできる新たな出資者を迎え入れることを重視している。同社によると、195カ国以上で毎月2800万人以上のユーザーに利用されているこのアプリは、2021年度の収益が1億1000万米ドル(約121億5000万円)を超える見込みだという。2021年3月の時点で、91万6000世帯がLife360のサービスに月額料金を支払っている。

Life360は、これらのセレブリティ投資家と同社で「ファミリー・アドバイザリー・カウンシル」を設立し、アドバイザー自身の家族の経験を活かすことで、機能開発や将来の方向性、マーケティング戦略の策定に役立てていくと述べている。

Life360はこのアプリを、子どもを監視するヘリコプターのような親だけでなく、すべての家族が使いたいと思えるものにしたいと考えており、家族の懸念に応えるべく努力してきた。実際に、Life360のChris Hulls(クリス・ハルス)CEOは2020年、TikTokに参加して、プライバシーが守られていないという10代の若者たちの不満を聞き、それを元に「Bubbles(バブルズ)」というプライバシーを尊重した機能を開発した。この機能では、正確な場所を示す青い点ではなく、大まかな場所を示す泡が表示される。これによって、10代の若者は彼らが望む自由が感じられるようになると同時に、親と子がより良い信頼関係を築くこともできる。

「企業への投資やアドバイスは、一般的に大人が行うものであり、子どもと一緒に行うものではありません」と、ハルス氏は今回の投資についての声明で述べている。「私たちは、子どもたちと一緒に製品についてアドバイスできるというユニークな機会を作るようにしています。そのような印象的な支援を得られるということは、家族の安全を守るサービスを提供する主要な企業になるという我々の長期的なビジョンを雄弁に物語っています。Life360は、親と子の両方にとって有意義で適切なブランドを作りたいと考えています。だからこそ、投資家のみなさまにも同じ精神で参加していただくのは当然のことなのです」と、同氏は続けている。

「私の情熱の1つは、子どもたちにとって相応しい機会が得られるようにすることです」と、新たに投資家となったヴァネッサ・ブライアント氏(コービーの未亡人)は語っている。「Life360を使えば、親にとっては子どもの送迎や相乗りが容易になる一方で、子どもたちには勉強や遊び、スポーツの練習をする場所が与えられ、家族全員が安全に守られていると感じることができます。10代の子どもが運転している時には、走っている場所や走行速度、電話の使用状況などを知らせる最新ツールが備わっていることで、親として安心感が高まります。娘が運転していても、助手席に乗っていても、クルマの位置や速度を確認できるのが気に入っています」と、彼女は声明で述べている。

位置情報サービスで有名になったLife360は、携帯電話に標準搭載されている「Find My(ファィンド・マイ)」のようなアプリや、携帯電話会社が提供するサービスとの競争の中で、単なる家族追跡ツールにとどまらない地位を確立しようと尽力してきた。現在、Life360の家族向けツールには、安全運転、緊急支援、個人情報保護などの機能が含まれている。

2カ月ほど前、Life360はウェアラブル位置情報機器メーカーのJiobit(ジオビット)を買収し、幼い子どもやペットなど、携帯電話を持たない家族にもトラッキング能力を拡大することを発表した。

同社によれば、この3700万ドル(約40億9000万円)の買収は約30日後に完了する予定であるという。

今回の新たな投資家を迎える前に、Life360は2021年初めにRandi Zuckerberg(ランディ・ザッカーバーグ)氏を取締役に任命し、2020年にはRussell Burke(ラッセル・バーク)氏をCFO(最高財務責任者)、Jonathan Benassaya(ジョナサン・ベナサヤ)氏をCPO(最高個人情報責任者)として経営陣に加え、ビジネスモードと製品提供に注力してきた。

関連記事:家族追跡アプリLife360がウェアラブル位置情報デバイスJiobitを40.3億円で買収

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Life360資金調達位置情報家族

画像クレジット:Life360

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)