企業の法務の形を変え、その活用方法の進化を目指すLawtrades

Lawtradesの共同創業者アシシ・ワリア氏とラード・アーメッド氏(画像クレジット:Lawtrades)

企業の法務も、独立の弁護士や法律事務所との契約を採用しているところが多い。そこでLawtradesは法律のプロたちに、独立して独自のバーチャルな法律家になる方法を提供する。

Raad Ahmed(ラード・アーメッド)氏とAshish Walia(アシシ・ワリア)氏が2016年に同社を立ち上げたときは、スタートアップや小企業を主な顧客と想定し、誰もがやるようにプロダクトを市場に合わせようとしたが、わかってきたのは、そんな大きさの企業が法律業務を利用するのはプロジェクトベースが多く、頻度も少なく、会社が倒産して短期で終わる場合もあることだ。

2019年、同社は法務部門に売り込むことで中堅企業やエンタープライズレベルの企業との取引にピボットし、そこから成長が加速したとアーメッド氏はいう。

今日、LawtradesはDoordashやGusto、Pinterestなどを顧客とし、彼らにリモートで雇うことができるプロフェッショナルの柔軟性に富むマーケットプレイスを提供している。同社の技術で、法律のプロと企業の両方がプロフィールを作り、お互いをマッチさせ、プロジェクトをモニターし、当プラットフォーム経由で決済する。

「つまりそれは新たなインターネットネイティブのワークモデルで、私たちが法務から始めたのは、それが1000億ドル(約11兆4000億円)の市場でありながら過去100年間ディスラプトされていないからです」とアーメッド氏はいう。

Lawtradesアプリのデザイン(画像クレジット:Lawtrades)

LinkedInでは、何百人もの応募者の中から優秀な人材を探し出さなければなりませんが、アーメッド氏とワリア氏は、それとは異なる採用体験を構築したいと考えていた。また、プロフェッショナルは、オーバーヘッドやその他の費用が請求可能な時間数に含まれている法律事務所とは異なり、一律の価格体系を提供することができる。

2021年には売上が倍増し、Four Cities Capitalがリードする600万ドル(約6億9000万円)のシリーズAを完了した。参加した投資家はDraper Associatesと500 Startupsだ。そのラウンドには100近い顧客やエンジェル投資家、そしてGumroadの創業者Sahil Lavingia(サヒール・ラヴィンヤ)氏やTeachableのAnkur Nagpal(アンクル・ナグパル)氏、GoDaddyのCEOであるAman Bhutani(
アマン・ブタニ)氏など、企業の創業者も参加した。

「リモートの法律業務がやっと認められるようになり、多くの法律家たちが大きな法律事務所を去って自分で仕事をするようになっているため、私たちはすでに黒字で、収益をベースとする資金調達ができる。大量の希薄株による資金調達をする必要がない」とアーメッド氏はいう。

関連記事:離婚手続きを弁護士のサポートを受けながらスムーズかつ低コストで進められる「Hello Divorce」

2021年の終わりに、Lawtradesの顧客は80社、進行中の仕事は150だった。人材の面では、預かっているプロフィールが1000を超え、それは2020年の400に比べて大幅増だ。現在は招待制のみで、ネットワークが5%を受け取る。ネットワークの構成は女性60%、マイノリティーが35%以上いる。

アーメッド氏によると、12月に同社の推定年商は800万ドル(約9億1000万円)に達し、前年の300万ドル(約3億4000万円)から大きく伸びた。今日まで、ネットワークのプラットフォーム上での収益が110万ドル(約1億3000万円)、プラットフォーム上でログオンされた仕事時間は2021年で6万時間を超え、前年比で200%の増だった。

アーメッド氏の計画では、今回の資金を社名変更とiOSアプリの立ち上げ、法律以外に財務や経営コンサルティングなど他の専門分野への拡張に使いたいとのこと。また、国際化も狙っている。そして社員数を現在の15名から30名に増やし、プロダクトやサポート、そして営業方面を充実したいという。

「仕事の世界は今、ユニークな位置にいる。人びとはリモートで仕事をし、企業は人材を求めている。そこで今は全面的な人材戦争が起きていて、優秀な人ほど待遇が良い。私たちのモデルの良い点は、個人が自分のやりたい仕事を得られることだ。すばらしい人材が集まってくるのも、そして彼らが待遇の良い仕事にありつけるのも、そのためだ。今後も改良を進めて、週40時間労働の限界を広げたい」とアーメッド氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

DoNotPayの「ロボット弁護士」は行政への穴あきや倒木の報告、損害賠償請求をサポートする

毎日、道路の同じ穴をよけて運転するのにも飽きているが、どうやって市役所に報告するのか?すでに報告したんだけどその報告はどこかへ蒸発したみたいで、誰も読んでないし、もちろん直してもいないのか?

行政の問題を訴える、という面倒なことを自動化によって面倒でなくしてくれるDoNotPayなら、助けてくれるかもしれない。同社が「ロボット弁護士」と呼んでいるサービスは、最初は駐車違反切符ともっと楽に戦えるために始まった。しかしだんだん、もっといろいろな切符があることがわかってきた。なかなかやめられないサブスクをやめて、返金してもらえる切符などももある。

その試みは新しいのか?道路の穴や道に倒れている木、壊れている街路灯などの報告を助けるなんてことが?それだけでなく、しかも自分の所有物に被害がおよんだら、行政に弁償もしてほしい。

画像クレジット:DoNotPay

DoNotPayの創業者であるJoshua Browder(ジョシュア・ブラーダー)氏は次のように語る。「普通の米国人がクルマを運転していてテールライトが壊れていたら、行政が切符を切って罰金を食らう。しかし道路の穴が放置されていても、市民は行政から金をもらえない。この不公平を治すために、行政のための修復チケットのようなものを作ろう、と思ったのです」。

市の問題をDoNotPayで報告しようとすると、問題を報告するだけか、賠償を請求するか、どちらかの選択肢がある。報告だけなら正しい部署を見つけてあなたの町の問題を報告するだけだ。そのときはDoNotPayのチャットボットが必要な情報をすべて集めて、報告者の氏名電話番号などとともに提出する。

賠償金が絡めば、簡易裁判所(小額裁判所)へ行くことになる。その場合DoNotPayのロボット弁護士が正規の弁護士として原告を代表することはないが、必要なドキュメントを作って、訴訟のために必要なことをすべて教えてくれる。

DoNotPayはブラーダー氏のサイドプロジェクトとして始まったが、短期間でもっと重要なものになってきた。「スタンフォードに在学しているときは、駐車違反切符を山ほどもらいました。たしかにひどいドライバーでしたが、行政が切符を切るのは、金儲けのため。必ずしも人を罰するためじゃありません。そこで最初の頃はDoNotPayを、自分や友だちを助けるために遊びで開発しました。作った2日後に友だちの1人がredditにポストして、クチコミだけで国際的に共有されました。1日にわずか10件だったのが、たちまち5万件になりました。これは、サイドプロジェクトどころか、もっと大きなプロジェクトだと理解しました。一般市民として、行政の食い物にされたくない、という日頃からの気持ちに、それは応えていたのです。その後6年間は、自分のすべての時間を捧げました」とブラーダー氏はいう。

ブラーダー氏によると、DoNotPayの報告機能は全米のおよそ50の大都市ですでに利用可能で、標準サブスクリプション価格(3カ月で36ドル約3960円)に含まれているという。

画像クレジット:DoNotPay

画像クレジット:DoNotPay

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hiroshi Iwatani)

離婚手続きを弁護士のサポートを受けながらスムーズかつ低コストで進められる「Hello Divorce」

離婚は修羅場でストレスをともなう。費用がかかるために法律専門家のサポートを受けることができなければなおさらだ。オンライン離婚のスタートアップHello Divorce(ヘローディボース)はこのプロセスをよりリーズナブルな費用で、そして迅速なものにするプラットフォームを開発している。

目的を達成するためにカリフォルニア州オークランド拠点のHello Divorceは米国時間7月29日に200万ドル(約2億2000万円)のシードラウンドを発表した。本ラウンドはCEASがリードし、Lightbank、Northwestern Mutual Future Ventures、Gaingels、そしてClioのCEOであるJack Newton(ジャック・ニュートン)氏やWRGのLisa Stone(リサ・ストーン)氏、Equity ESQを率いるEd Diab(エド・ディアブ)氏ら個人投資家も参加した。

統計によると、米国の離婚件数は年平均75万件で、離婚にかかる平均費用は居住する州にもよるが8400〜1万7500ドル(約92万〜192万円)の間だ。複数の情報ソースは、離婚業界は年500億ドル(約5兆5000億円)としている。

家族法を専門とする弁護士のErin Levine(エリン・レヴィン)氏は、離婚するカップルが「手頃価格の有意義な法律相談」とオンライン上のもの以外のリソースにアクセスできるよう、2018年にHello Divorceを創業した。時間単位で請求が発生する弁護士のためのモデルは、離婚に向けた簡単でクリーンな手続きを求めている消費者にとって「時代遅れのプロセス」だとレヴィン氏はTechCrunchに語った。

「現在、弁護士は情報の管理人であり、クライアントは離婚手続きが完了するまで費用を支払い続けています」とレヴィン氏は話す。「離婚は形式以上のものです。困難を伴い、大方の人はサポートを必要とし、サポートを求めます。そこにはテクノロジーの使用という点で大きな欠落があり、カップルに主導権を握らせて諍いのレベルを下げるために費用を見直しました」。

今回のシード資金でHello Divorceは、法的手続きのオプションの全米での急速展開、画期的なプロダクトの改良、消費者が離婚のプロセスについてよく情報を提供され、かつコントロールできていると感じる必要がある、これまで以上のコンテンツとサービスを提供する計画だ。

Hello Divorceはソフトウェアと利用できる法律サービスをDIYオプションで99ドル(約1万1000円)からの価格で提供し、離婚手続きを3分の1の時間で、そして完全リモートで終わらせるための法律サポートを平均2000ドル(約22万円)で提供している。

レヴィン氏は、大半の人が離婚するのに2〜5年かかり、その間、費用を賄えないのではと怯え、そしてもし子どもがいる人なら子どもを失うことも恐れる、と話す。そして80%の人が弁護士にアクセスできない。

Hello Divorceはすでに黒字だが、インフラを構築し、CEASやLightbankのEric Ong(エリック・オン)氏のような投資家が「何を知っていて、何を知らないのかは明らかです」と言いつつアイデアなどを出すガイダンスを得るためにベンチャー資金を求めた。

オン氏は、今回のラウンドの共同投資家を通じてレヴィン氏と知りあった。その共同投資家はオン氏に、Hello Divorceは共感するものだと語った。Lightbankはカテゴリーステージの企業に投資していて、オン氏はレヴィン氏とレヴィン氏のチームが手がけていることにひきつけられた。

「彼らは専門性と、既成概念にとらわれない考え方の両方を備えています」とオン氏は話す。「80%の人が有意義な代理人を得ていません。我々は顧客バリュープロポジションを提供するテクノロジーを求めましたが、Hello Divorceが登場するまではそうしたものはありませんでした」。

Hello Divorceはシード資金を、法的手続きオプションの全米での急速展開、プロダクト開発、Hello Divorceのウェブサイトにやってくる人々を教育するための新たなコンテンツとサービスに注ぐ計画だ。

Hello Divorceのサービスはカリフォルニア、コロラド、テキサス、ユタの4州で利用できる。最初にサービスの展開を始めたこれらの州の選択は戦略的なものだった、とレヴィン氏は話した。同氏はカリフォルニア州の法律に精通していて、一方でコロラド州は離婚のシステムが複雑だ。テキサス州は同性婚カップルが離婚するための簡素化された方法がなく、これは取り組みたかったものだったと同氏は話した。そしてユタ州には新しい規制スキームがある。同氏は次にニューヨーク州とフロリダ州にサービスを広げ、そこではバイリンガル・フォーマットで展開する。

2018年以来、Hello Divorceは前年比100%成長を続けており、プラットフォームでの処理を開始してからの離婚成功率は95%だ。2020年に同社は、離婚と共同養育を考えながらのロックダウン中の隔離生活に関連する2000件もの問い合わせを受けた。

「とどまるか、それとも出て行くべきか、そして離婚がどのようなものになるか、という問い合わせが増えました。パンデミックが離婚にどう影響を及ぼしたのか、全体像を把握するにはもうしばらくかかるでしょう」とレヴィン氏は述べた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Hello Divorce離婚資金調達弁護士

画像クレジット:Hello Divorce

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

カナダのリーガルテックClioが約119億円を調達しユニコーンに

弁護士がクラウドベースのテクノロジーを使ってより効率的に業務を行うのをサポートしているソフトウェア企業Clio(クリオ)が現地時間4月27日、T. Rowe Price Associates Inc.とOMERS Growth Equityが共同でリードしたシリーズEラウンドで1億1000万ドル(約119億円)を調達したと発表した。

本ラウンドでブリティッシュコロンビア州バンクーバーを拠点とするClioの評価額は16億ドル(約1733億円)となり、ユニコーンステータスを獲得した。Clioの前回の資金調達は2019年9月で、そのシリーズDでは2億5000万ドル(約270億円)を調達した。最新のラウンドにより世界で「初の法務管理ユニコーン」となった、とClioは主張する。創業した2008年からの累計調達額は3億8600万ドル(約418億円)となった。

創業者でCEOのJack Newton(ジャック・ニュートン)氏は、2008年の不況のときに独立弁護士や小さな弁護士事務所が事業運営で苦労しているのを見て、Rian Gauvreau (ライアン・ゴーブロー)氏とともにClioを立ち上げた、という。歴史的に法務管理ソフトウェアは小さな弁護士事務所向けではなく企業を相手とする事業向けのサーバーベースのソリューションに限定されていた、とニュートン氏は話した。Clioはそれを変えるために設立された。

Clioの共同創業者ジャック・ニュートン氏とライアン・ゴーブロー氏(画像クレジット:Clio)

「MicrosoftのWindowsが数十年前にいかにPCのためのOSを定義したかということとよく似ていて、Clioは法律事務所やその顧客のためにクラウドベースで顧客中心のデザインのソフトウェアプラットフォームを開発しました」とニュートン氏は話した。

同社のプラットフォームは、クラウドベースの法務管理、顧客の獲得、法務CRMソフトウェアを提供する、弁護士のための「オペレーティングシステム」として機能することを目的としている。同社は世界100カ国に15万超の顧客を抱える。Clioを使っている弁護士の多くは小さな弁護士事務所所属か独立しているが、同社はLocks LawやKing Lawのような大手にもサービスを提供している。

業界特化型SaaSのClioは法律の専門家がより生産的になり、事務所を大きく育て「法律サービスをさらにアクセスしやすいものにする」のをサポートしているとニュートン氏は述べた。同社はまたクライアントが弁護士を、あるいは弁護士がクライアントを簡単に探し出せるようサポートすることも目指している。

画像クレジット:Clio

同社の財務状況についてニュートン氏は口を閉ざし、2019年の資金調達以来「爆発的」に成長してきた、とだけ述べた。この成長は新型コロナウイルスのパンデミックと、パンデミックによるあらゆるもののデジタル化によって加速した。現在の評価額は「相応」で「完全な」審査プロセスを経て成し遂げた、とニュートン氏は付け加えた。

Clioは、多くの場合において従来ペンと紙に頼っていた産業に向けたコアテクノロジーの構築にフォーカスしてきた。同社はまた法律テクノロジーを弁護士が使いやすいよう安価なものにすることも目指してきた。

変化は少しずつではあるが、新型コロナによって弁護士はどのように事務所を運営し、いかに法律サービスを顧客に提供するかについて根本的に再評価することを余儀なくされた、とニュートン氏は述べた。

「多くの事務所が、新型コロナでチームがバラバラになる中で、顧客データを事務所に保存することはもはや選択肢ではないと認識しました」と付け加えた。「過去にテクノロジーの受け入れをためらっていた弁護士や法律専門家は突然この新しい現実をすぐさま受け入れることを強制されました。このテクノロジー面での変更は危機対応である一方で、永続的な変化でもあります」。

2018年にClioは初めて買収した。ロサンゼルス拠点の法律テックスタートアップLexicataだ。ニュートン氏によると、Clioは新たに調達した資金でさらに買収する計画だ。同社はまた、引き続き同社のプラットフォームと戦略的提携にも新たな資金を注入する計画だ(同社は最近150以上のアプリと提携した)。

当然のことながら、Clioはスタッフも採用する。具体的には、プロダクトとエンジニアリングのチームを強化するために現在600人の従業員数を40%(250人)増やす計画だ。

「今後数年で当社は、法律サービスが提供される方法を完全に再定義し、クラウドという方法で法的支援へ誰でもアクセスできるようにします」とニュートン氏はTechCrunchに語った。「今回の資金によって計画を促進し、既存の顧客にさらに多くを提供できます」。

Clioは特にEMEA(欧州、中東、アフリカ)のマーケットで成長しており、現在は英国とアイルランドにフォーカスしている。

OMERS Growth Equityのマネージングディレクター、Mark Shulgan(マーク・シュルガン)氏は、同社がClioを何年もの間追いかけてきた、と声明で述べた。

「Clioは明らかにマーケットをリードする法務テック会社としての地位を確立し、今後数十年にわたって成長するでしょう」と話した。

カテゴリー:リーガルテック
タグ:カナダClio資金調達ユニコーン企業弁護士

画像クレジット:McIek / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi