環境再生型農業のトレンドを食肉市場に取り込む99 Counties

Christian Ebersol(クリスチャン・エバーソル)氏は、健康保険会社に勤務していたとき、炭素の回収貯蔵と植物由来の食品に関心を持つようになった。

これらの分野で何ができるかを考えるためにOMERS Venturesのアントレプレナー・イン・レジデンス(客員起業家)プログラムに参加した後、Mark Bittman(マーク・ビットマン)氏の著書「Animal, Vegetable, Junk:A History of Food, from Sustainable to Suicidal」を読み始めた。この本でエバーソル氏は環境再生型農業に出会った。環境再生型農業とは土壌や水、空気の状態を悪化させることなく、植物と動物が同じ農場で共存する方法だ。

近年、この農法は大きな投資分野として脚光を浴びていて、2019年時点で3200億ドル(約36兆8000億円)がこの分野に注がれたという報道もあり、Whole Foodsなどの大手ブランドは2020年の食のトレンドとして環境再生型農業がナンバーワンになると指摘している。

環境再生型農業は、アイオワ州の農家Nick Wallace(ニック・ウォレス)氏が、エバーソル氏がウォレス氏に出会った時に行っていたことだ。アイオワ州の99の郡の環境再生型農家と、牛肉、豚肉、鶏肉を箱買いする消費者をつなぐマーケットプレイスで、1000億ドル(約11兆4900億円)の米国食肉市場をディスラプトしようと、エバーソル氏はMike Adkins(マイク・アドキンス)氏とともに99 Counties(99カウンティーズ)を立ち上げた。

99 Countiesは、農家が家畜の飼育に専念でき、また消費者が クルマで1日で行ける地元の農家に肉を注文できるよう、加工、輸送、販売のすべてをコーディネートする。99 Countiesはまた、農家の環境再生手法の実践を認証し、農家への報酬を保証している。

画像クレジット:99 Counties

「今日、人々はほとんどの食品についてそれがどこから来たのか知りません」とエバーソル氏はTechCrunchに語った。「私たちの技術は、トレーサビリティに関するものです。我々があなたの家族に食品を届けるとき、あなたはそれがどの農場のものかを知り、バーコードをスキャンして農場についてのビデオを見ることができ、それが加工されるためにどのようにう移動したかや農場の人道的な動物の扱いを見ることができます」。

同社は現在、シカゴとアイオワ州以外でサービスを提供する予定はない。というのは、顧客に届くまでの食品の移動距離を減らすことを目的としているからだ。しかし、より多様な選択肢を提供できるよう、農家の開拓には取り組んでいる。

99 Countiesは、OMERS Venturesがリードし、Union Labs、GV、Supply Change Capitalが参加した直近のラウンドで380万ドル(約4億4000万円)のプレシード資金を獲得し、この資金をもとに9月に15の農場で正式にスタートする予定だ。

OMERS VenturesのマネージングパートナーMichael Yang(マイケル・ヤン)氏は「クリスチャンと99 Countiesのチームが構築しているのは、持続可能な食肉の単なるマーケットプレイスをはるかに超えるものです」と文書で述べた。「消費者の間で高まっている、地元産の高品質な食品を手に入れたいという欲求を満たすためのインフラを構築しているのです。これまで農家は、こうした市場に参入したいという願望はあっても現実には実現不可能で、価格も手ごろではありませんでした。このモデルがアイオワで成功すれば、全米で再現できないはずはありません」。

調達した資金は、ウォレス氏の既存の環境再生型農業事業を99 Countiesの傘下に置くなど、事業の拡大に充てられる。また、雇用やトレーサビリティ技術の確立、提携農場に関するコンテンツを消費者に提供するマーケティングにも使う予定だ。

99 CountiesはButcher BoxやCrowd Cowのような企業と競合している。Crunchbaseによると、Crowd Cowは過去4年間で2500万ドル(約28億7000万円)を調達した。しかし、何千マイルも離れた場所から肉を調達している競合他社に対し、99 Countiesはより地元に根ざしたフードシステムを奨励している点で他社と異なるとエバーソル氏は述べた。

一方でPepsiCoGeneral Millsなどの大企業が数千万エーカーの土地を環境再生型農業にする意向を表明するなど、環境再生型農業の人気が高まる中、環境再生型コミュニティは土を耕すことが少なくなり、動物を農場に戻すことで有機が再生される、というのがエバーソル氏の意見だ。

同氏は、99 Countiesを最終的にはサブスクリプション事業にしたいと考えており、開始後2022年末までに1400世帯との契約を獲得することを目標としている。平均的な購買価格は140ドル(約1万6000円)を見込んでいる。当面、正式な立ち上げ前にやるべきことがある。

「来月には、農家や加工業者と契約し、農家のストーリーを伝えるためのコンテンツ、ソーシャルメディア、マーケティングに携わる人材を投入する予定です」と、エバーソル氏は付け加えた。「また、トレーサビリティを確立し、人々が購入するための店舗も設置します」。

画像クレジット:99 Counties / 99 Counties co-founders, from left, Mike Adkins, Nick Wallace and Christian Ebersol

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

炭素市場Agreenaは農家が環境再生型農業に切り替える経済的インセンティブを提供する

ヨーロッパの温室効果ガス排出量の24%は農業が占めているが、これは過去数十年間に行われてきた集約的な「工業型」農法と、肉の消費の増加によるところが大きい。しかし、新しいアプローチが農業界に旋風を巻き起こしている。「環境再生型農業(リジェネラティブ農業)」とは、劣化した土壌を自然に戻し、野生生物を増やし、地球を破壊する二酸化炭素を蓄えるというもので、文字通り土壌を炭素吸収源として利用する。

森林地帯を作り、泥炭地を復元することで、炭素を吸収すると同時に、ミツバチの授粉などに欠かせない自然多様性の減少を食い止めることができる。さらに、再生農業は、環境やCO2排出に焦点を当てた古い政府の補助金制度や、工業的な農業からの脱却にもつながる。

Agreenaはデンマークのスタートアップで、環境再生型農業に移行した農家が生み出す炭素クレジットを発行、証明、販売している。

2021年夏に設立されたばかりの同社は、このたびGiant Venturesとデンマーク政府のDanish Green Future Fundがリードし、470万ドル(約5億3000万円)のシード資金を調達した。また、欧州の多くの農家も参加している。

Agreenaのプラットフォームは、農家に「CO2e-certificate」を発行し、農家と購入希望者の間で販売することで、農家が従来の耕作地から再生農法に切り替えるための経済的なインセンティブを提供するという。

その仕組みとは?農家は自分の畑を登録し、再生農法に移行するためのアドバイスを受ける。そして、その変化をAgreenaが衛星画像と土壌の検証によって監視する。その後、農家はCO2e-certificateを単独で、またはAgreenaのマーケットプレイスを通じて、農家からカーボンオフセットを購入したい企業に販売することができる。買い手は、Agreenaのプラットフォームを介して、スポンサーしたCO2削減をフィールドレベルで追跡する。

AgreenaのCEOであるSimon Haldrup(サイモン・ハードルップ)氏は次のように述べている。「当社のチームは、カーボンサイエンティスト、ソフトウェア開発者、商業的グロースハッカーを含む30人のプロフェッショナルで構成されています。農業は、歴史的に誇り高い農業国であるデンマークに深く根ざしているため、会社はここで生まれましたが、私たちはヨーロッパ全体で規模を拡大しており、今後はグローバルに展開していく予定です」。Agreenaは、ハードルップ氏、Julie Koch Fahler(ジュリー・コッホ・ファーラー)氏、Ida Boesen(アイダ・ボエセン)氏によって設立された。

Agreenaは、初年度に5万ヘクタール以上の契約を締結し、発行されたカーボンオフセット証書の20%以上を事前に販売したという。

Agreenaには、いくつかの競合が存在する。農業分野のボランタリー炭素市場には、米国のスケールアップ企業Indigo(米国のユニコーン)、Nori(米国&ブロックチェーン特化)、英国・フランスを拠点とするSoil Capitalなどがある。しかし、Agreenaは、垂直統合されたカーボンプラットフォームが重要な差別化要因だとしている。

Giant Venturesの共同設立者兼マネージングパートナーであるCameron McLain(キャメロン・マクレーン)氏は、次のように述べた。「Agreenaの農業カーボンオフセットに対する垂直統合型のアプローチは、業界のニュアンスや農家にとってのインセンティブに共感的なもので、大きな期待を抱いています。また、Agreenaは、まだ誰も解いていない農業分野でのオンラインB2Bコマースを促進する有力なインターネット市場になれると信じています」。

画像クレジット:Agreena

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)