CTOはテスラ共同創業者、硬い岩盤に触れることなくトンネルを掘るロボット「Swifty」を引っ提げPetraが脱ステルス

Petra(ペトラ)は、DCVCが主導したシリーズAラウンドで3300万ドル(約37億4000万円)を調達したと発表し、ステルス状態から脱却した。ACME Capital Congruent Ventures、8VC、Real Ventures、Elementum Ventures、Mac Venture Capitalがこのラウンドに参加した。

共同創業者兼CEOのKim Abrams(キム・エイブラムス)氏は、このニュースに関連したリリースの中でこう述べている。「当社は岩盤を掘削するまったく新しい方法を発明しました。これはトンネル工事の将来に大きな影響を与えることになるでしょう。ハイグレードな岩盤を貫き、手頃な価格でユーティリティ設備を地下に埋設するボーリングソリューションを提供することで、最終的に地域社会を山火事の危険から守り、災害の多い地域、特にシエラネバダ山脈、ロッキー山脈、沿岸地域で重要なインフラの安全性を確保することができます」。

このニュースは、同社が開発したロボット「Swifty」のパイロット版が成功したという発表を受けてのもの。同社によると、このロボットは、スークォーツァイト石(スー石英岩)に毎分1インチ(25.4mm)の速さで20フィート(約6.1m)のトンネルを掘ることに成功したという。この変成岩は硬いことで有名で、米国中西部の建築物によく使われている。しかし、その硬さゆえに、インフラ整備などのトンネル工事には手強い存在でもある。

画像クレジット:Petra

Tesla(テスラ)の共同創業者の1人であり、同社のCTOを務めるIan Wright(イアン・ライト)氏はこう述べている。「これまで、このような硬い岩盤をトンネルで貫くことができる工法はありませんでした。Petraの成果は、岩盤に触れずに効率的に掘削するSwiftyのサーマルドリル工法によるものです。非常に硬いスークォーツァイト石に20フィート(約6.1m)の穴を開けたことで、ハイグレードな硬い岩盤に実用的なサイズのトンネルを手頃な価格で埋設できる当社のユニークな能力が証明されました」。

このロボットシステムは、マシンビジョンを活用し、岩石に直接接触するのではなく、サーマルドリル工法を使って困難な素材をマイクロトンネル掘削する。同社はリリースの中でこう述べている。「Switfyは、従来のマイクロトンネル掘削法に比べて、数多くの斬新な利点を提供します。従来のマイクロトンネル掘削機は、単一の直径に合わせて専用に作られています。しかし、Swiftyは20~60インチ(約50.8〜152.4cm)の範囲の直径を掘削できる初めてのロボットであり、トンネル掘削のコストを劇的に削減することができます」。

同社は、このような穿孔技術の用途として、建設、インフラ維持、トンネル作成など、幅広い可能性を挙げている。

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

再生可能エネルギーを使い、海水から二酸化炭素とセメントの原料を取り出すHeimdalの技術

大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、それに比例して海中の二酸化炭素濃度も上昇し、野生生物に悪影響を与えたり生態系を変化させてしまったりする。再生可能エネルギーを利用して二酸化炭素を大規模に回収し、その過程でコンクリート用の石灰石をはじめとするカーボンネガティブな工業材料を生産しようとしているスタートアップ企業がHeimdalである。同社はアーリーステージの段階でかなりの資金を集めているようだ。

コンクリートと聞いて首を傾げた読者は、次の点を考えてみたら良いだろう。コンクリートの製造は、温室効果ガス排出量全体の8%を占めると言われており、また海水にはコンクリートの原料となる鉱物が豊富に含まれているのだ。おそらく関連業界や分野に身を置いていなければこの関連性に気づくことはないだろう。しかしHeimdalの創業者であるErik Millar(エリック・ミラー)氏とMarcus Lima(マーカス・リマ)氏は、オックスフォード大学でそれぞれの修士課程に在籍していた時からこの関連性を認識していたのである。「気づいてからすぐに実行に移しました」とミラー氏はいう。

気候変動が人類の存続にかかわる脅威であると確信を持つ2人は、世界中で起きているさまざまな影響に対する恒久的な解決策がないことに失望感を感じていた。炭素捕捉は回収してもまた利用されて排出されるという循環型のプロセスになっていることが多いとミラー氏は指摘する。新しい炭素を生産するよりはましなものの、生態系から永久に炭素を取り除く方法は他にないのだろうか。

2人の創業者は、電気と二酸化炭素を多く含む海水だけで、ガスを永久に封じ込めることのできる有用な素材を製造する新しいプロセスを構想した。しかし当然、そんなことが簡単にできるのなら誰もがすでにやっているはずだろう。

画像クレジット:Heimdal

「これを経済的に実現するための炭素市場は、まだ形成されたばかりです」とミラー氏は話す。太陽光発電や風力発電の巨大な設備が、数十年来の電力経済を覆したことでエネルギーコストは大幅に低下している。炭素クレジット(この市場についてはここでは触れないことにするが、これが成功要因であるのには間違いない)と安価な電力市場には新たなビジネスモデルが生まれており、Heimdalもその1つと言えるだろう。

実験室規模(1000ガロンのタンクではなくテラリウム規模)ですでに実証されているHeimdalのプロセスは、簡単にいうと以下のとおりである。まず、海水をアルカリ化してpHを上げ、ガス状の水素、塩素、水酸化物の吸着剤を分離させる。これを別の海水と混ぜると、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムのミネラルが析出し、水中の二酸化炭素の飽和度が下がり、海に戻したときに大気中からより多くの二酸化炭素を吸収できるようになる(小規模なプロトタイプ施設の画像を見せてもらったが、特許申請中のため写真の掲載は拒否された)。

画像クレジット:Heimdal

海水と電気から水素や塩素ガス、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなどを生成し、その過程で大量の溶存二酸化炭素を封じ込めるという仕組みである。

1キロトンの海水に対して1トンの二酸化炭素と2トンの炭酸塩が分離されるが、それぞれに産業用の用途がある。MgCO3やNa2CO3はガラス製造などさまざまなものに使われるが、最も大きな影響を与える可能性があるのはCaCO3、つまり石灰石である。

石灰石はセメント製造プロセスの主要構成要素として常に大きな需要がある。しかし、現在の石灰石の供給方法は、大気中の膨大な炭素源となっているのも事実である。世界中の産業界が炭素削減戦略に投資しており、単に金銭的なオフセットが一般的ではあるものの、今後は実際にカーボンネガティブなプロセスが望まれるようになるだろう。

さらにHeimdalは海水淡水化プラントとの連携を見据えている。海水淡水化プラントは、淡水は不足していても海水とエネルギーが豊富にある、例えば米国カリフォルニア州やテキサス州などの沿岸部をはじめ、特に中東・北アフリカ地域のように砂漠と海が接する場所など、世界各地で見られるものである。

海水淡水化では、真水とそれに比例してより塩分を多く含んだ塩水が生成されるが、それを単純に海に戻すと地域の生態系のバランスが崩れてしまうため、一般的には塩水を処理する必要がある。しかし、例えばプラントと海の間にミネラルを集める工程があったとしたらどうだろうか。Heimdalは水1トンあたりのミネラルをさらに得ることができ、淡水化プラントでは塩分を含んだ副産物を効果的に処理することができるという考えである。

元RedditのCEOで、現在はTerraformationのCEOを務め、Heimdalに個人的に投資しているYishan Wong(イーシャン・ウォン)氏は次のように述べている。「Heimdalが海水淡水化の排水を利用してカーボンニュートラルなセメントを生産できるようになれば、2つの問題を同時に解決することになります。カーボンニュートラルなセメントのスケーラブルな供給源を作り、海水淡水化のブライン廃液を経済的に有用な製品に変換するという仕組みを、ともにスケールアップすることができれば、あらゆるレベルで革新的なものになるでしょう」。

Terraformationは太陽光による海水淡水化を推進しており、Heimdalはその方程式にまさにぴったりである。両者は現在、正式なパートナーシップを締結するために取り組んでおり、間もなく発表される予定だ。一方、カーボンネガティブな石灰石は、脱炭素化をはかるセメントメーカーが1グラムも逃すまいと買いあさることだろう。

ウォン氏は、Heimdalのビジネスにおいて、タンクやポンプなどを購入するための初期費用以外の主なコストは、太陽エネルギーにかかる費用だと指摘している。このコストは何年も前から下降傾向にあり、また定期的に巨額の投資が行われているため、今後もコストは下がると考えて良い。また、二酸化炭素を1トン回収したときの利益は、すでに約75%が500〜600ドル(約5万5000〜6万6000円)の収入となっているが、規模と効率が上がればさらに大きくなる可能性がある。

ミラー氏によると、同社の石灰石の価格は政府のインセンティブや補助金を含めると、すでに業界標準と同等の価格になっているという。エネルギーコストが下がり、規模が大きくなれば、この比率はより魅力的なものになっていくだろう。また、同社の製品が天然の石灰石と見分けがつかないというのも魅力の1つである。「コンクリート業者が手を加えなければいけないことは何もありません。採掘業者から炭酸カルシウムを購入するのではなく、当社の合成炭酸カルシウムを購入するだけのことです」と同氏は説明する。

全体的に見れば、これは有望な投資といえそうだ。Heimdalはまだ公に公開されていないが(Y Combinatorの2021年夏のDemo Dayで公開される予定)、640万ドル(約7億円)のシードラウンドを獲得している。参加した投資家は、Liquid2 Ventures、Apollo Projects、Soma Capital、Marc Benioff、Broom Ventures、Metaplanet、Cathexis Ventures、そして前述したウォン氏である。

Heimdalはすでに複数の大手セメントメーカーやガラスメーカーとLOIを締結しており、米国の海水淡水化プラントでパイロット設備を計画している。数十トン規模の試験品をパートナーに提供した後、2023年に商業生産を開始する予定だ。

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画像クレジット:Heimdal

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)