米食品医薬品局が補聴器を医師の診断書なしでも購入可能にする提案発表、軽~中程度患者対象

米食品医薬品局が補聴器を医師の診断書なしでも購入可能にする提案発表、軽~中程度患者対象

AlexRaths via Getty Images

米食品医薬品局(FDA) が、米国内の軽~中程度の聴覚障害者が、医師の診断や業者によるフィッティング作業なしに手軽に穂著行きを購入できるようにするOTC(over the counter)化の提案を出しています。

この提案は「OTCおよび従来の診断を必要とよる補聴器の安全性と有効性を確保しつつ市場における教祖の促進を目的としている」とFDAは述べています。これによって補聴器の恩恵を受けられるにもかかわらず診断を受けることに抵抗を感じてそれを享受できない状況を改善し、手軽に補聴器を入手できるようになると考えられます。

米国政府は、2017年に人々がより安価に補聴器を入手できるようにするため「市販補聴器法(Over-the-Counter Hearing Aid Act)」を定めています。しかしこれまで、FDAによってClass I~IIの医療機器として分類される補聴器は、それを得るのに医師の診断を必要とするままでした。バイデン大統領は7月に大統領令に署名し、120日以内にOTC補聴器に関する新たな規則を発表するよう指示しました。

FDAの今回の提案は現在90日間のパブコメ募集期間となっています。最終的に採用となった場合は、連邦官報に掲載され、60日後に発効の運びとなります。

米国ではすでに複数の企業がOTC補聴器に参入の動きを見せており、Boseがそれに先駆けてFDA認定のSoundControlシリーズを発売、JabraもEnhance Plusと称するヒアリングエイド機能付きイヤホンを発表しています。日本ではシャープが完全ワイヤレスの軽度・中等度難聴者向け補聴器を発売。こちらも、音楽も聴ける便利な製品です。

またアップルは、先日AirPods Proのアップデートで周囲の騒音を低減して会話を聞き取りやすくする機能を搭載しており、将来的にAirPodsシリーズの守備範囲をヘルスケア用途に拡げることも検討中と言われています

(Source:FDAEngadget日本版より転載)

AIとサブスクモデルで補聴器に変革をもたらすWhisperが約37億円調達

数年前、Whisper(ウィスパー)の社長で共同創業者のAndrew Song(アンドリュー・ソン)氏は、祖父がつけていた補聴器について祖父と話していた。祖父は聴覚改善のために設計された医療機器に数千ドル(数十万円)を費やした。その過程で彼の生活の質は向上したが、補聴器は着けなくなってしまった。ソン氏の共同創業者も祖父母が同様の体験をしており、エンジニアや起業家として、より優れた最新の補聴器を開発するために行動を起こすことにした。

同社は10月15日、ゼロから構築した新しい補聴器とともにステルスモードから抜け出した。同社の補聴器は、騒がしいレストランにいるときやテレビを観ているときなどさまざまな聴覚の環境に対し、人工知能を利用して自動で学習・調整する。また、最初に数千ドル(数十万円)を払う必要はなく、3年間のサブスクリプションで月額料金を支払いさえすれば、その間無料でソフトウェアアップデートが受けられる。

同社は開発と並行して、Quiet Capital(クワイエットキャピタル)がリードする3500万ドル(約37億円)のシリーズBラウンドを発表した。既存投資家からはSequoia Capital(セコイアキャピタル)とFirst Round Capital(ファーストラウンドキャピタル)が参加した。同社は、本日発表した補聴器システム開発のために、累計では5300万ドル(約56億円)を調達した。

ソン氏は同社を立ち上げる前に祖父と話し、なぜ補聴器を装着しなくなったのか、どんな問題を抱えていたのか、なぜうまくいかなかったのか疑問に思うようになり、最終的にスタートアップを立ち上げることになった。

「そのことが我々を新しい製品の開発に向け突き動かしました。使用する人のニーズを適切にサポートし、時間が経つほどに良くなる補聴器です。補聴器自体が良くなると同時に、人工知能により使用者が捉える音を実際に改善する補聴器です」とソン氏は説明した。

創業チームにはテクノロジーとエンジニアリングのバックグラウンドはあったが、聴覚科学の専門知識がなかったため、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)オーディオロジー学科からRobert Sweetow(ロバート・スウィートウ)博士を招いた。

同社が開発したテクノロジーは、3つの主要な部分で構成されている。まず、耳に合う補聴器があり、次にウィスパーブレインと呼ばれるポケットサイズの『外箱』がある。同社によればそれが「イヤーピースとワイヤレスで連携し、その中で独自のAIベースのサウンドセパレーションエンジンが動く」。最後に、システム上のソフトウェアを更新するスマートフォンアプリがある。

  1. Whisper1

  2. Whisper2

  3. Whisper3

ソン氏によると、他の補聴器と同社製品を分かつのはAIだという。「困難な体験に遭遇し毎日が荒れ狂う中で、当社がサウンドセパレーションエンジンと呼ぶものが、あなたを助けてくれます。これは当社が開発した一種のAIモデルで、信号処理を支援してくれます。本当に独自性のあるものだと思います」と同氏は述べた。

さらにソン氏によると、自動運転車が時間の経過とともに学習し、ドライバーから会社にフィードバックされるデータから恩恵を受けるのと同じダイナミクスが補聴器で機能する。補聴器が時間をかけて信号をより適切に処理する方法を学習する。特定の個人だけでなく、Whisperのすべての補聴器ユーザーの体験が利用される。

同社はこの補聴器を店頭ではなく、補聴器の専門家のネットワークを通じて提供する。ソン氏によると、これは複雑な機器であるため、製品のフィットとサポートのために製品の一生にわたりオーディオロジストを関与させることが重要だと同社が認識しているためだ。

Whisperは、補聴器を3年契約、月額179ドル(約1万8800円)のサブスクリプションベースで提供する。これには、すべてのハードウェア、ソフトウェアのアップデート、聴覚ケアのプロからの継続的なサポート、3年間の損害保険、業界標準の機器保証が含まれる。同社は期間限定で月額139ドル(1万4600円)の導入価格を設ける。

月額179ドル(約1万8800円)だと、補聴器を借りるのに3年間で合計6444ドル(約67万7000円)になる。サブスクリプション終了時に、ユーザーは(契約を)更新して最新のハードウェアを手に入れるか、またはハードウェアを返却することができる。ユーザーが補聴器を所有するわけではない。

Widex(ワイデックス)やStarkey(スターキー)など、他の補聴器会社も補聴器にAIを使用しており、どちらも外部ハブを必要としないことは注目に値する。多くの補聴器会社がさまざまな支払いプランやサブスクリプションプランを提供しているが、Whisperは補聴器に対し異なるアプローチを提供する試みだ。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Whisper、補聴器

画像クレジット:Whisper

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(翻訳:Mizoguchi

ChatableAppsが聴覚支援アプリをリリース、ディープラーニングで話し言葉とノイズを区分

ChatableAppsが聴覚支援アプリのiOS版をリリースした。近々Android版もリリースされる予定だ。このアプリは、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏が支援し、聴覚神経信号処理に関するAndy Simpson(アンディ・シンプソン)博士の研究成果に基づいて開発されたもので、ほぼリアルタイムで背景雑音を除去し、1対1の会話を聞き取りやすくする。

ChatableAppsによれば、このアプリは市場にある他のソリューションとは異なり、現在のスマートフォンと標準的なイヤフォンで使える。Chatableアプリの初期の「臨床前」テストでは、従来の補聴器と同等、またはそれを上回る性能で、テスト参加者の86%がChatableAppsの「ユニバーサルな補聴器」の機能は既存の補聴器より会話に適していると回答したという。

2020年3月にChatableAppsの資金調達について取り上げた際、共同創業者のBrendan O’Driscoll(ブレンダン・オドリスコル)氏は筆者に対し、同社のテクノロジーとアプローチはノイズフィルタリングや他のDSP技術を使用していないため「かなりユニークだ」と語っていた。同氏は「実際には、話し言葉とノイズを区分する深層学習ニューラルネットアプローチだ。オリジナルの音声にフィルターを適用するのではなく、音を聞き、オリジナルの音から声の部分だけをまったく新しいオーディオストリームとしてほぼリアルタイムで再現する」と説明した。

つまり、不要な音にラベルをつけて除去する方法で背景雑音を取り除く従来のアプローチではなく、「VOXimity」と名付けられたChatableAppsのAIがユーザーにとって聞きたい声を識別し、新たに音声トラックを作る。作られる音声トラックは(多かれ少なかれ)元の音声と同じだが、背景の音が除去されている。この技術は、エンド・ツー・エンドのニューラルスピーチ合成と呼ばれている。

ChatableAppsのCEOのGiles Tongue(ジルス・タング)氏は筆者に対し、できるだけ早い時期にアプリをリリースしようと努めたことを説明した。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で耳鼻科に行けなくなったり、みんながマスクをつけるようになって口の動きから話し言葉を読み取ることができなくなったりした人々にとって、このアプリが困っている部分を埋められるだろうと認識したためだ。

タング氏は次のように述べた。「臨床前のテストがうまくいったので、新型コロナウイルスの影響で困っている人々を助けたいという聴覚の専門家からの緊急性の高い需要に応えるために、アプリをすぐにリリースすることにした。マスクで口の動きを読み取れない、あるいは緊急時に耳鼻科に行けない多くの人々に、我々はコミュニケーションを助けるライフラインを提供する」。

このアプリはソーシャルディスタンスの確保にも役立ちそうだ。タング氏は「話している人の横にスマートフォンを置き、あなたはBluetoothイヤフォンを装着すれば、3メートル離れても相手の話は完璧にくっきりと聞こえる」と補足した。

2020年3月のTechCrunchの記事以降、同社ではChatableAppsの価格モデルも再考した。有料サブスクリプションのみで展開する予定だったが、現在は一部の機能が制限された無料版としても利用できる。

同社は「このアプリは無料で利用でき、サブスクリプションに登録すれば高性能の音声増大および背景雑音除去機能をフルアクセスで利用できる」と説明している。サブスクリプション費用は、月額で1400円、年額で8700円だ。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Eargoがバンド幅とノイキャン機能を改善した新しい補聴器を発売

ベイエリアを拠点とする医療用デバイスのスタートアップ「Eargo」が、同社の補聴器としては第4世代となるNeo HiFiをCESで発表した。創立以来の6年間で同社が学んだことを活かして作られた製品だ。改善されたのは主に音質に関することで、バンド幅が広くなり、風切り音の低減とハウリングのキャンセル機能も向上している。Eargoは、これらの改善がすべて組み合わされて「これまで以上に豊かなサウンドで、さらに自然なリスニング体験」を提供すると説明している。

ほかには、同社の補聴器製品ラインの特徴である「Flexi Palmデザイン」も改善されている。これは補聴器を装着する位置を安定させるために付けられている小さなとげのようなもののことだ。アプリもアップデートされ、さまざまな環境に合わせるための調整が簡単になった。現在はiOS版のみだが、Android版も1月中にはリリースされる予定だ。

この新製品はEargoのサイトからすでに購入できる。2650ドル(約28万8000円)と安価ではないが、月々の分割払いにも対応している。3月からは2950ドル(約32万円)になる。

Eargoは2017年に最初の製品をリリースし、これまでに多額の資金を調達している。2019年3月にはシリーズDで5200万ドル(約56億5000万円)を調達し、これまでの調達金額の合計は1億3560万ドル(約147億円)になった。

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(翻訳:Kaori Koyama)

ほとんど目に見えない補聴器でEargoが58億円超を追加調達

Eargoは究極の消費者向け補聴器ブランドになろうとしている。

小さくてほとんど目に見えないEargoの補聴器は、AirPodsスタイルの充電ケース付きで、聴力低下の汚名返上を手助けする。最新製品のBluetooth経由でカスタマイズ可能なEargo Neo(2550ドル)の発表から1ヶ月後、同社は5200万ドルのシリーズDラウンドを完了し、調達総額は1.35億ドルになった。

最新ラウンドには、新たな出資者であるFuture Fund(オーストラリアの政府出資ファンド)と、NEA、Charles and Helen Schwab Foundation、Nan Fung Life Sciences、Maveronらの既存投資家が参加した。

カリフォルニア州サンノゼ拠点のEargoは、2万人のユーザーを抱え、今回調達した資金を使ってベビーブーム世代をターゲットにした新製品の開発と革新を続けていく。新製品のEargo Neoは同社のハイテク補聴器として3番目のシリーズになる。最初のEargo Plus(1450ドル)は2017年に、次のEargo Max(2150ドル)は翌2018年に発売された。

「これはユーザーに真の変化をもたらす製品だ」とEargo CEO Christian Gormsenが本誌に語った。「私たちには消費者向け補聴器分野のトップブランドになるチャンスがある」

4800万人のアメリカ人、即ち人口の20%が聴力低下に悩まされている。しかし、一部のMedicare Advantageプログラムを除き、保険会社は補聴器を補償していない。価格は高いが(費用のかかる技術を使っている)、Eargoは補聴器をできるだけ求めやすくすること、聴力の低下を認めることは恥ずかしくないというメッセージを送ることを最優先に考えている」

「補聴器を使うのは敗北を認めるように感じる、まるで何かいけないことのように。そんな考えは間違っている。聴力低下は自然なこと、誰にでも起きる」とGormsenは言った。「最大の課題は業界全体の認識。聴力低下に関する知識があまりにも貧弱だ。こんな汚名を着せられた分野をどうやって変えるか? 現在の流通ルートは何もしていない。唯一の方法は教育とコミュニケーションを通じて知らせることだ。

「かなり前進したと考えているが、われわれが目指すのは4800万人のアメリカ人であり、まだほんの始まりにすぎない」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Boseの補聴器、FDA承認を取得

補聴器なしでは聞こえに困難を抱えるという大人は3750万人にのぼる。Boseの新しいプロダクトはそんな人のためのものだ。今日、米国食品医薬品局(FDA)は、オーディオテクノロジー企業Boseの新補聴器の販売を承認した。

Bose Hearing Aidと名付けられたこのデバイスは、難聴の人が医療提供者の助けを借りなくても聞こえを調整したりコントロールしたりできるようにデザインされている。このデバイスは、マイクを通じて音の振動をとらえるのに空気伝導を活用する。そしてそのシグナルを処理し、増幅させ、外耳道にあるイヤホンを通して音を伝える。ユーザーはモバイルアプリで聞こえを調整することができる。

「難聴は社会の大きな健康問題であり、特に年齢に応じて顕著になる」とFDAのデバイス・放射線保健センターで眼・耳鼻咽喉のデバイス部門を統括する医学博士Malvina Eydelmanはプレスリリースで述べている。「今回の販売の許可で、患者は直接自分でフィット感や機能をコントロールできる新たな補聴器を手にすることが可能となった。今回のFDAの決定により、難聴を抱える人は自己健康管理にこれまで以上に積極的に関わるオプションを手に入れることになる」。

このデバイスの市販を承認する前に、FDAは患者125人の臨床試験データをレビューしたとのことだ。この研究では、専門家がデバイスを調整した場合の結果と同等であることが明らかになった。

「そうした結果に加え、患者がBose Hearing Aidを試したとき、プロが行なった設定より自分で行なった設定の方を好んでいた」とFDAはブログに投稿している。

この手の補聴器を手がけるのはBoseが初めてではない。現在は存在しないスタートアップDoppler Labsアクティブリスニング機能を搭載したイヤホンを開発し、聞こえの手段を提供した。また、Nuhearaは今年初めに聞こえを改善させるイヤホンを発表している。しかしながら、Boseのデバイスとそれらとの間にある決定的な違いは、FDAの承認だ。

Boseは、FDAのDe Novo発売前レビュー審査を受けた。これは、リスクが低〜中程度のデバイスで革新的かつ新規のもので行われるプロセスだ。FDAが言うように、ユーザーが自分でフィット感や補聴のプログラムを調整できる補聴器として初めて認可された市販向け商品となる。しかしながら、州の法律によっては、補聴器を扱う認可機関でこのデバイスを購入することになるかもしれない。

このデバイスがどのような外観なのかは明らかではない。もしかすると、“日常会話がよく聞こえるようになる”ヘッドフォンとして現在市販されているBoseヘッドフォンが、単に補聴器として再投入されるだけかもしれない。

Boseはこれまで50年以上にもわたって業界トップのオーディオ体験を提供してきた。そして最近我々は、その専門性をいかして騒音のある環境でもよく聞こえるようなものに取り組んでいる。Boseの広報Joanne BerhiaumeはTechCrunchに対し文書でこう述べた。「FDAによるDe Novo申請承認で、軽度〜中度の難聴を抱える人が聞こえをコントロールするのにBoseのテクノロジーを活用することができるようになった。補聴器によって恩恵を受けることができるのに現在補聴器を使っていないという何百万人もの人に、求めやすく、操作も簡単、そして素晴らしい音が楽しめるというこのソリューションを提供することを非常に楽しみにしている」と述べている。

イメージクレジット: Photo by Larry French/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)