Exoは小型超音波デバイスを低価格高性能化してすべての医師の手中に収めたい

「echo、エコウ」と発音するExoが、シリーズCで2億2000万ドルを調達して、手持ちサイズの超音波デバイスと、それによるポイントオブケア(現場完結型)ワークフロープラットホームの商用化を目指している。

そのラウンドはRA Capital Managementがリードし、BlackRockとSands Capital、Avidity Partners、Pura Vida Investments、およびこれまでの投資家たちが参加した。

ExoのCEOであるSandeep Akkaraju氏によると、カリフォルニア州レッドウッドシティで2015年に創業された同社は、これで調達総額が3億200万ドルあまりになり、それには2020年の4000万ドルの投資も含まれている。

超音波機器は安くても4万ドルから25万ドルはするし、ハイエンドのマシンなら数百万ドルにもなる。一方Exoのデバイスのお値段は、ラップトップ1台ぶんぐらいだ。

Akkaraju氏によると、「未来が超音波であることは明らかだ。非放射性であり、有害な副作用もない。私たちはこの技術を、医師の手中に置きたい。同時に、患者が身に着けるものであってもよい。体内を即座に瞬間的に検査することができる」。

人工知能と医療画像技術と半導体技術を組み合わせれば、ユーザーはそのデバイスを、心臓病の患者の診察や、新型コロナウイルスの患者の肺の走査など、多くの種類の医療現場で利用できる。また、自宅にいる術後の患者から、経過の情報を得ることもできる。

ExoはワークフロープラットホームExo Worksを加え、1分間で検査の結果を見て結果を文書化し、課金処理ができるようにしている。

Akkaraju氏によると、至近の課題はデバイスの商用化であり、資金の大半はそちらへ向かう。また彼はインフォーマティクスのプラットホームを作り、それを全国でパイロットすること、それによる生産と営業の強化にも取り組むつもりだ。

超音波によるポイントオブケア技術のグローバル市場は、2025年に31億ドル、年成長率は5%と予想されている。Akkaraju氏は現在、医師だけでなくそのほかの病院労働者にも、たとえば点滴で正しい静脈を見つけるなど、超音波デバイスの用途があるとして、聞き取り調査を進めている。

同社のデバイスがFDAに承認されれば、Exoのハンドヘルド機器の市場化にも、大きな弾みがつく。RA Capital Managementの会長であるZach Scheiner氏によれば、Exoのチームに初めて会ったのは2020年だが、その年の終わりにはRAは最初の投資として拡張シリーズBの投資を行っている。Scheiner氏によると、氏はその技術の可能性をすぐに理解し、近未来の成長を予見した。また氏は、何か月もかけてAkkaraju氏と知己になり、彼がExoの技術の改良に努めていることも知った。

Scheiner氏はこう言っている: 「ヘルスケア技術は改良と低コスト化が進んでいるので、今後の成長の機会が大きい。超音波技術を大衆化するというSandeepのビジョンは、15年から20年前にはあり得なかったビジョンだ。市場はまだ初期の段階だが、そのポテンシャルは大きい。すべての医師がそれを手にすれば、それまで見えなかったものが見えるようになる。テクノロジーと生物学の進歩により、この技術はさらに成長するだろう」。

関連記事: R&D Roundup: Ultrasound/AI medical imaging, assistive exoskeletons and neural weather modeling(未訳、有料記事)

(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Exo

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モノに触れずにつかめるロボ用超音波グリッパー

ロボットが、病院やスマホ修理店などで仕事を手伝う場合、少なくともそっとモノに触れる必要がある。まったく何にも触れずに手伝うということは可能なのだろうか? 超音波を利用して物体を空中に浮遊させて支えるグリッパーを開発した研究者がいる。非常にデリケートな作業にも適用できるものだ。

画像クレジット:Stefan Weiss/ETH Zurich

これは、極めて精緻に制御された周波数と音量で音波を発生する小さなスピーカーの配列で実現されている。それらが、ある種の定在圧力波を発生し、物体を持ち上げる。また、さまざまな方向から圧力をかけることで、その場に静止させたり、動き回らせることも可能だ。

このような「音響浮遊」自体は、そういう言葉もあるように、まったく新しいものではない。あちこちで奇術の類として使われてきた。しかしこれまでは、これといった実用的な用途はなかった。しかし、ETHZürichのマーセル・シャック(Marcel Schuck)氏と彼のチームは、このようなポータブルなデバイスが、小さな物体を非常に優しく保持する必要があるような作業に使えそうなことを示した。

たとえば、小さな電気部品、腕時計やマイクロロボット用の油を塗布した微小なギアやベアリングは、物理的な接触なしに保持するのが理想的。接触すれば静電気を伝えたり、汚れを付着させてしまうことがあるからだ。そのため、そうした作業に使うロボグリッパーは、清浄な状態に保ち、隔離しておく必要がある。しかし、音響による操作なら、汚濁の可能性は大幅に低くできる。

ちょっと不気味な見た目の別のプロトタイプ

問題は、対象の物体を空中に浮遊させるのに、どのような周波数と振幅の組み合わせが適切なのかが、必ずしも自明ではないこと。そのため、この仕事の大部分は、新たな物体に対して、それを扱えるよう簡単に調整できるソフトウェアを開発することだった。それには、回転させたり、ひっくり返したり、ユーザーが意図したように自由に物体を動かせるようプログラムする機能も含まれる。

実際に動作するプロトタイプも完成した。シャック氏は、さまざまな業界にアンケートを実施して、そのようなデバイスが実際に役立ちそうか、役立つとすればどのような用途に使えるのか、調査することにしている。スイスでは、もちろん腕時計の製造は重要な産業であり、部品は小さく、接触に弱い。「たとえば歯車は、まず潤滑油でコーティングされ、その潤滑油の皮膜の厚さが測定されます。ほんのちょっと触れただけでも、その被膜にダメージを与えてしまうことになるのです」と、ETHZのニュースリリースで、同氏は指摘している。

腕時計職人は、そのようなロボアームをうまく活用できるのだろうか? マイクロロボットの設計者はどうだろう? または生化学者の役にも立つのだろうか? 潜在能力があるのは間違いないが、必ずしも用途は明確になっていない。同氏は幸い、そのような疑問を調査するための特別研究予算をいくらか持っている。もしその結果、実を結びそうな用途が見つかれば、来年あたりスタートアップとしてスピンオフしたいと考えている。

(関連記事:傷つきやすい海洋生物を捕獲できる「超優しい」ロボットハンド

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

超音波で眠っているスマートデバイスを覚醒させる

私たちは未来の家が、小さなセンサーたちで溢れていることを確信している。セキュリティカメラ、一酸化炭素検出器、スピーカー、その他もろもろだ。とはいえ常に実行されている必要があるものは多くない。だが、もしそれらがオフだったとして、必要な時にどうやってそれらの目を覚ましてやれば良いのだろうか?超音波を使うのだ。

ともあれ、それがスタンフォード大学のAngad RekhiとAmin Arbabianによって追求されているアイデアだ。ずっとオンにしておくことはできず、かといって完全にオフにすることもできないデバイスの問題に対する彼らのアプローチは、「覚醒」信号の送信と受信に必要なエネルギーの量を最小化することだ。そうすれば、IoT機器は実際に利用されている間だけ電力を消費することになる。

もちろん、これらの小型センサーが情報を送受信するために使用する電波は、実際には電力とスペースの面でかなり高価なものだ。もしアンテナと信号プロセッサを準備して待機させておくと、それらを1回の充電で何年も待機させようとしている場合には、デバイスが使って良い以上の量のエネルギーを使ってしまう。

一方、超音波センサーは、電力効率が非常に高く、必要最小限のスペースしか必要としない。超音波 ―― 人間の聴覚可能範囲上限の22KHz以上の音波 ―― は、はるかに物理的な現象であり、それを検出することは無線電波を検出することよりも、多くの点でより簡単だ。目に見えないX線を検知するセンサーと、通常の可視光を検知するセンサーとの違いにやや似ているかもしれない。

実験室のRekhi (左)とArbabian

Arbabianの下で働く電気工学の大学院生であるRekhiは、サンフランシスコで開催された国際固体回路会議(International Solid-State Circuits Conference)で発表されたばかりの論文で、彼らのアプローチを説明している。これはある意味簡単なアイデアである ―― より大きなスイッチを入れるために小さなスイッチを使う ―― しかしその結果は印象的だ。

このシステムの超音波受信機は、効率的な種類のセンサの中でも特に効率的なものだ。小型で超高感度のマイクも、Khuri-Yakub Groupによって、スタンフォードで開発された。この受信機は常にオンだが、消費電力は驚くほど小さな4ナノワットであり、それでも1ナノワットの強度の1信号を検知するのに十分なほどの感度を持っている。それは、消費電力と感度の点で、ほとんどの無線受信機よりもはるかに優れている。

昨年行われた他の研究の中には、消費電力と感度の両者で今回のものを凌ぐものもあるが…それは50倍以上大きなものだ。超音波センサの大きさは僅か14.5立法ミリメートルで、これに対して無線チップの大きさは900立法ミリメートルに及ぶ。組込機器の世界では、体積の小ささは貴重である。

もちろん、町の反対側からそれを使うことはできない ―― 超音波信号は壁を通り抜けて伝わることはない。しかし、それはそこら中で反射する。そして覚醒システムの感度から考えると、たとえ最低限の小さな超音波信号の断片だけでも、センサを活性化させるのには十分だということを意味する。

現在は単なるプロトタイプに過ぎないが、この種の真に効率的な技術が、電力から最後の一滴まで搾り取ろうと努力しているどこかの企業に、奪取されたり、模倣されたりしても驚くようなことではない。

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(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: MRTOM-UK/GETTY IMAGES

超音波で直腸の動きを検知、排泄タイミング予測デバイスでTriple Wが資金調達

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排泄タイミングのお知らせがスマホに表示されるIoTデバイスを提供しようという日本人チームによるスタートアップ、Triple W(トリプル・ダブリュー)は、この4月末にニッセイ・キャピタルやアイスタイルキャピタルから資金調達をしたことをTechCrunch Japanに明らかにした。金額は非公開だがハードウェアスタートアップのシード投資としては大きめのようだ。

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さて、排尿や排便といった排泄タイミングを予測できるということで、それが一体なんのビジネスになるのかと思う人もいるだろう。米国サンフランシスコのバークレーを拠点に起業した中西敦士CEOによれば、以下の需要があるという。

  • 脊椎損傷患者:脊椎損傷のために便意を感じられない 10万人(日本)
  • 介護事業:高齢者の排泄介助は介護の柱の1つ。急に排泄を要求されても介護士は困る 600万人(日本)
  • 過敏性腸症候群:便が出るかどうかの判断にストレスを感じる 1200万人(日本)
  • 更年期女性:軟失禁 排尿のタイミングに困る 800万人(日本)
  • 育児:乳幼児のオムツ替えのタイミング
  • 女性:女性の48%が便秘に悩んでいる 4000万人(日本)

このように多くの人が排泄関連で困っている。これら需要に対し排泄予知ウェアラブルD Freeは、お腹に貼付けるタイプのデバイスから腸に照射した超音波をセンサーで検知し、そのデータを機械学習することで排泄タイミングを予測するデバイスを開発している。

超音波を使ったコンシューマー向けデバイスは、主にkHz帯が中心に使われているが、より詳細な部位を検知できるMHz帯のデバイスは少なく、今回のデバイスでは医療向けと同様のMHz帯を使用している。センサー情報はクラウド上で機械学習し、排泄タイミングを予測するというが、予測のためのロジックはまだ開発途上のようだ。白鳥病院外科 部長 山川 俊紀氏(日本大腸肛門病学会)がアドバイザーとなっている。市場規模としては、介護等でのオムツの市場規模1700億円、排泄関連の薬の市場規模1000億円があり、これらに匹敵する規模であるという。

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デバイスの価格としては、4月24日からREADYFOR(レディーフォー)(クラウドファンディング)で2万4000円で募集開始するという。

デバイス開発で難しかった点は、直腸の膨らみを超音波センサーでひろえるかを確かめるときや、デバイスをどうやってお腹に装着するか、という点という。なぜデバイスをお腹に貼るのかというと、最も正確に膀胱・直腸の変化を捉えることができるからだそうだ。ただし、パンツ一体型やクリップ型、超音波振動子以外は万歩計のようにズボンに引っ掛けるタイプなど、利用シーンによって使い分けることも考案中という。またお腹に貼るのは、デバイス背面にジェルパッドを貼り付けることで腹部に貼れるようにしたそうだ。腹部とデバイスの間に空気が入らないようにするためでもある。

中西氏は、米国University of BerkeleyビジネススクールMBT(Management and Business Track)コースに留学中、バークレイ市内で引越しをしたときに荷物を抱えたまま便意を催し大変困った経験からこのサービスを考えたという。MBTコースでは4カ月間、Draper Nexusというベンチャーキャピタルでインターンを行った。このときDraper Nexusの Mitch Kitamura氏とスタートアップのディスカッションをしたときにこのサービスについて話したという。このようないきさつのため米国と日本にオフィスがある。

日本支社代表の小林氏は中西氏とは大学同期で、かねてからスタートアップの際にはいっしょにやりたいという話をしていて立ち上げ後にジョインした。他にもオリンパス工業でもともと内視鏡関連のエンジニアだった人物、ソフトエンジニア兼PM、マーケティング担当など6名が在籍する。

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どうしてIoTのようなものづくりに敢えて挑戦するのか中西氏にきいてみた。彼は以前、青年海外協力隊に参加して、フィリピンでマニラ麻の販売量を増やすためマニラ麻を使ったジーンズをつくったことがあるそうだ。そのときに、ものづくりを通じて人助けができることに喜びを感じたという。今回のデバイスの筐体は3Dプリンタでプロトタイプを作ってあるそうだ。

サービスの今後の展開としては、総合健康管理ツールを目指すようだ。排泄の情報は、その人の食事、運動、メンタルの指標となり得る。これを病気の早期発見や、生命保険のフェアバリューとして使うことができるという。

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D Freeが、これから実際の市場で普及するのかどうかといったことは未知数だ。ただ、一般に思われている以上に排泄にまつわる悩みを抱える人は多いし、これは場合によっては人間の尊厳にかかわる深刻な問題だ。米国で流行っているものをコピーして日本にもってくるということはしたくなかったという中西氏だが、あまり前例を聞いたことがない排泄検知ウェアラブルというジャンルで日本のチームでどこまでこの問題を解決できるのか注目だ。

Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D)