ハーレー・ダビッドソンは、9月にその初の量産型電動バイク「LiveWire」を発売する予定だ。そのとおり、内燃機関、クロムと鋼鉄に関わる米国のシンボルが完全電動二輪車に向かうのだ。
1903年にミルウォーキーで創業されたハーレー・ダビッドソンは、2018年になってシリコンバレーオフィスを開設した。これはオートバイから自転車そしてキックボードに至る将来の電動車両のラインアップ追加の計画のもとに行われた。これらの動きによって、HDもまた、グローバルモビリティの変革の中で自らを再定義している既存の移動車両メーカーの仲間に加わった。
TechCrunchは、ニューヨークのフォーミュラEレーストラックで、EVへの転換に関して同社の上級管理職と話し、LiveWireに試乗する機会に恵まれた。
このバッテリー駆動のハーレーは、時速0〜60マイル(0〜約97km)の加速を3秒で行い、最高時速は110マイル(約177km)に達し、60分で充電を完全に終了する。標準小売価格はそれは2万9799ドル(約320万円)だ。
このオートバイの15.5 kWhのバッテリーとモーターは、146マイル(235km)の都市範囲で105馬力と86 ft-lbs(116.6Nm)のトルクを生み出す。都市と高速道路走行を組み合わせた場合は、95ft-lbs(128.8Nm)。
ハーレー・ダビッドソンは、ガソリンバイクのミニマリズムとは対照的な形で、LiveWireを開発した。同社のEVテクノロジー担当チーフエンジニアであるショーン・スタンリー(Sean Stanley)氏によれば、この電動バイクには性能とアプリベースの接続性を管理するために、5つのプロセッサが搭載されている。
LiveWireのタブレット型ダッシュボードはスマートフォンと同期し、プリセットおよびカスタマイズされたデジタルライディングモードを可能にする。利用者はダッシュボードやスマートフォンから、LiveWireの出力、充電状態、トラクションコントロール設定、そしてABSブレーキ特性を調整し監視することができる。このEVは、ナビゲーション機能を持ち、音楽再生、ヘルメット通信、および着信電話を受けるためのBluetoothシステムを備えている。
ハーレーダビッドソンのバイクは、そのエンジンの特徴的な音で有名だ。なのでLiveWireの機械的動作から生み出される特徴的な電動サウンドも当然存在している。「私たちはそれを最適化するために多くの時間を費やしました。音は電気モーター、トランスミッションそして駆動系の組み合わせからやってきます」とスタンリー氏は説明した。
家庭用コンセントでLiveWireに電力を供給することも可能だし、Tesla車に電力を供給するのと同じ急速充電ネットワーク(ChargePointなど)を使用することで、高速道路走行に向かうこともできる。
ハーレー・ダビッドソンはまた、LiveWireディーラーにも充電ステーションを追加しており、先週にはElectrify Americaとの提携により、新規購入者に500kWを無償で提供することを発表した。同社は電動シフトを行うことで、伝統的なオートバイ会社の間でEVリーダーとして正面に飛び出すことになる。これはこの象徴的な米国の会社を、電動バイクスタートアップとの競争から守ることになる。
有名なガソリンバイクメーカーは電動バイクの取り込みが遅れている。大メーカーである、ホンダ、カワサキ、BMWのいずれもが、公道用の電動モーターサイクルを米国内では提供していない。これに対してKTMはFreeride E-XCオフロードモーターサイクルを2018年に発売し、ほどなくそのジュニア版を、完全電動スーパークロスレーシングクラスのために発売する。
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ハーレーの電動への動きが起きたのは、会社の収益が減少し、電動二輪車市場が停滞したことを受けてのことだ。
米国のオートバイ産業は、リーマンショック以降極めて悪い状況に置かれてきた。2008年以降、40歳未満の購買層による急激な落ち込みによって、新規売上は約50%減少していて、以来一度も回復していない。
UBSのロビン・ファーリィ(Robin Farley)氏のようなアナリストたちは、高齢のベビーブーマー世代よりも、よりテクノロジーに精通したミレニアル世代の嗜好に訴えることの方が、ハーレーダビッドソンにとって優先されるべきであると主張している。
ここ数年、電動バイクのスタートアップたちは、若い世代の興味を再び喚起するモデルを生み出し、その一方でガソリンバイクの乗り手に対して乗り換えを促してきた。カリフォルニアを拠点とするZeroなどの企業は、新しいライダーを引き付けるためにより多くのハイテク機能を提供することに加えて、ガソリン駆動のオートバイと比較したときの、価格、航続距離、充電時間、およびパフォーマンスのギャップを埋めることにずっと取り組んでいる。同スタートアップは、1万8995ドルのSR/Fモデルの出荷を始めた。これは潜在的にLiveWireの競争相手となる。市街地の航続距離は161マイル(約259km)、充電時間は1時間、そして最高速度は時速124マイル(約時速200km)である。
また別の電動バイクのスタートアップFuellは1万995ドルのFlowを発売する。こちらは0〜60(0〜97km)の加速が2.7秒、航続距離150マイル(約241km)、そして充電時間は30分だ。発売は今年まずヨーロッパで行われ、次に米国が続くと、創業者のエリック・ビュエル(Erik Buell)氏は語っている。
それでは、市場での競争はさておき、ハーレー・ダビッドソンのLiveWireの乗り心地はどのようなものだろうか。ニューヨークのフォーミュラEサーキットを十数回走行することで、しっかりとした第一印象を得ることができた。LiveWireは、電動バイクのエクスペリエンスとなりつつあるものそのものだ。ほとんど騒音の起きない鋭い加速とともに、風を切り裂いて進むことができる。
LiveWireとガソリンバイクの最大の違いは、そのモンスター級のトルクと、途切れることのない前進である。マシンはギアを1つしか持っていないので、クラッチもシフト操作も存在しない。スロットルから後輪に動力を機械的に伝達するためには、バッテリー、プロセッサーそして駆動系だけが必要で、これまで必要だった仕掛よりも大幅に少ない。あとはスロットルを回して走り始めるだけだ。
ハーレーダビッドソンがこのアドレナリン誘発マシンのLiveWireを発表するときに注目したいものがいくつかある。1つ目は、競合可能でより安価な電動バイクを発売するZeroなどのスタートアップ競合企業と比較した場合の、2万9000ドルという価格の市場競争力だ。同社のポール・ジェームズ(Paul James)氏(ビデオ参照)は、性能とハーレーのサービスならびにディーラーネットワークが、Zeroに対するLiveWireの有利な点だと語った。買い手が納得したかどうかは、売上によってすぐにわかるだろう。
ハーレーダビッドソンのEVへの進路は、ガソリンオートバイ産業を電気に向ける刺激を生み出す可能性もあるだろう。その場合は、同社は追い詰められたメーカーの立場から自ら破壊者へと転身したことになる。
そして、LiveWireのリリースよりさらに重要なのは、ハーレー・ダビッドソンが次に提供するものだ。同社は、近い将来に、より軽量で低価格の電動バイクはもちろん、電動キックボードや電動自転車を発売することを明言している。
今年の春のイベントで、ハーレー・ダビッドソンのプロダクト担当副社長であるマーク・マカリスター(Marc McAllister)氏は、同社がオンデマンドの都市型モビリティ時代向けの製品を開発しながらも、プレミアムモーターサイクル企業に留まり続ける必要があることを強調した。
ハーレー・ダビッドソンのLiveWireはその方向への跳躍だ。しかし同社の次の電動二輪車のラウンドとそれに対する市場の反応が、人びとがある場所から別の場所へと移動する手段が変革していく中における同社の立ち位置について、より多くのことを教えてくれるだろう。
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(翻訳:sako)