Shopifyが小売業者向けデビットカードと分割払いプランのサポートを発表

Shopify(ショピファイ)は5月20日、同社の電子商取引プラットフォームを使用する100万人の小売業者のためのバーチャルカンファレンス「Reunite」で、いくつかの新製品と機能を発表した。

追加機能の中には「Shopify Balance」がある。最高製品責任者のCraig Miller(クレイグ・ミラー)氏は、ビジネスのニーズにより適した銀行口座を再考する試みだと説明した。「銀行が提供する伝統的な商品は全く違う世界で考案された」とミラー氏は述べる。「それらをどう設計すべきかという最初の原則に立ち返った」。

Shopify Balanceは手数料や最低預入残高のない小売業者の口座だ。ミラー氏は、口座開設「当初」の口座資金はShopifyからの入金のみだと述べた。小売業者は追加の資金を預け入れることはできないが、ログイン、資金繰り管理、請求書に対する支払いはできる。口座にはデビットカード(仮想または物理的なカード)が付いており、Shopifyはキャッシュバックの特典や、発送やマーケティングなどの費用の割引も行うと述べた。

「Buy Now, Pay Later」機能も発表した。小売業者が顧客に、利息や追加料金なしで支払いを4回均等分割にするオプションを提示できる機能だ。

同機能は、高額商品を販売する小売業者にとって特に役立つ。記録的な失業と経済的不確実性の中、「多額の借金を抱える」という不安からクレジットカードで高額商品を買うことをためらう顧客がいるかもしれない。一方で小売業者は「即座に」支払いを受けられる。「ShopifyはShopify BalanceとBuy Now, Pay Laterの両方に関して金融業界のパートナーと協業している」とミラー氏は述べたが、詳細は明かさなかった。

Shopifyは2020年後半に両方の製品をリリースする予定だ。そのほかの新機能には、「Local Delivery」オプションがある。小売業者が地域の顧客1人1人に向けたデリバリーエクスペリエンスを設計できる機能だ。また、ロボット工学を利用したフルフィルメントネットワークを加盟店に開放し、チェックアウト時にチップを受け付けられるオプションを追加した。

Shopifyが過去数カ月に実施したすべてを結びつける幅広いテーマは、小売業者が新型コロナウイルスのパンデミックに適応する際に「驚くほど急速に高まったデジタルの重要性」だとミラー氏は述べた。

このイベントは、Facebookが「Facebook Shops」を発表した翌日に開催された。Facebook Shopsによって、小売業者はFacebookページとInstagramプロファイルにデジタル店舗を加えることができる。Shopifyは実際にはこのイニシアチブのパートナーだ。小売業者は、ShopifyのプラットフォームからFacebookとInstagramの店舗を管理できるようになる。

画像クレジット:Richard Drew / AP

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(翻訳:Mizoguchi

小売を最適化するスタートアップTeikametricsは17億円を調達してAmazonと広告の次を目指す

小売業者のオンライン広告費を最適化するスタートアップであるTeikametrics(テイカメトリクス)は、1500万ドル(約16億7000万円)の追加投資を獲得した。同社は、Amazonで物品を販売する業者がより効率的に広告が出せるように支援することを目的に設立された。最近では同様のサービスをWalmart(ウォルマート)向けにも開始している。

CEOのAlasdair McLean-Foreman(アラスディア・マクリーン・フォアマン)氏は、どちらのプラットフォームでも、TeikametricsのFlywheel(フライホイール)プラットフォームで、商取引、在庫、価格設定といった小売りデータをもとに広告購入プロセスを改善できると話している。

フォアマン氏は、Amazonが「驚くほど閉じたループ」を作ったことを称賛している。そこでは「無数の顧客が、長期にわたって無数のサプライヤーと出会うことができる」という。その他のプラットフォームの中でも、ウォルマートのものは「価値的にもっとも近い」と同氏。

Teikametricsを利用すれば、小売業者(サードパーティーの販売業者も、Amazonとウォルマートがそれぞれのプラットフォームで販売する製品を売り込むブランドも含む)は、両方のマーケットプレイスでの広告キャンペーンを最適化でき、ゆくゆくは他のプラットフォームでも可能になると同氏は付け加えた。

関連記事:Amazonでの広告を最適化するTeikametrics11億円を調達(未訳)

フォアマン氏によれば、同社は今年の後半、広告を超える製品を立ち上げるという。彼はTeikametricsで、同じデータを使って小売り「オペレーティングシステム」を開発しようと思い描いている。それは、在庫や価格設定など、小売業のあらゆる要素を最適化するものだ。

「とても複雑な問題、つまり単に広告を出すことよりも、ずっと動的で、ずっと複雑なものに対する、非常にシンプルな解決策を作るということです」と同氏は語る。

ボストンに本社を置くTeikametricsは、2018年にシリーズA投資で1000万ドル(約11億円)を調達している。新しいラウンドは、Jump Capital主導のもとに、Granite Point Capital、MITの計量経済学教授で科学顧問も務めるJerry Hausman(ジェリー・ハウスマン)氏、FacebookとUberで成長責任者を務めていたEd Baker(エド・ベイカー)氏が参加している。

Teikametricsは、現在、Clarks、Razer、Power Practical、Zipline Ski、マーク・キューバン氏のBrandsなど、3000を超えるブランドと契約している。また最近、Amazonの広告担当重役であったSrini Guddanti(シリニ・グダンティ)氏を最高製品責任者として迎え入れている。

広大な小売と広告の世界を見渡してフォアマン氏は「AIはほとんどバズワードです」と認めながら、しかし「私たちは現にAI第一でやっています。製品は自動化そのものです。インテリジェントな意志決定です」と主張した。

さらに彼は「広告は巨大なレバーを引くようなもので、それはまさにAIが大得意とする仕事です。しかし、その同じAIコンポーネントやソリューションを同時にさらに大きな問題に適用するのを、私はものすごく楽しみにしています」と話した。

画像クレジット:Teikametrics

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(翻訳:金井哲夫)

Googleが実店舗のネット活用を支援するスタートアップPointyを買収へ

Googleは、実店舗で販売を行う小売業者と密接な関係を作り、電子商取引の世界に参入するという長期目標を掲げているが、どうやらその計画が少し進展したようだ。検索エンジン大手である同社は、アイルランドのダブリンに本拠を置き、実店舗の小売業者を支援するハードウェアとソフトウェア技術を開発するスタートアップPointyの買収に乗り出した。その技術とは、特に取り扱い商品を細かく陳列するネットショップを開設していない店舗を対象に、大きな手間をかけることなく、商品をネット上で見つけやすくするためのものだ。

どちらの企業も買収額は公表していないが、ある情報筋によれば1億4700万ポンド(約210億円)とのことだ。

Googleは1時間以内に公式発表をすると言っていたが、情報筋から得た話の詳細を探っている間に、Pointyはすでに自社サイトでそのニュースを公開していた。現在は「習慣的な買収完了条件」の交渉中で、数週間以内に契約は完了するという(Googleの買収に関するブログ記事はこちら)。

Pointyは買収後も事業を続ける。「私たちは、Googleの資産とリーチの支援を受けて、今後もよりよいサービスが構築できることを楽しみにしています」と同社は書いている。だが、この計画に誰が残るかは不明だ。

情報筋は、この買収は「よい結果」だったと話している。なぜならPointyには「唯一無二」の製品があり、市場に比較対象がなかったからだ。さらにPointyは、小さなスタートアップにしては非常に多くのトラクションがあり、アメリカでは、特定分野の実店舗小売り業者の10パーセントほどと取り引きをしている(その中にはペットとオモチャの小売業者が含まれている聞いている)。

Pointyは創設6年目の企業で、さまざまな投資家から2000万ドル(約22億円)の資金を調達している。投資会社にはFrontline Ventures、Polaris、LocalGlobe、個人投資家には、以前はGoogleマップの開発を取り仕切り、その後、Facebookで検索エンジンや企業向けの製品の開発を行っていたLars Rasmussen(ラーズ・ラスムーセン)氏が名を連ねている。

Pointyは、CEOのMark Cummins(マーク・カミンズ)氏とCTOのCharles Bibby(チャールズ・ビビー)氏によって共同創設された。注目すべきは、カミンズ氏にとって今回がGoogleへの2度目のイグジットであることだ。彼が最初に立ち上げた会社Plink(プリンク)は、Googleがイギリスで最初に買収した企業だった。

Googleにとって、Pointyはカミンズ氏のスタートアップを前にも買収したことがあるという以上の既知の仲だ。この検索エンジン大手が実店舗を経営する小売り業者のためのツール開発をPointyが強く後押ししたことで、両者は2018年から一緒に活動していたのだ。

当時、Pointyの主軸製品は企業の販売時点管理、つまりバーコード読み取りユニットに接続するハードウェアだった。これを使えば、商品の販売時にバーコードを読み取るだけで、その商品が(販売数も含め)インターネットにアップロードされる。その後も、商品が売れるたびに読み取られたバーコードから在庫数が更新される。Pointyは入荷に関しては関知しない。長期的な販売パターンから、ほぼ正確に在庫数を割り出せるアルゴリズムを使用しているためだ。

一般の利用者は、その商品を検索すると、Googleの検索結果(ナレッジパネルの「◯◯を見る」やGoogleマップ)で、または広告にその詳細が示されるようになる。目的は、これらのリストを通じて該当する商品を、Pointyでそれをアップした店で買ってもらうチャンスを高めることだ。お客さんを店に導き、他の商品も買ってもらえればなおいい。

この装置の価格は700ドル(約7万7000円)ほどだが、特定メーカーのPOSに組み込める無料アプリも提供されている。Clover、Square、Lightspeed、Vend、Liberty、WooPOS、BestRx、CashRx POSのシステムなら、ハードウェアを必要としない。

2018年、Pointyと最初に提携したGoogleの狙いは、検索ポータルの電子商取引ツールとしての機能を高めることにあったのだが、なかなか実現しなかった。一方Amazonは、実店舗との連携を順調に強め、インターネットで買い物をする人が最初に見るサイトというGoogleの地位を大きく脅かした。

あれから2年。こうした課題は、Amazonの躍進によってますます大きくなるばかりだ。GoogleがPointyの引き込みに熱心だった理由は、恐らくそこにある。だが今、その技術を深く取り込み発展させる準備が整った。

Pointyも、小売業者との緊密さを少しだけ高めることができ、何が売れるか、何を多く仕入れるべきかといったインサイトを店舗に提供できるようになった。だが、インターネット上にリストアップされる商品の実際の売買にまでは、手を出さず、あくまで店舗とそこを訪れて直接商品を買いたい客との取り引きに任せていた。Pointy(と独自に小売り事業を目指すGoogle)がそこでどのような展開を見せるか、未来のドアは大きく開かれている。

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(翻訳:金井哲夫)

アマゾン時代を生き抜くために小売業はどうすべきか?

Amazon(アマゾン)の2019年のプライムデーは、労働者の抗議行動から独占禁止法に関する調査まで、複雑な問題に見舞われたが、販売点数はブラックフライデーとサイバーマンデーの合計を上回る1億7500万点となり、これまでの記録を更新した。わずか20年で、Amazonは物流業界に革命をもたらした。注文の直接配送を実現し、その受注配送システムを、Amazonマーケットプレイスで販売するサードパーティにも提供した。

今年中には、米国の全世帯の半数以上がプライム会員になる見込みだ。Amazonが配送にかかるコストと時間を低減し続けるにつれ、消費者の期待は逆にどんどん高くなっていく。しかしこうした状況は、他の小売業者にとって何を意味するのか?

ポストAmazonの時代に生き残るためには、企業が物理的な商品を保管し、最終目的地に配送するための方法を、今後10年で根本的に変えなければならない。以下に示すのは、物流の世界が直面する非常に重要な課題と、次に起こるかもしれないことの3つの予想だ。

大きな課題

アマゾンを打ち負かすことは難しい。巨大で、幅広く、そして奥も深い倉庫システム、配送システムのインフラを備え、そこには最先端の自動化が施されているからだ。その一方で、一般的な物流サプライチェーンは、製造工場からの物理的な商品の輸送から、消費者に届けるための最後の1マイルの配達まで、ますます複雑になってきている。そのうえ、従来のやり方は、透明性が低く、情報の流れが非効率的で、自動化も限られているため、行動に移すことのできるような指針を得るのも難しい。

外部の企業に物流業務を委託するサプライチェーンが多くなる中、荷送人の期待と、物流プロバイダーの能力との間のギャップは拡がり続けている。輸送容量と輸送能力は拡大しつつあるものの、荷送人から見える範囲は縮小し、プロセスの管理もしにくくなっているからだ。

現在、業界全体でブルーカラー労働者が不足している、といった他の要素を考えると、結果として、配達と倉庫作業における革新が、差し迫ったニーズとなってきている。

2019年7月9日、イタリアのトリノにあるAmazon物流センター内に積み上げあれたAmazonの段ボール箱(写真:Stefano Guidi/Getty Images)

物流業界で次に起こること

荷送人は、物流における価値連鎖を改革し、保管から配達まで、さまざまな機能をアップグレードする必要性がますます高まるだろう。さらに、新しいパートナーを開拓して、革新的な技術と専門知識を導入する必要もある。

業界全体に対して、無駄のない効果的なソリューションを提供する上で優位な立場に立つ技術系のスタートアップは、物流チェーン全域の可視性、配達の早さ、保管と配送における費用対効果、といった特に重要なポイントを改善することに注力している。

  • 24時間年中無休のトラッキング機能が必須に

ここ数年で、「ITの大衆化」の波が物流業界にまで押し寄せた。それにより、ビジネスのプロフェッショナルでさえ、エンタープライズ向けソフトウェアに対して、日常的に使われている消費者向けアプリのような、シンプルで速く、使いやすいルックアンドフィールを求めるようになった。

ほとんどの企業の伝統的なインフラの課題は、既存の在庫について簡単に追跡したり、可視化したりできるようにするということにある。ベンチャーによるハイテクを取り入れ、技術と実行力を持ち合わせたソリューションの新しい波が出現して、こうした問題の解消に取り組んでいる。

例として、Shipwell(運送)、Stord(倉庫)、およびShipbob(配送)を挙げておこう。こうしたソリューションは、発送業務のチームに不可欠なスピードと信頼性を備え、しかも適正な価格によって、エンドツーエンドでデジタル化されたサービスを提供している。

米国では、次世代の在庫、倉庫管理に関して、まだ明確な勝者は決まっていない。しかし、これまでのところ、ワークフローやダッシュボードツールといったソリューションを含めてサービスを提供できる、キャパシティプロバイダーがこの方向に進んでいると見られている。

  • 即日発送が標準に

Amazonが最近発表した即日発送は、業界全体が進もうとしている方向の先駆けとなるものだ。Invespによると、調査の対象となった小売業者の65%以上が、今後2年以内に即日配達の実現を予定しているという。

そうした業者の多くは、エンドツーエンドの配送ソリューションを、電子商取引に関するサービスの事業者を利用して解決しようとしている。そこには、倉庫、梱包、配送、運輸、逆物流管理サービスなどの業者が含まれる。DeliverrShipmonkDarkstoreといったスタートアップは、コストと速度の点で競争力のある、より優れたソリューションを提供している。通常、ストレージの供給を直接コントロールし、配達は、アウトソーシング、またはクラウドソーシングによってまかなう。

垂直市場に目をつけた会社もある。たとえば、Cathay Innovationというポートフォリオ企業の配達アプリGlovoだ。最近、独自のダークストアをオープンした。ガレージ程度の大きさで在庫数も限定された倉庫を都市部に設け、15分以内の配達を保証することを目指している。GlovoのCEO、Oscar Pierre氏は以下のように述べている。「私たちは、ダークストアをもっとも重視しています。来年中にバルセロナ、リスボン、ミラノ、トビリシにも、ストアをオープンさせる予定です。20分以内に配達できれば、顧客の意思決定に大きな影響を与えることができます。納期が短かければ価格はそれほど気にしない、という場合には、近所のコンビニに出向くか、私たちのアプリで注文するかのどちらかになるでしょう」。

期待される配達時間は、ほとんど「ムーアの法則」のように短くなり続けている。物理的な小売店が、オンラインストアとしての条件を満たすようになるために必要なさまざまな変化を考えると、この領域には非常に大きな機会が残されている。

  • 保管と配送の費用対効果は急速に向上する

SpotifyやNetflixが、消費者に課す金額を10ドル(約1060円)前後の範囲に落とし込んだのと同じように、小売業者や配達業者も、送料について同様のことをしようとしている。それは荷送人が、消費者に負担してもらえる送料の額を制限することになる。そのため、販売者はコストを削減できる場所を他に見つけなければならなくなる。

伝統的な企業には、解決するための準備が十分にできていない問題を解決すべく、いくつかのスタートアップが登場してきている。それによって、小売業者がAmazonと対抗し、市場のニーズにより速く応え、しかもコストの上昇を抑えることが可能になってきている。

柔軟なオンデマンド方式の倉庫管理は、コストを節約し、AWSのようなスタイルで実効面積を拡大するための有効な手段となっている。FLEXEFlowspaceのような企業は、未使用の倉庫スペースと配送能力を、倉庫面積と配送量に対するニーズがダイナミックに変化する顧客と結びつけることで、より流動性が高く、効率的な市場を創り出している。しかも、自らの資産の稼働率も向上させているのだ。トラック輸送に関しては、ConvoyOntruckといった会社(私のベンチャーファームが投資している)が、輸送容量と空のトラックのマッチングを実施することで、トラックの利用率を向上させようとしている。

多くの荷送人(ウォルマートのような巨人も含め)が収益性の高い電子商取引事業の創出に取り組むなか、保管、流通、配送などの領域が、今後数年間、特に注目すべき重要な分野になるだろう。

まとめ

IoTセンサーや機械学習モデルから自律型ロボットまで、さまざまな技術革新が物流サプライチェーンを変革しつつある。この分野のスタートアップは、ポストAmazon時代を生き延びるためだけでなく、急成長している電子商取引の業界が、その革新の可能性を発揮することを手助けするというチャンスを手にしているのだ。

画像クレジット:Emanuele Cremaschi/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

インドネシアの電子商取引リーダーTokopediaが、AlibabaとSoftBankのVision Fundから11億ドルを調達

創立9年のC2Cマーケットプレイスの現在の評価額は70億ドル

インドネシアを拠点とする電子商取引会社Tokopediaは、SoftBankメガファンドとAlibabaが主導した11億ドルのシリーズGラウンドでの調達を行ったあと、Vision Fundに参加した最新のスタートアップ企業だ。

SoftBankとAlibabaは既存の投資家である。Alibabaは昨年11億ドルのラウンドを主導したが、一方SoftBankは最近保有していたTokopediaの株式をVision Fundへ移管した。後者の内容は、基本的に10月に合意された内容に従ったものだと、TechCrunchは理解している。

Tokopediaは評価額につはコメントしていないが、TechCrunchはある筋から、今回の取引では評価額は70億ドルとされているという情報を得ている。SoftBank Ventures Koreaとその他の投資家たち、例えばSequoia Indiaもこの投資に参加した。現時点までに投資家たちから24億ドルが調達されている。

今回の取引が行われたのは、韓国の有力電子商取引企業であるCoupangに、SoftBankが20億ドルの投資を行った数週間後である。Tokopediaと同様にCoupangも、SoftBankが保有する株式がVision Fundに移管されるまでは、SoftBankには投資家として向き合っていた。

9年前に創業したTokopediaは、中国で大成功を収めたAlibabaの電子商取引市場であるTaobaoとしばしば比較される。Tokopediaの取引業者は最近400万社に達した。TokopediaはGMV(取扱総額)が4倍になったとしているが、具体的な数字は発表していない。物流は、約1万7000の島々に広がるインドネシアの大きな問題である。しかし同社は現在国土の93%をカバーしていて、しかも顧客の四分の一は同日配送の対象になっているのだという。同社が物流調整がより困難な、マーケットプレイスを運営していることも注目に値する。

同社は、今回得た新しい資本金を利用して、より多くの中小企業や独立系小売業者がそのプラットフォームに乗ることを可能にする技術を開発する予定である。また消費者側では、中核となる電子商取引だけでなく、金融サービスやプロダクトの開発も行っていて、顧客を強くプラットフォームに引きつけようとしている。

インドネシアのスーパーアプリ

この新ラウンドにもかかわらず、CEOで共同創業者であるWilliam Tanuwijayaは、TechCrunchに対してインドネシアの外へ拡大する計画はないと語った。インドネシアは東南アジア最大の経済圏であり、2億6000万人以上の人口は世界で4番目に多い。

「現時点でインドネシアの外に拡大する計画はありません。インドネシアの市場を構成する、私たちの美しい1万7000以上の群島の隅々にまで手を伸ばせるように努力するつもりです」と、Tanuwijayaは質問に対して電子メールで回答した(Tokopediaは電話でのインタビュー要請は拒否した)。

Tokopediaの共同創業者兼CEOのWilliam Tanuwijayaは、2018年1月26日(金)、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)閉会式のパネルディスカッションで、身振り手振りを交えながら語った。世界的リーダーたち、影響力のあるエグゼクティブ、銀行家、そして政策立案者たちが、1月23日から26日までダボスで開催された、第48回世界経済フォーラムの年次総会に出席した。写真:Jason Alden/Bloomberg

そのインドネシア国内だけに注力するアプローチは、現在東南アジア全域に急速に拡大している、インドネシア拠点の配車企業Go-Jekのアプローチとは対照的だ。Go-Jekは既にベトナム、シンガポール、タイに進出し、2019年にもさらに計画を進めていることは間違いない。

だがGo-JekとTokopediaは、いずれも中心となっていたビジネスから拡大しているという点は類似している。

Go-Jekは、オンデマンドサービス、支払いサービスなどに取り組んでいる。最近、Tokopediaはモバイルチャージやファイナンシャルサービスを含む支払いサービスへ参入した。そしてTanuwijayaは「スーパーアプリ」になる戦略を続けていくつもりであることをほのめかした。

「私たちはサービスを深化させて、朝の目覚めの瞬間から夜眠りにつくまで、そして生まれた瞬間から年老いるまで、インドネシアの人びとによりよいサービスを提供します。私たちは、沢山の企業にオンラインとオフラインのパワーを提供するために、物流、フルフィルメント、支払い、そして金融サービスの分野のIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)に投資をし技術開発を行います」とTanuwijayaは付け加えた。

Vision Fund論争

しかし、Vision Fundには論争が巻き起こっている。

最近出されたCIAの報告書は、サウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子がジャーナリストであるジャマル・カショギの殺害を命じたと結論付けた。皇太子はサウジアラビアの政府系ファンドであるPIF(Public Investment Fund)を管理している。これは450億ドルという資金をVision Fundを通して投資している巨大な投資機構である。

SoftBank会長の孫正義は、この殺人を「非人道的行為」として非難したが、アナリスト向けのプレゼンテーションでは、SoftBankは資本を運用しVisionFundを続けていく「責任」を、サウジアラビアに対して負っていると付け加えた。

Tanuwijayaは私たちに対する電子メールで、最悪のケースでTokopediaが何をできる(する)のかははっきりしないものの、「私たちはこの出来事に深く関心を持ち、SoftBankと共に、全ての真相が明らかになるまで状況を注意深く見守りたい」と語った。

サウジアラビアとの関係がVision Fundの創業者たちのための資金を穢(けが)しているのではないかという沢山の議論がありながらもトランプ政権が現状の体制維持に焦点を当ててサウジアラビアを主要な同盟国として扱おうとしているように見えることを考えれば、事態は流動的なままである。

孫自身は、現在Vision Fundからの投資を拒んだスタートアップの事例は聞いていないが、将来的には「影響があるかもしれない」ことを認めた。

この投資に対する反発を予想しているか否かという私たちの質問に、Tanuwijayaは直接触れることはなかった。Vision Fundが最近行ったCoupangへの投資は、ネガティブな反応を巻き起こしているようには見えない。

また間違いなく東南アジアで最も有名な電子商取引サービスであるLazadaを、Alibabaが所有していることも、別の疑問を投げかける。

Tokopediaとは異なり、Lazadaは東南アジアで6つの市場をカバーしている。小売ブランドに重点を置いており、AlibabaのTaobaoサービスと密接な関係を保っているために、業者たちにその地区へ向けたチャネルを提供している。今年初めにTechCrunchにタレコミをした筋によれば、Tokopediaの経営陣はもともとはAlibabaのライバルのTencentからの資金調達に熱心だったが、SoftBankからの介入により、Alibabaを相手にすることが強制された。

Tanuwijayaは、そつなくその競合関係と亀裂を軽いものと述べ、ビジネスに影響はないと主張した。

「Tokopediaは、多様な資本で構成される独立企業です」と彼は電子メールで答えた。「会社の過半数を保有する単独の株主はいません。私たちは、株主のポートフォリオ企業と緊密に協力して、シナジー効果を活用しています」。

「たとえば、TokopediaはGrab(SoftBankのポートフォリオ)とGo-Jek(Sequoiaのポートフォリオ)の両社と緊密に協力しています。Lazadaは私たちとは異なるビジネスモデルを持っていると考えています。Lazadaは小売とマーケットプレイスモデルのハイブリッドですが、Tokopediaは純粋なマーケットプレイスなのです。Lazadaは地域プレーヤーですが、私たちはインドネシアの全国プレイヤーです」と彼は付け加えた。

Tokopediaは、中国で大成功しているAlibabaのTaobaoマーケットプレイスと、多くの類似点を持っている。

「これ以上わくわくできることはありませんよ?」

約10年前、Tokopediaはインドネシアに登場した最初のスタートアップの1つだった。Tanuwijayaと仲間の創業者Leontinus Alpha Edisonが、VCを口説き落として資金を調達するまでに、何十回ものプレゼンテーションを繰り返しては拒絶されたことは良く知られている。

Vision Fund入に際して「実績あるチャンピオン」と孫が形容した現在の状況に比べれば、とても大きな変化を経験してきたのだ。そしてそこにはファイナンシャル製品へと拡大したビジネスそのものは含まれていないのだ。しかしそれは、どんな創業者でもいつでも手に入れることができる、というものではない。多くの人たちは、その「最良の」日々は急速に成長していた初期段階や全員の気持ちがひとつになって力を注げていたときであることを認めるだろう。実際、インドネシアを拠点とするユニコーンであるTravelokaは、最近CTOを意欲の燃え尽きによって失っている

Tanuwijaya、Edison、および同僚の経営幹部たちに同じことが起き得るだろうか?

Tanuwijayaは彼のビジネスの旅を、近付いて来る山に喩えている。

「Leonと私は10年目に入ることにとても興奮しています。最初にTokopediaを始めたとき、それは私たちの立っている場所から、とても遠くにある山の頂上を見るようなものでした。私たちはいつかその山の頂上に登るのだということと、自分たち自身に誓ったのです」と彼はTechCrunchに語った。

「その山の頂上が私たちの会社のミッションなのです。つまり技術を通して商売が誰の手にも届くようにするということです。いま私たちは山の麓(ふもと)に到着したところです。ついに山に触れることができて、登り始めることができるのです。今回の追加投資で、私たちはミッションをより速く勧めるための手段と資源を手にすることになります。燃え尽きて家に帰るのか、あるいは山に登るべきかどうかを考えるべきかって?「これ以上わくわくできることはありませんよ?」と彼は付け加えた。

確かにTokopediaは、それ自身が1つの山になっている。このスタートアップは、GrabとGo-Jek(それぞれの評価額は110億ドルならびに(伝えられるところでは)90億ドル)に続いて、3番目に高く評価されている未公開テクノロジー企業だ。そしてその夢のある話は、インドネシア周辺の未来の創業者たちを触発し、スタートアップの道を辿らせることだろう。なおVision FundとPIFのコネクションにこの先何が起きるのかは、それほどはっきりとはしていない。

画像クレジット: Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:sako)

ブラックフライデーのオンラインセールスが30億ドルを突破、そのうちの10億ドルはモバイルから

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ブラックフライデー(11月の第4金曜日、小売店で大規模なセールが行われる)のオンラインショッピングは成長を続けていて、今週の金曜日には更に記録が破られた。ホリディセールスを通してe-コマース取引を追跡してきたAdobeから、今夜届いた新しいレポートによれば、ブラックフライデーは初めて30億ドルを突破する新記録を達成した模様だ。また米国の小売史上、モバイルセールスが初めて10億ドルを超えた事も期待されている。

当日の終わりまでに期待されると推定された金額は30億5千万ドルであり、昨年同日に比べて11.4パーセントの増加であるとAdobeは発表している。

【2016/11/26更新:Adobeの最終的な数字は推定を上回り33億4000万ドルとなった – 前年比21.6パーセントの成長である。モバイルは12億ドルで、昨年から33パーセント増】

感謝祭の日とブラックフライデーの日に、モバイルがeコマースセールの売上に大きな影響を与えていることは、早い段階から明らかだった。Amazon、Walmart、Target、そしてeBayのような主要な小売業者は、モバイルトラフィックと売上が増加傾向にあったことを指摘した。例えば、Amazonは感謝祭の日のモバイル注文は、昨年のサイバーマンデー(11月の第4木曜日である感謝祭の次の月曜日、大規模なオンラインセールが始まることが多い)を上回ったと報告している一方、Walmartは感謝祭のウェブトラフィックの70パーセント以上がモバイルであったと発表している。またTargetは感謝祭の日の売上の60パーセントがモバイルデバイスからであったと述べている。

この傾向はブラックフライデー当日(今年は感謝祭の翌日)になっても続き、セールスイベントは現在は11億3000万ドルの収益となっていて、これは昨年比25パーセントの増加である。例えばWalmartはWalmart.comにおけるブラックフライデー当日の注文の60パーセントはモバイルから来ていると述べている。

モバイルは金曜に小売サイトを訪れたものの多数派を占めていて、その数は56パーセントだったと、Adobeは指摘している。その内訳の大部分(47%)はスマートフォンからであり、タブレット(9%)からのアクセスとは対照的だった。

さらに、モバイルの売上も40パーセントを占め、スマートフォンが29パーセント、タブレットが11パーセントという内訳になっている。東部標準時間で午後3時までには、オンラインセールスに占めるモバイルアカウントの売上は6億8000万ドルに達している。

興味深いことは、しかし、スマートフォンはタブレットやデスクトップほどのコンバージョン(実際の売上)を達成していないことだ。コンバージョンは全体的には上昇したが、スマートフォンは1.9パーセントであり、これに比べてタブレットは3.7パーセント、そしてデスクトップは4パーセントであった。比較のために挙げておくと、ホリディシーズンの平均値はスマートフォン、タブレット、デスクトップがそれぞれ1.3パーセント、2.9パーセント、および3.2パーセントである。

また、iOSがAndroidよりも大きく販売を促進している傾向は続いた。iOSデバイス上の平均注文額は144ドルで、対してAndroid上では136ドルであった。

もちろんAdobeの予想である合計30億ドルのオンラインセールスと10億ドル超えのモバイルセールという予想は、今夜最終的に〆てみるまでは正しいものかどうかはわからない【その後正しかったことが判明した、上の更新を参照】。しかし、Adobeのサンプルは、その数字がかなり近いものであると判断するのに十分な大きさである。そのレポートは、小売ウェブサイトへの220億回の訪問からの集計データに基づいていて、米国のトップ100小売業者のすべてのオンライン取引の80パーセントを含んでいる。

Adobeはまた、今年最も売れた電気製品は、AppleのiPad、サムスンの4Kテレビ、AppleのMacbook Air、LGのテレビ、そしてMicrosoftのXboxだったと述べている。

昨日の感謝祭の19億3000万ドルのオンラインセールスに加えて、2日間の合計は50億ドルに迫るものと期待されている。売れ筋のおもちゃには、レゴクリエイターセット、Razorの電動スクーター、ナーフ銃、DJIファントムドローン、そしてバービードリームハウスなどが含まれる。

こうした記録にも関わらず、e-コマース業界自体は、選挙後の低迷からいまだに回復している途上である。

「選挙後に私たちが経験したネガティブインパクトからはまだ完全に回復はしていませんが、消費者たちはオンラインに戻って買い物をしています」そのような声明を出したのはAdobe Digital Insightsの主席アナリスト兼ディレクターのTamara Gaffneyだ。「ブラックフライデーにおける消費の増加に伴って、元のレベルへ戻りつつあります。さらに私たちは、次のサイバーマンデー(11月28日)が今回のブラックフライデーを上回って、史上最高のオンラインセールである33億6000万ドルを達成することを期待しています」。

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(翻訳:Sako)

Shopifyがカナダのデザイン/開発会社Boltmadeを買収、Shopify Plusを強化

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Shopifyはカナダのウォータールーに拠点を置くBoltmadeを買収したことを発表した。これによってデジタルコンサルティングとプロダクト開発チームを社内に抱えることになる。買収によってBoltmadeの21名のチームが加わるが、その大部分はエンジニアとデザイナーで構成されていて、ウォータールーではShopify Plusに焦点をしぼったオペレーションが加えられる。

Shopify PlusはShopifyが提供する「高級」サービスである。専任のアカウント担当者、カスタマイズ可能な販売プロセス、そしてShopifyによって提供される他のアドオンサービスに対する割引などの追加サービスが含まれている。このサービスは同社のプラットフォームを利用する、より大きくて取扱量の非常に多い販売企業を狙ったものだ。現在のPlusの顧客には、主要なところとしてReddit、Wikipedia、Tesla、そしてWWFが含まれている。

Boltmadeは顧客企業のためにデザインとソフトウェア開発を行っているが、その顧客にはXerox Parc、Shopify自身、Kirk、その他が含まれている。買収は、ウォータールーにおけるShopifyの既存のPlusの存在感を高めるだろう。最近の記事では「主に営業チーム」と書かれたが、この先Plusの顧客の要求に対応するために、相当数の技術的タレントが加わるに違いない。

この買収は2013年にShopifyが行ったトロントに拠点を置くユーザーエクスペリエンスとデザインエージェンシーJetCooperの買収にとても似た側面がある。このときの買収でも、現在はSpotifyのトロントの最高のタレントになっている者たちを集めることになったのだ。Shopifyは、契約条件を明らかにしていない。

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(翻訳:Sako)