“下膳ロボ”で飲食店の片付けを自動化、Google出身エンジニア創業のスマイルロボティクスが資金調達

人手不足の深刻な飲食店の課題をロボットやテクノロジーで解決する——最近はこの領域に取り組むテックカンパニーが増えてきた。

たとえば過去に何度か取り上げたコネクテッドロボティクスは“たこ焼きロボ”を含む調理ロボットを開発するスタートアップ。ほかにも調理や食器洗い、接客(無人カフェなど)といったように、それぞれの工程において作業を支援したり自動化するプロダクトが国内でも登場している。

今回紹介するスマイルロボティクスもその1社だ。同社が現在開発しているのは食後の食器を自動で回収してきてくれる“下膳ロボット”。アームを搭載して片付けを完全自動化しようというプロダクトはまだ世の中に存在しておらず、その実用化を目指している。

そんなスマイルロボティクスは1月30日、ANRIとディープコアより総額4500万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今後ロボットの研究開発を加速させるために人材採用を強化するほか、複数の飲食店にてロボット導入の実証実験を進めていく計画だ。

テーブルまで移動してきてロボットがアームで食器を回収

スマイルロボティクスが手がけるプロダクトについては、実物を見てもらうのが手っ取り早いだろう。以下はプロトタイプのデモ動画だ。

あくまで開発段階のものではあるけれど、実現しようとしているのは動画のように「テーブルまで移動してきて食器をアームで回収し、バックヤードまで運んでくれるロボット」。スマイルロボティクス代表取締役の小倉崇氏の話では回収した食器をシンクにつける、もしくは食洗機にセットするところまでも視野には入れているという。

アームの付いていないロボットであればすでに存在するが、アーム付きとなると技術的な難易度も上がる。特にネックになるのが「認識技術と安全性の部分」(小倉氏)だ。

人が食事を終えた後の食卓は食器の位置や状態もバラバラ。その状況を正しく認識して適切に回収作業を行うのは、単純な作業を自動化することに比べて難しい。またお客さんの近くをロボットが移動していくわけなので、安全性も担保しなければならない。

スマイルロボティクスではディープラーニングをベースにしたAI認識技術や3Dセンサーといったテクノロジーをフル活用しつつ、多様な環境で動かすことができ、なおかつ安全にスピーディーに片付けを行うロボットの開発を目指している。

JSK出身、元SCHAFTのエンジニア達が挑む下膳の自動化

小倉氏はロボットの研究開発で有名な東京大学の情報システム工学研究室(JSK)出身だ。その後トヨタを経て、2014年に二足歩行ロボットを手がけるSCHAFTに加わった。同社は前年にGoogleに買収されていたので、Alphabet傘下のX(旧Google X)内でロボット開発を続けていた。

そのSCHAFTプロジェクトが2018年に解散したこともあり、自身で事業を立ち上げるべく2019年にGoogleを退職。同年6月にスマイルロボティクスを設立している。

ちなみに創業後すぐにジョインした椛澤光隆氏と小林一也氏もJSK出身で元SCHAFTのメンバー。スマイルロボティクスはバリバリのロボットエンジニア集団というわけだ。

スマイルロボティクスのメンバー(前列)と投資家であるANRIとディープコアのメンバー(後列)。前列左から小林一也氏、小倉崇氏、椛澤光隆氏。最前列は開発中のプロトタイプ

下膳をロボットで完全自動化すると聞くとロマンを感じるけれど、最初は小倉氏の「自宅の食卓の片付けが大変なので、自動化させたい」という個人的なペインがきっかけ。前職時代から自宅に作業ロボットを置いて片付けを効率化する実験もやっていたという。

「いざ起業すると決めた時にあれを本格的にやりたいなと思ったが、(価格などの面で)家庭向けに販売するのは難しい。それならB2Bはどうかと思い調査やヒアリングをしたところ、興味を示してくれる企業が複数いたので可能性を感じた」(小倉氏)

起業当初はカフェの業務自動化やラーメンを自動で作る機械など、周囲のニーズを参考にいろいろなロボットを作ってみることから始めたそう。ただそれらは比較的簡単に作れてしまうものも多く、自分たちではやらないことを決めた。

「ビジネスが得意な人たちが容易に参入できる領域では不利なので、技術的に難易度が高くないことは自分たちのチームでやるべきではないなと。その点、アーム付きの移動するロボットを作り一般の人もいる場所へ導入していくというのは、ものすごくチャレンジング。自分が知る限りはまだ誰も実現していないからこそ、自分たちの強みを活かせる」

「また個人的にはロボットを工場から身近なものへどんどん近づけたいという思いをずっと持っていた。飲食では普通の人が入ってこない調理場は工場に近く、その調理場とお客さんをつなぐ下膳はちょうど中間的な位置付けで自分のやりたいことにも合致する。従来は調理場にこもりがちだったロボットを、もう一歩、人がいるところへ進出させていきたい」(小倉氏)

複数の飲食チェーンから引き合い、今後は実証実験へ

飲食店の業務を「キッチン」と「ホール」に分けた場合、キッチンの中でも調理や盛り付けの工程にはすでにいくつものプレイヤーが参入している。加えて小倉氏によると「ロボット技術というよりは調理器具に近く、自分たちの専門からは少し外れるイメージ」だという。

一方でホールに関しては、飲食店に話を聞くと「接客にはこだわりがありできれば人の手でやりたい」という声も多かった。そんな中で自動化に対する反応が1番良かったのが下膳だ。

「どの飲食店も人手不足に困っている反面、自動化したり、セルフにしたりすることに抵抗がある業務も多い。ただ下膳に関しては基本的に人がやっても大きな付加価値を出しづらい領域。そこに人手をかけるよりは、自動化することで他の仕事にもっと人の力を使いたいというニーズがあることがわかってきた」(小倉氏)

特に1店舗当たり10人ほどが働いている中規模〜大規模な飲食店は相性がいいと考えているそう。人手不足な上に今後新規の採用が難しくなる中で、下膳を自動化することによって業務負担を減らしたいというニーズは大きい。国内に約60万店ある飲食店のうちだいたい20%は10人以上が働いてる店舗であり、まずはここがメインのターゲットになりそうだ。

現在すでに数十〜数百店舗を持つ大手ファミレスチェーンやファストフード店、寿司チェーン、ラーメンチェーン、大手介護施設などと話を進めている状況で、今後実証実験に取り組む予定。1番早いところでは5月ごろのスタートを目処に検討しているという。

面白いのは飲食チェーンが多い中で介護施設も含まれていること。介護施設でも入居者の状態に合わせた食事を提供しているが、できれば下膳よりも食事のサポートやコミュニケーションにスタッフの時間を使いたいという思いがある。下膳の自動化ニーズは必ずしも飲食店に限ったものではないのかもしれない。

とはいえ、現時点ではまだまだプロトタイプを開発しているフェーズ。まずは今回調達した資金を人材採用の強化とロボットの開発に投資し、プロダクトをアップグレードした上で実証実験に取り組んでいく。

小倉氏は笑いながら「もしかしたらいつの間にかアームがなくなっているかもしれない」と話していたけれど、それは冗談としてもプロダクトの仕様やターゲットとする顧、具体的な価格などは現時点でカチッと固めすぎず現場のニーズを確かめながら柔軟に対応していく方針だ。

「ロボットはどこまでいってもハードウェアから離れらないので、本当に高品質なものを作るためにはハードウェアを自分たちで押さえる必要があると思っている。時間はかかるかもしれないが、将来的にはAppleみたいにハードウェアとソフトウェアがものすごい強い結合をすることで、めちゃくちゃ品質の高いものを生み出すようなチャレンジをしていきたい」(小倉氏)

FAX受注を自動でデータ化、食材受発注サービス「クロスオーダー」に新機能

飲食店と卸売業者向けの受発注サービス「クロスオーダー」を手がけるクロスマートは1月28日、FAXによる受注内容を自動でデータ化する「FAX-OCR機能」を開発したことを明らかにした。同機能は卸売業者に対して3月1日より提供する。

外食産業における受発注業務はまだまだ属人的かつアナログな領域だ。クロスマート代表取締役の寺田佳史氏によると飲食店の発注方法の約6割は今でもFAXによるものであり、電話注文(通話と留守電)も合わせると「全体の約8割がデジタル化されていない注文だと考えている」という。

アナログな方法は発注側、受注側双方にとって負担が大きい。特に取引先が数百店舗に及ぶような卸売業者では、1日に数百枚のFAXが必要になるケースもあり、専属のスタッフを夜勤で数名雇用しているような企業もある。

主な業務はFAXに書かれた内容を自社のシステムにミスなく転記することであるため、この工程にデジタルを活用できればコスト削減はもちろん、より生産的な仕事をスタッフに任せることもできる。

2019年11月にスタートしたクロスオーダーは、まさにこれらの受発注業務をスマホやLINEを用いて大幅に効率化することが目的だ。寺田氏の話ではリリース約3ヶ月で卸売業者数十社、飲食店数百社に導入が進み、導入企業からの反応も良いそう。その一方でスマホ操作に慣れていないスタッフの多い店舗やスタッフの入れ替わりが激しい店舗など「やり慣れた方法から変えることに抵抗がある方も、一定数いることがわかった」という。

そういった店舗に無理に発注方法を変えてもらうことは、かえって業務効率を悪くしてしまうことにもなりかねない。そこで飲食店のやりかた自体は変えることなく、卸売業者側の受注作業を効率化する仕組みとして開発したのが今回のFAX-OCR機能だ。

この機能によって飲食店からFAXで送られてきた内容を自動でデータ化。従来は人力で行なっていた集計作業や基幹システムへの手入力にかかる手間を削減する。受注ミスが発生すれば追加のコストがかかってしまうため、読み取りに誤りの可能性がある箇所については人の目で確認できるような設計にした。

機能開発にあたっては受発注プロセスを理解するために受注作業を見学・体験し、多くの飲食店や卸売業者ユーザーと一緒に進めてきたそう。OCR技術は今後の改善スピードや機能拡張も見据えて完全に内製で開発。企画からローンチまで約半年を要したものの、精度もかなり向上しててきたためこのタイミングでの発表に至ったという。

同機能はクロスオーダー導入企業に追加費用なしで提供する方針。従来通り飲食店は無料で使うことができ、卸売業者は取引先店舗数に応じて月額の利用料を支払う(従量課金制)仕組みだ。

食材の発注をLINEで簡単に、飲食店と卸売業者間の受発注を効率化する 「クロスオーダー」公開

飲食店と卸売業者をつなぐプラットフォーム「クロスマート」を展開するクロスマートは11月19日、食材の受発注をスムーズにする新サービス「クロスオーダー」を公開した。まずはFAXによる注文比率が高く、年間の流通総額が3兆円を超える“青果物”に特化する形で始める。

同社では今年4月に最初のプロダクトであるクロスマートをローンチ。飲食店が1ヶ月分の納品伝票を登録するだけで、複数の卸売業者から一括で見積もりの提案を受けられる基盤を提供してきた。

クロスマートを活用すれば飲食店は仕入れコストを削減できる一方で、卸売業者としても新たな取引先を開拓することが可能。9月の資金調達時には約250店舗の飲食店と約50社の卸売業者が導入済みと紹介したが、その数はそれぞれ約300店舗・約100社まで拡大しているという。

今回スタートしたクロスオーダーは、そんなクロスマートの既存ユーザーの声から生まれたプロダクトだ。クロスマートが飲食店と卸売業者に新たな出会いを提供するのに対し、クロスオーダーでは既存の取引先間における受発注を効率化する。

構造はシンプルで、これまで主にFAXを通じて行っていた青果物の受発注をオンライン上で完結させるというもの。飲食店側はLINEを使ってスマホから発注先の選定や食材の注文を簡単に済ませられ、発注業務をスピーディーに実施することができる。卸売業者側も複数店舗からの受注データを一括でダウンロードできるため、FAXや電話で1件ずつ対応するのに比べて大幅な業務効率化を見込める。

「食品卸売業界の受注方法は約6割がFAXと言われており、現場では取引先(飲食店)から届くFAXの処理を早朝から行なっています。卸1社の取引先が200店舗の場合、単純計算で120枚/日、2400枚/月のFAX処理が必要で、そのためのスタッフを夜勤で2−3名雇用している会社も多いです」

「業務としては、FAXに書かれた注文内容を自社のシステムにミスなく転記するという作業です。クロスオーダーの導入により、人件費・用紙代・トナー代・FAX機のメンテナンス代などのコスト削減に加えて、より生産的な仕事にスタッフを稼働させることができます」(クロスマート代表取締役の寺田佳史氏)

寺田氏によると食材の中でも青果物は特にFAXによる注文比率が高く、注文頻度も多いそう。大手に限らず様々な規模の卸売業者が参入していることもあり、受発注プロセスに課題を感じている業者も少なくないという。

そもそも国産青果物は約8割が卸売市場経由で流通している状況で、今もなお卸売市場が重要なインフラとなっている。年間流通総額は野菜が約2兆5000億円、果物が約7000億円でトータルでは3兆円ほど。明確な課題があり市場も大きいため、まずは青果物に特化した受発注システムとしてローンチした。

クロスオーダーはクロスマートと同様に飲食店には無料で提供し、卸売業者から月額の利用料を受け取る仕組み(取引先店舗数による従量課金)。上述した通り従来FAXを転記する際に発生していた人件費やヒューマンエラーなどによるコストを削減できるのがメリットだ。

卸売業者は受注データを一括でダウンロード可能。使っている基幹システムに合わせてCSVフォーマットを変更できる

卸売業者は品目ごとに自動集計された飲食店からの発注データを用いて効率良く市場で商品を買い付けられるだけでなく、売りたい商品をスマホで撮影して訴求することも可能。飲食店へのサービス説明や導入支援はクロスマートが行う。

BtoBの受発注システムとしてはインフォマートが手がけるサービスなどもあるが、クロスオーダーでは主に個店〜小規模チェーンをターゲットにサービスを広げていく計画。ゆくゆくは青果物以外の食材も扱う方針で「『新しい価値を生み出す、食のマーケットプレイスをつくる』というビジョンにあるとおり、少しでも食の未来に役立つようなサービスを作っていきたい」(寺田氏)という。

飲食店の仕入れコストを減らすクロスマートが1.2億円調達、リリース半年弱で250店舗が導入

飲食店の仕入れコストを減らすプラットフォーム「クロスマート」を運営するクロスマートは9月24日、ベンチャーユナイテッド、セゾン・ベンチャーズ、XTech Ventures、梅田裕真氏などを引受先とする第三者割当増資により総額1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社はTechCrunchでも何度か紹介しているXTechの子会社として設立されたスタートアップ。2019年4月より展開するクロスマートでは、飲食店と卸売業者をつなぐことで飲食店に「仕入れコストを削減する手段」を、卸売業者には「新たな顧客開拓チャネル」を提供してきた。

飲食店の食材原価率は一般的に30%ほどとも言われるように、店舗にとって仕入れコストの削減は利益を増やす上で大きな影響を与える。ただクロスマートがメインターゲットとしている小規模の飲食店や個店の多くは自ら把握している仕入れ先の選択肢が限られているため、簡単にこのコストを減らせるわけではない。

そこで従来は飲食店コンサル経由で複数業者に見積もりをとったり、「飲食店.COM」のようなマッチングサイトを使ったりしていたわけだけど、クロスマートはそれをよりシンプルに、かつ効果的にできるような仕組みを整えた。

同サービスのウリは飲食店が1ヶ月分の納品伝票を登録するだけで、複数の卸売業者から一括で見積もりの提案を受けられることだ。スマホから請求書を撮影しさえすればいいので作業時間はだいたい10〜15分ほど(登録作業自体をクロスマートに依頼することもできる)。日々の業務内で無理なく使えるだけでなく、コンサルに依頼する場合などと違って飲食店側の利用料金が無料のためハードルも低い。

「(飲食店としては)どうしても集客の方を優先しがちだが、実は売上を伸ばすよりも仕入れコストを削減できた方が経営的なインパクトが大きいことも多い。クロスマートは納品データを軸に、今よりもコストが下がるというピンポイントの提案だけが届く。無駄な提案は一切こないことが他にはない特徴だ」(クロスマート代表取締役の寺田佳史氏)

「飲食店の人たちは仕入れ以外の仕事もあるので、仕入れ先の選別だけに膨大な時間をかけるというのは難しい。従来の仕組みでは自分で積極的に情報を集めて、複数の業者に問い合わせた上で話を聞く必要があった。クロスマートでは納品書をあげさえすれば、後は相手から情報が届く。ある意味“受け身”の姿勢で効果的にあいみつを取れる」(クロスマート執行役員の岡林輝明氏)

各提案ごとにどのくらいのコスト削減効果が見込めるかがすぐにわかる

サービススタートから約5ヶ月が経った現在は約250店舗の飲食店と約50社の卸売業者が利用。平均で5%のコスト削減を実現している。

「この半年ほど、まずは飲食店の成功体験を作ることを目標にやってきた中で、大きなものでは年間60万円のコスト削減につながるような例もでてきた。単にコストを下げたというだけでなく、その先で顧客向けのキャンペーンにお金を使えるようになったり、アルバイトスタッフの給料をあげることができたりなど、成功事例と言えるものが増えている」(寺田氏)

クロスマートのビジネスモデルは飲食店側からはお金を受け取らず、卸売業者から月額の利用料を得る構造。ミニマムでも月額5万円からのため、当然ながら卸売業者がそれだけの料金を払ってでも使いたいと思うサービスになっている必要がある。

卸売業者側の画面イメージ

その点についてはこれまでになかった「新規顧客の開拓チャネル」として卸売業者から評価されているそうで、毎月10〜20件のペースで利用企業が増えているという。

「新規開拓のために飛び込み営業をしている業界。優秀な営業マンであっても獲得できるのは月に3〜4件とも言われているので、月額数万円を払っても新たな顧客が獲得できれば十分ペイする。Web上で双方をマッチングする既存サービスは『食材を買いたい』という飲食店の書き込みに対してレスをする形が多く、その飲食店が何を買っているのかがわからない状態で提案をする。クロスマートの場合は、どの飲食店が何をいくらで買っているか把握した状態で商談を開始できるので、卸売業者にとっても効率がいい」(寺田氏)

今のところ卸売業者側のユーザーは大きく2パターン存在するとのこと。1つはすでに営業マンが何人もいる業者が営業活動をより生産的に行うべく導入するケース。そしてもう1つが人員が足りず営業活動を積極的にできていない業者が、事業を伸ばすために導入するケース。

どちらにせよ無闇に営業マンを増やすよりも効果が見込めるということで、引き合いが増えているそうだ。

今回の資金調達は飲食店側を中心に、双方の利用企業が増えて成功事例が生まれているタイミングで「営業を含めて一層アクセルを踏むため」のもの。人材採用を強化しさらなる事業拡大を目指すという。

「目標として掲げているのは外食産業の生産性自体をあげていくこと。飲食店と卸売業者をマッチングすることで仕入れのコストを削減するのはその1歩目で、ゆくゆくは日々の受発注や代金の支払いなど飲食店のバックオフィスの生産性向上を一気通貫でサポートできるサービスを目指したい」(寺田氏)

クロスマートのメンバー。最前列左から執行役員の岡林輝明氏、代表取締役の寺田佳史氏、取締役の西條晋一氏

ネット予約を軸に飲食店業務の自動化・最適化を進めるTableCheckが6億円を調達

TableCheckのボードメンバーおよび投資家陣。中央が代表取締役CEOの谷口優氏

飲食店向けにクラウド型レストランマネジメントシステム「TableSolution(テーブルソリューション)」などを提供するTableCheckは7月2日、DNX VenturesとSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資により総額約6億円を調達したことを明らかにした。

同社では2017年12月にもSMBCベンチャーキャピタルから1.5億円を調達しているほか、これまでにジャフコ、出井伸之氏、山田進太郎氏などから4.65億円の資金調達を実施しており、累計調達総額は 10.65億円になる。

今回調達した資金を活用して海外拠点の新設と人材採用を加速させる計画。今年より本格稼働するオーストラリアとタイの2拠点に加え、2020年2月までに香港とドバイにも拠点を構える方針だ。また今後も継続的にテクノロジーの活用による飲食店業務の最適化・自動化に向けたプロダクトのアップデートを進めていくという。

なお同社では資金調達と合わせて福島純夫氏、倉林陽氏の2名が社外取締役に就任したことも明かしている。

導入店舗は19ヶ国約4000店舗まで拡大

TableSolutionはネット予約管理・顧客管理を軸とした飲食店向けのSaaS型プロダクトだ。予約の取りこぼしを防ぐ電話自動応答機能や着信と同時に顧客情報を表示するCTI連携機能、無断キャンセルを防ぐクレジットカード決済機能など、レストランの業務を効率化しつつ売上拡大も支援する仕掛けをいくつも用意している。

以前から積極的にグローバル展開を進めていて、現在は19ヶ国約4000店舗に導入済み。同サービスと連動したコンシューマー向けの飲食店検索・予約サイト「TableCheck」の月間予約人数も約100万人まで到達している。

SaaSの重要指標とされているチャーンレート(解約率)は1%以下を維持していて、海外の導入店舗数は前年比で2倍、国内も1.7倍になるなど比較的順調に成長しているようだ。

TableCheck代表取締役の谷口優氏によると、前回調達時からの約1年半は海外展開を積極的に進めてきたそう。「以前からグローバルに力を入れていくと言っていて、実際にシンガポールやオーストラリアなどに店舗を構えるグローバルチェーンからの引き合いが増えている。グローバルチェーンだからこそ徹底的にローカライズしなくても評価されるという仮説が実証されてきたので、今後はより広範囲で展開していきたい」という。

昨年韓国とシンガポールに拠点を開設し、今年の2月にインドネシアにも進出。7月より本格稼働するオーストラリアとタイを含めると海外拠点は5ヶ国に及ぶ。来年2月までには香港とドバイにも広げる予定で、これまで中心だったASEANから中東、ゆくゆくはアメリカなどへの展開も含めて検討していく計画だ。

とはいえ谷口氏が「申し込みの店舗数ベースでは日本とグローバルが5:1くらいの比率」と話すように、店舗数に関しては日本国内がいまだに中心。日本に関しては高級店だけでなくカジュアルな店舗への導入が進んでいることに加え、引き続き同業他社からのリプレイスが多いという(現在も新規申し込みの約半数ほどが別サービスからの乗り換えとのこと)。

TableSolutionの管理画面(フロア)

特に直近では個店だけでなく、20〜40店舗に予約台帳システムを導入しているような大規模店舗からのリプレイスが多いそう。この領域では同じくスタートアップのトレタを始め、国内だけでも複数のプレイヤーが事業を展開しているため「ある程度マーケットに浸透してきた中で、機能面などを踏まえてより自社に合ったプロダクトを選ぼうという流れになってきている」というのが谷口氏の見解だ。

「自分たちのフィロソフィーは『電話予約でできていたことはネット予約でも全部できないといけない。さらに電話予約ではできないことをネット予約で実現する』ということ。その部分をしっかりと評価してもらえている」(谷口氏)

たとえば人気店では電話予約時に人力で細かい調整が行われているそう。キッチンがパンクしないように、複数のテーブルに空きがあっても全席を同時刻に埋めるのではなく時間を微妙にずらしたり。ガラガラの月曜日には4人席で2〜3人の予約を積極的に受けつつ、客数が多い金曜日には4名の予約だけを受けたり。クリスマスには席数を増やしながら18時と20時半の2回転制にしたり。

このようなシーズンやニーズごとの飲食店側のオペレーションに細かく対応できるシステムは意外と少なく、場合によっては「売上を増やすため、業務効率化を進めるためにネット予約システムを入れたのに、席効率が悪くなることで却って売上が減ってしまったようなケースもある」(谷口氏)という。

結果的にネット予約に席をほとんど解放せず、電話予約で対応している店舗もあるとのこと。そこにペインを感じ、上述したような点を含めて柔軟にチューニングができるTableSolutionに行き着く顧客も多いようだ。

TableSolutionの管理画面(予約作成)

海外展開を加速、個人向けプロダクトの強化も見据える

電話予約でできることをネット予約でもスムーズにできるようにするという特徴に加え、ネット予約システムならではの機能も好評だ。

その1つが前回も紹介したカード決済機能「キャンセルプロテクション」。これは予約時に事前決済や与信をとることで無断キャンセルを抑止する機能で、ネット予約に加えて昨年11月には電話予約にも対応を始めた。

TableSolution導入企業は無料で使うことが可能で、適用される条件も予約人数や曜日、エリアなどに応じて細かく設定することができる(たとえば4人以上の場合は予約時にカード情報が必要など)。同機能は約1200店が活用しており、これらの特徴が顧客のニーズにマッチした結果として「原則ネット予約以外は受け付けない」という店舗も複数生まれてきているようだ。

このような店舗向けのソリューションを軸としつつ、直近では飲食店を訪れるコンシューマー向けの機能も少しずつ強化をしている状況。実運用は少し先になるとのことだが飲食店版クレジットスコアのような構想に向けた取り組みや、来店時にカードもスマホも一切使用せずに会計できる決済機能の展開も進めている。

今回の資金調達については海外展開を中心に導入店舗数を一層拡大することが大きな目的となるが、中長期的にはコンシューマー向けのプロダクト強化や新プロダクトも見据えているという。

「飲食店の『オートメーション』と『オプティマイゼーション』が2大テーマであることはこれからも変わらない。まずは国内外で飲食店の課題解決に向けた取り組みを強化しながら、世界中の飲食店とユーザーをシームレスに繋ぐプラットフォームとして機能拡充を進めていきたい」(谷口氏)

飲食店運営インフラをまとめたカオスマップが登場(2019年版)

飲食店向けの物件を月単位で貸し借りできるプラットフォーム「よじげんスペース」を運営するよじげんは3月20日、飲食店運営インフラサービス(RIaaS)をまとめたカオスマップを公開した。

よじげんはRIaaSを「店舗/キッチンシェア」「予約」「HR」「決済/レジ」「デリバリー」「食材仕入」「開業支援」「フードロス」「持ち帰り」の9つに分類した。その中でも数が多いのが、予約と決済/レジに分類されるサービス群だった。

これについて、よじげん代表取締役の荒木賢二郎氏は「想像以上に予約や決済分野のサービスが多かった。飲食店経営者は総じて年齢も高めでITリテラシーが低いという状況を踏まえると、正直、それぞれのサービスの違いもわからず、どれを使えばいいのか混乱してしまいがち。事実、よじげんスペースで開業される方の中で、カード決済を導入したいがどのサービスが良いのかわからず、時間だけが経過してしまうということもあった」とコメントした。

そして、提供されているサービスの多さ、飲食店を運営する側のITリテラシーの度合いを踏まえると、今後は従来の「開業支援」だけでなく、サービスの選定や導入方法なども含めた「運営支援」を行うスタートアップが増えそうだとも話している。

月額980円で毎日1杯ドリンク無料、乾杯アプリ「GUBIT」が公開

毎月980円を払えば、仕事終わりの1杯が毎日無料で楽しめる——GUBITが7月6日にリリースした定額制の乾杯アプリ「GUBIT(グビット)」は、お酒好きにはもってこいのサービスといえそうだ。

GUBITは会員登録をして月額980円(税抜)のプランを購入することで、掲載されている飲食店であればどこでも、毎日ドリンクが1杯無料になるというもの。

使い方はシンプルでアプリから行きたいお店を選び、あらかじめ登録されているドリンクの中から飲みたいドリンクを決定。あとはお店で画面を表示して店員にコードを入力してもらえれば、おまちかねのドリンクがやってくる。

提供されるドリンクについては写真付きで掲載され、ビールとハイボールに関してはブランドや銘柄まで事前にチェックできるという。

GUBIT代表取締役の正木武良氏によると、現在はアルコール飲料のみが対象。ビールやハイボールのほか、日本酒、焼酎、サワー類、ワイン、スパークリング、ホッピーセットなど、どの加盟店にも複数のドリンクを提供してもらっているそうだ。

リリース時は首都圏エリアを中心に約100店舗が掲載。新宿で何十年も続く大衆居酒屋から、練馬のカジュアルフレンチ、六本木のクラフトビールのお店まで、ジャンルは幅広い。

今後は首都圏だけでなく、関西や名古屋、福岡など新規エリアも含めて店舗を拡大する準備を進める予定。「基本的には毎日使っていただくサービスにしたいと考えているので、普段使いのお店を中心に拡大していきたい」(正木氏)という。

GUBITに加盟する店舗にとっては、比較的飲食店の利用頻度の高いユーザーにリーチできるのが魅力だ。いろいろとヒアリングを進める中で、「1来店で1ドリンクは店舗側の集客コストとしては成立しうる」(正木氏)という感触を得たためリリースに至ったのだという。

現時点では店舗側の初期費用や月額費用、ユーザー来店ごとの成果報酬などは無料。加盟後6ヶ月を経過した店舗を対象に、GUBITを通じて提供されたドリンク数に応じたインセンティブの提供も予定している。

GUBITを開発した背景は「年を重ねるごとに行くお店が決まってきた、新しいお店に入りにくい、結婚したり子供ができると飲み代が減る」といった、すごく個人的なものだという正木氏。

「家で飲むのもいいけど、やっぱりお店でも飲みたい。できれば少しでも安く、そしていろんなお店で飲めるといい」と考えリサーチをしている中で、海外の定額制サービスの存在を知り興味をもったそうだ。

「これなら毎日飲みに行けるからすごくいいなと。ただいろいろ検証してみると、日本の生活スタイルでは定額制をやるにしても工夫が必要だと感じた。特に店舗側にどうメリットを提供できるかは勉強が必要だった」(正木氏)

そこで上述したようにヒアリングを重ね、最終的に現在のGUBITのモデルに落ち着いたのだという。

「基本的には、自分を含め世の酒飲みのためのサービスを目指したい。オンラインでのサービスは他にもあるが、『お店に行って一杯飲んでいろんな人との出会いや語らいが生まれる』というような、どちらかというとオフラインでの密な関係が生まれるサービスにできたらいいなと考えている」(正木氏)

GUBITは2018年2月の設立。同年6月に複数の個人を引受先とする第三者割当増資により、総額3000万円の資金調達を実施した。

なおGUBITと近いコンセプトのサービスは日本でもいくつか公開されていて、TechCrunchでも過去に「Foobe」や「HIDEOUT CLUB」を紹介している。

飲食店の経営をデジタル化し、ECのように効果測定できる環境へ——「favy」が5億円を調達

favyの役員と株主一同。写真中央が代表取締役社長の髙梨巧氏

「どうやって飲食店というビジネスとデジタルを融合していくか、『飲食店の経営のデジタル化』をテーマに事業を進めてきた。特に正確な経営判断に必要なデータ基盤を作るというのは創業時から決めていたこと。ようやく、やりたかったことの本丸の領域に入っていける段階になった」——favy代表取締役社長の髙梨巧氏は、同社の現状についてそう話す。

グルメメディアや飲食店向けツールなど、食の領域で複数の事業を展開してきたfavy。同社は6月11日、Draper Nexus Ventures、アプリコット・ベンチャーズ、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫の資本性ローンに基づく融資により、総額約5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

favyでは調達した資金をもとに新規事業となる飲食店向けMA(マーケティング・オートメーション)ツールの開発のほか、グルメメディア「favy」やサービスEC事業「ReDINE」 の拡充に向けて組織体制を強化する。

同社は2017年3月に環境エネルギー投資、サイバーエージェント・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家より総額約3.3億円を、2016年4月にみずほキャピタルとサイバーエージェント・ベンチャーズから総額1億円を調達している。

飲食店がデータを収集し、有効活用できるシステムを作る

favyはちょっと変わったスタートアップかもしれない。

グルメ領域のメディアや飲食店向けのサイト作成ツール「favyページ」など複数のWebサービスを展開する一方で、「飲食店ABテスト」というリサーチサービスを作ったと思いきや、完全会員制の焼肉屋定額制のコーヒースタンドなど、新しいモデルの飲食店を立ち上げたりもしている。

もちろん各取り組みごとに狙いや役割はあるのだろうけど、創業時から髙梨氏がやりたかったことは変わらないという。それがこれから始める飲食店のMAツールも含め、冒頭で紹介した「飲食店の経営のデジタル化」の実現であり、そのために不可欠な基盤作りだ。

「レジの情報や予約の情報も有用だが、多くの飲食店にとってそれだけでは基盤としては物足りないと考えていた。売り上げが増えたとしても『それがどんな顧客なのか、何の影響で来店したのか』と言ったことがわからなければ次に繋がらない。何に投資をしたらどれだけのリターンがあったのか、きちんと効果測定できるようなデータとシステムが必要だ」(髙梨氏)

たとえばfavyが運営する焼肉屋「29ON(ニクオン)」では完全会員制とすることで、1人あたりの来店率やLTV(顧客生涯価値 : 1人の顧客が生涯に渡ってどれくらいの利益をもたらすかを算出した数値)がわかる。これによって「飲食店でも健康食品や単品通販と同じようなマーケティング手法が使える」(高梨氏)という。

「自社店舗で試すうちに必要なデータをトラッキングさえできれば、それを活用することで売り上げを伸ばしていけるという手応えをつかめた。さらに言えば、どのようなデータをトラッキングするべきか、どういった形でデータが取れれば使いやすいかもわかってきている。これらの仕組みを他の飲食店でも使えるようにシステム化したのが、飲食店向けのMAツールだ」(髙梨氏)

高梨氏はもともとネット広告代理店のアイレップ出身。同社ではSEO、SEM分野の立ち上げを担っていた。「Google アナリティクスの登場でWebサイトの効果測定や改善が簡単になった」ように、飲食店にも同様の仕組みが必要だという。

月間閲覧者6000万人超えのメディアfavyと連動

現在開発を進めるMAツール(飲食店向けには顧客管理ツールと紹介しているそう)は、favyの直営店で約1年前からテストを重ねてきたもの。2018年夏頃のリリースを目処に、5月にはテスト版をリリースしている。

開発中のMAツール。画像はテスト版のTOP画面

このツールでは顧客の予約経路やグルメメディアfavy内における行動データなどから、マーケティングに必要な情報を自動で収集、分析。店舗への来店誘導、集客施策に活かせるほか、予約管理や顧客管理に関する業務を効率化する機能、無断キャンセルを防ぐための前日確認を自動化する機能なども備える。

興味深いのは月間閲覧者が6000万人を超えるfavyで蓄積されたデータと連携している点だろうか。

高梨氏の話では、このデータを活用することで「来店したことのないユーザーも含めて、お店の見込み客が見える化できる」という。たとえばラーメン屋の記事に興味を持っているユーザーのデータとエリアのデータを組み合わせ、「新宿のラーメン屋だと、これくらいの見込み客がいる」と把握できるようなイメージだ。

テスト版の顧客管理画面

もちろん飲食店向けのMAツールと言っているように、来店頻度が下がっているユーザーへ広告やはがきを自動で送ったりなど、見込み客に対する集客施策を自動化することもできる。

飲食店向けのSaaSとしてさらなる進化を

今回の資金調達を踏まえ、favyでは組織体制を強化しMAツールや既存事業の開発、機能拡充を進める方針。MAツールに関しては他サービスとの連携にも取り組んでいくという。

また高梨氏によると、今後目指しているのは飲食店向けSaaSとしての展開。詳しくはまだ言えないとのことだが「集客の機能をより掘り下げていく深さの部分と、それ以外の領域へラインナップを広げていく幅の部分」の2軸でサービスを拡張していく計画のようだ。

「飲食店の経営のデジタル化を通じてやりたいのは、飲食店が簡単にはつぶれない世界を作ること。『デジタル化』というのは、広告手段が増えるとか、効果測定ができるというだけでなく、考え方がアップデートされるという意味もある。自社でも直営店を経営していて飲食店の仕組みとデジタルなマインドを融合することの大変さを痛感しているが、(favyの事業を通じて)飲食店の経営をサポートしていきたい」(高梨氏)

「飲食店のネット予約を当たり前に」VESPERが1.5億円を調達、オートメーションで業界革新へ

飲食店向けのオンライン予約管理システム「TableSolution(テーブルソリューション)」を提供するVESPERは12月6日、SMBCベンチャーキャピタル株式会社を引受先とする第三者割当増資により、1.5億円を調達したことを明らかにした。

なおVESPERは2015年にもジャフコから2億円を調達しているほか、元ソニー代表取締役社長の出井伸之氏やメルカリ創業者の山田進太郎氏も株主となっている。

ホテルチェーンや星付きレストランなど2000店舗に導入

TableSolutionは飲食店のオンライン予約や顧客管理をサポートするSaaS型のシステムだ。メインとなる予約管理機能に加えて電話自動応答やカード決済、POSシステム連携といった各種機能を備え、14ヶ国語に対応。基本料金は席数に応じて月額1万2000円、1万5000円、2万円のいずれかとなる。

2013年7月のリリース以降顧客を増やし、現在は約2000店舗が導入。大手グローバルホテルチェーンや星付きのレストランなども活用する。ネット予約システムを使ったことがある飲食店が、さらなる機能を求めてTableSolutionに行き着くケースも多く、導入店舗の65%が他システムからの乗り換えだ。

また現時点で海外10カ国に展開。拠点を持つ韓国ではコンラッドやグランド・ハイアットなど有名ラグジュアリーホテルの店舗にも導入実績がある。VESPER代表取締役の谷口優氏によると「海外のトラックレコードが評価されたこと」が今回の資金調達にもつながったという。

前年対比で予約件数が約3倍、無断キャンセル防止策の利用進む

以前取材した際に、谷口氏は指標として「予約件数」を重要視しているという話をしていた。実際にどれだけ活用してもらえているかを測るためだが、この数値が2017年10月時点では前年対比で約3倍に増加しているという。

成長の要因のひとつは、飲食業界の課題でもある無断キャンセルを減らすべく2017年6月にリリースした、カード決済機能「キャンセルプロテクション」だ。この機能では飲食店がネット予約成立時に事前カード決済、ないしクレジットカード利用枠に応じた一部仮押さえ(与信)できる。

あらかじめ金額が決まっているイベントなどでは事前決済をし、キャンセルの場合にはポリシーに基づいてキャンセル料を相殺するプラン(事前決済型)。予約時にカード情報を入力してもらうことで、直前キャンセルには与信枠を上限にキャンセル料を請求するプラン(与信型)の2つを用意。TableSolution導入店舗が対象で、追加の導入費や月額固定費用がかからないこともあり引き合いが強く、すでに約300店舗で利用されている。

勝手ながらレストランの事前決済には抵抗がある人も多いイメージだったが、谷口氏によるとおもしろい結果がいくつかでているそう。ある導入店舗では現地決済プランと、それよりも1000円安い事前決済プランを2つ用意した。するとほとんどの利用者が事前決済を選んだため、途中から事前決済のみに変えたという。

「宿泊や航空券、映画などネット上で予約をして事前決済することが、少しずつ当たり前になってきている。最初は事前決済を嫌がる人も多いかと思ったが、利用者の心理的な負担も変わってきているように感じる」(谷口氏)

新宿の人気レストランでは他システムからTableSolutionに切り替え、ネット予約の全プランを与信型プランにしたところ約64%だったキャンセル率が0.2%まで低下。その一方で来店数は増えた。

「以前は『とりあえず予約しておこう』という人が多くキャンセル率が高かったことに加え、本当に行きたい人が予約できなくなっていたのではないかと考えている。結果として本当に行きたい人が予約できるようになったため、来店数の増加につながった」(谷口氏)

キャンセルプロテクションを活用する寿司屋では、当日キャンセルを申し出た顧客にポリシーに沿ってキャンセルフィーが発生する旨をつげたところ、なんと7~8割がやっぱり行くと答えたそう。自分自身もやってしまったことがあるため胸が痛いけれど、飲食店の予約や当日キャンセルがどれほど気軽に行われているかがわかる。

谷口氏によるとこの傾向は海外の方がさらに顕著らしく、キャンセルプロテクションは海外の飲食店からの関心も高いという。

ネット予約を当たり前に、オートメーションも当たり前に

VESPERでは今回の資金調達を機に、今後はさらに海外展開を加速させる計画だ。まずは東南アジアのラグジュアリーホテルを中心に、2020年をめどに海外2000店舗、国内1万2000店舗へTableSolutionの導入を目指す。

またより広い店舗が使えるように簡易版のリリースを検討するほか、2018年は分析システムの基盤を強化していくことを大きなテーマとして掲げる。

「上位概念にあるのは、オートメーション。適切なデータを適切なタイミングで顧客に届けることで、広告予算の配分や顧客管理を最適化するサポートをしていきたい。AIの導入なども含めて基盤を強化する」(谷口氏)

VESPER代表取締役の谷口優氏

TableSolutionを立ち上げた当初から根本にあるのは、ネット予約を当たり前にしたいということだ。飲食業界でも人材が不足し人力だけで対応するのは難しくなってきているし、今後さらに国内の人口減少が進めば飲食店は外国人の顧客を獲得していく必要もある。そうなれば複数言語に対応し、24時間いつでも予約を受け付けられるネット予約システムはニーズがありそうだ。

「飲食店の人とも『1回も予約の電話がならないけど、今までと同じ数のお客さんが来るなら楽だよね』という話を毎回している。理想は100%ネット予約になること。今後さらにネット予約を当たり前に、そしてオートメーションを当たり前にしていきたい」(谷口氏)

Just Eatが350万ポンドをPOS関連システム統合サービスのFlypayへ投資

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オンライン食品デリバリー界の雄Just Eatが、イギリスのスタートアップFlypayへの投資を行った。Flypayは、チェーンレストランやパブが、用途に応じて使い分けている個々のシステムを統合するためのプラットフォームを運営している。350万ポンド規模となった今回のラウンドは、先日英メディアTimeOutがリードインベスターとなって700万ポンドを調達したラウンドAの延長とされている。

”戦略的提携”とも言われているJust Eatによる投資の結果、同社はFlypayが運営するFlytプラットフォームにおける、最新のパートナーテック企業となった。このプラットフォーム上では、予約やロイヤルティープログラムからデリバリーやレビュー管理まで、レストラン・パブ・バーが普段利用しているさまざまなシステムを統合することができる。

Flypayは当初、”ウェイターフリー”で会計ができるようなテーブル会計アプリの開発に注力しており、その後、オーダー・受け取りやテーブルでのオーダー、カウンターでの支払、ロイヤルティープログラムといった機能をそこに追加していった。

しかし、その頃から同社は、飲食業界で使われている個々のシステムと競合するのではなく、それらをまとめるようなプラットフォームを開発した方がサービスの価値が高まるのでは、と考えるようになった。

「私たちが新たに提供する、飲食店の運営会社向けのFlytプラットフォームを使えば、電子取引周りのシステム環境を大幅に簡素化できます。顧客やオーダーの管理を全て独自のアプリに統合することもできれば、私たちのプラットフォームを経由して、情報集積アプリやメッセージ・ボイスコマース、その他最新の技術を利用した他のプラットフォームへ各システムを接続することもできます」とFlypayのファウンダー兼CEO Tom Weaverは語る。

さらに彼は、「私たちの顧客は、さまざまな街に店舗を構えているカジュアルダイニングやパブブランドです。現在はWahaca・GBK・Jamie’s Italian・Fuller’s・Chilangoやその他多くのブランドにサービスを提供しており、最近イギリスでもっとも人気のレストランブランドとも契約を結んだところです。もう少しで情報が公開される予定で、その会社とは今までにないようなお店を作ろうとしています」と付け加える。

この点についてJust EatとFlypayは、今後ブランドを問わず全てのカジュアルダイニングの運営会社に対して”デジタルエクスペリエンス”を提供するために協業していくと話している。このコラボレーションを通して、Flypayはレストランやバーが既に持っているアプリに、Flyt経由でデリバリー機能を追加するサービスを開始予定だ。しかし、まだこれは始まりに過ぎない。

両社はさらに、実店舗での情報とJust Eatの顧客データーベースを紐付け、レストランやパブ、バーの運営会社が”デリバリーシステムを採用・有効活用”しやすくなるような施策を打ち出していく予定だ。

Just Eat CEOのDavid Buttressは声明の中で「Flypayへの投資によって、注文・支払・カスタマーサービス・デリバリー機能などを備えた、飲食サービス利用者のための、シームレスなシステムの開発を私たちは続けることができます。そうすれば、レストラン側はJust Eatを利用してデリバリサービスを提供できるようになりますし、カジュアルダイニングチェーンに対する私たちのサービスの訴求力も高まります。Flytプラットフォームは、カジュアルダイニング界のデジタルな部分を大きく変える力を秘めており、私たちはその可能性を信じています」と語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter