インドネシアの魚やエビの養殖業者向けサービスeFisheryが約104億円調達、アグリテックとして世界最大規模

インドネシアのeFishery(イーフィッシャリー)は現地時間1月10日、アグリテックのスタートアップとしては世界最大規模の資金を調達したと発表した。魚やエビの養殖業者向けに給餌機器やソフトウェア、融資を提供する同社は、Temasek、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2、Sequoia Capital Indiaが共同でリードしたシリーズCラウンドで9000万ドル(約104億円)を調達している。復帰投資家のNorthstar Group、Go-Ventures、Aqua-Spark、Wavemaker Partnersも同ラウンドに参加した。

調達した資金は、プラットフォームの拡大、そして中国やインドなど養殖業における上位10カ国に進出するのに使用される予定だ。

eFisheryの製品には、エビ養殖業者がオペレーションを監視できるeFarmや、魚養殖業者向けに同様の機能を提供するeFisheryKuといったソフトウェアがある。融資商品にはeFundがあり、これは資材や原材料といったものを購入するための後払いサービスなどのために養殖業者と金融機関をつなげる。これまでに7000人以上の養殖業者がeFundを利用し、承認された融資総額は2800万ドル(約32億円)超だという。

その他の製品にはスマートフィーダーなどがあり、現在インドネシアで3万人以上の業者が利用している。

ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズの投資ディレクターであるAnna Lo(アンナ・ロー)氏は「インドネシアは世界最大の水産物生産国の1つであり、養殖業界は世界の増大する人口に食料を提供するという大事な役割を果たすと信じています」と声明で述べた。

最近、多額の資金を調達した他のインドネシアのアグテックスタートアップには、マーケットプレイスのTaniHubEden Farm「海から食卓へ」企業のAruna、ソーシャルコマーススタートアップのChilibeliなどがある。

画像クレジット:Wokephoto17 / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

金魚が自ら水槽を操作する実験

金魚がクルマを運転できると知って、即座の反応が「またか」なら、まさしく「日の下に新しきものなし」だ。しかし、ここでご紹介する魚類学の革新は、数年前にあった魚が運転するクルマに見たところは似ており、水槽をやや深くしただけのように思えるかもしれないが、ここには重要で新たな特徴がある。金魚が本当に運転を学んだということだ。

気づいたかもしれないが、2014年当時は、運転をしながら水槽の中をぐるぐる回る金魚が実際にいた。当時の、ピュアだった人たちはそれを見て喜んだものだ。ウェブカメラを水槽の上部につけて、オブジェクト検出アルゴリズムが魚の位置を追うと、水槽が乗っているカートが金魚の泳ぐ方向へ動いた。自分のアドレスも覚えられない私が、それを覚えてるなんて信じられない。

確かに楽しいが、それは真剣な科学的取り組みというよりもパーティーにおける手品のようだった。魚はただ水槽の中を泳ぎ回っているだけであり、世界についても、自分を部屋の中で移動させている仕組みについても魚は何も知らない。

しかし今回、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学大学の研究者たちは、それを一歩前進させた。使用するメカニズムは以前のものとよく似ていて、やはり水槽内の金魚の位置も検知し、泳いできたセクターの方向に「魚が運転する乗り物(Fish Operated Vehicle、FOV)」を移動させるという。

しかし、そこから先が違っている。研究者たちは金魚にさまざまなタスクをセットし、それによって金魚は、外の水のない世界の中でクルマ(水槽が乗ってるカート)を誘導しなければならない。たとえば魚は部屋の中央からスタートして、赤いストライプのある壁に達したらごほうびをもらえる。

Shachar Givonと@MatanSaminaが指導し@MatanSaminaが参加した研究をここにシェアできることは喜ばしいことです。金魚が地上の小さなロボットカーの誘導を学習できる。金魚の動きに反応する台車があり、金魚を訓練して、その動きに反応する車輪の付いた台車を運転できるようにしました。

人の常識では、金魚は特に頭が悪いことになっているが、実際のところ、彼らはかなり複雑な行動や状況を学習し記憶することができる。しかし、金魚が水槽によって表現されている抽象的な空間概念を理解し、何らかの外的手段を駆使してもっと大きな世界を動いていける、と想定すべき理由はない。

それでも研究者たちは、Behavioural Brain Researchに掲載された研究論文の概要で次のように述べている。

魚はその乗り物を運転し、新しい環境を探検し、どこから出発しても目的地に到達できた。またその間、行き止まりを避け、位置の不正確を修正した。これらの結果は、魚が自分の空間表現を移転するやり方と、それによりまったく異なる地上環境へ誘導するスキルがあることをを示している。

これは、金魚程度の生物でさえ移動する方法がハードコーディングされた水中運動回路ではなく、もっと普遍的なもの、おそらく私たちが考えるよりも早く、もっと基本的なレベルで進化したものであることを示唆している。どの程度抽象的で普遍的なのかはまだわかっていないが、興味深い結果であることは確かだ。

しかし、もっと重要なことは、魚やイグアナ、トカゲ、あるいはタランチュラでも移動式のテラリウムを手に入れることができる可能性がかなり高いというだ。彼らに自由な家を与えることができ、しかも自由のために彼らは、這ったり滑ったり転がったりしなくてもいい。ちなみに、このアイデアに興味を持った人にはJames Blish(ジェイムズ・ブリッシュ)の「Surface Tension(表面張力)」という本がおすすめだ。

画像クレジット:Ben-Gurion University of the Negev

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

仲間を見つけて群れをなして泳ぐ自立式ロボフィッシュ

ハーバード大学ワイス応用生物学エンジニアリング研究所の研究チームは、互いに相手を見つけて移動する自立式魚型水中ロボットを開発した。協力して仕事をこなしたり、静かに群れをなしたりする。

空中ドローンがさまざまな業界で有効利用されているのと同じように、水中ドローンはエコロジー、輸送など、水中に永続的に存在することが求められながらそれが困難な分野に革命を起こす可能性を秘めている。

この数年間に、興味深い自立水中移動装置(AUV)が次々と作られてきたが、典型的なのは魚雷型だ。開放水域の走行には効率的だが、サンゴ礁やマリーナの隅々まで動き回るのには向いていない。

その目的には、自然そのものがふさわしく創造したものに倣うのが現実的であり、ワイス研究所は自然界を模倣したロボットや機械を作ることを得意としている。

このほどScience Robotics誌に掲載された最新論文の共同執筆者であるFlorian Berlinger(フロリアン・ベルリンガー)氏、Melvin Gauci(メルビン・ガウシ)氏、およびRadhika Nagpal(ラディカ・ナグパル)氏の3人は、形状だけでなく、魚が仲間とやりとりする方法も模倣しようと考えた。

スキューバダイビングの最中に見た魚の群泳にヒントを得たナグパル氏は、こんな疑問を追求した。「こういう集団コヒーレンスを起こす人工エージェントを作るにはどうすればいいのか。そして集団全体が1つのエージェントのように振舞うには?」。

画像クレジット:Berlinger et al, Science Robotics

彼らの答えであるBlueswarm(ブルースウォーム)は、魚の形に3Dプリントされた小さな 「Bluebots」の集団だ。プロペラではなくヒレを持ち、目の代わりにカメラを備えている。本物の魚と見間違える人はいないだろうが、普通の魚にとって2メートル近い金属管の後方でプロペラが大きな音を立てて回っているのを見るより、はるかに恐怖は少ないはずだ。Bluebotsは自然のイノベーションである生物発光も模倣し、ある種の魚や昆虫が互いに合図を送るようにLEDを光らせる。LEDのパルスはロボット同士の位置と周辺状況の知識に基づいて変更、調整される。

カメラと先端の光センサーによる単純な検出機構と基本的な水泳動作やLEDを使って、Blueswarmは自動的にグループ行動して簡単な「ミリング」パターンを作ることで、新しいロボットがどこからやってきても受け入れることができる。

画像クレジット:Berlinger et al, Science Robotics

ロボット集団は、何かものを探すといった単純な作業を共同で行うこともできる。たとえば自分たちのいるタンクの中で赤いLEDを見つける仕事を与えられると、それぞれが独立して探し始めるが、誰かが見つけると、LEDの点滅で通知を送り仲間を召喚する。

このテクノロジーの使い道を想像するのは難しくない。ロボットはサンゴ礁などの自然物に海洋生物を脅かすことなく安全に近づくことができるため、健康状態を監視したり、カメラで見える物体を探すことができる。あるいはドックの船の下を遊泳して、単体の装置よりも効率的に船体を検査できるかもしれない。捜索と救助にも役立つだろう。

この研究は、そもそも動物がなぜ、どうやって群れを作るのかという私たちの理解を進めるものでもある。

「この研究によって、私たちは高度なロボット集団を作るだけでなく、自然の集団知能についても学べるようになります。魚は群れになって泳ぐ時、ロボットよりも単純な行動パターンに従っているはずです。この簡潔さは実に美しく、しかし容易には理解できません」とBerlinger(ベルリンガー)氏は語る。「私のBluebotsを魚の泳法や群泳の生物学的研究で魚の代わりとして使いたい、という研究者からすでに声がかかっています。実験室の魚の中にBluebotを歓迎してくれるという話を、私はとてもうれしく思っています」。

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カテゴリー:ドローン
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画像クレジット:Berlinger et al., Science Robotics

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook