約9年前に中国でKindle(キンドル)の出荷が始まって以来、電子書籍の巨人は同国で忠実なファンを獲得してきた。だが、デジタルコンテンツに関する規制のため、その道のりは決して平坦ではなかった。最近、同国におけるAmazon(アマゾン)傘下の電子書籍事業が一部縮小される兆しがある。
Alibaba(アリババ)のオンラインショッピングモールTmall内のKindleの公式ストアが10月に閉鎖された。Kindle中国版は、Amazonの中国向けサイトであるAmazon.cnで現在、在庫なしとなっている。JD.com(JDドットコム)の公式ストアは引き続きオープンしているが、ほとんどの端末がやはり在庫切れとなっている。WeChat(ウィーチャット)の公式ストアでは、まだ一部の機種が販売されている。
Amazonの広報担当者はTechCrunchへの声明で、Kindleの一部のモデルは「現在、中国では売り切れ」だが、消費者は「サードパーティのオンラインおよびオフライン小売店」で購入できると述べた。同社は、Alibabaストアが閉鎖された理由や、中国でKindleの在庫がない理由については言及を避けた。
「我々は中国の消費者への奉仕に専念しています」と広報担当者は述べた。「質の高いカスタマーサービスと保証を提供するというAmazonのコミットメントに変わりはありません」。
TechCrunchはAlibabaとJD.comにコメントを求めている。
国有Beijing News(新京報)の子会社であるBK Economyの記者によるソーシャルメディアへの投稿によると、Amazonは11月に中国でKindleのデバイスチームを解散させたと伝えられている。Amazon China(アマゾン・チャイナ)は、解雇の疑いについてコメントを拒否した。
デバイスチームの解雇は、この電子書籍のローカル版ハードウェアの終わりを意味する。iPhone同様、Kindleは中国版の端末を提供している。機能は米国版と同じだが、中国におけるアフターサービスが付いている。ハードウェア部門の閉鎖は、サードパーティーの業者による中国の消費者への販売が、Kindleの海外モデル輸入に制限されることも意味する。
重要だが難しい市場
2017年の時点で、中国はKindleにとって最大の市場であり、2桁の成長を遂げているとAmazon Devices(アマゾン・デバイス)の上級副社長David Limp(デビッド・リンプ)氏は当時述べている。とはいえ、中国の電子書籍市場は、当初から他の地域とは明らかに異なっていた。
「世界の9割の国のベストセラーリストを見ると、電子書籍は、少なくともリストの上位に関しては、従来型書籍の電子化版と同等です。しかし中国では、従来型書籍は、従来型のテレビや映画などの長編映像コンテンツと同様、その大半が国有出版社やコンテンツハウスから出版され、扱えるテーマに制約があるため、あまりおもしろくありません」と、中国の電子書籍業界のベテランは匿名で述べた。
最近の中国におけるKindleの状況やTmallストアの閉鎖を決定するに至った経緯は不明だ。しかし、Kindleが中国市場に存在していた期間と販売されたハードウェアの量を考えれば、当然、AmazonのKindle電子書籍ストアから従来型電子書籍を購入して読んでいる中国のKindle所有者が依然として多数存在しているはずだ。
Kindleの中国版電子書籍ストアはまだ利用できるため、現在、中国でKindleを所有している人は影響を受けない。中国版はグローバル版とは別物で、英語版の書籍はかなり少ない。
Amazonは長年にわたり、中国で衰退しつつあるいくつかの事業を縮小する一方、芽生えつつある事業は強化してきた。2019年には、中国の買い手と売り手をつなぐオンラインマーケットプレイスを閉鎖した。オンラインマーケットプレイスは、Alibabaのような中国の巨人と競合する事業だった。他方、同国での輸出事業に力を入れ、中国の販売業者が世界中の顧客を見つける手助けをしている。
ロイター通信が2021年12月に、Amazonが中国政府から認可された書籍を掲載するポータルを作成したと報じたことで、同社は批判にさらされている。このプロジェクトは、中国における電子書籍のライセンス問題解決に一役買っていた。
画像クレジット:Amazon
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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi)