Stripeが銀行の機能をSaaSとして提供する埋め込み型金融サービス「Stripe Treasury」発表

フィンテックスタートアップのStripeが、Stripe Treasuryという意欲的な新製品を発表した。同社が銀行とパートナーして、銀行の機能をAPIからSaaSとして提供するいわばBanking-as-a-Service、つまりStripeのクライアントが銀行口座を顧客に提供できるというものだ。このサービスは現在のところ、招待制のみとなっている。

この新しいサービスは、埋め込み型金融(embedded finance)と呼ばれる大きなトレンドの一環だ。これまで、ユーザーが現在使っているサービス(eコマースなど)と銀行サービスはそれぞれ別だったが、埋め込み型金融ではエンドユーザーが使っているサービスの中で金融サービスも提供する。

Wiseのように、企業向けの埋め込み型銀行プロダクトを作っているところもある。Stripeは、既存のユーザーベースを利用して、Stripe Treasuryを新しい銀行サービスプロダクトとして使うよう説得できる。

たとえばShopifyは、Stripe Treasuryを使ってShopify Balanceを実装する。Shopifyのマーチャントが、お金を置いたり、請求を払ったり、お金を使ったりを自分のShopifyアカウントからしたければ、銀行口座をShopify Balanceに直接開ける。これまでのように自分の銀行口座にアクセスしなくてもよい。それを楽屋裏で可能にするのが、Stripe Treasuryだ。

ただし、Stripeが銀行になるのではない。同社は以前と同じく、インフラストラクチャと決済にフォーカスしている。そして米国ではEvolve BankやGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のような銀行と協力する。またCitibankやBarclaysと提携して、ほかの国でもStripe Treasuryを立ち上げる予定だ。

Stripeは、あらゆるものをAPIの呼び出しに換える。APIは、簡単な命令でサードパーティのサービスと対話するためのプログラミングインタフェイスだ。たとえばデベロッパーは、StripeのAPIを呼び出してStripe Treasuryを利用し、銀行口座を直接開くことができる。

お金の移動や支払いもAPIを呼び出してできる。Stripe Issuingと組み合わせると、バーチャルやフィジカルのカードを発行して、それを銀行口座に接続できる。Stripeは徐々に、決済チェーンのより大きな部分をカバーするプロダクトを作っている。

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コンテナ時代のAPIテストを自動化するSpeedscaleが2.3億円を調達

Y Combinatorのデモデーでデビューしてわずか数週間後に、APIのテストを自動化するアトランタのSpeedscaleが、初めての資金調達として220万ドル(約2億3000万円)を調達した。

ジョージア工科大学を卒業して長い間、開発者だったKen Ahrens(ケン・アーレンス)氏とMatthew LeRay(マシュー・ルレイ)氏、そしてNate Lee(ネイト・リー)氏の3人は、およそ20年来の知己だが、一緒に仕事をするのは今回が初めてだ。

DevOpsとモニタリングの世界で複数のプログラミングジョブを互いに接続するという、回りくどい道のりが、この3名に現在の新人プログラマーが直面する困難を解決することにビジネスの機会があることを悟らせた。それは、いまのコンテナ化されたプログラミングの世界で、アプリケーションに統合したAPIのアップデートがアプリやサービスを確実に壊さないようにすることだ。

「サービスの中断やダウンタイムの原因になるインシデントを解決することが、私たちの仕事だ。現在のアプリケーションは、いろいろ部分がいろいろ場所にあり、部分間の接続点が多い。そういう接続点の質を確保することが難しい。しかも接続点は、使用するAPIやコンテナが増えると増加する。そこで、この問題を解決することとスケーラブルなオートメーションで先回り的に事故の事前防止を図り、リリースのペースを維持することが仕事になると考えた」とリー氏は語る。

通常、企業におけるコードのアップデートのリリースは段階的に行われたり、あるいはテスト環境で何も問題がないことを確認してから行われる。しかしSpeedscaleは開発者がリリースタイムを加速できるように、本物のトラフィックを使用するテストのオートメーションを提案する。

「彼らはとても頻繁に変更をしたがる。変更の多くは立派なものだが、なかにはシステムの一部を壊す変更もある。そんなときのための最先端技術は、壊れるのを待って誰かがすばやく直すことだ」と開発のライフサイクルについてアーレンス氏は語る。

しかしSpeedscaleは開発者たちに、コードをリリースする前に問題を発見できると主張する。同社のサービスは、ステージング環境と、オートメーションスイートとオーケストレーションの作成を自動化して、問題発見のための環境を作る。

さらにアーレンス氏は「私にとって大きかったのはKubernetesの勢力拡大で、これによってエンジニアリングのリーダーはもっと幅広い自律性をデベロッパーに与えることができると思ったが、それを実証するすばらしい方法はどこからも出てこないため、Speedscaleがその問題解決をやるしかないと思っている」と述べている。

ルレイ氏によると、同社は数カ月前にY Combinatorを卒業し、現在はパイロット事業のために選んだパートナーたちと非公開アルファを進めている。資金はこれまで220万ドルを獲得し、ベイエリアのSierra Venturesや故郷アトランタのTech Square Venturesなどがその投資に参加した。

「APIは巨大なマーケットだ。APIを使って開発をしているデベロッパーは1100万人いる。私たちの市場の規模は、数十億ドルに達するだろう」と同社の今後についてアーレンス氏は述べている。

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タグ:SpeedscaleAPI

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Twilioによる3370億円でのSegment買収でデベロッパーはデータ活用アプリ開発が容易に

新型コロナウイルスのパンデミックで事業者は顧客とのやりとり方法の変更を余儀なくされた。商品あるいはサービスを提供しているか、またはどのようにコミュニケーションを取っているかにかかわらず、1つ共通することがある。すべてにおいてかなり迅速なデジタル化を強制されているということだ。

それは米国時間10月12日に発表されたTwilio(トゥイリオ)による32億ドル(約3370億円)でのSegment(セグメント)買収をある程度促した(この買収についてはすでに取り上げているForbesは10月9日夜に報じた)。この買収について突き詰めて考えると、2社は相性が良く、Twilioの顧客が価値ある顧客データにアクセスできるようにすることでプラットフォームが拡大する。Twilioの最高製品責任者でありうChee Chew(チー・チュー)氏は、同社が顧客エクスペリエンスの方向に転換しているように感じるかもしれないが、必ずしもそうではないととらえていると話す。

「多くの人が、当社をコミュニケーション企業だと考えていたでしょう。しかし我々は自社を顧客エンゲージメント企業だと考えています。事業者がより効率的に顧客とコミュニケーションを取れるよう当社がいかにサポートするかを真剣に考えています」とチュー氏はTechCrunchに語った。

共同創業者でSMB(中小企業)グループ担当パートナーのLaurie McCabe(ローリエ・マッケイブ)氏は、パンデミックに関連する動きと、企業がよりデジタルな方法で顧客に接しなければならないニーズを目の当たりにしている。「素晴らしい顧客エクスペリエンスの提供はパンデミックを生き残り、経済の回復とともに成長するための鍵だと多くの企業が認識するようになっています。企業は不透明な時代であるにもかかわらず、生き残って成長するために喜んで資金を注入します」とマッケイブ氏は述べた。

もちろんチュー氏は、デベロッパーが直接顧客データにアクセスできるようにすることでSegmentがTwilioに欠けていたものを与え、それが興味深い応用につながるかもしれないことを認識している。

Segmentが持つデータ取り扱い能力は顧客の全容を提供し、我々が行うすべてのものを真に網羅しています。チャンネルやそれ以外のものにも広く作用するでしょう。なので、顧客の全体像を得たり、当社の顧客がインテリジェンスサービスを構築できるよう、Segmentは異なる方法で当社を発展させてくれると考えています」と同氏は述べた。

CRM Essentialsの創業者でプリンシパルアナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、Segmentがデータを活用しているデベロッパーのエクスペリエンスを支えているとみている。「今回の動きで、Twilioは自社のプラットフォームを使っているデベロッパーから困難を取り除くことで、データ・洞察・相互作用エクスペリエンスのトランスフォーメーションプロセスに影響を及ぼすことができます」とリアリー氏は説明した。言い換えれば、TwilioのAPIを使ってこれまで以上に多様なアプリケーションを構築するためのデータをデベロッパーが使えるようになる。

「CRM at the Speed of Light」の著者で、56 GroupのプリンシパルアナリストであるPaul Greenberg(ポール・グリーンバーグ)氏は「Segmentは、すでにパワフルな統一コミュニケーションプラットフォームとハブで顧客データを使用する能力をTwilioにもたらします。そのため、両社のAPI、デベロッパーにとってのフレキシビリティは事実上、かなりのものです」と述べて賛同の意を示した。

そうなのかもしれない。しかしConstellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミュラー)氏は、SMSのようにTwilioプラットフォームのコミュニケーション部分はかなりコモディティ化していて、今回の買収は2018年のSendGrid(センドグリッド)買収とともにTwilioにより儲かるデータ分野へとプラットフォームを拡大する余地を与える、とみている。

「Twilioはさらに成長するための方策を必要としていて、同社の戦略は少なくともSegment買収でステップアップしているように見えます。データの移動とデータ保管コンプライアンスは、次世代のアプリケーションを構築する際に企業にとって大きな頭痛の種です」とミュラー氏は述べた。

チュー氏が指摘したように、初期の問題はSMSメッセージをアプリケーションに組み込むのに関連するもので、デベロッパーが当時必要としていたためにTwilioが解決しようとしていたものだった。しかし状況は変わり、同社はより統一された顧客コミュニケーションエクスペリエンスを提供したいと考えていて、Segmentがその能力を大きく前進させるのに役立つはずだ。

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(翻訳:Mizoguchi

Twilioが顧客データのSegmentを3200億〜4200億円で買収へ

情報筋がTechCrunchに語ったところによると、Twilio(トゥイリオ)は顧客データスタートアップのSegment(セグメント)を30〜40億ドル(約3200億〜4200億円)で買収する意向だ。Forbesが10月9日にこのニュースを報じ、買収額は32億ドル(約3400億円)と伝えた。

TechCrunchは複数の業界筋から、このディールが進行中で早ければ10月12日にも発表されるとの情報を得た。

TwilioとSegmentはいずれもAPI企業だ。つまりデベロッパーが膨大な量のコードを書かなくても特定の種の機能を利用できるようにする簡単な方法を両社は開発している。筆者が2017年にSegmentについての記事で書いたように、同社はさまざまなソースからの顧客データをまとめるための一連のAPIを提供している。

SegmentはCRMツールや顧客サービスアプリ、ウェブサイトといったさまざまなソースから顧客に関するデータを集め、1カ所で閲覧できるようにする一連のAPIを提供していることで知られている。これは顧客情報の事業を展開するあらゆる企業が目指しているところだ。

2008年の創業以来、Twilioは主にコミュニケーション機能をアプリに簡単に埋め込めるようにすることに注力してきたが、その一方で2018年3月、顧客サービスAPIのFlexをリリースしたときに方向性の変更を示していた。そして同年後半に同社は電子メールマーケティングAPI企業SendGrid(センドグリッド)を20億ドル(約2100億円)で買収した。

Twilioの時価総額は10月9日時点で450億ドル(約4兆8000億円)とかなりのものだった。同社が基幹のAPI、特にFlexにSegmentの顧客データを統合し、またカスタマイズされた電子メールや広告をSendGridと作成するためにいかに潤沢な資金を持っているか想像できるだろう。

今回の買収でTwilioはコミュニケーション対応という従来の主要サービスを超えて事業を拡大することができるかもしれず、これには50億ドル(約5300億円)かかるかもしれない。複数のチャンネルを使って顧客を理解したり顧客とコミュニケーションをとったりする方法を模索する企業が増える中で、大きなビジネスに発展する可能性を秘めている良いディールだ。

アーリーステージVC企業HaystackのSemil Shah(セミル・シャー)氏は「Segmentが顧客データを集めるのに異なる方法を活用していることにTwilioが賢くも目をつけて買収しようとしている」と10月10日付の社のブログに書いた。

従来のCRMが企業にとってきちんとパイプを管理するほど強固なものではない、というのがSegmentの考えだった。より統一された体験を提供するためにSegmentは顧客データインフラに参入した。いま、Twilioの下でSegmentは主要なインテグレーションを引き続き構築できる。こうしたインテグレーションは世界のFortune 500企業ですでに使用されている。

Crunchbaseのデータによると、Segmentは2011年に創業され、これまでに2億8300万ドル(約300億円)を調達した。直近では4月に15億ドル(約1590億円)のバリュエーションで1億7500万ドル(約185億円)を調達した(CrunchBase記事)。

Twilioの株価は10月9日、2.39%アップの1株あたり306.24ドル(約3万2000円)でひけた。

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タグ:Twilio、Segmen

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(翻訳:Mizoguchi

アプリに銀行口座を連携させるPlaidがインターフェイスを改良、銀行決済をカードのように簡単に

アプリやサービスと銀行口座を接続できるユニバーサルバンキングAPIを開発するPlaidが、Plaid Linkをアップデートした。Plaid LinkはVenmo、Acorns、ChimeといったPlaidを利用しているアプリやサービスに銀行口座を追加する際に表示されるインターフェイスだ。

現在、3000ものアプリがPlaidを利用しているため、おそらくPlaidを目にしたことがあるのではないだろうか。同社によると、米国では4人に1人がPlaidを使ってアカウントの連携を行っているという。

そして、米国時間10月2日のアップデートは、複数のアプリでPlaidをより使いやすくするものだ。初めて銀行口座に接続するときは、銀行を検索して認証情報を入力してログインする。

2回目にアプリやサービスへ銀行口座を登録する場合、Plaidは以前に追加した銀行口座を表示する。金融機関のリストをスクロールして自分の銀行を探し、またユーザーIDなどを入力する必要はない。ただし、Plaidがパスワードやワンタイムパスワードの入力を再び求めることはあるかもしれない。

画像クレジット:Plaid

eコマースプラットフォームで買い物をする場合、カードを保存しておけば、その情報を再度入力する必要はない。本日のPlaid Linkのアップデートで、同社は銀行口座情報についても同様のことを行っている。

ペイメントカードは、銀行口座に接続して送金するよりもカードでの決済の方がはるかに簡単であるため流行している。Plaid Linkが使いやすくなったことによって、フィンテックのスタートアップがユーザーの口座に接続するときの面倒が減るだろう。

またPlaidによると、さらにPlaid Linkはやや速くなったという。各パネルの読み込みが30%速くなった。現在、銀行のリストはユーザーの場所に応じて表示される。地元の銀行がリストの一番上に表示されるため、スクロールする必要もなくなった。

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