暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.13~9.19)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年9月613日~9月19日の情報をまとめた。

グルメSNS「シンクロライフ」と川崎フロンターレが提案する「スタジアム飲食と地域活性化をDXで実現」プロジェクトを神奈川県が支援

トークンエコノミー型グルメSNS「シンクロライフ」を運営するGINKAN(ギンカン)は9月14日、Jリーグ川崎フロンターレと共同で提案する「スタジアム飲食と地域活性化をデジタルトランスフォーメーションで実現」プロジェクトが、神奈川県の「ビジネス・アクセラレーター・かながわ」(BAK)に採択されたことを発表した

神奈川県は、スタートアップ企業に対する支援策として「ビジネス・アクセラレーター・かながわ」を実施。新型コロナウイルスの感染拡大によって生じている社会課題の解決に取り組むスタートアップ企業などによる新しいプロジェクトを募集した。今回45件の提案から、有識者らによる審査の結果、県が支援を行う6プロジェクトが決定。GINKANと川崎フロンターレの提案が採択され、両社は今後、同プロジェクトを進めていく。

GINKANと川崎フロンターレの提案するプロジェクト「スタジアム飲食と地域活性化をデジタルトランスフォーメーションで実現」は、グルメSNS「シンクロライフ」のスマホアプリ(Android版iOS版)によるモバイルオーダーと、ブロックチェーン活用の暗号資産ポイントシステム(トークンエコノミー)を通して、川崎フロンターレの本拠地スタジアム内の飲食店と、川崎地域の地元飲食店のマーケティング領域におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく。

グルメSNS「シンクロライフ」と川崎フロンターレが提案する「スタジアム飲食と地域活性化をDXで実現」プロジェクトを神奈川県が支援

具体的には、モバイルオーダーによる混雑回避、キャッシュレス推進、試合結果に応じた、来店インセンティブ付与による地元飲食店集客への寄与を目指すという。安心・安全なスタジアム運営と、地域経済の活性化の実現を目標としている。

グルメSNS「シンクロライフ」は世界で展開中

GINKANが提供するグルメSNS「シンクロライフ」は、飲食のレビューや加盟店の利用を通して独自のポイント(シンクロポイント)を受け取れるグルメSNS。AI活用のレコメンドシステムを搭載し、独自アルゴリズムによる分析・機械学習により、自分好みの飲食店を見つけることもでき、ユーザーは「口コミへの不審感」と「検索の煩雑さ」から解放される仕組みが特徴。現在、シンクロライフは155ヵ国4言語(日本語・英語・韓国語・中国語)にて展開しており、23万件の食レビューと10万件以上の飲食店が掲載されている。

「シンクロライフ」は、サービスの基盤にブロックチェーンを活用しており、シンクロポイントをイーサリアムのERC-20準拠トークンとして発行する暗号資産シンクロコイン(SYC)へ変換できる(「SynchroCoin」ホワイトペーパー)。加盟店で飲食することで食事代金の1%以上のトークン還元を受けることも可能(法律の関係上、日本ではポイントの付与)。シンクロコイン(SYC)またはポイントは、店舗から提供されたQRコードを読み取ることで、アプリ内のウォレットに付与される。

シンクロライフは、ギフティが提供する法人向けサービス「giftee for Business」と連携し、シンクロポイントでファストフード店、コンビニやマッサージ施設などで利用できる「eギフト」の購入が可能。購入したeギフトは、店舗で利用が可能なほかプレゼントも行える。eギフトは順次ブランドを追加予定となっている。また、将来的には加盟店にてシンクロポイントによる電子決済を行うことも可能になるという。

シンクロコイン(SYC)は、GINKANの子会社SynchroLife Limitedが発行する海外の暗号資産取引所LATOKENにて上場する暗号資産。アプリ内に表示される「SYC活用ガイド」によると、将来的には、シンクロポイントはシンクロコイン(SYC)に1対1で交換可能になるという。シンクロコイン(SYC)は、現時点では国内において他の暗号資産や法定通貨との交換はできない。

損保協会とNECは、ブロックチェーン技術を活用した共同保険の契約情報交換に関する実証検証を実施

一般社団法人日本損害保険協会(損保協会)日本電気(NEC)は9月17日、ブロックチェーン技術を活用した共同保険の契約情報交換に関する共同検証の実施を発表した。共同保険の事務効率化に向け、ブロックチェーン技術の有効性や課題の洗い出しを行う。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、with/afterコロナの「新しい生活様式」への対応が求められている中、損害保険業界においても新しいテクノロジーを積極的に導入し、業務効率化を図っていくことが重要になっている。そこで、損保協会はNECの協力のもと、共同保険の書面・押印・対面での手続きを見直すなど、ブロックチェーン技術の活用による手続きの事務効率化の効果を測るべく、共同検証を実施する。

共同保険は、複数の保険会社が共同で保険を引き受ける方式の共同保険契約による保険証券。一保険会社では引き受けることが難しい巨大なリスクを分散するなど、各保険会社が自ら抱えるリスクを多様化・平準化するために共同保険とするもの。共同保険は、現在は年間数10万件におよぶ契約情報を、引受保険会社間で書面により交換し、各保険会社で契約計上業務を行っているという。

今回の共同検証には、損保協会の会員保険会社8社が参加し、ブロックチェーン技術を活用することで、書面を使わずに契約情報の交換を行う実証実験を開始する。実証実験により、迅速性、正確性、効率性を共同で検証する予定という。それにより、年間数10万件におよぶ契約情報の交換をペーパーレス化する。書面での情報交換をデータによる情報交換にするだけでも、各保険会社での契約計上業務が大幅に効率化されることが期待できるとしている。

損保協会とNECは、ブロックチェーン技術を活用した共同保険の契約情報交換に関する実証検証を実施

損保協会では実証実験を通じて、今後、業界横断での業務の共通化・標準化・共同化を通じて、社会インフラとして損害保険が持つ機能・役割をより発揮すべく、新しい技術による変革に努めていく。また、NECはブロックチェーン・AIなどの先進技術を活用するなど、デジタルを活用した金融サービスや金融業務の変革を支援する「Digital Finance」の取り組みを推進していくという。

Digital Financeでは、金融取引に特有のセキュリティや本人確認に対応した上で、デジタル技術を活用した新たな顧客体験・顧客理解を可能にするサービスや金融機関が有するサービスをオープンAPIでセキュアに連携可能とするサービスを提供していく。さらには、金融サービスのデジタル変革として、デジタルを活用した新たな業務プロセスや、セキュアなワークプレイス、新サービスを短期間で可能とする金融サービスのAPI群などを提供する。複雑化する金融業務におけるリスク対策や規制対応に対して、デジタル技術の活用を推進していく。

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

暗号資産取引所bitFlyerを運営するbitFlyerは9月17日、Tポイントをビットコインに交換できる同取引所のサービス「Tポイントプログラム」における月間交換利用者数が、8月に過去最高を記録したことを発表した。

2020年8月のTポイントプログラムの利用状況は、ビットコインの価格高騰を受け、Tポイントのビットコインへの交換数量が前月比1.8倍に、月間交換利用者数は前月比1.9倍を記録した。月間交換利用者数は昨年8月のサービスリリース以来、過去最高となった。

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

bitFlyerとTポイントジャパンは2019年8月に業務提携し、Tポイントとビットコインが交換できるサービス「Tポイントプログラム」の提供を開始した。同取引所のアカウントにTカードを連携することで、Tポイント100ptにつき85円相当のビットコインと交換できる。また、対象加盟店でbitFlyerウォレットを用いてビットコイン決済を行うと、500円ごとにTポイント1ptが付与されるサービスとなっている。Tポイントの会員数は現在、2020年7月時点で7066万人とされており、国内大手の共通ポイントサービスのひとつである。

Tポイントプログラムの連携者数推移は、8月は前月比3.8倍となり、月間連携者数はサービスリリース以来、過去2番目に多い月となった。

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

ビットコインの高騰が影響

2020年7月末にビットコインの価格が高騰し、90万円台から110万円台となった。8月に入ってからも価格上昇し、8月17日には約1年ぶりに130万円台を記録、bitFlyerのビットコインの取引量・取引者数が増加したという。ビットコインのみならず、イーサリアムも、2万5000円台から一時期4万円台まで変動している。

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

ビットコインに交換できるbitFlyerの「Tポイントプログラム」月間交換利用者数が8月に過去最高を記録

これを受けて、同社のマーケットアナリストを兼任する金光碧トレジャリー部部長は、「ビットコインの価格上昇については、コロナショックを受けて世界的な金融緩和が進んでおり、個人が投機的に買う投資対象からインフレヘッジとして機関投資家も買う資産へと見方が変わってきていることが影響しているのではないでしょうか」と分析。

「また、イーサリアムの価格上昇については、分散型金融(DeFi)で注目を集めていることが影響しています」という。「Tポイントプログラム利用者数増加の背景も同様に、ビットコインの価格上昇に伴いニーズが伸びているのだと思います」と指摘した。

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カテゴリー:ブロックチェーン

タグ:仮想通貨 / 暗号資産

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日本セキュリティトークン協会(JSTA)が、セキュリティトークン活用の新マーケット開拓アイデアを募集

一般社団法人日本セキュリティトークン協会(JSTA)は9月2日、セキュリティトークンを活用したイノベーションの追求を目的に、ビジネスアイデアコンテスト「セキュリティトークンで新たなマーケットを拓け!」の開催を発表した。セキュリティトークンならではの特色を活かした新しいビジネスのアイデアを広く募集する。最優秀賞には賞金50万円と事業化支援金50万円、優秀賞とアイデア賞にはそれぞれ賞金20万円が授与される。募集期間は10月30日まで。

日本セキュリティトークン協会(JSTA)が、セキュリティトークン活用の新マーケット開拓アイデアを募集

同コンテストは、日本国内におけるセキュリティトークンマーケットの裾野を広げることを目的に、セキュリティトークンを活用した新しいビジネスアイデアを募集する。アイデアには、ビジョン・解決したい課題、新規性が必須項目として求められる。「新しいマーケットを拓く」という観点から、システム・法規制・税制面での実現可能性よりも、創造性を重視して審査される。

セキュリティトークンとは、ブロックチェーン上で発行されるデジタルトークンのうち、有価証券その他の資産や価値の裏付けを有するものを指す。2020年5月1日に暗号資産についての新たな法規制である改正資金決済法および改正金融商品取引法(金商法)が施行されて、「電子記録移転権利」という考え方が新設。基本的にブロックチェーンなどで電子的に権利が移転できるものは、第一項有価証券という扱いになったことから、株式などと同じ類型となり、金商法によって規制される対象となった(例外もあり)。

ちなみにJSTAでは、金商法の適用のない資産などに対する権利をトークン化したもの、および当該権利を表示するトークンもまた、広くセキュリティトークンの定義に含むという。

セキュリティトークンは、既存の証券化ビジネスを変革するのみならず、新たな金融商品を生み出す可能性があることから、同コンテストでは、広く一般からアイデアを募集し、そこを狙う。コンテスト入賞者には賞金のほか、JSTA会員との協業検討の機会が提供される予定になっている。

コンテストの応募資格は、同コンテストのコンセプトに共感できれば、個人・法人・グループを問わず、誰でも応募が可能。応募の形式は自由。募集期間は10月30日まで。11月13日に書類審査による一次審査の結果発表が行われ、11月27日に二次審査となる非公開によるピッチ会が開催され、同日結果発表となる。

  • 募集期間: 10月30日まで
  • 応募資格: コンテストのコンセプトに共感いただける方。個人・法人・グループでの応募可、応募形式は自由
  • 必須項目: ビジョン・解決したい課題、アイデアの新規性、セキュリティトークンならではの特色
  • 賞金・入賞特典: 最優秀賞(賞金50万円+事業化支援金50万円)、優秀賞(20万円)、アイデア賞(20万円)、協賛企業賞

JSTAは、セキュリティトークンの知見を集約し、セキュリティトークンエコシステムの健全な発展を推進する非営利団体。セキュリティトークンの技術、制度、ビジネスに関して、調査、研究、普及・啓発活動などを通じて、セキュリティトークンの品質向上を図るなど、日本経済の健全な発展に貢献することを目的に活動をする。

協会加盟企業には、不動産会社から有名コンサルティングファーム、会計ファーム、ブロックチェーン企業、フィンテック企業まで、幅広い分野からの参加が特徴である。

国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)が「オンライン学修歴証明ネットワーク」を開始

一般社団法人国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)は9月3日、アイルランドに拠点を置くDigitaryと業務提携し、「オンライン学修歴証明ネットワーク」サービスの提供開始を発表した

RECSIEは、日本の大学などの教育機関が卒業証明書などの学修歴証明書をデジタル化し、オンライン上で発行するために、Digitaryと共同でデジタル学修歴証明書の実証実験を9月より開始。2021年の本格運用を目指す。

Digitaryは、学修歴証明書の認証、共有、検証のためのオンラインプラットフォームサービスを提供する。アイルランド、イギリス、イタリア、オーストラリア、インド、カナダにオフィスを構えるDigitaryのプラットフォームは、現在135カ国以上の組織で利用され、何百万人もの学習者に検証可能なデジタル認証証明書として利用されているという。

RECSIEの「オンライン学修歴証明ネットワーク」サービスでは、就職活動や海外留学などで必要とされる大学卒業証明などの学修歴証明書をオンライン取得できるようになる。証明書および検証のためのリンクURLを提出先に送付可能にするデジタルソリューションプラットフォームを提供する。

国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)が「オンライン学修歴証明ネットワーク」を開始同サービスの運用により、世界中のどこからでもPCやタブレット端末、スマートフォンを使用し、オンラインでデジタル認証された卒業証明書や成績証明書にアクセス可能になる。日本国内のみならず海外の留学先や就職先にも、検証可能な公式証明書としてデジタル学修歴証明書を送付できるようになる。また、日本の高等教育機関はセキュアなグローバルネットワークを通じて、国内外の学生からの証明書発行依頼を自動化処理することが可能になる。

現在、「世界市民のための電子学生データ・エコシステム」を目的とし、世界30ヵ国が加盟する国際機関フローニンゲン宣言ネットワークが設立され、世界的に学修歴証明書のネットワークを相互接続するなどの国際協調が活発化している。RECSIEは、2020年初頭にフローニンゲン宣言ネットワークに参加、日本の高等教育機関の証明書類のデジタル化に取り組んでいる。「オンライン学修歴証明ネットワーク」サービスの構築は、その一環となる。

暗号資産取引所bitFlyerがアンケート調査、2020年上半期に口座開設した顧客は日米欧共通で20代がメインに

暗号資産取引所「bitFlyer」は、同取引所の日本国内顧客を対象にアンケート調査を実施。2020年上半期に同社にて口座開設した顧客は20代が最も多くを占めていたなど、暗号資産(仮想通貨)にまつわるアンケート調査の結果を公開した。調査期間は2020年8月7日~8月24日。調査対象は2020年1月~6月に口座開設を行った顧客(日本国内)539名。調査方法はウェブアンケート調査。

2020年上半期に口座開設した顧客のうち、20代が全体の36%を占める

bitFlyerグループが事業を展開する米国・欧州連合では20代の口座開設者が最も多くなっており、今回の日本国内アンケート調査でも同様な結果となった。2020年上半期に口座開設した顧客は、20代が全体の36%を占め最も多く、30代が26%と続き、20代・30代だけで62%と過半数を超す結果になっている。

また、同社は2018年上半期と2020年上半期を比較。2018年上半期は30代(32%)・40代(28%)がメインだったが、2020年上半期には30代(26%)・40代(20%)と推移。

一方2020年上半期の20代の顧客割合は、2018年上半期の18%から、2倍以上の36%に増加した。これは日本に限らず、欧米の地域すべてに共通する傾向であるという。

暗号資産取引所bitFlyerがアンケート調査、2020年上半期に口座開設した顧客は日米欧共通で20代がメインに「将来性がありそうだから」「長中期的な運用に向いていそうだから」との回答が多い傾向に

2020年1月~6月に口座開設を行った顧客は、「暗号資産を始めようと思った理由・目的」として、半数近くが「将来性がありそうだから」と回答しており、これが最も多かったという。複数回答が可能な同質問では、「少額から始められる」「勉強・経験になるから」が2位、3位の回答であることも興味深い。

さらには「短期的な利益が得られそうだから」よりも「長中期的な運用に向いていそうだから」の回答の方が上回っていることから、若い世代は暗号資産を短期の投資・投機というよりも将来的な可能性に期待する投資対象と見ているとともに、勉強・経験しておくべきものとして暗号資産を捉えているのも面白い。

暗号資産取引所bitFlyerがアンケート調査、2020年上半期に口座開設した顧客は日米欧共通で20代がメインにその傾向は、「最も期待している暗号資産は?」の質問にも見て取れる。顧客の6割はビットコイン(BTC)を選択。続いては、DeFi(分散型金融)の流行を背景に注目されるイーサリアム(ETH)が2位となった。また、同取引所が2019年12月より取り扱っているXRP(Ripple)、8月より取り扱いを開始したNEM(XEM)、ベーシックアテンショントーク(BAT)がランキング上位に続く。

暗号資産取引所bitFlyerがアンケート調査、2020年上半期に口座開設した顧客は日米欧共通で20代がメインに

暗号資産・ブロックチェーンを取り巻く社会の変化が、取引所における顧客の傾向にも影響することがわかるアンケート調査結果になったのではないか。今後も、その変化には注目していきたい。

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カテゴリー:ブロックチェーン

タグ:仮想通貨 / 暗号資産(用語)

bitFlyerがObjective-C共同開発者Tom Love氏を顧問に、ブロックチェーン向け言語開発に取り組む

bitFlyerは、プログラミング言語Objective-Cの共同開発者であるTom Love氏を顧問として迎え入れた。同氏の協力により開発体制の強化と技術レベルの向上を図る。またブロックチェーン向けのクエリ言語やスマートコントラクト向け言語の開発に取り組む。bitFlyerは仮想通貨取引所を運営するとともに独自プライベートブロックチェーン技術miyabiを開発するテクノロジー企業でもある。

Tom Love氏

Tom Love氏はBrad J. Cox氏と共にObjective-Cを提供するStepstone社を1983年に設立(のち1995年にNeXTに売却)。その後General Electric、ITT、IBM、Morgan Stanleyで経験を積んだ。bitFlyer代表取締役の加納裕三氏は「プログラミング言語の設計者の知見を持っている人は大勢はいない。言語の設計をお願いしたいと考えている」と話す。

同社が作ろうとしているブロックチェーン向けクエリ言語やスマートコントラクト向け言語とはいったい何か? 加納氏は「ブロックチェーンには標準的なクエリ言語(問い合わせ言語)がまだない。クエリ(問い合わせ)のための統一的な手法がないのは不便だ」と指摘する。「RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)のクエリ言語SQLは過去30年使われている。複数の製品で共通に使えるSQL言語があったことはRDBMSの普及に大きく貢献した」。そこでSQLをイメージしつつ、ブロックチェーン向けの問い合わせ言語を作っていく。

ISO(国際標準化団体)ではブロックチェーンのインタオペラビリティ(相互運用性)に関する議論が始まっている。「時間はかかるだろうが、そこでクエリ言語の仕様が決まるといいと考えている」と加納氏は語る。クエリ言語の標準仕様が決まり、複数のブロックチェーン技術で共通に使えるようになれば、ブロックチェーン技術の普及に貢献するはずだ。

「Hyperledger Fabricでも、miyabiでも、他の製品でも、共通に使えるクエリ言語があれば、ブロックチェーンの相互運用性が高まる。例えば犯罪収益移転防止のためKYC(本人確認)のさい世界中の複数のブロックチェーンの情報を参照したい場合、共通に使えるクエリ言語があればシステムを作りやすくなる」と加納氏は説明する。

クエリ言語とは別に、スマートコントラクト(ここではブロックチェーンの管理下で実行するプログラムという意味でこの用語を使う)を記述するプログラミング言語にも取り組む。「ブロックチェーン分野の開発で頻繁に発生する処理がある。それをライブラリにするか、あるいは言語仕様に取り込めば、開発がしやすくなる」と加納氏は話す。

スマートコントラクト用のプログラミング言語としては、EthereumのSolidity言語がよく知られている。プライベートブロックチェーン技術では、Hyperledger FabricはGo言語やJava言語を使って開発できる。miyabiではC#言語で開発する場合が多い。この分野でより使いやすい言語を作り出そうという試みである。

課題が多い分野でもある。Ethereumのスマートコントラクトは、過去にハッキングによるThe DAOの資金流出事件やParityウォレット凍結事件を引き起こした。そこでEthereum Foundationではバグや脆弱性を未然に防ぐためプログラムを厳密に検査する形式検証手法に取り組んでいる。また米Blockstream社は、スマートコントラクト用言語Simplicityをオープンソースソフトウェアとして公開した。Simplicityはバグの可能性を極力排除した言語仕様を持つが、一方で「人間のプログラマには向いていない」との意見もある。このようにスマートコントラクト向けのプログラミング言語は議論が多い。この分野にbitFlyerが参入することで、新たな技術的知見が生まれる可能性もある。

今回bitFlyerの顧問に就任したTom Love氏は、1980年代前半にBrad J. Cox氏と共にプログラミング言語Objective-Cを開発したことで知られる。Tom Love氏は最近はブロックチェーン技術に関心を持っているという。bitFlyerの発表文にTom Love氏は次のコメントを寄せている。「今、仮想通貨とブロックチェーン技術の世界は刺激的な時期ですが、これはまだ始まったばかりです。今後数ヶ月から数年の間にこの分野ではさらなる破壊と創造が起きることでしょう。特に向こう1年は今後のマイルストーンとなる年であり、bitFlyerで働けることを楽しみにしています」。

Objective-Cは1980年代前半と最も初期に登場したオブジェクト指向言語のひとつ。C言語にSmalltalk言語のオブジェクト指向プログラミング機能を取り入れた言語仕様を持つ。Steve Jobs氏率いるNeXT(設立時はNeXT Computer、後NeXT Softwareに社名変更)はObjective-C言語を開発環境として採用。1996年にApple ComputerがNeXTを買収した後には、Objective-CはMacOS X(現在の表記はmacOS)やiOSの開発言語として使われた実績を持つ。

bitFlyerが欧州で事業開始、昨年のアメリカ進出に続きグローバル展開を加速

昨年11月にアメリカに進出した、bitFlyer。同社は次のステップとして今度は欧州連合(EU)で仮想通貨事業の展開をはじめるようだ。

仮想取引所「bitFlyer」を運営するbitFlyerは1月23日、本日よりルクセンブルクに拠点を構える子会社のbitFlyer EUROPEを通じて、EUで仮想通貨交換業を開始したことを明らかにした。

EU域内で仮想通貨交換業等など特定の金融事業を運営するには、加盟国のいずれかにおいてライセンスを取得する必要がある。同社はbitFlyer EUROPEがルクセンブルクにおいてPayment Institution Licenseを取得したことを発表。欧州では取引量の多いプロトレーダー向けサービスから取り組む。

まずはビットコインとユーロの取引に対応。2018年中に Litecoin、Ethereum、Ethereum Classic、Bitcoin Cashなどの取扱いを予定する。

bitFlyerは2017年9月に日本で仮想通貨交換業者として登録。アメリカでも2017年11月時点で、子会社のbitFlyer USAが42州での仮想通貨交換業運営の許可を取得している。今回の欧州進出はこれに続くもので、同社によると日本、アメリカ、EUにおける仮想通貨交換業のライセンス取得は世界初だという。

EUでの事業開始にあたってbitFlyer代表取締役の加納裕三氏は「bitFlyerは2014 年の創業当初から世界展開を目指しており、またビットコインと仮想 通貨業界の長期的な発展には規制導入が不可欠であると当時より考えていました。当社グループが日本・米国・EUにおいて仮想通貨交換業のライセンスを取得した世界で初めての事業者となったことを光栄に思います。この度のPayment Institution License 取得は当社グループやお客様だけでなく、仮想通貨業界に対してもポジティブなものになると考えています」とコメントしている。

bitFlyerが全銀協ブロックチェーン実証実験でNTTデータら大手3社と競争へ

bitFlyerが、全国銀行協会(全銀協)が推進する実証実験プラットフォームを提供するベンダーの1社に選ばれた(発表資料)。同社のブロックチェーン製品「Miyabi」を、新たな決済・送金サービスや本人確認・取引時確認(KYC)、金融インフラの分野での実用化に向けた実証実験に投入していく。今回選ばれた選ばれた他のベンダーはNTTデータ、日立製作所、富士通の各社で、日本の最大手システムインテグレータとスタートアップ企業が並ぶ形となった。

全銀協は日本の銀行のほとんどが加盟する団体で、銀行間ネットワーク「全銀システム」や電子債権記録「でんさいネット」の運営主体としても知られている。全銀協は銀行間ネットワークを視野に入れた実証実験のための「ブロックチェーン連携プラットフォーム」をこの10月にも立ち上げようとしている(発表資料)。今回、このプラットフォームに実証実験環境を提供するパートナーベンダーのとしてbitFlyerが選ばれた。この分野の有力スタートアップとして米Rippleと米R3がある。全銀協に選ばれた時点で、彼らのプロダクトと同等以上の評価を受けたといってもいいだろう。

今後、複数の国内銀行がMiyabiを用いた新たな金融プラットフォームの実証実験に乗り出す見こみだ。それに伴い、銀行の開発パートナーとなる開発会社もMiyabiに基づく環境構築やアプリケーション構築の経験を積むことになる。実証実験でMiyabiが良い実績を出し続ければ、将来的な銀行間ネットワークの構築技術の候補となるかもしれない。

なお、今回選ばれたbitFlyer以外の3社はLinux Foundationが推進するHyperledgerプロジェクトに賛同する立場にある。特に富士通は、全銀協向けにHyperledger Fabricと同社クラウドを組み合わせた検証プラットフォームを提供する予定を明確に打ち出している(発表資料)。Hyperledger FabricとMiyabiが次世代金融プラットフォームの座を競うことになるかもしれない。

Miyabiと銀行といえば、2016年11月の3大メガバンクが参加したブロックチェーン実証実験が思い浮かぶ(関連記事)。全銀協がMiyabiを選んだ背景に、この実証実験の成果があったことは想像に難くない。

Miyabiは「ファイナリティを備えるブロックチェーン/DLT製品中で世界最速」

Miyabiとはどのようなプロダクトなのだろうか。詳細な資料は現時点では公開されていないが、Miyabiは、もともと金融機関での送金をターゲットに開発してきた経緯があるとのことだ。「ファイナリティを備える製品中では世界最速だ」とbitFlyer代表取締役社長の加納裕三氏は胸を張る。「もちろん、対改ざん性、ビザンチン障害耐性あり、単一故障点なしとブロックチェーンとしての特徴をすべて備えたうえでの話だ」。「日本以外の銀行にも、働きかけていきたい」と加納氏は話している。

bitFlyerが公開した資料を基に、ブロックチェーン/分散型台帳(DLT)技術としてのMiyabiの特徴について説明してこう。

まず、ブロックチェーン全体の特徴からだ。下の図は、ブロックチェーン技術、分散型台帳技術、分散データベースに関して、bitFlyerが整理した図である。

ここで改めてブロックチェーン技術の特徴を振り返ると、データをネットワーク上に分散させて保持できること(高可用性に結びつく)は当然として、(1) 改ざん不可能、(2)ビザンチン障害耐性、(3)単一障害点(SPOF)なし、という特徴を兼ね備えることが特色だ。Miyabiは、これらのブロックチェーン技術としての特徴を満たした上で、ファイナリティと処理性能を兼ね備える点で独自のポジションにいるとbitFlyerの加納氏は話す。

この特徴から導かれるメリットは、ハッキング行為でデータを不正に操作される可能性がきわめて小さく、また単一のノードがダウンしてシステムが止まる危険性がないことだ。ブロックチェーン技術とは、信頼できる共有台帳(あるいはデータ格納手段)として考えうる最も高度なスペックを備えている。ただし実績作りはこれからなので、ブロックチェーン技術全般に懐疑的な意見の専門家もまだいる段階ではある。

ブロックチェーンの特徴に加え、ファイナリティと性能を追求

ブロックチェーン技術に銀行が求める要件は先の高可用性、対改ざん性、ビザンチン障害耐性、単一障害点なしというブロックチェーン技術の特徴だけではない。(1)確定的な合意形成アルゴリズムと(2)処理性能が大きい。

(1)について少し説明する。ブロックチェーン技術の場合、ビットコイン、Ethereum、mijinで用いられているPoW(Proof of Work)やPoS(Proof of Stake)は「ナカモト・コンセンサス」、あるいは確率的ビザンチン合意と呼ばれている。合意形成が確率現象となり、取引がくつがえる確率が時間とともに0に収束する。ただし、厳密にゼロにはならない。メリットは巨大な分散型システムに適用できることだ。ビットコインやEthereumを見れば分かるように確率的な合意形成アルゴリズムにより実用上は問題なく取引できるのだが、銀行側は「ファイナリティ(決済の確定性)」を重視する立場から確率的な挙動は受け入れられないと考えている模様だ。

そこで銀行側が求めるファイナリティの要件を満たすのは、確定的な合意形成アルゴリズムに基づく製品ということになる。Miyabiの場合、BKF2と呼ぶ独自設計の確定的な合意形成アルゴリズムを採用する。

確定的な挙動の合意形成アルゴリズムのルーツは、分散システム研究から生まれたアルゴリズムであるPaxosかPBFT(Practical Byzantine Fault Tolerance)である。MiyabiのBKF2は「Paxosに近い」とbitFlyer CTOの小宮山峰史氏はコメントしている。

bitFlyerの説明では、Miyabiは、Hyperledger Fabric、R3やRippleの技術よりもビットコインの技術により近いとのことだ。「我々はビットコインの開発者サトシ・ナカモトを尊敬している。安全に資産を移転するため『通貨型』の概念も取り入れている。承認の仕組みも、単一障害点かつ単一信頼点となる認証局に頼るのではなくマルチシグを導入している」(加納氏)。ここで注釈を加えると、Hyperledger FabcirにはビットコインのUTXOやMiyabiの「通貨型」のように通貨特有の制約を持つデータ型の概念はない。またHyperledger Fabricでは認証局の存在が、単一障害点/単一信頼点となる懸念が指摘されている。

処理性能に関してだが、ブロックチェーン技術の単体の処理性能はブロック容量、取引記録の容量、ブロック生成間隔が基本的なパラメータとなる。またPaxosやPBFTのような確定的な合意形成アルゴリズムはプロトコルの負荷が大きく、ノード数が増えると合意形成の時間が増える形で性能に影響する。

Miyabiの場合は、1500〜2000件/秒の処理性能を確認しており、より高速なハードウェアを投入すれば4000件/秒以上の性能が得られるとしている。Hyperledger Fabric v1.0では合意形成をグループ分けして分散することでトータルの処理性能(スループット)を高めるアプローチも可能となっているが、「それでは処理を振り分ける部分(ディスパッチャ)が単一障害点になる」と加納氏は指摘する。Hyperledger FabricやCordaがオリジナルのビットコインを大幅にアレンジした技術であるのに対して、Miyabiはビットコインの技術を研究して得られた知見を追求した技術との立ち位置といえる。

Miyabiはまだ公開情報が乏しく、多くの読者からはベールに包まれた製品に見えているかもしれない。ただ、3大メガバンクが実証実験を実施し、全銀協が実証実験プラットフォームに選んだことで、銀行業界から高評価を得ていることは確かだ。今後の実績の蓄積を期待したい。

ビットコイン決済が身近に、bitFlyerがビックカメラ2店、Coincheckが26万店展開のAirレジで

bitFlyerはビックカメラの旗艦2店舗にビットコイン決済サービスを提供する。

お店でビットコインを使って買い物をすることが、ごく近い将来に普通の光景になるかもしれない。2017年4月5日、家電量販大手ビックカメラが旗艦2店舗でbitFlyerのビットコイン決済の導入を発表した。同日、26万店舗にサービスを提供中のPOSレジアプリ「Airレジ」がこの夏をめどにCoincheckのビットコイン決済に対応することが明らかになった。

Airレジでのビットコイン決済のイメージ。店舗側のiPhone/iPad上のPOSレジアプリと、顧客のスマートフォンのQRコード読み取り機能付きのウォレットアプリを使う。

同じ日の2件の発表には共通のトリガーがある。ビットコインの法的位置づけを明確にした改正資金決済法が2017年4月1日より施行されて、いわば政府の“お墨付き”を得た形になったことがひとつ。法的位置づけが明確になったことで、大手事業者がビットコインを堂々と取り扱えるようになった。

もうひとつのトリガーは海外から訪日する観光客によるビットコイン決済の利用を見込んでいることだ。訪日観光客にとって、ビットコインは両替の手間がなく使える便利なお金という訳だ。

bitFlyerはビックカメラ旗艦2店舗に提供

bitFlyerとビックカメラは、2017年4月7日より「ビックカメラ有楽町店」と「ビックロ ビックカメラ新宿東口店」の旗艦2店舗でビットコイン決済サービスを開始する。1会計につき10万円相当までを上限とする。ポイント付与率は現金と同等だ(つまり、クレジットカード払いよりも多くのポイントが貯まる)。またbitFlyerは、ビックカメラ店舗でbitFlyerのiOSアプリを使ってビットコイン決済をする先着200名を対象に500円相当のビットコインをプレゼントするキャンペーンを実施する。

ビックカメラは、今回の取り組みを「試験導入」と位置づける。旗艦2店舗で有効と判断すれば、ビットコイン決済の取り組みが広がっていく可能性もある。

Coincheckのビットコイン決済機能を26万店導入のAirレジに提供

iPad/iPhoneをPOSレジとして使えるようにする「Airレジ」は、2017年夏頃をメドにビットコイン決済に対応する。ビットコイン決済サービスCoincheck paymentを提供するコインチェック(この2017年3月にレジュプレスから社名変更)、決済事業を手がけるデジタルガレージの子会社のベリトランス、イーコンテクストの3社が連携し、リクルートライフスタイルが提供するAirレジ向け決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にビットコイン決済機能を提供する。

Coincheck Paymentは、2017年1月時点で、日本国内で約4000件以上の導入実績がある。その中のいくつかはTechCrunch Japanでも紹介してきた(DMM.comでの利用開始寄付金の受付電気料金支払いの事例)。

今回は、新たにAirレジでビットコイン決済を受け付けるようにした。リクルートライフスタイルが提供するAirレジは、iPhone/iPadをPOSレジとして利用できるようにするサービスで、店舗側は無料で利用できる。IT投資額が大きくない普通の飲食店でも利用できる手軽さが特色だ。利用者数は約26万件に達する。Airレジを入り口に店舗向けのサービスを強化しつつあり(例えば「ホットペッパーグルメ」と連携したサービスなど)、今回のビットコイン決済の導入もAirレジを取り巻く店舗向けサービス強化の一環といえる。

モバイル決済 for Airレジ」は、「Airレジ」と連携する決済サービスで、現状では中国からの訪日観光客の利用が多い決済サービスAlipay(支付宝/アリペイ)と、日本での利用者数が多いLINE Payに対応している。新たにビットコイン決済が支払い手段として加わる形だ。

このAirレジがビットコイン決済に対応すれば、Airレジを導入した多くの店舗が特別な手間をかけずにビットコイン決済を導入できるようになる。現在の約4000店舗から最大26万店舗へとビットコイン決済の導入数が伸びることが期待できる。

もともとCoincheck Paymentは、カフェ、寿司屋のような店舗でも手軽にビットコイン決済を利用できることを「売り」として展開してきた。顧客は、スマートフォン上のQRコードを読み取ってビットコインを送金できるアプリを使う(これは複数あるウォレットアプリやQRコード対応のビットコイン取引所アプリを使うことができる)。

ビットコイン決済は客と店舗の双方にメリットがある

ビットコイン決済は、客(特に訪日外国人客)と、店舗の双方にメリットがあるサービスといえる。

海外から日本に来たばかりの外国人が日本円を利用するには両替が必要だ。クレジットカードは後払いというメリットがあるが、別の通貨で支払う場合の手数料や、スキミングのリスクというマイナス材料がある。Suicaや楽天EdyのようなFeliCa対応の電子マネーは日本国内では便利だが、外国人が旅行中だけ利用する使い方はあまり考慮されていない。ビットコインは外国人であることの不利を感じずに済むお金だ。

店舗側から見れば、ビットコイン決済はカード決済よりも早く入金する(また日本円で受け取ることができる)。決済会社のマージンは1%とクレジットカードより割安だ。店舗側にとってもメリットがあるサービスという訳だ。

決済システムとして見たビットコインには、値動きがあり、決済確定までに6承認で1時間かそれ以上の時間がかかる点が課題としてよく指摘される。だが店舗向けビットコイン決済サービスでは、値動きや決済時間の問題は事業者(bitFlyerやCoincheck)が肩代わりしてくれる。利用者や店舗から見れば、難しいことは考えず、日本円建てと同じ感覚で決済がすぐ完了する「便利なお金」として使える。

ビットコインをめぐって膨大な量の議論があり、今でもビットコインへの懐疑的な意見を聞くことがある。その一方で、法制度の整備やサービス投入は着々と進んでいる。管理する「中央」がないお金に関する法整備が進み、サービスが増えている。これは目の前の観測された事実だ。ビットコインには注目しておいた方がいい。

ビットコイン取引所へのサイバー攻撃に備える保険をbitFlyerと三井住友海上火災保険が開発

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ms_ad_logo仮想通貨の取引所を運営するbitFlyer関連記事)と三井住友海上火災保険は、ビットコイン取引所、仮想通貨取引所などの事業者を対象とした「サイバー保険」を共同開発した。サイバー攻撃による仮想通貨の大量盗難もカバーする。bitFlyerでは「サイバー保険には顧客保護の意味合いがある。ビットコイン購入に二の足を踏む人にも、より安心してもらいたい」(経営戦略部の小亀俊太郎氏)と話している。

仮想通貨取引所をめぐる事件では2014年2月に破綻したマウント・ゴックスが有名だ(この事件ではサイバー攻撃よりも内部犯行の比率が大きいと考えられている)。最近では2016年8月に仮想通貨取引所Bitfinexが約12万BTCをサイバー攻撃により盗難される事件があった。これ以外にも、仮想通貨取引所を狙ったサイバー攻撃の事例は増える一方だ。ユーザーの立場から見れば、もし自分が資産を預ける仮想通貨取引所がサイバー攻撃による大量盗難の被害にあうと、資産を失ったり、また取り戻せたとしても長期間にわたり資産を移動できなくなる。そのような事態を想定した保険が登場することはユーザーを保護する効果があるといえる。

今回開発した保険は、サイバー攻撃によるビットコインの盗難や消失に対する損害賠償、事故対応に必要となる各種対策費用(見舞金、コンサルティング費用、原因調査費用、被害拡大防止費用など)を含めて保証する。また、サイバー攻撃への対応のための原因調査や証拠保全など事故対策の専門事業者の紹介や、サイバー攻撃を未然に防ぐためのサイバーリスク対策サービス(標的型メール訓練、情報漏洩リスクに関するセキュリティ診断、従業者向けチェックリストなど)も提供する。なお、仮想通貨取引所の経営者による犯行(マウント・ゴックス事件はこのケースだと考えられている)は対象外となる。

背景には、2016年6月の資金決済法の改正がある。法改正では仮想通貨への規制を盛り込み、いわば「公認」した。政府が仮想通貨を認める方向で法整備を進めていることから、今後ビットコインや他の仮想通貨を扱う事業者が国内で増えることが予想される。今回の保険には、仮想通貨を扱う業者がサイバー攻撃へのリスクに備える手段を提供する狙いがある。

それでも2段階認証の設定は忘れずに

取引所へのサイバー攻撃が盛んになっていることもあり、ビットコイン投資に詳しい人には「取引所に多額の仮想通貨を置くのは危険。仮想通貨はハードウェアウォレットに管理し、ビットコインの移動に必要な秘密鍵は個人の責任でバックアップするべき」との意見が多い。そのためのハードウェアウォレット製品も複数製品が登場している(関連記事)。とはいえ、ビットコインをはじめ仮想通貨のユーザーが増える中、すべてのユーザーに秘密鍵のバックアップ作業をしてもらうのは無理がある。今回の保険は事業者向けだが、間接的には仮想通貨取引所に「預けっぱなし」のユーザーへの保護の強化になるといえるだろう。

残念ながら、ユーザーのログインパスワードを破られて取引所に預けた仮想通貨が盗まれてしまうケースは今回の保険のカバー範囲外だ。仮想通貨取引所のユーザーには、強度が強いパスワードを使うだけでなく「2段階認証」を設定することを強くお薦めする。

ビットコイン販売所運営のbitFlyer、リクルートやGMO-VPから1億3000万円の資金調達

ビットコイン販売所「bitFlyer」を運営するbitFlyerが、リクルートグループのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である合同会社RSPファンド5号のほか、GMOVenturePartners、Bitcoin Opportunityを割当先とした総額約1億3千万円の第三者割当増資を実施した。

bitFlyerは2014年5月に立ち上がったビットコインの販売所。「bitWire」と呼ぶ即時送金機能を備えるのが特徴だ。メールアドレス登録だけでビットコインの送付が可能(ただし売買などはできない)なアカウントが提供されるほか、銀行口座や住所などを確認することで、売買や各機能を利用できるアカウントや、1日の取引額の上限を拡大したアカウントを得られる。2014年10月にはGMOグループのGMOペイメントゲートウェイと資本業務提携も実施している。

今回の調達をもとに海外拠点の整備や人材採用を進めてサービス開発を加速するほか、プロモーションを実施するという。割当先はいずれも国内外での投資を積極的に行っており(Bitcoin Opportunityは米国ニューヨークに拠点を置くビットコイン特化ファンドだ)、さらなるグローバル展開を狙っていることがうかがい知れる。


ATMや1秒送金サービスも チャンスをうかがう国内ビットコインスタートアップ

ビットコインと聞くと、国内ではビットコイン取引所のMt.Goxにまつわる騒動を思い浮かべる読者も多いのではないだろうか。どうしてもネガティブなイメージがつきがちだが、関係者からは、「Mt.Goxの騒動はあくまで同社のシステムに由来する問題であり、ビットコイン全体の問題とは別だ」という声が聞こえてくる。その意見を裏付けるかのように、ビットコインは国内外を問わずに注目を集め続けている。では日本での動向はどのようになっているのか。

東京にはビットコインATMが登場

5月末には、米国製ビットコインATMの「Robocoin(ロボコイン)」が西麻布のVerandaと六本木のPink Cowという飲食店に設置された。Robocoinは、運転免許証スキャナー、手のひら静脈認証、顔写真撮影といった本人確認機能を備えるビットコインのATMだ。あらかじめデジタルウォレットを作成していれば、円紙幣でビットコインを購入したり、ビットコインを売却して、円紙幣を受け取ることが可能だという。

西麻布にRobocoinを設置したのは、2014年4月に設立したばかりの長崎のビットチェック。同社代表取締役の峰松浩樹氏は、これまでに長崎でシステム開発やビットコインの採掘(計算によってビットコインを得る作業)を手がけてきたという。

ビットコイン販売所のbitFlyerは国内VC2社から資金調達

時を同じくして5月末、国内のスタートアップであるbitFlyerが、ビットコインのオンライン販売所「bitFlyer」を公開した。bitFlyerは、買い手の希望する金額にマッチする売り手がビットコインを販売する取引の場となる「取引所」とは異なり、外貨への交換のように、固定価格でビットコインの売買ができる「販売所」となっている。これまでビットコインの取引所はあったが、販売所を提供するのは日本では初だそうだ。

bitFlyerを利用するには、同社のアカウントを作成する必要がある。手数料は2800円だが、現在は無料化している。アカウント作成に際しては、個人情報や銀行口座を登録したのち、同口座からbitFlyerの指定する口座に実際に入金をするなどして、本人確認を徹底している。

またbitFlyerでは、直近にも「bitWire」と呼ぶ送金機能を提供する予定だ。通常ビットコインを送金する場合、認証までに少なくとも10分、長ければ1時間ほどかかるそうだ。だがそんなに時間がかかってしまうのであれば、通常の店舗では利用が難しい。実際に海外での利用実態としては、認証を待たずにビットコインでの決済を受け付けるケースもあったそうだ。だが将来的に、認証途中に利用者が店舗を去ってしまって「認証できない(支払われない)」となって問題になるかもしれない。しかしbitWireを利用すれば、(仕組みについては教えてもらえなかったが)その処理を約1秒で終わらせることができるのだそうだ。

bitFlyerは2014年1月の設立。代表取締役の加納裕三氏は、以前に外資系投資銀行でトレーダーを務めていた人物。グノシー共同代表を務める木村新司氏は加納氏の古い友人だとのことで、創業時に個人投資家として出資している。

同社は6月6日、国内のベンチャーキャピタル2社(非公開)から約1億2000万円の資金を調達している。「ユーザーのビットコインは(取引時以外)コールドウォレット(ネットワークに繋がっていないデジタルウォレット)に保管しているので物理的に安全な措置をとっている。しかし万が一のトラブルに遭っても対応ができるような、信用できる状況を作りたい。今後はセキュリティにも注力する」(加納氏)

関連事業者への投資も進むが、まずは利用環境の拡大に期待

実は国内ベンチャーキャピタルが、bitFlyer以外のビットコイン関連サービスへの投資を予定しているという話も聞いているし、まだまだプレーヤーは増えてきそうだ。だが一方で、ビットコインを利用できる環境はまだまだ少なく、直近では投機目的の利用者が多くを占めている状況。また、ビットコイン自体を懐疑的に見る人間も多いのが実情だ。加納氏も「bitWireを提供することで手軽な送金を実現して、利用機会を増やしたい」といった話をしてくれたが、まずは安全に利用できる環境がどれだけできるかが普及のカギになりそうだ。