2021年の米企業ニューストップ5:ベゾス氏の退任、Salesforceの共同CEO就任など

消費者側と比べると、企業側の取材はなんだか退屈だという間違った印象を持たれがちだが、これまで数十年にわたってこの分野を追いかけてきた筆者からすると、これほど真実から遠く離れたものはないと断言できる。

理由の1つは、金額が大きいということだ。例えば、Oracle(オラクル)はCerner(サーナー)を280億ドル(約3兆2200億円)で買収すると米国時間12月20日に発表してヘルスケア業界を揺るがした。UiPath(ユーアイパス)は無名のスタートアップから、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の絶対的な存在にまで成長した。上場後に少し下落したが、2021年初めには350億ドル(約4兆円)のバリュエーションがついた。

策謀もある。例えば、アクティビスト投資家が、企業が通常なら好まないような動きを強いる試みや、2021年にBox(ボックス)で見られたような取締役会の主導権争いなどだ。

ドラマもある。100億ドル(約1兆1500億円)規模の国防総省のJEDIクラウド契約をめぐる、世界最大の企業向けクラウドインフラ企業同士の3年にわたる戦いがその例だ。この調達プロセスでは、訴訟、度重なる審査、大統領の干渉などあらゆることが起こった。

つまり、企業の話題は多い。が、つまらないだろうか。決してそんなことはないと思う。2021年も例外ではなかった。そこで、2021年の締めくくりに、企業を揺るがした5つのストーリーを紹介する。12カ月にわたるニュースを5大ストーリーに絞り込むのは難しいが、筆者が選んだのは以下の5つだ。

アマゾンのベゾス、ジャシー、セリプスキーのイス取りゲーム

2021年最大のニュースは、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏がCEOから退き、会長職に就くと決意したことだろう。Amazon(アマゾン)はeコマース企業で、必ずしも筆者の担当範囲ではなく、このこと自体は企業に大きな影響を与えるものではなかったが、その後に起こったことがある。

ベゾス氏が発表した2月のその日に、後任にAmazon Web Services(アマゾンウェブサービス)のCEO、Andy Jassy(アンディ・ジャシー)氏を選んだことも明らかになった。ジャシー氏は、Amazonのクラウドインフラ事業を巨大なビジネスに育て上げ、直近の四半期で年換算売上高640億ドル(約7兆3600億円)を突破させた人物だ。

ジャシー氏の後任探しは簡単ではなかったが、旧知の人間に目をつけ、Tableau(タブロー)のCEO、Adam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏を後任として雇った。同氏はAWSの創業時から2016年まで在籍していたが、Tableau移籍時に退職した。今は列車を走らせ続けることが仕事だ。同氏には勢いがあるが、競争はますます激しくなっている。セリプスキー氏のリーダーシップの下、2022年どうなるかは注目されるところだ。

Salesforceブレット・テイラー氏、絶好調の1週間

もう1つの話題は、Salesforce(セールスフォース)幹部のBret Taylor(ブレット・テイラー)氏が、11月末の同じ週に2つの大きなポジションを手に入れ同氏にとってかなり甘い1週間となったことだ。まず、Twitter(ツイッター)の取締役会長に就任した。それだけでは物足りなかったようで、Salesforceの共同CEOにも就任した。2016年に自身の会社であるQuip(クイップ)が7億5000万ドル(約860億円)でSalesforceに買収されて以来、同社で急速に出世した。

Twitterでは長年CEOを務めたJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が退任し、Parag Agrawal(パラグ・アグラワル)氏が就任するという騒ぎがあった。その一方で、テイラー氏がCRM大手の共同CEOに就任したことは、企業という視点からは明らかにより大きなニュースだった。The Informationは、テイラー氏が引き続きSalesforceの共同創業者で会長兼共同CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏に報告すると報じた。テイラー氏はこの昇進により、もし2021年初めのベゾス氏と同様にベニオフ氏が会長職に退くと決めれば、ベニオフ氏の後継者になる可能性が出てきた。2022年に考慮すべきもう1つのストーリーは、Salesforceが2016年に検討し、その後立ち消えになったTwitter買収を再検討するかどうかだ。

BoxとStarboard Valueの委任状争奪戦

Boxは、アクティビストファンドであるStarboard Value(スターボードバリュー)による取締役会乗っ取りの試みを退けた。この動きは、共同創業者でCEOのAaron Levie(アーロン・レビー)氏の解任、会社の売却、またはその両方をもたらす可能性が高いものだった。数カ月にわたるドラマは最高潮に達し、2021年の主要な企業ニュースとなった。

アクティビストファンドであるStarboard Valueは、2019年にクラウドコンテンツ管理会社であるBoxの株式を7.5%取得し、その後8.8%にまで増やし、同社に対しかなりの影響力をもつことになった。しばらくは静観していたが、2020年、意を決し、取締役会を引き継ぎたいとBoxに通告し、委任状争奪戦が繰り広げられた。

この間、BoxはKKRから5億ドル(約575億円)の出資を受け、Starboardをさらに怒らせた。また、Starboardの役員候補に対抗する文書をSECに提出し、議決権保有者が最新の業績を見ることができるよう決算報告を早めに発表した。幸運にも、同社はStarboardが動いた後、2四半期連続で好成績を収め、委任状争奪戦にあっさり勝利し、今のところ現状を維持している。2022年に何が起こるか。筆者が書いたように、おそらくBoxが大胆な行動を起こす時が来た。KKRの資金の一部を使って隣接する機能を買収するのではないか。

国防総省がJEDIを廃止し、新たなクラウド構想を発表

100億ドル(約1兆1500億円)の10年にわたるJEDIクラウド契約は、2018年に発表されたその日から、ドラマに満ちていた。その間、筆者は関連する記事を30本以上書いていたので、2021年ついに国防総省がそれを潰すと決めたときは、大きなニュースだった。

当初から、これまでの常識では、Amazonが勝つための契約だと言われてきた。RFP(事業者公募書類)がAmazonを意識して書かれているという不満もあったが、最終的に契約を獲得したのはMicrosoft(マイクロソフト)だった。だがAmazonは、前大統領がWashington Post(ワシントンポスト)紙のオーナーでもあるAmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏を個人的に嫌っていたため、調達プロセスに直接介入してきたとして、裁判に訴えた。また、Amazonは、実力では自社が勝つとも主張した。

Amazonは2020年2月、このプロジェクトを保留にするよう判事を説得することに成功した。プロジェクトが再開されることはなく、国防総省は7月に新しいプロジェクトに移行することを決めた。また、2018年から技術が変わったとし(これは事実)、新しい構想ではJEDIで追求した勝者総取り方式ではなく、マルチベンダー方式で進めることを賢明にも決定した。

DellがVMwareをスピンアウト

2015年にDell(デル)がEMCを670億ドル(約7兆7000億円、後に580億ドル[約6兆6700億円]に修正)で買収したとき、それはテック史上最大の取引であり、長年にわたって追いかけて書くべき、もう1つの凄い話だった。VMware(ヴィエムウェア)はこの取引で最も価値ある資産であったため、筆者のような企業記者たちは、Dellがそれをどうするつもりなのか、目を光らせていた。しかし、2021年の初め、Dellが90億ドル(約1兆350億円)規模のスピンアウトを発表し、大きな話題となった。

EMC買収による多額の影響がまだ帳簿に残っていることを考えると、少し小さい金額のような気もした。来年はどうなるのだろうか。Dellから解放されたVMwareをどこかが買収する可能性はあるのだろうか。Dellは依然として大株主であり、EMC買収にともなう負債残高もまだ多額にのぼるため、2022年には間違いなく注目される存在になるはずだ。

5つだけ選ぶのは難しい。どうしても価値あるストーリーを外してしまう。あなたなら何を選ぶだろうか。コメントで教えて欲しい。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

BoxとZoomの最高製品責任者が職場の変化と両社の最新コラボを語る

この1年半が何かの兆候であるとしたら、職場の性質は変化している。BoxとZoomはすでに統合しているが、両社の連携がさらに緊密になっていくのは当然だろう。

両社の最新のコラボレーションはBox app for Zoomだ。これはZoomミーティングにアプリを組み込める新しいタイプのプロダクト内統合で、Boxをフルに使えるようになる。

ユーザーはZoomを使いながら直接セキュアにBoxにアクセスし、Zoomからファイルのブラウズ、プレビュー、共有をすることができる。開催中のミーティングに参加していないときでも利用可能だ。2020年にBoxが公開したZoomとの統合により、ワークフローを分断することなくBoxの「推奨アプリ」セクションでBoxからZoomにアクセスできるようになったが、今回の新機能はそれに続くものだ。

BoxのDiego Dugatkin(ディエゴ・デュガキン)氏とZoomのOded Gal(オデッド・ガル)氏の両最高製品責任者が、このようなシームレスな連携が変化する職場の解決策となる理由をTechCrunchに語った。

デュガキン氏は、あらゆるところでデジタル化が起き、共同作業のために「ベスト・オブ・ブリード」の製品(1つのベンダーに統一するのではなく分野ごとに選んだ最適な製品)の統合が必須であるという。しかもユーザーはアプリを切り替えながら使うのではなく、1つの環境にとどまっていたい。

同氏は「それはZoomのプラットフォームを離れることなくコンテンツにアクセスしたいということです」と付け加えた。

それはさまざまな状況からコンテンツや連絡先にアクセスしたいということでもある。みんながオフィスにいたころは、社内ですぐに会うことは難しくなかった。今は多くの人が柔軟であることの価値を理解するようになり、両氏は家で過ごす時間もありオフィスで過ごす時間もある生活は当面変わらないと予測している。

この結果、企業全体として従業員がどこにいても働くことが可能で、どこにいても働く権利があるというニーズが増加するとデュガキン氏はいう。そして企業が文書をセキュアに共有する話につながり、両社のコラボレーションがこうしたことを可能にする。

BoxとZoomの新しい統合により、チャット、ビデオ、オーディオ、コンピュータ、モバイルデバイスとさまざまな場におけるハイブリッドなミーティングが可能になり、どこからでもコンテンツにアクセスできるようになるとガル氏は説明した。

さらに同氏は「従業員が希望する働き方を決められるように、企業はダイナミックでなければなりません。デジタルの世界はそうした柔軟性をもたらしています」と述べた。

デュガキン氏は、この長期的な連携は両社で計画している継続的な改善のほんの一部であると語った。

デュガキン氏とガル氏は、ミーティング前もミーティング中もミーティング後も途切れない統合を今後も提供していく考えだ。Boxのクラウドストレージを使い、一方で従業員間のオフラインでのコミュニケーション機能も提供して、常にワークフローを進められるようにする。

ガル氏は次のように述べた。「ディエゴ(デュガキン氏)がデジタル化について語った通り、毎日のミーティングに関してコミュニケーションによって継続的なコラボレーションが強化されると考えています。Zoomで非同期でも同期でもつながることが、仕事の未来と、未来はどう作られるのかを示しています」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)

Boxが電子署名プロダクトBox Signをリリース、コロナ需要に対応

Box(ボックス)は米国時間7月26日、法人向けプランの一環として追加コストと制限なしで電子署名ができるネイティブの電子署名プロダクト「Box Sign」をリリースした。

このプロダクトをリリースする5カ月前に、カリフォルニア州レッドウッドシティを拠点とするBoxは電子署名のスタートアップSignRequestを5500万ドル(約61億円)で買収することに合意していた

BoxのCEOであるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は、同社がすでに企業10万社のコンテンツ管理を行っており、Box Signは同社が事業プロセスで顧客をサポートできる新たなカテゴリーで、「社にとって画期的な製品」であるとTechCrunchに語っている。

「顧客がコンテンツを保持・管理できるよう、当社はコンテンツのライフサイクルを強化するコンテンツクラウドを構築しています」とレヴィ氏は述べた。「顧客のオンボーディング、取引のクロージング、あるいは監査などに関する多くの処理が毎日行われていますが、これらはいまだに手作業で行わています。当社はそれをデジタルへと移行させ、コンテンツに関する署名のリクエストを可能にしています」。

機能は次の通りだ。ユーザーはBoxから直接、Boxのアカウントを持たない人にでも電子署名が必要な書類を送ることができる。署名リクエストと承認の場所は書類のどこにでも設けることができる。この作業はSalesforceのような人気のアプリに統合でき、電子メールによるリマインダーや締切の通知もある。Boxの他のプロダクト同様、署名も安全でしっかりとしたものだ。

Prescient & Strategic Intelligenceによると、2020年の世界の電子署名ソフトウェアマーケットは18億ドル(約1986億円)で、IDCは2023年までに38億ドル(約4193億円)に成長すると予想している

レヴィ氏は、従来のツールの制限とコストの障壁のために電子署名を使っている組織は3分の1以下とマーケットがまだ初期段階にあると考えていて、これは将来かなりのチャンスがあることを意味している。しかし、状況は変わりつつあるようだ。Boxはパンデミックの間、デジタル処理の取り込みをサポートしようと、まだ書類の郵送、スキャン、ファックスに頼っている銀行と協業した。同社はまた、自社プロダクトについて顧客に2020年調査を行い、最も多かった「要望」は電子署名だった、とレヴィ氏は話した。

この分野で展開されているプロダクトの中でもメジャーなサービスである​​DocuSignとAdobe Signは引き続き使える、と同氏は指摘した。Boxは他の同業サービスと競合するつもりはなく、顧客の需要があり、顧客に選択肢を提供したかった、と述べた。

電子署名サービスの提供は、新しい最高製品責任者として6月にDiego Dugatkin(ディエゴ・ドガトキン)氏を迎え入れたことを受けてのものでもある。同社に加わる前、ドガトキン氏はAdobe Document Cloudのプロダクト管理担当副社長で、Adobe Signを含めAdobeの一連のプロダクトの戦略と実行を率いていた。

「当社の戦略は何年間もポートフォリオを拡大するというもので、より高度なユースケース、そしてすべてを管理する1つのプラットフォームを持つというビジョンの原動力となってきました」とレヴィ氏は述べた。「ディエゴはこの分野で20年という途方もない経験を持ち、電子署名を機能させることにおいてかなりの進歩をもたらすでしょう」。

電子署名プロダクトに加えて同社は、主なアドオンすべてと2021年夏から利用できるようになる高度な電子署名機能を含むEnterprise Plusプランも導入した、と明らかにした。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Box電子署名クラウドストレージ

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

クラウドサービス企業Boxが予想を上回る四半期決算を発表、業績見通しを引き上げ復調を示唆

Box(ボックス)の経営陣は2020年以降、アクティビストインベスター(物言う投資家)であるStarboard Value(スターボード・バリュー)との交渉を続けながら、他のすべて人々と同様、新型コロナウイルス感染流行の時期を戦い抜いた。同社が米国時間5月27日に発表した財務諸表によると、2022年度第1四半期は、このクラウドコンテンツマネジメント企業にとって、全体的に良好な四半期となったようだ。

収益は前年同期比10%増の2億240万ドル(約221億9000万円)で、2億ドルから2億100万ドル(約219億3000万〜220億4000万円)というBoxの予測を上回った。Yahoo Finance(ヤフーファイナンス)によると、アナリストの意見は2億50万ドル(約219億9000万円)だったので、市場の予想も上回ったことになる。

Boxのようなクラウド企業にとって好ましい状況が続いているにもかかわらず、同社はこの1年間、強い逆風にさらされてきた。会社の方向性とリーダーシップをめぐり、取締役会におけるStarboard Valueとの争いに直面している同社にとって、このような報告は非常に必要なものだった。

共同創業者でCEOを務めるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は、この業績報告が良い傾向の始まりとなることを期待している。「現在はIT投資に適した経済状況になっていると思います。さらに、ハイブリッドワークのトレンドや、デジタルトランスフォーメーションの長期的なトレンドは、当社の戦略を大いに後押しするものだと私は思います」と、同氏は決算後のTechCrunchによるインタビューで語っている。

Boxは、2021年2月に電子署名のスタートアップ企業であるSignRequest(サインリクエスト)を買収したが、実際にその機能をプラットフォームに組み込むのは2021年夏以降になる予定だという。レヴィ氏によると、緩やかな収益の成長を支えているのは、コンテンツセキュリティ製品であるBox Shield(ボックス・シールド)や、顧客がBox上でワークフローをカスタマイズしたりアプリケーションを構築したりすることができるプラットフォームツールだという。

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また、同社は大口顧客の獲得にも成功している。レヴィ氏によると、10万ドル(約1096万円)以上を支払っている顧客の数は前年同期に比べて約50%増加したとのこと。Boxの成長戦略の1つは、プラットフォームを拡大し、時間をかけて追加のプラットフォームサービスをアップセルすることだったが、この数字はその努力が実を結んでいることを示している。

レヴィ氏は、M&Aのカードについては手の内を見せようとしなかったものの、もし買収によってさらなる成長を促進する適切な機会が訪れれば、同氏は確実にさらなる人為的な成長を強く検討すると語った。「M&Aについては、今後も慎重に検討していくつもりです。金額と、我々のロードマップを加速させる力、あるいは現在参入していない市場の一部に参入する力になるという点において、我々が魅力的だと思うM&Aだけを行うつもりです」と、レヴィ氏は語った。

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この第1四半期の成長率はわずかに加速したが、これは同社の業績を連続的に見た場合にのみ言えることだ。簡単に言えば、今回Boxが報告した2022年度第1四半期の10%成長は、2021年度第4四半期の8%成長よりは良かったが、前年同期の13%成長よりは悪かったということになる。

しかし、Boxの場合は、一般的な慣例に基づいて判断するのではなく、四半期ごとに数字を見て、期待される加速の兆候を探ることにしたい。この基準では、Boxは自らの目標を達成したことになる。

投資家の反応はどうだったか? 時間外の同社の株価は、急落したり回復したりとさまざまだった。市場はこの結果に混乱しているようだ。決算報告書を吟味して、適度に加速しているBoxの成長が、同社の株式を保有するに値するほど魅力的なものか、あるいは逆に、同社の成長が、同社にもっと劇的な変化を求めている外部の人々を退けるほど、まだ十分に発展していないかを判断しているのだろう。

Boxの業績を俯瞰すると、成長率以外にも同社が事業を順調に導いていることがわかる。営業利益率(GAAPベースおよび非GAAPベース)は改善し、現金創出も回復している。

おそらく最も重要なことは、Boxが業績見通しを「8億4000万ドル(約921億円)から8億4800万ドル(約930億円)の範囲」から「8億4500万ドル(約927億円)から8億5300万ドル(約936億円)の範囲」に引き上げたことだ。これは大きいだろうか?いや、そうでもない。目標の下限値と上限値の両方とも、その差は500万ドル(約6億円)。しかし、目を凝らしてみると、同社の第4四半期から第1四半期にかけての収益の加速と業績見通しの引き上げは、業績回復の早期指標となる可能性がある。

レヴィ氏は、2020年がBoxにとって厳しい年であったことを認めている。「2020年は、マクロ環境やコロナ禍など、さまざまな要素が絡み合った複雑な1年でした」と、同氏は語る。しかし、CEOは、自分たちの組織が将来の成長に向けて準備が整っていると、引き続き考えている。

果たしてBoxは「物言う株主」を満足させるだけの業績を上げることができるだろうか?レヴィ氏は、今回のような四半期を重ねることができれば、Starboard Valueを食い止めることができると考えている。「次の3四半期を見れば、収益を上げる力、採算性を上げる力がわかると思います。非常に好調な業績報告となり、現在の事業の勢いを示すものになると我々は確信しています」と、レヴィ氏は語った。

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未公開株式投資会社KKRがクラウドコンテンツ管理のBoxに546.8億円の命綱を投入
身売り検討の報道を受けてクラウドサービスBoxの株価が上昇
Boxでも2021年まで従業員の在宅勤務が可能に

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Box決算発表クラウドストレージ

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Ron Miller, Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

未公開株式投資会社KKRがクラウドコンテンツ管理のBoxに546.8億円の命綱を投入

Box(ボックス)は、未公開株式投資会社のKKRが同社に5億ドル(約546億8000万円)を投資したと発表した。アクティビスト投資家(物言う投資家)のStarboard Valueからの圧力に苦しむクラウドコンテンツ管理会社を救う行動だ。

同社はこの資金を「オランダ式オークション」と呼ばれる方法で、オークションで決められた価格で一部の投資家から株式を買い戻すために使用する計画で、2021年5月に次の決算を報告した後実施する予定だ。そこには、2019年に同社株式の7.5%を取得したStarboardからの買い上げも含まれていると思われる。

2021年3月にReuters(ロイター)が報じたところによると、Starboardは6月のBox取締役会で、役員の過半数を専有しようとしている。その結果Starboardは何らかの行動を起こすことが可能になり、売却を強いる可能性が高い。

ここから何が起きるかははっきりしないが、この現金によってBoxはStarboardの攻撃から逃れられる可能性があり、KKRの関与によって長期的展望が可能になる。BoxのCEOであるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は、今回の動きはBoxの方針に対するKKRの信任票であると考えている。

「KKRは世界有数のテクノロジー投資家として、当社の市場に深い造詣があり、企業と手を組んで価値を生み出し成長を促進してきた確実な実績があります。同社の支援を受け、私たちはクラウドコンテンツ管理分野をリードするBoxの地位をいっそう確かなものにし、全世界の顧客に価値を提供し続けていきます」。

契約条件の一環として、KKRの米国テクノロジー未公開株式責任者のJohn Park(ジョン・パーク)氏がBoxの取締役に就任する。また同社は、社外取締役のBethany Mayer(ベサニー・メイヤー)氏を5月1日付けで取締役会会長に任命することも発表した。

2021年2月、Boxは電子署名のスタートアップSignRequest(サインリクエスト)を買収し、市場拡大に向けて一連の新たなワークフローを提供しようとした。KKRの出資によって、黒字キャッシュフローのBoxが、将来に向けたプラットフォーム拡大の新たな一歩を踏み出すことは不合理であるとはいえなくなった。

Boxの株価は時間外取引で8%以上下落しており、おそらくこれはウォール街がこの発表をあまり喜んでいない証だが、この現金流入はBoxに、リセットして再び前進するための猶予を与えるだろう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:BoxKKR投資

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

身売り検討の報道を受けてクラウドサービスBoxの株価が上昇

2015年に上場したコンテンツとコラボの会社Box(ボックス)の株価は米国時間3月22日、同社が身売りを検討しているとのロイターの報道を受けて上昇した。TechCrunchは以前、乱調市況の数年を経て株価を上昇させるようBoxに対し投資家からのプレッシャーが高まっていると報じている

同日のBox株の終値は23.65ドル(約2570円)で、開始値から約5%上昇したが、ニュースが流れた直後に達した取引時間内の最高値26.47ドル(約2880円)を下回った。同社は5年と少し前に1株14ドル(約1520円)で上場し、取引初日の株価は本日と同じようなレベルで上昇した。

ユビキタスなCEO兼共同創業者のAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏のおかげもあってスタートアップ業界で有名なBoxは、そのペースは落ちてきているとはいえ、上場後は成長し続けてきた。長年のライバルDropbox(ドロップボックス)も上場後に成長のペースは鈍化した。両社とも直近の数四半期の売上高の伸びに関して収益性が上がったことを強調した。

しかしBoxが上場後に遭遇した問題は主に、競合するプロダクトを持つ超大手プラットフォーム企業もライフラインになり得るかもしれないというものだった。Google(グーグル)とMicrosoft(マイクロソフト)は取引で何年もBoxに挑んできたが、両社はレヴィ氏の会社にとって未来のホームになるかもしれない。

先週、BoxはMicrosoft Office 365をより緊密に統合するという取引を発表した。発表のタイミングを考えると、潜在的な取引の前にニュースが流れるかもしれないと推測するのは簡単だった。ロイターの記事は可能性に燃料を注いでいる。

ロイターの報道が正確かはわからないが、Box売却の可能性は理に適っている。

Boxにとって可能なオプションは私募増資を通じて再び非上場になることかもしれない、とロイターは報道した。かなりの売上高といくつかの問題を抱える成熟したSaaS企業を好む傾向にあるVistaやThoma Bravoのような企業が、苦戦しているSaaS企業を買収しようと急襲するかもしれない。企業を非上場とし、そして投資家のプレッシャーを抑制してうまく立ち回る余地を残すことで、ソフトウェア企業は時には新たな活力を見つけることができる。

Vistaが2016年に16億ドル(約1740億円)で買収し、2018年に47億5000万ドル(約5167億5250万円)でAdobeに売却したMarketoのケースを考えて欲しい。最終的にVistaは巨額の利益を手にし、Marketoはさらに幅広いマーケティングツールのプラットフォームを持つ企業の一部に落ち着いた。

カットできる経費、あるいは改善できる売却プロセスがBoxにあるかどうかは不明だ。しかしBoxの37億8000万ドル(約4112億2260万円)という市場価値はより大きなプライベートエクイティファンドの手に落ちるかもしれない。または、ビジネス顧客のリストかテクノロジー、あるいはどちらも切望する大手の法人向けソフトウェア企業が手を伸ばすかもしれない。

噂が本当であれば、シリコンバレーのスタートアップの寵児からIPO、そしてわずか6年で身売りと、Boxにとって驚くべき失脚となるかもしれない。これらは噂にすぎないと記しておくのは重要である一方で、Boxにとって記事は悪い兆しかもしれず、もしかするとではなく単に時間の問題かもしれない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Box売却

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi