本人を特定できない安全なネットアクセスを提供するTorに記録的な額の寄付が集まる

【抄訳】
インターネットに安全にアクセスできる方法を提供しているオープンソースの自主事業Torが、これまでの長期にわたる政府補助金への依存から脱却するために、資金源の多様化努力を続けている。

Torは“The Onion Router”(玉ねぎルーター)の頭字語で、剥いても剥いても芯(発信者本人)に辿りつけないことを意味している。そのサービスを提供している団体Tor Foundationは今週(米国時間1/6-12)、2018年に個人からの寄付が46万ドルという記録的な額に達したことを発表した。また最近の財務報告によると、同団体は、2017年には非政府系寄付者の増加により、これまた記録的な、総額413万ドルの資金を調達した。

大きく増加した個人からの寄付は2017年には40万ドルだった。その大きな部分を占めるのがTorの支持者であるMozillaで、昨年後半にはTorのためのマッチングファンドの寄付を今後も続ける、と約束した。また、そのほかの支援者個人からのマッチングファンドへの寄付は、最高額が2万ドルだった。

同団体によると、全体として2018年には115か国から寄付が集まり、アメリカ以外におけるTorの重要性を物語っている。

【中略】〔資金源詳細〕

TorはNSAの内部告発者Edward Snowdenが使ったことでよく知られているが、世界のいろんな国でインターネットの弾圧が厳しくなっているから、Torは自由なインターネットを護り安全に利用するためのますます重要なツールになりつつある。

そのためTorは近年、その‘利用しやすさ’を増す努力を続けている。

昨年9月には初めての同団体のAndroid用公式モバイルブラウザーをローンチし、同じ月に前からあるデスクトップブラウザーTorBrowserの8.0をリリースした。後者はFirefoxの2017年のQuantumリリースをベースとし、またMozillaとの協働を深めてFirefox本体にTorを搭載しようとしている。Torのデスクトップブラウザーへの統合は、Mozillaの前CEO Brendan Eichが作ったブラウザーBraveがすでに実現している

同団体にはそのほかのプロジェクトもいろいろあり、ユーザー総数は、公表データによると200万を超えている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Mozillaは寄付の全額をTor Projectへのマッチングファンドに、Firefoxへの内蔵も開発中

Firefoxの生みの親であるMozillaが、その長年の盟友Tor Projectに再び目を向け、寄付の全額をTorの資金として提供することになった。オンラインのプライバシーを強化するオープンソースのプロジェクトTorは、今年も年末恒例の資金集め活動を開始したばかりだ。

TorはMozillaのサポートを今日(米国時間10/24)発表し、両者のパートナーシップがさらに続くことになった。昨年Torが調達した40万ドルあまりには、Mozillaの貢献も含まれている。これはテクノロジー系のスタートアップなら小額のシードラウンドにすぎない額だが、しかし2015年に政府の補助金への依存をやめて、資金源をクラウドファンディングに切り替えたTorにとっては、重要な収入源だ。

その2015年には、Torは330万ドルという記録的な額の寄付を受領した。それは2014年の250万ドルを上回り、今だにTorの年収の最高額だが、しかしその86%は国の補助金だった。それは、これまでで最高の額だが、Torの研究部長で社長のRoger Dingledineは当時、もっと頑張ってその比率を減らすべきだ、と認めていた。

Torは2016年以降の決算報告をまだ出していないが、昨年はプロダクトの面では大きな飛躍があった。Torは今でも、NSAの内部告発者Edward Snowdenが使ったことが、いちばんよく知られている。大きな飛躍というのは、今年の9月にAndroid用のモバイルブラウザーをローンチしたことと、同じ月にTor Browser 8.0をリリースしたことだ。後者は、これまででいちばん使いやすいTorのブラウザーで、Firefoxの2017 Quantumがベースだ。TorをFirefoxに内蔵するために、Firefoxとの密接な協働が続いた。Mozillaの元CEO Brendan Eichが作ったブラウザーBraveは、すでにTorを内蔵している

Torはブラウザーと、盗聴や監視のおそれを最小化するTorネットワーク本体のほかにも、いろんなプロジェクトを抱えている。Tor自身のデータによると、Torの推定ユーザー総数はおよそ200万人だ。

Tor Foundationで資金調達を担当しているSarah Stevensonはこう語る: “Tor Projectには大胆なミッションがある。ネットワークに対する侵入や制限に抗して世界中のインターネットユーザーのプライバシーと自由を守ることだ。でもそれは、一人ではできない”。

“エジプトやベネズエラなどの国には表現の自由に対する制約があり、オープンなWebへの自由なアクセスができない。また企業サイドでは、GoogleやAmazonなどが人びとのデータを濫用し、監視経済を肥大させている。反対意見を封じ込めるために、インターネットアクセスを全面的に禁じている国すらある”。

というわけで、Tor Projectの果敢なミッションに賛同される方は、同団体にここで寄付できる。

参考記事

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JavaScriptの作者でMozillaの元CEOが広告ブロック機能のあるブラウザBraveを立ち上げ

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プログラミング言語JavaScriptを作り、Mozillaの前のCEOだったBrendan Eichが、新しいことを始めた。それは、広告をブロックするけれどパブリッシャーの収益性は犠牲にしない、というブラウザだ。ブロックする広告は、パフォーマンスの足を引っ張ったり、個人データを使うものが主だ。

EichのスタートアップBrave Softwareは、今日そのブラウザを一般公開するのではなくて、そのビジョンの概略を述べるとともに、サインアップしたユーザに初期的バージョンへのアクセスを提供する。同社のホームページでEichは、アドブロッカーは快適なWeb閲覧体験を提供するが、しかしそれは電車やバスのタダ乗りのようでもあり、戦争を招きかねない、と述べている。つまり、良質なパブリッシャーも傷つけられてしまい、アドブロッカーをブロックする“軍拡競争”になる、というのだ。

“弊社Braveが作ったソリューションは戦争を避け、ユーザに、Webを閲覧すると同時にWebに貢献もできる公正な取引機会を与える”、とEichは書いている。彼はインタビューで、“うちが作っているのは、アドブロッカーよりもっと大きなものなんだ”、と語った。

基本的には、Braveは広告をブロックするブラウザであり、さまざまなデータ収集機能もある。アナリティクスのためのスクリプトや、インプレッショントラッキングピクセルなどだ。Eichは、“うちは藻がいっぱい茂ってしまったプールを清掃する”、と言う。

ここにはしかし、重要なニュアンスもある。まず、Eichによれば、Braveはすべての広告をブロックするわけではない。ネイティブでトラッカーのない、パブリッシャー自身のデータしか使わない広告は正規のコンテンツだから、ブロックしない。

さらに、たぶんもっと重要なのは、Braveが自分の広告を挿入するかもしれないことだ。それは、ページのパフォーマンスを大幅に劣化させず、個人データを使ったターゲティングもしない広告だ。Eichは、こう説明している:

デフォルトでBraveは、広告を標準的なサイズでのみ挿入する。そういうスペースをクラウドロボットを使って見つけるが、ユーザが気づくほどの遅延や電池の消耗は生じない。広告のターゲティングはブラウザ側の通常言語による指定に基づいて行い、恒久的なユーザIDやユーザを同定しやすいクッキーは利用しない。

広告をブロックするけど自分の広告は出す、というアドブロッカーを、偽善と呼ぶのは簡単だ。Eichも、ブロッカーを通過させるアドバタイザーたちのホワイトリストは、身体検査をする関所のように思われるかもしれない、と述べている。しかし、微妙な違いにすぎないようだが、Braveがやりたいのは、承認するアドバタイザーのリストを作ることでも、がつがつとドルを追求することでもない: “Braveのユーザが十分に価値あるオーディエンスを形成し、弊社の、ブラウザサイドだけの情報に基づく匿名ターゲティングに、自然にアドバタイザーが集まることを期待したい。私たちは、ゲームをやりたいわけではない”。

このような、Braveからの独自広告は、収益の55%以上がパブリッシャーへ行き、比率は、ブラウザの成長とともに最高値の70%へ近づいていく。消費者もその収益の分け前に与り、それをBitcoinのウォレットでお気に入りのパブリッシャーに寄贈することもできる。

このやり方で、消費者やパブリッシャーの心を掴むことができるだろうか? 広告ブロックに対するあらゆる批判をかわせるだろうか? それはありえない、とは思うが、でもEichは、前向き思考で、そして、そう、勇敢な(brave)人びとを集めたい、と願っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

ここに来てMozillaの存在意義, WebKitに乗り換えないことの意味

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今週初めにOperaは、Prestoと呼ばれる独自のレイアウトエンジンを捨ててWebKitに鞍替えする、と発表した。Google、Appleに続いて今度はOperaだから、オープンソースのWebKitエンジンは今、大きな支配的勢力になりつつある。しかしMozillaのCTO Brendan Eichは昨夜の記事で、Mozillaは当面、レンダリングエンジンを変えない、との意思を表明した。Mozillaは上記3者のような営利企業ではないので(そのことをふだん忘れている人も多いと思うが)、そのミッションも自ずから異なるのである、と。

Eichは、“Mozillaがふつうの企業なら、Operaと同じことをしただろう”、と言う。“しかしわれわれは企業ではないし、またデスクトップにおけるシェアは、横ばいもしくは伸びていると思われる。それには、Geckoがもたらした短期的な勝利、という側面もある”。

Eichはさらに続けて、“われわれがWebKitの波に乗ってしまえば、そのブラウザはWebKitを核とするChromeと何ら変わりのないものになる。しかし、そのようなモノカルチャーはWebに良いものをもたらさない。WebKit一色でなく、FirefoxがありInternet Explorerがある、という多様性が重要だ”、と言う。しかもEichの見方では、8つのビルドシステムがあり多様なフォークもあるWebKitは、単一の存在ではない(8、AppleのNitro、iOSバージョンのSafari、…)。グラフィクスのバックエンドやネットワークスタックも、それぞれ異なる。“Android 2.3のときWebデベロッパたちは、WebKitの不統一性に苦労したのだ”、とEichは書いている。

またWebKitに切り替えるとしたらその費用は、Operaに比べてMozillaでは相当に大きい、とEichは言う。Operaはデスクトップのシェアが比較的小さいから、切り換えの費用も比較的少ないが、それでも、ささいな額とは言えない。しかしMozillaは、XMLベースのユーザインタフェイス構築言語 XULに、大きな有形無形の投資を蓄積している。それを捨ててWebKitに乗り換えたら、Firefoxアドオンの膨大な資産とエコシステムを失うことにもなる。

独自のエンジンを持つからこそ、Firefox OSやFirefox for Androidなどのプロジェクトも可能になる。中でもとくにEichは、今Firefoxが使っているGeckoエンジンの次世代版Servoに、大きな期待を抱いている。Servoは、マルチコアのCPUと大規模並列処理のできるGPU向けに最適化されている。だから、ブラウザのマルチスレッド化(==内部的並列処理化)ではAppleやGoogleよりも一歩進んだものになる。

Webデベロッパにとって、OperaがWebKitに切り替えたことは大きな意味を持たないだろう。元々、サイトをOpera向けに最適化していたデベロッパは、それほど多くないからだ。デベロッパはむしろ、WebKitへの切り換えを歓迎するだろうし、またMozillaについても、Eichが主張する独自路線の維持が本当に将来のイノベーションを招き寄せるのか、議論したいところではないだろうか。しかしWebも人間社会と同様、健全な多様性こそが、進歩の動因なのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))