フェイスブックはLibraのウォレットCalibraをNoviに改名し独立させようとしている

Facebook(フェイスブック)が、独自の暗号通貨プロジェクトであるLibraを発表した際、そこには2つの独立した要素が含まれていた。その1つはLibraアソシエーションで、Libraに関するすべてを監督する非営利団体だ。もう1つはCalibraで、こちらはLibraベースのウォレットを開発するフェイスブックの子会社となる。このウォレットは、WhatsAppやMessengerにも統合される。米国時間5月26日、フェイスブックはCalibraをNoviに改名すると発表した

CalibraをNoviブランドに変更することにより、フェイスブックはいわばLibraプロジェクトがフェイスブックのプロジェクトではないことを明白にしようとしている。フェイスブックは単なるLibraアソシエーションのメンバーであり、その点ではAndreessen Horowitz、Coinbase、Iliad、Lyft、Shopify、Spotify、Uberなど数十の他のメンバーと同じだ。

Libraのブロックチェーンはフェイスブックから独立して運営されることになるが、NoviはDavid Marcus(デイビッド・マーカス)氏が率いる、純然たるフェイスブックプロジェクトだ。同社によれば、Noviはラテン語で「新しい」を意味する「novus」と、「道」を意味する「via」に由来する合成語だという。

Novi最初の製品は暗号通貨ウォレットになるはずだ。独立したNoviというアプリをスマホにダウンロードできるようになるだろう。Noviのアカウントを作成するために、フェイスブックやWhatsAppのアカウントは必要ないが、MessengerとWhatsAppから直接アクセスすることも可能となる。その場合、ボタンをタップしてNoviメニューを表示し、Noviウォレット経由の送金や受け取りの操作ができるはずだ。

Noviではマネーロンダリングや本人確認規則についても、安心して利用できるものにしたいと考えている。Noviにサインアップする際には、公的な身分証明書の写真を撮影しなければならない。Noviでは、匿名による送金は受け付けない。

ただしNoviは、送金が即刻実行されることを保証し、国境を越える送金にも地元での支払いにも、「隠された手数料はない」ことを約束している。これはそもそも手数料が発生しないという意味なのか、発生する手数料を明確にするという意味なのか今のところは不明だ。

Libraアソシエーションは、最近になってホワイトペーパーを更新し、暗号通貨プロトコルに重大な変更を加えた。もはや同協会では、法定不換通貨と証券類のバスケットに紐付けられたグローバルなステーブルコインを開発しようとはしていない。

Libraが発行されると、複数のステーブルコインが流通することになる。それぞれ、USD(米ドル)、EUR(ユーロ)、GBP(英ポンド)、SGD(シンガポールドル)など、単一の法定不換通貨に裏打ちされたものだ。Noviのユーザーあるいは他のLibra対応ウォレットを利用するユーザーはLibraUSD、LibraEUR、LibraGBP、あるいはLibraSGDで送金したり、受け取ったりできるようになる。またNoviは法定不換通貨を暗号資産に変換したり、逆に暗号通貨を既存の法定不換通貨として現金化するための媒介としても機能する。

Noviは、Libraネットワークの稼働に合わせてウォレットをリリースする予定だ。当初はそのサービスにアクセスできる国は限られることになる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Facebookが直接答えるLibraの税金と詐欺対策の仕組み

Facebook(フェイスブック)は、Libra(リブラ)が合法であることを示す新たな情報をTechCrunchに提供した。トランプ大統領がLibraは「違法な活動」を助長する可能性があると指摘したことを受けたもの。FacebookとLibra Associationの幹部は、Libraでは売上税と、キャピタルゲインに対する税金を負担することになると主張している。Facebookが一般のコンビニエンスストアや両替所とも協議して、Libraを一般の通貨と交換する際に、資金洗浄を防ぐためのチェックが可能となるよう、検討していることも明らかにした。またQRコードによって、個人がLibraを購入したり、売却したりもできるようにするという。

Facebookの広報担当者は、トランプ氏のツイートに直接反応するつもりはないと述べたが、Libra Associationは消費者とやりとりしたり、銀行として機能することはないとしている。また、Libraは既存の金融システムを補完するものになるはずだと付け加えた。

トランプ氏は、以下のようにツイートした。「規制されていない暗号資産は、麻薬取引やその他の違法行為など、非合法な活動を助長する可能性がある。したがって、FacebookのLibraという『仮想通貨』が、地位や信頼を築くとも考えにくい。もしFacebookや他の企業が銀行になりたいのであれば、銀行の設立許可を取得して、国内外の他の銀行と同じように、すべての銀行規制の対象とならなければならない」。

Libraの仕組みを理解するための入門資料としては、TechCrunchのビデオを観るか、以前に掲載した「Facebook announces Libra cryptocurrency: All you need to know」の記事をお読みいただきたい。

今回の広範囲に渡ったインタビューの中で、Libra Associationの政策責任者であるDante Disparte氏、Facebookのブロックチェーン担当の主任エコノミストChristian Catalini氏、およびFacebookのブロックチェーンプロジェクトの子会社Calibra(キャリブラ)の副社長、Kevin Weil(ケヴィン・ワイル)氏が、Libraの規制に関する質問に答えてくれた。それによって分かったのは以下の通り(明瞭さのために答えを短縮した場合もあるが、編集は加えていない)。

もし米国での規制によってFacebookのCalibra Walletが禁止された場合でも、どこか他の国で公開するということはあるのか?

ワイル氏:私たちは、スマホさえあれば利用でき、誰にとっても安い手数料で、かなり広範囲からアクセスできる金融エコシステムを構築することが、人々にとって有益だと信じています。そして、そのシステムを世界中の、できるだけ多くの人に届けたいのです。しかし、保管ウォレットとしての規制があり、それに準拠することになるので、認可が得られる市場でのみ営業することになります。

それでも、できるだけ多くの市場で営業したいと考えています。そのために、実際に製品として公開するかなり前に発表したのです。規制当局との交渉には長くかかりますから。人々が安全に利用できるものにするために努力していること、そしてどこでもわずかな手数料で利用できる金融サービスの登場によって、各国の人々に価値がもたらされることを理解してもらうため、私たちは規制当局との話し合いを続けています。

TechCrunch:でも、もし米国で禁止されたらどうなりますか?

ワイル氏:それについて包括的な答えを出すのは気が引けます。しかし、一般的に言って、Libraは人々にとって有益だと信じているので、できるだけ広範囲で使えるようにしたいと考えています。もし米国が禁止することになれば、他の国の規制当局も懸念を抱かざるを得ないと思っています。これを実現するために、私たちが渡らなければならない橋だと考えています。しかし、これまでのところ、規制当局とは率直でオープン、かつ誠実な議論ができています。そして間違いなく来週には、Davidの証言があります。私としては、Libraが禁止されてしまうようなことにはならないことを願っています。なぜならLibraは多くの人にとって、多くのメリットをもたらすことができると考えているからです。

TechCrunchの分析:米国下院の小委員会は、規制当局が慎重に検討して行動を起こすことができるようになるまで、LibraとCalibraの開発を中止するよう要請する書簡を、すでにFacebookに送付している。Facebookは、米国がLibraやCalibraを禁止するようなことになれば、他の主要な市場でも、ドミノ倒しのように同様の動きが広がると懸念しており、そうなれば公開を正当化するのは難しいと考えているようだ。そのため、米国時間7月16日と17日に行われるLibraについての議会公聴会の成り行きが、FacebookのCalibraの責任者であるDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏にかけるプレッシャーは、かなり大きなものとなる。

ユーザー個人は、どのようにしてLibraに入金したり、逆に引き出したりするのか?

すでに分かっているのは、CalibraというFacebook独自のLibra用ウォレットがあり、MessengerとWhatsAppに組み込まれる。さらに専用の独立したアプリも用意されること。そこでは、接続された銀行口座と政府発行のIDを持っている人は、KYC(Know Your Customer=顧客確認)による不正取引と資金洗浄を防止するためのチェックを受け、Libraを売買できる。しかしLibraの最終的な目標は、銀行口座を持たない人々を、最新の金融システムに取り込むことなのだ。それをどうやって実現するのだろうか?

ワイル氏:Libraはオープンなエコシステムなので、両替業者や起業家は、Libra Associationの関係者や同協会のメンバーから許可を得たりすることなく、現金の出し入れをサポートする業務を始めることができます。ただ始めさえすればよいのです。今日、新興市場には、LocalBitcoins.comのように、暗号通貨を現金に、またはその逆に交換する相手をマッチングするサービスがいろいろありますが、そうしたサービスはLibraにも登場すると思います。

2番目に、地元の両替商、コンビニエンスストア、あるいは入出金を扱う他の業者と協力することで、Calibraとのやり取りを容易にして、促進することができます。Calibraアプリや、Messenger、WhatsAppを使った交換の方法は簡単です。現金を出し入れしたい場合、まずその付近で交換可能な場所を示す地図をポップアップ表示させます。その中から、近くのものを選択し、金額を設定すると、QRコードが表示されます。後はそれを提示するだけで、取引することができるのです。

そうした協力関係にある業者のほとんどは、Libraの扱いを広範囲に拡めてくれるものと期待しています。そうした取引が実際に始まれば、Calibraだけでなく、Libraを扱うすべてのウォレット、エコシステム全体に利益をもたらすでしょう。

TechCrunch:Western Union、MoneyGram、Walgreens、CVS、7-Elevenといったコンビニエンスストアの運営会社や、両替業者との取引を開拓しているのでしょうか?すでに交渉を始めているのですか?

ワイル氏:個別の取引についてはコメントを控えますが、考えていらっしゃるようないろいろな人たちと話をしています。なんと言っても、Libraと各国の通貨の間で自由に交換できることは、初期の普及と有用性を推進する上で非常に重要だからです。銀行預金との間なら、話は簡単です。私たちが本当にLibraを使ってほしいのは、銀行預金ではなく現金でやりとりしたい人たちですが、そうした人にとっても手続きが簡単になるよう、懸命に取り組んでいるのです。

TechCrunchの分析:Calibraは、こうしたアプローチによって、複雑で誤りの発生しやすい人手によるKYCや、直接現金を支出するプロセスの大部分を避けることができる。責任と負担を外部の業者に丸投げにできるからだ。

Libraは、IDや銀行口座を持たないユーザーにも対応しながら、どうやって詐欺や資金洗浄を防ぐことができるのか?

ワイル氏:IDを持っていなくても、非常に重要な集団に属する人がいます。たとえば、難民キャンプの人たちがそうです。私たちはLibraを、そうした人たちにも役立つものにしたいのです。Libraのエコシステムに参加したいと考えている人にとって、Calibraが唯一の選択肢ではない、ということは重要ですが、これがその理由の1つです。そうしたものには、各国、各所の業者によって運営されるものもあるでしょう。そうした業者は顧客と個別に面接してサービスを提供したり、KYCを実行することもあります。そうしたことを、私たちがすることはないでしょう。私たちは唯一のウォレットになるつもりはありませんし、そうなりたいとも思っていないのです。

これは、当初から複数のNGOがLibra Associationのメンバーになっていた理由の1つです。というのも、私たちは身元確認のプロセスを収益化することを推奨したいと考えているからです。そのためには、政府が発行した認証情報を利用する場合も多いのですが、身元確認や認証のために新たなタイプの情報を使うことも想定しています。このプロセスが、いわゆる最後の1マイルの問題を解決することを願っています。

非保管ウォレットの場合、ユーザーは誰も信用していません。規制当局が対応してきた方法ですが、話し合いを続けているうちに、どんどん進展しています。暗号通貨の世界に入ったり、そこから出たりすることは規制の対象となり、そうした業者は顧客と直接やりとりします。そのため、ユーザーをKYCする義務があります。私たちの場合は、保管ウォレットになります。KYCも行います。BitcoinやEthereumのエコシステムには、複数のウォレットがあります。それらはユーザーと直接の関係を持たない非保管ウォレットです。彼らは、どうにかしてBitcoinを手に入れなければなりません。通常は、交換によるものです。またそのプロセスの一環としてKYCの確認を受けています。

多くの新興市場には、LocalBitcoins.comがあります。そこでは、どのような市場であっても対面して現金をBitcoinに交換してくれる代理店や仲介業者を見つけることができます。そして彼らは、全員に対して確実にKYCを実行するようにし始めたところだと思いますが、本人と対面して確認しています。そして今やっているのとは違う方法が、いくらでも考えられるはずです。それを実現するための方法はたくさんあると思います。そしてLibraはオープンなエコシステムなので、それに関して何かしらの新規事業を起こす余地は十分にあるでしょう。

政府発行のIDを持っていても、今日の金融エコシステムから、十分な恩恵を受けることができないでいる人は非常に多いのです。そのため、全員にKYCプロセスによる確認を要求するとしても、現在の金融エコシステムではカバーできない多くの人にサービスを提供できるはずです。私たちは、KYCできない人たちをサポートする方法を見つけたいと考えています。そこで重要なのは、Calibraが他のウォレットと完全に相互運用できるようになるということです。そこには、ローカルな市場にいる人たちも含みます。その方が各自のニーズにうまくマッチするからです。

TechCrunch:その相互運用性を利用して、非保管ウォレットを持っている人がLibraを受け取り、それをCalibraウォレットのユーザーに送った場合、それはKYCを通っていないユーザーからCalibraにLibraが送金されたということになるのではないでしょうか。それによって資金洗浄ができるのではないのでしょうか?

ワイル氏:それは話し合いが進むにつれて持ち上がってきた、規制の対象となる検討項目の1つです。トラベルルールと呼ばれているものがあります。一定の金額を超える送金の場合には、送り手と受け手の両方が誰なのかを明らかにしなければならないというものです。送金者が保管ウォレットを利用している場合には、当然明らかになるわけです。規制は徐々に厳しくなりつつありますが、規制の内容が固まれば、もちろんそれに確実に準拠するつもりです。

TechCrunchの分析:Calibraは、最良のアプローチを手探りで探すような規制ではなく、厳密に遵守することができるような規制を求めているようだ。しかし、非保管ウォレットと保管ウォレットとの間の送金、あるいは対面での現金化などについて、具体的な規則がいつ制定されるのかが明確になっていないことを考えると、FacebookとCalibraは独自の強固なプロトコルを確立する必要があるのではないだろうか。さもなくば、トランプ大統領が言う「違法行為」を許したとして罪に問われる可能性がある。

Libraは、どのように課税されるのか?

LibraのDante Disparte(ダンテ・ディスパート)氏:デジタル資産への課税は、地方レベルおよび司法レベルの両方で、現在設計中となっています。私たちの世界観では、どんな形のお金でも、どんな形の支払いや銀行業務でも、税制度を遵守するという責務は、個人のユーザー、そして消費者について回るものです。そしてここにも広く同じことが当てはまるでしょう。

私たちは、Libraブロックチェーン上で何らかのソリューションを開発している多くのウォレットや金融サービスの提供者が、今よりもはるかに簡単に使えるツールを提供してくれることに期待しています。デジタル資産や暗号通貨に関する税金を計算して申告できるようなツールです。今から、Libraが市場に登場するまでには、まだかなりの時間があります。そのときまでには、サービスの提供者の間で、司法レベルでのより厳密な取り決めができるでしょう。

TechCrunchの分析:やはりここでも、Facebook、Calibra、Libra Associationは、納税に対するすべての責任を負うことを避けたいと望んでいる。取引の際にVisaカードで支払おうが、銀行の小切手を使おうが、あなた自身が率先して税金を支払わなければならないのだから、Libraについても税金を払うのはあなた自身だ、というのが彼らの考え方なのだ。

TechCrunch:米国では、政府がLibraの取引に課税するように要求するのは理にかなっていると思いますか?

ディスパート氏:デジタル資産に対する税務上の取扱いは、世界中のどこを見ても、広く完全に明確にされているわけではありません。このプロジェクトと、それを取り巻くエコシステムが、その部分を明確にするのに役立つことを、私たちも願っています。

税務当局は、Libraからは消費レベル、および家計レベルで恩恵を受けますが、一部の暗号通貨には、実際に現金化するまでは税の支払いを回避しているものもあります。しかし、その性格、投機性の低さ、その設計からすれば、伝統的な通貨に対するものと同じような、軽微な課税措置を適用すべきだと考えています。

FacebookのChristian Catalini(クリスティアン・カタリーニ)氏:暗号通貨は、今でも売却時の損益に基づいて、毎回課税されています。Libraは交換のための媒体として設計されているため、そうした利益や損失は、身近な通貨に比べてかなり小さいものになる傾向があります。売上税は、Libraに対しても、現在クレジットカードで支払う場合とまったく同じように課税されるはずです。

公開時に現在の規制のままだとすると、Calibraウォレットは米国のユーザーのすべての購入と売却を追跡しなければならないでしょう。そしてその差額は、申告時に報告しなければなりません。BitcoinのCoinbaseアカウントを持っている人が今日していることと同じように、損失を取り扱うことができます。米ドルに対比して考えると、それが非常に小さな損益だとしても。

私が思うに、売上税については、今日のいろいろなデジタルの支払いとまったく同じように適用されるでしょう。違いはないはずです。Libraを使って商品やサービスを購入すれば、別の支払い方法を選択した場合と同じように、売上税を支払うことになります。今日と同じように、購入の合計金額に対する比率で、売上税がかかるのです。

ディスパート氏:おそらく、世界中で税金というものがどのように機能しているかを把握する最良の方法は、それを決めるのがLibraでも、Calibraでも、Facebookでも、それ以外の会社でもない、ということを理解することでしょう。それは規制当局と官庁に委ねられているのです。

TechCrunch:Calibraでは、売上税の扱いについては、すでに計画を立てているのでしょうか?

ワイル氏:それについても、ちょうど今、規制のエコシステムの中で、かなり急激に進展している部分です。今まさに進行中の議論なのです。私たちは、規則当局が必要だと指摘することは、何でもするつもりです。

TechCrunchの分析:こうして私たちは、今回のインタビューから確かな答えを得ることができた。Facebook、Calibra、Libra Associationが考える税金に対する適切なアプローチとは、まずLibraの取引には国の伝統的な売上税が適用されること、そしてウォレットに保管しているLibraにも、Libraのステーブルコインとしての米ドルに対する価値に応じて課税されなければならない、というものだ。ちなみにLibraステーブルコインの価格は、複数の国際通貨のバスケットに連動する。

もしLibra Associationが、すべてのウォレットと取引に関して、こうしたルールの適用を推奨し、Calibraがその際の税金を簡単に処理する機能を意識して開発されるなら、政府は少なくとも、Libraは税金を回避する手段であると難癖をつけることはできないし、誰もが公平に支払を分担することになるだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Libraはスイスの規制下に入るとFacebookが米国議会で証言予定

ブロックチェーンを扱うFacebookの子会社Calibraの代表のDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏は、米国時間7月16日、17日に予定されている米国連邦議会での証言に先立ち、その内容を公開した。これによると、Libra Associationは、本社を置くスイスの政府による規制下に入るとのことだ。それまでの間は、Libra AssociationとFacebookのCalibra Walletは米国の税制、反資金洗浄規制、不正防止に関する法律に準拠するという。

「Libra Associationは、認可を受け、規制に従い、監督当局による監視の下に置かれることを期待しています。Libra Associationはジュネーブに本社があるため、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)の監督下に置かれることになります」とマーカス氏は記している。「私たちはFINMAと予備会談を行いました。そして、Libra Associationのための適正な規制の枠組みの中で彼らと関わっていくことになります。またLibra Associationは、FinCEN(米国財務省の金融犯罪捜査網)に金融業者として登録する意向があります」

関連記事:Facebookは暗号通貨Libraを発表:知っておくべきこと(未訳)

米国の資金洗浄対策(AML)や顧客確認(KYC)の法律にLibraがどう準拠するかについては、マーカス氏はこう説明している。「Libra Associationも、規制当局、中央銀行、議員と同じように、資金洗浄やテロへの資金供与などをなくすための努力を行っています」。さらにマーカス氏はこう話す。「またLibra Associationは、AMLおよび銀行秘密法を尊重し、その政策と手続き、その他の国際的な安全保障上の法律を守り、テロリズムへの資金供与と戦います。Libraネットワークで金融サービスを提供したいと考える人たちにも、それに準拠してもらいます」

彼は、犯罪者は法の取り締まりを避けるために現金で取り引きを行うため、「Libraは、摘発と法の執行を後退させるどころか、強化します」と主張している。「不正行為が横行する紙幣取り引きのネットワークから、デジタルネットワークへの移行を促進します。そこでは、適正な顧客確認(KYC)の実行による出入り口の管理が機能し、法執行機関や規制当局にはオンチェーン取り引きの独自の分析を可能にする手段が与えられます。したがって、金融犯罪の監視と取り締まりの効力は増大します」

Facebook自身については、マーカス氏はこう書いている。「Calibraウォレットは、 米外国資産管理局(OFAC)が定めたAMLおよびCFT(テロ資金供与対策)プログラムのためのFinCENの規則に従っています。同様に、Calibraも銀行秘密法を遵守し、世界で採用されているKYCおよびAML、CFTの手法を採り入れます」

こうした答えは、金融法にうるさい人たちをなだめる役に立つかも知れないが、私は、議会からもっと主観的な質問がなされることを期待している。ケンブリッジ・アナリティカ事件のような、プライバシー上の約束を破ったりフェイクニュースを流すといった10年間にわたり不祥事を続けてきたFacebookを信頼できるかどうかだ。

そのため私は、Facebookがコミュニケーションの形を変革したとするマーカス氏の以下の声明で、その変革によって社会が混乱したと怒る議員たちと仲良くやれるようになるとは思えない。「私たちは、数十億の人々のための無料で無制限のコミュニケーションを数多く民主化してきました。同じことがデジタル通貨と金融サービスにも起きるよう、支援したいと思っています。しかし、ひとつだけ重要な違いがあります。私たちは、私たちが育ててきたネットワークと通貨の支配権を放棄します」。議会は「民主化」を「混乱」と解釈するだろう。だから、それがお金の世界でそれが起きることを、快く思わない。

FacebookとCalibraは、銀行口座を持たず、銀行や送金業者から多大な手数料を搾取されている貧困家庭を救済するという前向きな意図があるのかも知れない。しかし、Facebookは純粋な利他主義で動いているわけでもない。Facebookは大きく3つの方法でLibraから利益を得ることにしているが、それはマーカス氏の証言には示されていない。

  1. Facebookは、従来の通貨による、Libraの担保として保有するLibra準備金から得られた利益の一部を受け取る。Libraの人気が高まれば、数十億ドル単位にまで膨れ上がる。
  2. Libraを使えば簡単に安価にネット決済ができるため、マーケティング予算はFacebookやGoogleなどのチャンネルに効率的に変換されるようになり、インターネットでの商取引が増大し、Facebookの広告の売り上げも伸びる。
  3. Calibraを通して新しい金融サービスを販売する。可能性としては、Facebookデータを統合すればローンやクレジットを格安に利用できるサービスをユーザーに提供することで、債務不履行が減少し、他のプレイヤーよりも多くのマージンをFacebookが獲得できるようになる。

現実には、フォトシェアリングなどよりずっと大きな賭になる。規制当局の認可にも、適正で詳しい検査が必要になる。FacebookがLibraの所有権からいかに遠ざかろうとしても、それを立ち上げ、育ててきたFacebookが、今も引き続きプロジェクトを主導している。もし議会が、「大きいことは悪いこと」であり、LibraがFacebookをさらに肥大化させるとすでに信じ込んでいたのなら、FacebookとLibraを切り離して、その暗号通貨の利点とリスクを認識することは難しくなる。

マーカス氏の証言の全文は以下のとおり。

Libraの仕組みに関する詳しい解説は、下の記事をお読みいただきたい。

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(翻訳:金井哲夫)