昨年秋、YouTubeは子供のプライバシーを保護する法律に違反したとしてFTC(連邦通信委員会)から訴追され、1億7000万ドル(約187億円)を支払うことで和解した。この機に同社は「1億ドル(約110億円)の基金を用意し子供向けコンテンツの製作を支援する」と発表した。これは児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)の適用の厳格化に伴って子供向けビデオのクリエーターが受ける打撃を少しでも緩和することが狙いだ。
FTCの訴追によりYouTubeが子供向けビデオでのターゲティング広告を中止するなどの対策を取ったため、多くのクリエーターが深刻な経済的影響を受けていた。今回、YouTubeが積極的に支援する子供向けコンテンツの内容の一部が明らかになった。
Bloomberg(ブルームバーグ)によれば、YouTubeは「同情、コミュニケーション、感謝、好奇心、人間性、チームワーク、忍耐、自己抑制、共感、創造性」をかきたてるような傾向の作品を支援するという。詳細はYouTubeのパートナーに登録しているユーザーに通知された。
この通知は「YouTubeのコンテンツは子供たちが自分自身に備わった強さと熱意を再発見することを助けるようなものとなる。YouTubeのビデオは子供たちがライフスキルを発見し、熱意をもって目的に取り組み、健康的な習慣を身に付け、自分自身を高め、文化と多様性を理解し、かつコミュニティに役立つ人間となることを助けねばならない」と述べている。
TechCrunchの取材に対してYouTubeは、この報道が正しいことを認めたうえで「YouTubeはパートナーとさらに議論を深めている。具体的にどんな作品がファンドからの支援を受けられるのかについては年内に詳細を発表できるようにしたい」と付け加えた。
YouTubeの1億ドルのファンドは今後3年間にわたって投資される予定だが、同社が子供向けコンテンツとしてどんな傾向のビデオを求めているかについての具体的な指針となるはずだ。現在、YouTubeで人気を集めている子供向けビデオは、おもちゃの開封、びっくりいたずら、家族の日常のビデオブログなどだ。たとえばRyan Kaji(ライアン・カジ)氏は「Ryan’s World」(ライアンの世界)、「Ryan ToysReview」(ライアンのおもちゃレビュー)によって、2019年に2600万ドル(約28億5700万円)を稼ぎ出し、この年のYouTubeを利用した収入でトップとなった。
しかし子供たちがこうしたカジュアルな広告入りビデオに夢中になることに両親はあまりいい顔をしていない。最近iPhoneとAndroidで視聴時間コントロール機能が強化されたおかげで両親は子供がYouTubeを見る時間を制限することができるようになった。またDisney+を始めとする子供向けコンテンツを豊富に揃えるストリーミングサービスによって、両親や子供にとってYouTube以外の選択肢も増えている。
子供向けとして適したコンテンツに投資するというYouTubeの決定は広告主を安心させ、いっそう広告を掲出させるための戦略の一環なのだろう。最近、企業はインターネットへの広告出稿にあたってウェブセーフティー、つまり広告によるブランド毀損のリスクに神経を使うようになっている。しかしこうした努力はYouTubeでは裏目に出ることも多かった。
YouTubeの広告収入は2019年には15億ドル(約1648億円)を記録するなど好調で、今のところ懸念すべき点はない。しかしテレビ広告市場が急速に縮小している現状からすればネット広告には今後さらに大幅な拡大の余地がある。TV広告は依然として巨大だ。昨年の米国におけるTV広告は700億ドル(約7兆6917億円)だった。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)