自分の過去の会話を検索するLuther.AI、Google検索とは異なるアプローチ

ポップカルチャーとか企業の役員、歴史に関する質問などになると、それらの知識が全部自分の記憶にあって思い出せるということはないので、多くの場合Google検索に頼る。でもGoogle検索は、あなたのクライアントの配偶者の名前や、先日の会議の席でひらめいたすごいアイデアを思い出してはくれない。

そこで登場するのが、あなたの記憶のためのGoogle検索を自称するLuther.AIだ。このツールは音声を録音して書き起こし、AIを利用してあなたの仮想メモリーバンクにある情報を、ネットで会話をしたり検索をしているときに取り出してくれる。

同社はそのプロダクトのブラウザーを使用するバージョンを今週のTechCrunch Disruptでリリースし、TechCrunch Disrupt Battlefieldの優勝賞金10万ドル(約1060万円)を狙っている。

Luther.AIの創業者によると同社は、人間の記憶は不完全で、その弱さが個人の知能を制約している、という前提で創業された。Luther.AIが考えたのは、人間の脳の記憶力や記憶の想起力を強化するツールだ。難しい注文だが、同社の創業者は人工知能の今後の進歩とそのほかの技術でそれが可能だと信じている。

創業者でCEOのSuman Kanuganti(スマン・カヌガンティ)氏は「このプロダクトは、神経科学と自然言語処理とブロックチェーンの一体化により可能になりました。それにより、シームレスで瞬間的な記憶想起を提供する。GPT-3(OpenAIが作成した第3世代言語予測モデル)は、公開されているインターネットの記憶の上に構築されていますが、Lutherはあなたのプライベートな自己の記憶により構築されます」と説明する。

それにはまず、あなたのその日1日中の対話を録音する。ブラウザーを使って行われているオンラインのミーティングは、中でも対話の量が最も多いだろう。同社の今後の展望としては、ユーザーが高品質な5Gの録音デバイスを職場でも身につけ、対話を録音できるようにすることだ。

プライバシーが心配な人のためには、ハイエンドな暗号化などの安全措置が提供されている。また他人の発言は、当人からはっきり許可を得た場合しか保存できない。カヌガンティ氏は「我々の技術では、ユーザーが自分が喋っていることのオーナーになります。そこで例えば、あなたと私が物理的世界で会話をしていても、その会話のあなたの記憶を、特別の許可がないかぎり私が共有することはできません」と説明する。

また、各人が自分自身のデータをLutherに持ち、ほかの誰もがLutherやほかの個人からその会話にアクセスすることはできない。このようなオーナーシップ、所有権の強制の管理には、今後ブロックチェーンを使うつもりだが、同氏氏によればその実装は今後のバージョンになるという。

画像クレジット: Luther.ai

カヌガンティ氏によると「このプロダクトの真価は、会社内で少数の個人が使っている場合には発揮されないかもしれませんが、ネットワーク効果で何十人何百人の人が使うようになるとよくわかるはずです。しかし今後は、個人が一人で使っても記憶の想起を助けることのできるユーティリティを提供していきます」とのことだ。

同社は今週、ブラウザーを使用するプロダクトをリリースするが「最終的にはスタンドアロンのアプリを作り、またAPIも公開してほかのアプリケーションがLutherの機能を組み込めるようにしたい」と語る。

同社は今年の初めにカヌガンティ氏と3人の共同創業者によって設立した。3人とは、CTOのSharon Zhang(シャロン・チャン)氏、デザイン部長のKristie Kaiser(クリスティ・カイザー)氏、そしてサイエンティストのMarc Ettlinger(マーク・エトリンガー)氏だ。これまでに調達した資金は50万ドル(約5200万円9、社員は創業者を含めて14名だ。

画像クレジット:Jan Hakan Dahlstrom / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Disrupt SF 2014「Battlefield」優勝はオールラウンドなお手伝いサービス「Alfred」

サンフランシスコで9月8日から10日にかけて開催された「TechCrunch Disrupt SF 2014」。その目玉であるピッチイベント「Battlefield」は、世界各国の約800社が応募し、わずか26社(+来場者投票による2社)だけが本戦に出場するという狭き門だ。10日には、本戦を勝ち抜いた6社がピッチを披露。勝者に与えられるDisrupt Cupと賞金5万ドル(約500万円)を手にしたのは、ボストンに拠点を置くAlfredだった。

食料品の購入、洗濯やクリーニング、掃除などの雑用を頼むオンデマンド型サービスはいくつも存在するが、Alfredはこれらのプラットフォームとなるアプリを手がけている。例えば、食料品配達の「Instacart」や家事代行の「Handybook」、お使い依頼の「TaskRabbit」といったオンデマンド型サービスに加えて、ドライクリーニング屋やスーパーマーケットなど地元店舗での買い物を、Alfredに登録するユーザーに一括してお任せできる。月額99ドルに加えて、サービスごとの利用料金がかかる。

アプリの仕組みはこうだ。まずログインすると、事前の審査に通過した「Alfred」と呼ばれるユーザーがあてがわれる。アプリではこの人物の顔写真、氏名、住所、マイカーの有無、アンケートの回答などを見て、信頼性をチェックする。依頼するAlfredを決めたら、事前に鍵を渡して指定した曜日に自宅に来てもらい、食料品のリストや洗濯物を渡したり、Alfredが受け取った生活必需品を届けてもらえる仕組み。こうしたルーティングワークは一度登録すれば、やってほしいことが変わらない限りは、Alfredが毎週自動的にタスクをこなしてくれる。Battlefieldでのデモの模様は以下の動画をご覧いただきたい。

決勝のジャッジを務めたのは、Yahooのマリッサ・マイヤー、Secoia Capitalのロエロフ・ボサ、Google Venturesのケビン・ローズら、「超」が付くほどの著名人。優勝チームを決めるにあたっては、Alfredともう1社で票が割れたのだという。次点となったのは、海外からの貨物輸送を効率化する「shipstr」だ。

shipstrは、貨物船や倉庫、運送会社といったプレイヤーの情報を集約し、複雑かつ高価な海外発送のプロセスをシンプルかつ安価にする。Shipstr創業者のMax Lockによれば、多くの中小企業は、仲介ブローカーを通じて貨物輸送を利用しているが、ブローカーの発注先は不透明で信頼できないという。そこで仲介ブローカーを中抜きし、最も安くて信頼できるプレイヤーを選べるようにする。まずはコンテナで中国の寧波市からロサンゼルスに商品を輸入するアメリカの中小企業を対象にし、今後は世界の主要50港をカバーするそうだ。このほかの決勝進出したチームは、こちらの記事で紹介している。

4000人以上が参加したTechCrunch Disrupt SF 2014は大盛況で幕を閉じたが、TechCrunch Japanでは11月18日、19日に東京・渋谷で、毎年恒例のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」を開催する。そこでは、日本版「Battlefield」と言える「スタートアップバトル」も行うことが決まっていて、参加企業を絶賛募集中だ。応募締め切りは10月3日までなので、我こそはというスタートアップはぜひ、こちらのページから応募してほしい。


TechCrunch Disrupt NY 2013の優勝が決定…パブリックデータマイニングのEnigmaだ

レディーズ、アンド、ジェントルメン! それでは、優勝作品を発表いたします。

今年のDisrupt NY(Disrupt NY 2013)では、Battlefieldの出場者たちがみな強者(つわもの)揃いだったが、30社中7社が決勝に残った: HealthyOut、Enigma、Floored、Glide、HAN:DLE、SupplyShift、Zenefitsの面々だ。

彼らは決勝のステージでもう一度プレゼンをしなければならない。より厳しい審査員たちの面前で: Sequoia CapitalのパートナーRoelof Botha、Allen & Co.の常務取締役Nancy Peretsman、SV Angelの常勤役員David Lee、KPCBのパートナーChi-Hua Chien、CrunchFundのパートナー(でTechCrunchのファウンダ)Michael Arrington、そしてTechCrunchの編集長Eric Eldonだ。

そして、Manhattan Centerの楽屋裏にしばらく引きこもった彼らは、ついに同意に達した。

Disrupt NY Battlefieldの優勝は: Enigmaである

Enigmaは、Marc DaCosta、Hicham Oudghiri、Jeremy Bronfmann、Raphaël Guilleminotらにより創業され、Webサービスとしてのデータマイニングを提供する。その対象データは一般に公開されている(が取得が難しい)ものだけで、すでに同社は10万あまりのデータソースを確保している。そして、これら大量のデータをふるいにかける処理が、一見すると、とてもシンプルだ。たとえば人名や社名で検索すると、瞬時にして複数の表が出力される。そしてよく見るとそれが、十分な思慮に基づくデータ処理であることが分かる。

Wolfram Alphaが公開データだけを扱ったらEnigmaになる、と考えるとほぼ当たっているかもしれない。しかしEnigmaは、一見関係のないような複数のデータ間の関係を見つけ出すのがうまい。Enigmaがこれまでに獲得したシード資金は145万ドルで、すでにHarvard Business Schoolや、調査会社Gerson Lehrman Group、S&P Capital IQ、それに最近ではThe New York Timesともパートナーしている。

Enigmaを紹介している本誌の記事はこれだ。


   
   

そして準優勝は: Handleだ

Shawn CarolanとJonathan McCoyが共同で立ち上げたHandle (ないしHAN:DLE)は、いわゆる“プライオリティエンジン”だ。それはWebアプリケーションおよびiOSアプリとして提供され、ユーザの仕事の生産性を高める。で、一体何をやるのかというと、メールクライアントとタスクマネージャが合体したような機能で、ユーザのメールをそれらの優先度で分類し、あとでざっと見れるように保存する。また、タスクとスケジュールを作り、その完了の日までの通信を…ほかのメールにまぎれないように…追跡管理する。

便利なキーボードショートカットが提供されていて(’A'を押すと保存、’R'を押すと今すぐ返事を書く、など)、しかも、毎日忙しい人が、「その日に何と何をすべきか」が明確に分かるようになっている。Handleはこれまで、Menlo Venturesから400万ドルを調達している(CarolanはMenloの常務取締役だ)。

Handleに関する本誌の記事は、ここにある。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))