レイオフがスタートアップの世界を急速に襲っている。サービス業や旅行関係、人材採用、そしてスクーター企業もだ。新型コロナウイルスの影響によるレイオフの最新情報を見ると、サテライトキャンパスへの打撃が特に大きいようだ。
サテライトオフィスは、当然のことながらスタートアップの本社に対して二次的な存在だ。企業が新しいラウンドで資金を調達したり新しい市場に進出したりする際に、規模の小さいオフィスを開設するのは戦略的な動きだ。これまでポートランド、フェニックス、そしてApple(アップル)やFacebook(フェイスブック)、Oracle(オラクル)がサテライトオフィスを構えるオースティンなどの都市に、スタートアップのサテライトオフィスが出現してきた。
Y Combinator(Yコンビネータ)の卒業生であるRoger Lee(ロジャー・リー)氏が作成した追跡ツールのLayoffs.fyiによると、起業家の重要なハブとなっているベイエリアやニューヨークに本社を持つ企業がレイオフに踏み切っているが、実際にはサテライトの都市にいるスタッフがレイオフされているケースが多い。
サンフランシスコにあるロジスティック企業のEasyPostは、ソルトレイクシティとルイヴィルにいる従業員のほぼ全員にあたる75人をレイオフした。英国のチャレンジャーバックのMonzoは、ラスベガスにいる165人のカスタマーサポート要員をレイオフした。
ボストンに拠点を置くレストラン管理プラットフォームのToastは、全従業員の50%にあたる1300人をレイオフした。Layoffs.fyiのデータによると、レイオフされたうちの12%はオマハ、10%はシカゴにいる従業員だった。
サンフランシスコに拠点を置き、最新の評価額が12億5000万ドル(約1340億円)だった輸送用トラック管理のKeepTruckinは、約350人をレイオフした。そのうち33%はナッシュビルとシカゴにいる従業員だった。
Layoffs.fyiで扱っているのは公開された情報のみなので、これらの数字は米国全体で発生しているレイオフを断片的に見たものにすぎない。しかしサンプリングであるとしても、注目すべき重要なデータだ。
こうしたデータの持つ意味は
経済がニューノーマル、つまり前とは違う新しい常識で再生したときに、本社所在地とサテライトのどちらが立ち直りに適した場所になるかはわからない。最近レイオフの嵐に直面しているスタートアップのハブであるボストンの投資家たちに話を聞いた。
ボストンに拠点を置くベンチャーキャピタル、UnderscoreのパートナーであるLily Lyman(リリー・ライマン)氏によれば、サテライトオフィスにはセールス、カスタマーサクセス、事業開発のスタッフが勤務していることが多い。事業として考えれば、こうした役割は消費者の活動が低下することで最も大きな影響を受ける。多くの企業には、今なすべきセールスや取引がない。
ライマン氏は「企業が売上の減速を予測しているため、(これらの役割は人員の削減に関して)より大きな影響を受けている。手持ちのキャッシュで持ちこたえる期間を伸ばすためには理にかなった決定だが、顧客との間に回復が難しいダメージを与えるリスクもある」と語った。
人員削減がサテライトオフィスに集中するとは見ていない人もいる。同じくUnderscoreのパートナーであるMichael Skok(マイケル・スコック)氏は「サテライトオフィスがコストがあまりかからない新しい市場で地位を確立するケースも見てきた。そのため、サテライトオフィスはこの事態の中で実は守られるかもしれない」と述べた。どういうことかというと、コストを減らそうとする場合、サンフランシスコの従業員はデンバーの従業員よりコストがかさむ可能性がある。サンフランシスコのほうが、生活費がとてつもなくかかるからだ。新興テックシーンのスタートアップに投資しているRevolution Venturesは、投資先のサテライトオフィスのレイオフは最近聞いていないという。
最後にやっかいな話として、資金調達が難しくなりそうだという悲観的な兆候があり、創業者やベンチャーキャピタリストはこれを懸命に避けようとしているが、本社以外の都市でのレイオフはこの兆候を抑えるかもしれない。新型コロナウイルスの感染は広がり続けているため、事業のスリム化は受け身の戦略ではなく事前の対策になりつつある。
レイオフが単独で実施されることはめったにない。また、人員削減はあまり堅牢でないテックのエコシステムに、より深刻な影響を与えるようだ。現在の状況はこうしたことを示している。
画像クレジット:Getty Images
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(翻訳:Kaori Koyama)