オーストラリアでAppleが一部の顧客サービスを断って$6.6Mの罰金刑を食らう

【抄訳】
Appleはオーストラリアの消費者権利団体からの訴訟により、900万オーストラリアドル(660万USドル)の罰金刑を食らった。原告は、以前サードパーティに修理させたデバイスがiOSのアップデートにより使用不能になったときの、Appleの対応を問題にしていた。

公正な競争と消費者保護のための政府機関、オーストラリアの競争と消費者委員会(Australian Competitor and Consumer Commission, ACCC)は、所有者がAppleのiOSオペレーティングシステムのアップデートをダウンロードすると、一部のiPhoneとiPadが動作しなくなるエラー(‘error 53’, 下図)に関する、一連の苦情を調査した。

ACCCによると、Appleは2015年2月から2016年2月にかけて、AppleのアメリカのWebサイトや、オーストラリアの店内スタッフ、それに顧客サービスの電話がそのこと〔使用不能と顧客対応〕を認めた。彼らはerror 53を経験した少なくとも275名のオーストラリアの顧客に、そのデバイスがサードパーティによって修理されていたら救済の対象にならない、と告げた。それが、今回の訴件だ。

画像クレジット: 70023venus2009 Flickrより, CC BY-ND 2.0のライセンスによる

裁判所は、Appleのその態度はオーストラリアの消費者法に違反している、と判決した。

ACCCのSarah Court委員は、声明で次のように述べている: “オーストラリア消費者法(Australian Consumer Law)では、製品に欠陥があれば顧客は修理または交換、ときには返金の法的権利を有する。Appleの代表者たちは顧客に、自分はサードパーティの修理屋を利用したから自分の欠陥デバイスに関して救済を拒否される、と信じこませようとした”。

“裁判所は、「iPhoneまたはiPadがApple以外の者によって修理されたという事実だけでは、消費者保証の停止や消費者の救済の権利が消滅する結果にはならないし、なりえない」、と宣言した”。

ACCCによると、Apple Australiaは、法的強制力により、スタッフの教育訓練の改善や、保証に関する監査情報とオーストラリア消費者法を同社Webサイト上に載せることを行い、今後のコンプライアンスを確保するためにシステムと手続きを改良することになった。

さらにACCCによると、この判決によって解消した懸念は、Appleが交換用に再生機を提供していた、前に大きなエラーを被った品物を再生機として利用していたという疑念だ。実際にはAppleはそれらの状況において、消費者が要求すれば新しい製品と交換していた。

“iPhoneやiPadを買った人が重要な欠陥に悩まされたら、返金が当然だ。交換を希望する顧客には、再生品でなく新品を渡すべきだ。新品があるかぎりは”、と裁判所は言う。

裁判所はまた、オーストラリアAppleの親会社Apple USにも、子会社がやったことへの責任がある、と論じた。裁判所は、グローバル企業も、その返品に関する方針は各国の(ここではオーストラリアの)消費者法を遵守すべきであり、守らなければACCCのアクション〔==訴訟〕の対象になる、とも主張した。

Appleは昨年12月から今年1月にかけて、あの人為的性能劣化問題で、同様の消費者問題の爆撃を被(こうむ)った。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

非正規ショップでiPhoneのホームボタンを修理交換した人は、iOS 9を「絶対に」導入しないこと

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iPhoneのパーツがおかしくなってしまったような場合、非正規の代理店に持ち込む人もいることだろうと思う。ただしホームボタンが壊れた場合は、絶対に正規店に持ち込む必要があるようだ。ガーディアンの記事によると、Appleの導入したTouch ID保護に関わる「Error 53」というエラーにより、たくさんの人がiPhoneを操作できなくなるという事態になっているそうなのだ。このエラーに遭遇すると、iPhoneではあらゆる操作が行えなくなってしまう。

「Error 53」が発生してしまう原因は、iPhoneのホームボタンを非正規ショップで修理交換したことによるものだ。非正規ショップでホームボタンの修理交換を行なったiOSデバイスにiOS 9を導入すると、デバイスは操作不能となり、それを回復する手立てもないという状況になってしまう。

きっと多くの人は、これはAppleが修理代のマージンを取得するために仕込んだことだと考えてしまうことだろう。実はそうした金儲け主義が理由ではない。正規ショップで修理を行うと269ドルないし329ドルの修理代金がかかるが、それは意味のあることなのだ。

AppleがiPhone 5s向けにTouch IDを導入した際、セキュリティのために新しい仕組み構築する必要があった。すなわち指紋データをAppleのサーバーなどに送らない仕組みを実現する必要があったのだ。もちろんiPhoneのローカルストレージに通常のデータとして保存することもできない。iCloudやiTunesバックアップなどにデータを置いておくことも避けなければならなかったのだ。

そこでAppleが構築した仕組みが「Secure Enclave」という仕組みだ。Secure EnclaveとはAシリーズのプロセッサに組み込まれたコプロセッサで、システムへの不正なアクセスを防ぐように設計されている。Secure Enclaveには独自のUID(固有ID)がセットされていて、システムの他の部分からはもちろん、AppleさえもこのIDを知ることはできないようになっている。システムはデバイスの起動時に一時鍵を生成してUIDと関連付けることにより、情報にアクセスすることができるようになる。すなわちSecure Enclave内の情報にアクセスするには、かならずこの一時鍵を利用して行う必要があるのだ。

そしてここまでに記したセキュリティ効果に実効性をもたせるため、Touch IDのセンサーはSecure Enclaveとペアリングされた状態で動作するようになっている。さもなければ、ホームボタンを改造して自前のTouch IDセンサー動作させることで、Secure Enclave内のデータに不正にアクセスできるようになってしまう。たとえばApple Payなどを不正に利用することができるようになってしまうわけだ。

さらにiOS 9ではTouch IDセンサーとSecure Enclaveの結びつきが一層強化され、Touch IDセンサーを正統なものであると認識できなければ、「エラー53」を表示してiPhoneへのアクセスをブロックするようになったのだ。それで、非正規修理店の修理交換したホームボタンが一切動作しなくなってしまったのだ。正規ショップではSecure Enclaveと、新しいホームボタンのペアリング処理も行うようになっていて、それでホームボタン交換後もきちんとiPhoneを動作させることができるようになっている。

もっともらしい話ではある。ただしちょっとおかしなところもあるのではないだろうか。AppleはSecure Enclaveがメインプロセッサーと分離して動作する仕組みを導入している。それであればTouch IDとのペアリングがおかしくなっているときには、Secure Enclaveのデータが必要となる処理のみをブロックすることも可能だったのではないだろうか。あるいはTouch IDの処理を前提としているものの処理を行えなくするようにしてもよいだろう。

しかしたとえばこれまでに撮影した写真や連絡先情報などにまでアクセスできないようにする必要はないのだ。「エラー53」がシステムへのアクセスを拒否する仕組みはまったくひどいもので、ぜひとも再考をお願いしたい。

また、AppleはiOS 9.0へのアップグレード通知を行う際に、この「エラー53」について詳細な情報もあわせて通知すべきだろう。現在用意されているサポートページ程度では不十分だ。iPhoneの利用者には、自分たちが撮りためてきた写真にすらアクセスできなくなる可能性があることを、事前に知る権利があるはずなのだ。これはAppleのためでもあるはずだ。「エラー53」が出る理由を知った人の多くは、Appleが金儲け主義によりサードパーティーのリペアショップを潰そうとしていると考えるはずだからだ。

冒頭にリンクしたガーディアンの記事では、この問題はiPhone 6とiPhone 6 Plusで確認されているとのこと。iPhone 5sやiPhone 6s、あるいはiPhone 6s PlusでもTouch IDセンサーを使っているわけで、条件が一致すれば同様の問題が出てくるものと思われる。Touch IDセンサーを使っているiOSデバイスでは、いずれも同様の問題に遭遇する危険性があるのだ。

Appleからは以下のようなメッセージを受け取っている。

私たちはセキュリティを非常に重大なものと考えています。そうであってこそ、お客様をさまざまな危険から守ることができると考えているのです。そうした考えから、iOSはiPhoneやiPadに搭載されているTouch IDがオリジナルのものであるのかどうかをチェックしています。もし正しくない方法でTouch IDセンサーが交換されていることを検知した場合、Apple PayなどのTouch ID関連サービスを利用することはできなくなります。Touch IDセンサーを不正に利用するのを防ぐためには、どうしても必要なチェックルーチンであると考えています。「エラー53」に遭遇した利用者の方々には、Apple Supportに連絡していただきたいと考えております。

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(翻訳:Maeda, H