フィアット・クライスラーとルノーの合弁は「政治的な事情」で破談に

フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)がルノーに提案していた合弁は、世界第3位の自動車メーカーを生む可能性もあったが、結局立ち消えとなった。ウォールストリートジャーナル(WSJ)の記事によれば、FCAが提案を取り下げたかたちだ。FCAはTechCrunchに対し、主として政治的な事情により、提案を取り下げたこと認めた。

「FCAは、変革をもたらす先の提案についての説得力のある論理的根拠に、今でも確かな自信を持っています。提案を発表した後、広く好意的な反応が得られていました。その提案の構造や表現は、すべての関係者に相当な利益をもたらすよう、注意深く配慮されたものでした」と、FCAがTechCrunchに提供した声明に記されている。「しかしながら、現在のフランスの政治情勢は、そのような組み合わせがうまく進展することを許さないことが明らかになったのです」。

FCAは5月27日、ルノーの取締役会に対し、50対50の合併として事業を結合することを提案する拘束力のない書簡を送付した。FCAの提案は、多くの自動車メーカーが、他社との統合、またはパートナーシップを結ぶことを、ますます望むようになっていることを象徴している。その背景には規制圧力の高まり、売上の減少、自動運転車のような次世代の技術を市場に導入するためのコストの増加、といった状況がある。米国時間の6月5日には、次世代の電気自動車用の部品の開発に、BWVとJaguarが協力して取り組むという発表もあった。

今回の提案では、合併後の事業はFCAとルノーの株主間で均等に分割されることになっていた。FCAによれば、取締役会は、計11名の混成メンバーで構成され、FCAとルノーが、それぞれ4人ずつ、同数の役員を出すことにもなっていた。

WSJによれば、フランスの自動車メーカー、ルノーの既存のパートナーである日産自動車が、今回の合併の主な障害になったという。ルノーは日産と提携していて、ルノーが日産の43.4%の株式を所有している。逆に日産はルノーの15%を所有している。

ルノーと日産自動車の関係は、ルノー・日産アライアンスの元CEO、カルロスゴーン氏の逮捕と、それに続く権力闘争の成り行きによって注目されてきた。

※この記事は、まだ進行中のことについて書いている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

フィアット・クライスラーとルノーの経営統合でジープのメーカーが手にするもの

フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とルノーは、両社の事業の広範な部分を合併するよう交渉を進めている。この動きは、自動車業界全体に高まる整理統合の気運を象徴するもの。その背景には規制圧力の高まり、売上の減少、自動運転車のような次世代の技術を市場に導入するためのコストの増加、といった状況がある。

アップデート:FCAは、50対50の合併を提案する拘束力のない書簡をルノーに送付した。その提案によれば、合併後の事業はFCAとルノーの株主間で均等に分割されることになる。取締役会は、計11名の混成メンバーで構成されることになると、FCAは述べた。FCAとルノーが、それぞれ4人ずつ、同数の役員を出し、1人は日産からも選出されるとのこと。

クライスラーは、米国内ではJeepとRamトラックの会社としてよく知られているが、その事業は、それよりはるかに大きい。フィアットは、イタリアで最も古い企業の1つだが、現在では200億ドル(約2兆2000億円)の市場価値を持つ。ブランドとしては、アルファロメオ、フィアット、ランチア、マセラティなどを所有している。

フィアットは、2009年にクライスラーの株式を取得した。FCAの従業員は現在約20万人だが、2014年に両社が合併した際に統合されたものだ。

FCAの目的は何なのか?まず、現在FCAが所有する自動車部品事業、Moparのビジネスが不均衡なものになっているという事情がある。その従業員の約3分の1はヨーロッパにいる。それなのに、利益の大部分は北米市場から得ている。そのため、ルノーとの合弁によりヨーロッパにおいてかなりのコスト削減が期待できる。

FCAは、この合併による工場閉鎖はいっさい考えていないと強調している。

コスト削減は、売上が低迷した場合に大きな意味を持つ。実際にGMやフォードなど、他の自動車メーカーは、すでにそのための準備を進めている。また、電気自動車や自動運転車など、新技術を市場導入するには多額の費用がかかるが、合弁によって協業し、コストを分担し合うことができる可能性も拡がる。

FCAは46の研究開発センターを運営しており、先進的な運転支援システムに投資してきた。その成果は、マセラティブランドで提供されている高速道路でのアシスタント機能として実現されている。しかしその一方で、自動運転技術を開発しているWaymoなど、他社との協業に依存している面もある。

昨年、FCAはWaymoとの提携を拡大し、Waymoの自動運転車両群に、最大6万2000台のChrysler Pacificaミニバンを追加すると発表した。両社はまた、Waymoの技術をライセンスして、消費者向けの車にも自動運転技術を導入する方向で取り組みを進めている。

この記事は、FCAがルノーとの合併を提案したことを受けて内容を更新した。

画像クレジット:Kristen Hall-Geisler

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

フィアット・クライスラーとGoogle、Androidを車載システムに統合へ―CESでデモ展示

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今日(米国時間1/2)、FCA(フィアット・クライスラー・オートモビル)はAlphaebetの新会社、Waymoが協力を進めていることを発表した(Waymoは以前のGoogle自動運転車事業部)。

GoogleはWaymoを通じて、自動運転テクノロジーだけでなくAndroidを利用した車載システムもFCAに提供する。Androidベースのシステムは標準的車載機器をコントロールし、インターネットに接続して情報やエンターテインメントを乗員に届ける。 FCAの新しい車載システムはUconnectと呼ばれ、Android 7.0がベースとなる。新システムはAndroidアプリと互換性があるのはもちろん、エアコンその他の車載デバイスを動かし、地上波ラジオ局を受信するなどきわめて多機能だという。.

GoogleとFCAの協力はAndroid Autoを含めて非常に広範囲となるはずだ。Android Autoは操作がシンプルでドライバーの注意力を補ってくれるドライバー・フレンドリーなレイヤー化されたAndroidシステムだ。表示には車載ディスプレイまたは所定のマウントに挿入されるスマートフォン(自身の電源で作動)が利用される。Googleは検索事業の巨人だが、自動車産業への進出に高い優先順位を与えることにしたようだ。今回の動きはGoogleが自動車メーカーの車載システムに自社のテクノロジーを基本的なレベルで組み込もうとしてることの現れだ。

FCAのプレスリリースによれば、GoogleのAndroid Engineeringの責任者Patrick Bradyは「われわれはAndroidをすべての機能が備わった本当の意味でのターンキー車載システムにする。これは自動車自身のシステムと安全性を確保しつつシームレスに結合したものになるだろう」と述べている

フィアット・クライスラー側にとってGoogleとAndroidは非常に魅力的な機能と柔軟性を提供する。つまり自動車メーカーとしての車載システムの独自性を失うことなくユーザーにAndroid互換性を提供することができるわけだ。

FCA の電気工学の責任者、Chris Barmanはリリースで「Uconnect車載システムはAndroidをベースにすることで、ユーザーが見慣れたUIを通じてシンプルな操作が可能になり、Androidエコシステムに含まれるすべてのアプリがそのまま利用可能になる」と述べている。

自動車メーカーが車載システムの独自性やコントロールを保持できるというのはGoogleがもつ大きな優位性だ。AppleもCarPlayを通じて車載システムへの進出を図っているが、Appleがブランドはもちろん、UIのルック・アンド・フィールを含めてCarPlayに対するコントロールを手放すとは考えられない。対自動車メーカーにかぎらず、iOSや最近のOS
X/macOSを含め、Appleはこれまでサードパーティーに基本ソフトウェアの改変を許したことはない。

なるほど、自動車メーカーはUIの専門家ではないので、ルック・アンド・フィールのデザインを任せることは理想的な解決策とはいえない。過去の例をみても、不細工なUIが作られるリスクが多いにある。しかし自動車メーカーはドライバーの注意を散漫にしないよう当局が設けた厳しい規制に従わねばならない。つまり自動車メーカーが車載システムのUIデザインの主導権を外部のソフトウェア・メーカーに完全に譲り渡すことはないだろう。ここで述べたような安全上の理由に加えて、ユーザー体験の主導権を手放したくないというメーカーとしての理由もあるだろう。

GoogleのAndroid OSに対しての柔軟性が車載システムでのシェアを獲得する際の切り札となる可能性がある。さまざまなレベルの自動運転システムが普及するにつれて、ドライバーの車内での時間は根本的に変化するだろう。インターネット企業にとってさらに価値の高いものになるはずだ。今週ラスベガスで開催されるCESでAndroidと統合されたUconnectがデモ展示されるという。私もCESに行くので実地に試してみたい。しかし現時点でのユーザー体験のレベルとは別に、FCAとの提携はGoogleにとって非常に有効な一手となったと思う。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+