ステランティスは28年までにクライスラーをオールEVブランドに変える、コンセプトカーから垣間見えるその未来

Stellantis(ステランティス)が所有する96年の歴史を持つブランドで、今日ではミニバンで有名なChrysler(クライスラー)は、2028年までにオールEVブランドとなる計画だ。

同社は、2つの電気モーターと1回の充電で350マイル(約563km)から400マイル(約643km)走行できるバッテリーを搭載した全輪駆動の電気SUVコンセプトカー「Crysler Airflow Concept」を公開した際に、この発表を行った。

Stellantisは、このコンセプトカーが生産されるかどうかについては言及しなかった。現在のところ、Airflow Conceptは、ブランドの将来のポートフォリオを特徴づけるデザインと技術を披露するためのもののようだ。

Chryslerの新しいEVの未来における最初の実製品は、わずか数年後に登場する。Fiat Chrysler (フィアット・クライスラー)とフランスのPSAグループの合併によって誕生したこのグローバルな自動車メーカーは、2025年までに最初のバッテリー電気自動車を市場に投入することを明らかにしたのだ。

現在、同ブランドの車種は、ミニバンの「Chrysler Pacifica」と「Chrysler Pacifica Hybrid」、セダンの「Chrysler 300」の3車種のみだ。ChryslerブランドCEOのChris Feuell(クリス・フォイエル)氏によると、2017年初頭に市場投入されたプラグインハイブリッドのChrysler Pacifica Hybridは、同ブランドの目指す方向への飛躍台として機能したという。

Crysler Airflow Conceptの内部

Chrysler Airflow Conceptの内装(画像クレジット:Stellantis)

Chrysler Airflow Conceptは、低い車高とツートンカラーのルーフラインにより、空力性能ひいては航続距離を向上させながら、強靭なスタンスを兼ね備えてデザインされたSUVだ。また、ロングホイールベースとワイドトレッドに22インチホイールを組み合わせることで、外観は完成させれている。

パノラマルーフや乗員の好みに応じて変化する照明、クリスタルLED照明で照らされた光刃を含むグリルに結び付けられたChryslerウィングのロゴなど、エクステリアとインテリアの一連の工夫によって、プレミアムSUVを披露することが今回の目的である。

Chrysler Airflow Conceptは、ブランドのウィングロゴをグリルに結びつけ、クリスタルLEDライトで照らされたライトブレードを搭載(画像クレジット:Stellantis)

しかし、Stellantisがブランドのために計画している本当の姿は、Airflowに搭載されているハードウェアとソフトウェアの技術だ。StellantisのチーフデザインオフィサーであるRalph Gilles(ラルフ・ジル)氏が発表の中で述べているように、Airflowは「Stellantisのコネクテッドビークル技術の集大成を、内側と外側から熟考して完成した成果物」なのだ。

それは、いったいどういう意味なのだろうか?Stellantisの考えにおいて、それはコネクティビティ、デジタルコンテンツとサービス、そして先進的なドライバーアシスタンスシステムのことを指す。

このコンセプトには、Stellantisがすでに開発を進めている3つの分野が含まれており、12月には、クルマに搭載されたソフトウェアから年間225億ドル(約2兆6000億円)を生み出し、乗客やドライバーに商品とサブスクリプションを販売する計画の一環として、その概要を発表している。

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まず「STLA Brain」と呼ばれる電気とソフトウェアの基本的なアーキテクチャからだ。このシステムはクラウドと統合されており、車両内の電子制御ユニットを高速データバスで車両中央の高性能コンピュータに接続する。これにより、同社は「無線」で、つまりワイヤレスで車両にソフトウェアをアップグレードすることができるようになるのだ。

この「頭脳」の上に、同社は「SmartCockpit」を追加した。これはFoxconn(フォックスコン)と共同で構築したプラットフォームで、ナビゲーション、音声アシスト、eコマースマーケットプレイス、支払いサービスなどのアプリケーションをドライバーに提供することができる。

最後に、BMWと共同開発した「AutoDrive」と呼ばれる第3の自動運転プラットフォームが、自動車メーカーのソフトウェア計画を完成させることになる。

Chrysler Airflow Conceptの各スクリーンは、デジタルコンテンツにアクセスするためのパーソナライズされた空間だ(画像クレジット:Stellantis)

「頭脳」「スマートコックピット」「自動運転」という、これら3つのプラットフォームは、2024年までにすべてのStellantis新モデルに搭載される予定だ。同社の方向性を示すコンセプトであるAirflowは、これら3つのプラットフォームも搭載している。

頭脳、スマートコックピット、自動運転の3つのプラットフォームを通して何が実現できるのかを示してくれたこのAirflowの車内には、いたるところにスクリーンがあり、ユーザーはアプリやエンターテインメントなど、パーソナライズされたデジタルコンテンツにアクセスすることができる。スクリーンに表示された情報は、スワイプすることですべての乗客と共有することができる。

Airflowの写真は以下のギャラリーで確認してみて欲しい(画像クレジット:Stellantis)。

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画像クレジット:Stellantis

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ステランティスが車載ソフトウェアで年間約2.5兆円の収益を上げる計画を発表

Stellantis(ステランティス)はオランダ時間12月7日、同社の自動車に搭載するソフトウェアを使って乗員とドライバーにサービスや機能を販売または定額制で提供し、年間200億ユーロ(約2兆5600億円)の収益を上げるという野心的な計画を発表した。この狙いは競合他社の目標と一致するものだ。すべての自動車会社は、車両の販売、修理、融資以外の収益方法を模索している。

Fiat Chrsyler(フィアット・クライスラー)とフランスのPSA Group(PSAグループ)が合併した国際的自動車メーカーのステランティスは、2025年までに300億ユーロ(約3兆8400億円)以上をソフトウェアと電動化に投資すると発表した。その中には2024年までに4500人のソフトウェアエンジニアを雇用することも含まれる。

最終的な目標は、2030年までに3400万台のコネクテッドカーを走らせ、消費者に車両を販売した後も、そこから数年間、収益を得られるようにすることだ。この目標を達成するために、ステランティスはBMW、Foxconn(フォックスコン)、Waymo(ウェイモ)とのパートナーシップを活用する。同社によれば、現在は世界中にステランティスが販売した1200万台の「収益化可能な」コネクテッドカーが走っているという。なお、ステランティスでは「収益化可能」なのは新車で販売してから最初の5年間と定義している。

では、ステランティスは実際にどうやって収益化するつもりなのだろうか?まず、そのための基盤となるのが、同社が「STLA Brain」と呼ぶ電気 / 電子制御とソフトウェアのアーキテクチャだ。この基本システムは、車両の各部に搭載された電子制御ユニットと、その中心となる高性能コンピューターを高速データバスで接続し、それがクラウドに統合される。これによって、車載ソフトウェアのアップグレードを「OTA(over the air)」つまり無線で行うことができる。

ステランティスは、この「Brain(頭脳)」の基盤上に、Foxconnとの合弁会社であるMobile Drive(モバイル・ドライブ)が開発した「STLA SmartCockpit(スマートコクピット)」というプラットフォームを付け加え、ナビゲーション、音声アシスタント、電子商取引マーケットプレイス、決済サービスなどのアプリケーションをドライバーに提供する。なお、これとは別に、ステランティスはFoxconnと、専用のマイクロコントローラー・ファミリーを設計するための拘束力のない覚書に署名したことも発表した。このパートナーシップは、ステランティスの車両に必要とされるマイクロコントローラーの80%以上をカバーする4つのチップファミリーを開発することを目的としている。

そしてステランティスのソフトウェア計画で3つめの鍵となるプラットフォームが、BMWと共同開発した最高レベル3の自動運転を実現する「STLA AutoDrive」だ。これら3つのプラットフォーム(STLA Brain、STLA SmartCockpit、STLA AutoDrive)は、2024年以降に発売されるすべてのステランティス製の新型車に採用される。

ソフトウェアを自動車の中心的な要素とした最初の企業はTesla(テスラ)だった。同社は無線アップデートで、性能の向上やテレビゲーム機能などを提供したり、先進運転支援システムのアップグレードを可能にしている。しかし、他の自動車メーカーも以前から、日々収集される膨大なデータを利用して、オーナーに車内サービスを提供することに可能性を見出していた。

現在では、GMをはじめとする多くの自動車メーカーが、ドライバーが車内で利用したいと思うサービスを実際にサブスクリプションで提供できる技術力を備えている。しかし、これには賛否両論があることも事実だ。今まで車両購入時に一度だけオプション料金を払うだけでよかったシートヒーターやアダプティブクルーズコントロールの機能を使うために、継続的に料金を支払わなければならないサブスクリプションという方式に対し、消費者から反発の声も上がっているからだ。

関連記事:GMは2030年までにサブスクをNetflix級のビジネスにしようとしている

ステランティスは、ソフトウェアを使用して、自動車の所有者にサービスやサブスクリプションを提供するだけでなく、ある機能を使いたいときだけ使えるようにオンデマンドで提供することも計画している。また、法人顧客に対しては、データ・アズ・ア・サービス(サービスとしてのデータ)やフリート・サービスを提供する予定だ。例えば、同社はデータ収集能力を利用して、使用量ベースの保険プログラムを2022年に開始し、欧州と北米の金融部門を通じて提供すると述べている。

ステランティスによれば、今回発表されたソフトウェア戦略は、同社の車両ラインナップの電動化計画と連動するものであるという。同社は2021年7月、欧州における車両販売台数の70%以上、米国では販売台数の40%以上を、2030年までに低排出ガス車にするという目標を発表している。

画像クレジット:DENIS CHARLET/AFP / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

多国籍自動車会社ステランティスが2025年までに約3.9兆円を電気自動車に投資

Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と、フランスのGroupe PSA(グループPSA)が合併して誕生した多国籍自動車メーカーであるStellantis(ステランティス)は、内燃機関からの脱却に向けた大規模な取り組みの一環として、今後4年間で電気自動車と新しいソフトウェアに300億ユーロ(約3兆9000億円)を投資すると発表した。

世界第4位の自動車メーカーとなったステランティスは、General Motors(ゼネラルモーターズ)やVolkswagen(フォルクスワーゲン)などのライバル企業と並んで、2020年代前半に電気自動車へ数兆円規模の投資を行うことになる。同社は2024年までに、Dodge(ダッジ)ブランドのマッスルカーと、Ram(ラム)ブランドのピックアップトラックの電気自動車を製造することを計画している。また、2025年までにはJeep(ジープ)ブランドのすべてのセグメントに、電気自動車またはプラグイン・ハイブリッド車を提供すると述べている。

その最終的な目標は、2030年までに欧州で70%以上、米国で40%以上の低公害車の販売目標を達成することだと、現地時間7月8日にオンラインで開催された同社初の「EV Day」イベントで、Carlos Tavares(カルロス・タバレス)CEOは語った。

ステランティスは、競合他社に比べて電動化が遅れているが、その理由の1つは、同社のラインナップの売れ筋がパフォーマンスモデルやヘビーデューティーモデルに偏っていることだ。同社は十数ブランドの自動車を設計・製造しており、米国ではジープ、Chrysler(クライスラー)、ダッジ、ラムがそれに含まれる。欧州の主要ブランドには、Fiat(フィアット)、Peugeot(プジョー)、Citroen(シトロエン)、Opel(オペル)などがある。

その電動化戦略を実現するために、2025年までに容量130ギガワット時以上のバッテリーを製造し、2030年までには北米と欧州に建設する5つの巨大バッテリー工場で、260ギガワット時以上のバッテリーを製造できるようにすると、ステランティスの幹部は語った。また、2024年までには搭載する車両に合わせて2種類のバッテリー化学物質を使い分け、2026年までに固体バッテリー技術を開発することを目標としているという。

画像クレジット:Stellantis

この巨大自動車メーカーは現在、4つの電気自動車専用プラットフォームを開発している。主に街乗り用の「STLA Small(STLAスモール)」は航続距離が最大500キロメール、上級乗用車の「STLA Medium(STLAミディアム)」の航続距離は最大700キロメートル、そして高性能なパフォーマンスモデルやマッスルカー用の「STLA Large(STLAラージ)」と、ピックアップトラックや大型SUV用の「STLA Frame」は最大航続距離800キロメートルとなる予定だ。ステランティスのRichard Palmer(リチャード・パルマー)CFOによると、同社では2020年から2024年の間にバッテリーパックのコストを40%削減することを目指しているという。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Stellantis電気自動車投資Fiat Chrysler Automobiles

画像クレジット:Stellantis

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

エアタクシースタートアップArcherが電動飛行機生産で自動車メーカーのフィアット・クライスラーと提携

都市交通向けの電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発するArcherは、自動車メーカーのFiat Chrysler Automobiles(FCA、フィアット・クライスラー・オートモービルズ)のエンジニアリング、デザイン、サプライチェーンおよび材料科学における専門知識を活用するために、同社と新たな提携関係を結ぶ。ArcherはeVTOLの量産を2023年に開始し、2021年の早い時期での機体初公開を目指している。

今回の新たな提携により、FCAはArcherのeVTOLのコックピット設計に貢献する情報を提供することになり、また自動車事業での何十年にもわたってドライバーのために空間を設計してきた豊富な専門知識でも貢献する。Archerの機体は電気モーターを搭載し、最高時速150マイル(時速約240km)で最大60マイル(時速約97km)飛行できる。同社のeVTOLは静粛性と効率性を重視して設計されており、FCAとの連携により、大量生産と持続可能性を実現するために製造コストの低減に向けた取り組みが進められている。

最終的にArcherはFCAの協力を得てプロセスの効率化を実現し、eVTOLを市場に投入することで、エンドユーザーが手頃な価格で利用できる健全なビジネスを実現することを目指している。パロ・アルトを拠点とするArcherは、将来的には世界中の都市でエアタクシーサービスを提供するために、最終的には年間「数千機」のeVTOL機を生産できるレベルまで生産規模を拡大したいと考えている。

共同創業者のBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏とAdam Goldstein(アダム・ゴールドスタイン)氏が率いるArcherは、Airbus(エアバス)のVahana eVTOLイニシアチブで重要な役割を担ったチーフエンジニアのGoeff Bower(ゴエフ・バウワー)氏といった業界の重鎮が参加し、2021年初めにウォルマートのeコマース事業の現社長兼CEOであるMarc Lore(マーク・ローア)氏(ウォルマートに買収された際に同氏はJetの共同創業者兼CEOだった)の支援を受けて、ステルス状態からスタートした。

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タグ:ArchereVTOLエアタクシーFiat Chrysler Automobiles

画像クレジット:Archer

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter