デジタル金融サービスのインフラを構築する香港のOrienteが約53億円を調達

香港に拠点を置くOriente(オリエンテ)は、デジタルクレジットなどのオンライン金融サービスのテックインフラを開発するスタートアップだ。今回のシリーズBラウンドで5000万ドル(約53億3000万円)を調達した。香港最大の不動産開発会社の1つであるHenderson Land(ヘンダーソンランド)の共同会長であるPeter Lee(ピーター・リー)氏がラウンドをリードし、ウェブサイト開発プラットフォームのWix.comなどの投資家が参加した。

Orienteは、2017年にSkypeの共同創業者であるGeoff Prentice(ジェフ・プレンティス)氏と、Hubert Tai(ヒューバート・タイ)氏、Lawrence Chu(ローレンス・チュー)が立ち上げた。既存の金融機関がサービスを提供していない市場に注力している。新しく得た資金はOrienteの既存市場であるフィリピンとインドネシアでの成長と、ベトナムを含む新規市場への拡大に使う。

調達した資金は、Orienteのテクノロジーの開発継続にも向けられる。同社のテクノロジーはビッグデータ分析によって小売業者がセールスコンバージョンを向上し、リスクを低減するのに役立つ。Orienteは、2018年11月のラウンドで調達した1億500万ドル(約111億9000万円)を含め、これまで1億6000万ドル(約170億5000万円)を超える金額を株式と負債で調達した。

Grab、Google、Facebook、Amazon、Uber、Apple、Samsungなど多くの大手テック企業が検討しているデジタル決済といったオンライン金融サービスにはテクノロジーのインフラが必要であり、さまざまな市場で規制対応を支援してくれるパートナーも必要だ。

Orienteは決済プロバイダーとは競合しない。プレンティス氏はTechCrunchに「オフライン、オンラインを問わず、小売業者のデジタルクレジットソリューションの迅速な立ち上げを可能にするテクノロジーを開発し、『サービスとしてのクレジット(Credit as a Service)』を創造する」と語った。

同氏はまた、Orienteが「エンドツーエンドのデジタル金融サービスインフラの開発に注力している唯一の企業だ」と述べた。同社にはコンシューマー、オンラインおよびオフラインの小売業者、法人クライアント向けのサービスがある。

同社は現在消費者向けに、フィリピンではCashalo、インドネシアではFinmasという2つのアプリを提供しており、合計で500万のユーザーと1000を超える小売業者を抱えるという。サービスには、中小企業向けの現金ローン、オンラインクレジット、運転資金提供が含まれている。

Orienteによると、2019年に取扱高は前年比で700%増加し、サービスを提供する新規ユーザーは400万人を超え、販売パートナーの販売量は20%以上増加した。

Orienteは今後数カ月にわたり「Pay Later」のデジタルクレジット機能を拡張し、資金調達を必要とする中小企業向けに新しい成長資本ソリューションを立ち上げる予定だ。同社はまた、大企業向けのエンタープライズソリューションを拡張するために、いくつかのパートナーシップを結んでいる。

Orienteはベトナムで、CashaloやFinmasと同様のコンシューマープラットフォームのベータテストを行っている。オンラインクレジットやファイナンスだけでなく、現地の企業と提携して他のサービスも提供する。

同社はまた、新型コロナウイルスパンデミックの間に企業にサービスを提供する方法を検討し始めた。多くの小売業者が売上高の減少、ユーザーの逸失、キャッシュフローの問題に直面しているからだ。

「過去数週間にわたり、当社は企業戦略に優先順位をつけて、各市場における最大の機会に焦点を当ててきた。また現在および将来の市場の状況とより焦点を絞った戦略に基づき、オペレーションとファイナンスの効率を最適化するため、組織を再構築するさまざまな措置を講じている」とプレンティス氏は説明した。

「当社の目的は、予想される流動性の危機を緩和することだけでなく、不況下で当社のビジネスが市場で勝利をおさめ抜きん出る能力を証明し、将来にわたって株主価値を高めることだ」。

画像クレジット:Oriente

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(翻訳:Mizoguchi

銀行業務をブロックチェーンで支える基幹システムVault OSを元Google社員がローンチ

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銀行には世界の富の圧倒的に膨大な量があるにも関わらず、あるいはそれゆえにこそ、最先端のテクノロジーが育つ場所にはなっていない。むしろ何十年も前からのシステムに頼って、日々の業務をこなしている場合が多い。そこで、Google出身のエンジニアPaul Taylorが率いるThoughtMachineは、ブロックチェーンを使った現代的で総合的な銀行オペレーティングシステムVault OSで、この状況を変えようとしている。

同社の勇ましいプレスリリースが発表している、同システムの2年間のステルス状態からの脱皮は、たくさんの約束を並べている: 同社はフィンテックの最大の課題を解決した;“Vault OS”は完全に未来志向である;自由性(柔軟性)が非常に大きい;破綻に瀕している銀行業界を再生し永遠の命を与える。

Vault OSのこれらの大言壮語が真実かどうか、それは今すぐには分からないし、銀行のレガシーなシステムは一朝一夕に変わるものではない。でも同社が指摘している問題が現実であることは、否定のしようがないし、同社が提供すると称するソリューションには、関心を持たざるをえない。

Profile - Paul Taylor

ThoughtMachineのPaul Taylor

Vault OSのメインの仕事は、銀行の中核的な機能を実行することだ。それは、巨大な台帳(元帳)を維持管理することに帰結する。そのために適している唯一の技術がブロックチェーンであることに、Taylorは固執している。Googleでは彼は、同社が今使っている音声認識のソフトウェア開発を率いていたのだが。

このOSは、一つ一つのインスタンスが自分のプライベートなブロックチェーンと暗号化された台帳を持ち、ThoughtMachineのサービスとしてホストされる。銀行は自分のもっとも基盤的なオペレーションを恒久的にアウトソースすることになるから、それに対する抵抗感も克服しなければならない。

でも、その利点が克服の契機になるかもしれない: ブロックチェーンはセキュアであり、スケーラビリティに富み、そして多用途である。通常のオペレーションの限界や遅延の原因となっているレガシーシステムを置換する動機に、十分なりうる。どんなトランザクションもリアルタイムで行われ、安全に集中保存される。銀行と消費者の両方が、詳細で深いデータ分析(deep data dives)をできるようになり、しかもそのためのAPIが提供されるだろう。

まだまだ未解決の細かい部分が多いし、顧客が納得する確実性も重要、規制もクリアしなければならない。銀行が開業にこぎつけるまでの過程は、ものすごくたいへんである。ThoughtMachineはコードを公開するのか、ホワイトペーパーや監察はどうなるのか、データのマイグレーションはどうやるのか、どんなタイムスケールで展開するのか、などなど、今同社に提示している質問に回答が得られたら、この記事をアップデートしよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))