GitHub解析でエンジニア転職とエンジニア組織の生産性向上を支援するFindyが総額7.7億円を調達

ファインディ Findy

GitHub解析によるエンジニアスキルの見える化をコア技術に、エンジニア転職とエンジニア組織の生産性向上を支援するファインディは8月3日、第三者割当増資と融資を合わせ、総額7.7億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のグローバル・ブレイン(既存投資家)、ユナイテッド、SMBCベンチャーキャピタル、KDDI(KDDI Open Innovation Fund 3号)、JA三井リース、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND(博報堂DYベンチャーズ)、みずほキャピタル。

今回調達した資金を活用し、プロダクト開発やマーケティング、営業活動の強化、また新規株主の事業会社・CVCとの協業も視野に事業拡大に努めるという。

ファインディは、エンジニアと企業の高精度マッチングから開発力強化までを一貫して支援するスタートアップ。エンジニアのスキルおよび企業の魅力度を見える化する独自アルゴリズムを核に、2017年5月より「Findy転職」、2018年2月より「Findy Freelance」を開始。2020年4月からエンジニア組織の生産性自動診断・生産性向上サービス「Findy Teams」β版を提供している。

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GitHubの活動状況からエンジニア組織の生産性を自動診断、「Findy Teams」のベータ版が公開

エンジニアユーザーのGitHubを解析し、個々の技術力(スキル偏差値)を可視化するアルゴリズムを持つファインディ。その同社が今度は「エンジニアチームの生産性」を自動診断する取り組みを始める。

本日4月15日にベータ版をローンチした「Findy Teams」の特徴は、GitHubを連携するだけでエンジニア組織全体の生産性や開発プロセスにおけるボトルネックをレポーティングしてくれること。これによって導入企業における開発チームの現状把握やパフォーマンス最大化を手助けしていく計画だ。

GitHub連携でエンジニアチームの健康状態を自動診断

Findy TeamsはCTOや開発マネージャーが自社のエンジニアチームの“健康診断”をしたいと思った時に役に立つプロダクトだ。

必要なのはGitHubのOrganizationを接続し、チーム設定を行うことだけ。ファインディが独自開発したアルゴリズムがGitHubにおける活動状況を自動で解析し、グラフや数値などを用いて健康状態を可視化する。具体的には以下のようなデータが解析の対象だ。

  • 社内開発におけるソースコードの品質
  • 開発プロセスにおける各フェーズの活動量
  • 社内チーム間におけるエンジニア間のコミュニケーション量の差異
  • OSS(オープンソース)活動の評価

解析結果としては「イシュー増加率」「コミット増加率」「プルリク(プルリクエスト)増減率」「プルリククローズ増減率」「レビュー対応率」といった各数値の変動がチームごとに表示される。

前の週と比べて各項目がどのように変化したのか、そして複数のチームを見比べた上でどのチームのパフォーマンスが高く、どのチームが問題を抱えている可能性があるのかが一目で定量的にわかることがポイントだ。

もしiOSチームの指標が全体的に下がっているとしたら、何か問題が発生しているのかもしれないのですぐに具体的な現状把握と効果的な打ち手の立案に取りかかるべきだろう。反対にAndroidチームのパフォーマンスが群を抜いて高ければ、その秘訣をヒアリングして全社展開していくことで開発部門全体の生産性向上が見込めるかもしれない。

またイシューやプルリクといった各指標についてはそれぞれ詳しくパフォーマンスが可視化される。たとえばイシューであれば過去のデータと照らし合わせながら作成されたイシュー数の推移をグラフでチェックでき、プルリクであればちゃんと作成できているのか、無駄なものを作っていたりしないかが定量的にわかるといった具合だ。

「プルリクエストへの応答率などを通じてGitHub上でどういったコミュニケーションが取れているのかといったことや、コーディング日数という形でどれだけコードを書けているのかまで細かいパフォーマンスを分析することにより、具体的な課題や改善点を把握できるのが特徴だ。プルリクエストに対するレビューコメントの数などは必ずしも多ければいいわけでもないので、自分たちにとってちょうどいい数値を見つけてもらうのにも役立ててもらえると考えている」(ファインディ取締役CTOの佐藤将高氏)

最初の段階では解析からレポートの出力までをプロダクト側で自動化しつつ、その結果を基にチームごとの改善案を考える工程ではファインディのメンバーがコンサルタントのような形でサポートしていく方針。将来的には「今週はこの施策を優先的にやってみるのはどうでしょう?」といったように、健康状態の可視化から打ち手の提案まで全て自動化する計画だという。

連携できるツールもGitHub以外にも広げる予定で、より幅広いデータからエンジニアチームの状態を把握できる基盤を目指していく。導入企業が増えデータが溜まってきたら「業界の平均値や同じような人数のチームと比べた際に自社のエンジニアチームがどうなのか」を把握できるような機能も加わるかもしれない。

その辺りを佐藤氏やファインディ代表取締役CEOの山田裕一朗氏に聞いてみると、1つの方向性としては検討していきつつも、具体的な機能などはベータ版の導入企業の反応なども見ながら見極めていくとのこと。プライシングに関してもベータ版期間は無料で提供するという。

また少し違う切り口の取り組みとしては、今後は各エンジニアが自分の生産性を見れる仕組みも考えているそう。他人と比べるというよりは、過去の自分と比較しながら定量的に自分の振り返り(KPT)ができるような機能をイメージしているとのことだった。

エンジニアチームのパフォーマンス向上を支援へ

これまでファインディでは「テクノロジードリブンな事業成長を増やす」をビジョンに掲げ、独自のアルゴリズムによって企業とエンジニア個人の間にある壁を壊すようなチャレンジを行ってきた。

現在は「Findy 転職」や「Findy Freelance」を通じて採用領域の課題解決に取り組んでいるが(こちらについては昨年6月の資金調達時に詳しく紹介している)、さまざまな企業を支援する中で「育成の部分で困っている」「既存のエンジニアチームの状態をもっと良くしていきたい」など採用以外の課題を聞く機会も増えているという。

特にCTOや開発マネージャーへのヒアリングを通じて1番多く出てきたのがエンジニアの評価についての課題で、それがFindy Teamsを開発するきっかけにもなったそうだ。

「採用したエンジニアが入社後に活躍できているかどうか、パフォーマンスを正しく評価した上で向上させていくにはどうすればいいか。多くの企業がそれぞれの評価制度を持っているものの、評価に至るまでの材料が足りていないという悩みが多かった。それならば評価の前段階で、そもそも現在のチームの生産性やパフォーマンスはどんな状態なのかを可視化できれば課題解決に繋がると考えた」(佐藤氏)

「会社としては、組織課題の見える化と採用を連動させていくことで提供価値を広げていけると考えている。エンジニアが入社後に活躍できる仕組みを作ることや、エンジニアチーム全体のパフォーマンスを上げていくサポートをすることは自分たちのビジョンにも繋がる」(山田氏)

Findy Teamsはスタートアップから大企業まで規模を問わず活用できるが「エンジニアの数が多い企業ほどチームの現状把握におけるペインが大きい」というのが山田氏の考え。特に大企業ではDXを推進する企業も増えているので、開発に一層力を入れるにあたりチームの生産性を見える化したいというニーズが強くなるのではないかという。

直近の環境変化に関連するものではコロナウイルスの影響でリモートワークが急増し「リモート環境においても組織の健康状態を維持できるか」を気にする企業も多いだろう。Findy Teamsを通じてリモートワーク環境下におけるエンジニアチームの生産性維持・向上のサポートもしていきたいとのことだった。

「これまで取り組んできた採用領域との兼ね合いでは、現場のエンジニアが採用活動に多くの時間を奪われてしまっているという悩みを聞く機会も増えてきた。将来的には希望する企業についてはエンジニアチームの生産性を社外にも公開できるようなにすることで、自分たちのチームの特徴を定量的にアピールできると同時に採用活動への負担を少しでも減らせる仕組みを作っていきたい」(山田氏)

GitHubをAIで解析して“スキル偏差値”算出、エンジニアのキャリア選びを支援するFindyが2億円調達

「Ruby67、Java63、トータル67」——これはエンジニア転職サービスなどを開発するファインディが算出した独自の“スキル偏差値”の一例だ。

同社ではエンジニアユーザーのGitHubをAIを用いて解析し、開発言語別の偏差値を算出している。公開リポジトリが解析の対象で、書いたコードの量や、他のプロジェクトへの貢献度、他者からのコードの支持などがベースだ。

ファインディ代表取締役CEOの山田裕一朗氏は「1番重要視しているのは、エンジニアのキャリアアップに繋がる指標になること。転職活動時などに自分のスキル偏差値を1つの武器として使ってもらえるようにしたい」と開発にかける意気込みを語る。

このスキル偏差値を活用して、エンジニアの転職や案件探しをサポートする事業を2017年より展開。現在はコアとなるアルゴリズムに磨きをかけ、さらなる事業拡大を目指している最中だ。

そのファインディは6月5日、グローバル・ブレインを引受先とした第三者割当増資により約2億円を調達したことを明らかにした。

同社は昨年PKSHA Technology代表取締役の上野山勝也氏、レアジョブ代表取締役社長の中村岳氏、クロス・マーケティング代表取締役社長の五十嵐幹氏を含む複数の投資家から資金調達を実施。今回はそれに続くシリーズAラウンドの資金調達となり、サービスやアルゴリズムの開発スピードを加速させるべく、セールス・エンジニアの採用を強化していく計画だ。

「売れなかった」求人票採点サービスからのスタート

現在ファインディではAIを活用したエンジニアのスキル評価と、それを活用したエンジニアのキャリア支援を核として事業を展開している。

主要なプロダクトは転職サービスの「Findy 転職」とフリーランスや副業の案件をマッチングする「Findy Freelance」の2つ。エンジニアとITベンチャーやデジタルトランスフォーメーションを進める大企業などを繋ぐのがファインディの役割だ。

同社は2016年7月の創業。CEOの山田氏は三菱重工業、ボストンコンサルティンググループを経て2010年に前職となるレアジョブに入社し、執行役員も務めた。

取締役CTOの佐藤将高氏は学生時代にレアジョブでアルバイトをしていたことがあり、山田氏とはその時からの付き合い。東京大学の大学院で自然言語処理やデータマイニングの技術を学んだ後、新卒で入社したグリーでのエンジニア職を経て山田氏と共にFindyを立ち上げた。

現在は2人を中心に約16名の社員・アルバイトの他、30人ほどのフリーランス・副業メンバーでプロダクトの開発を進めている。

最初のプロダクトはAIによる求人票の採点サービスだった

ファインディはもともと「Findy Score」というAIによる求人票の採点サービスからスタートしている。ただ、山田氏いわく「ある程度興味はもってもらえたけれど、一切売れなかった」そうだ。

当時は特にやることもなかったので「無料で求人票を書きます」と募集してみたところ、応募のあった10社の内9社がエンジニアの求人票に関するものだった。これが現在の主力事業にも繋がったという。

「エンジニアにヒアリングをしてみると『人事のエンジニア職種や開発言語に対する理解が不足していること』や『エンジニア自身が技術力や経験値を上手く伝えきれていないこと』などの悩みがあり、これがミスマッチの原因にもなっているとわかった」(山田氏)

この現場のペインを解消するプロダクトとして、2017年5月にスキル偏差値を軸にエンジニアと企業をマッチングするFindy 転職をリリース。2018年2月にはエンジニアのフリーランスや副業ニーズに対応したプロダクトとして、Findy Freelanceの運営も始めた。

Findy 転職は現在約1万人のエンジニア、約100社の企業が利用するサービスに成長。Findy Freelanceについても大手IT企業出身者や在職中のエンジニアを中心に約2000名が登録しているという。

ファインディのプロダクトを導入する企業

年収アップに結びつくスキル偏差値の開発へ

2つのプロダクトに共通する特徴は冒頭でも紹介したスキル偏差値だ。GitHub上で日本国内のユーザーと判定できるエンジニアの公開リポジトリ約15万件を解析し、個々のスキルを偏差値として数値化する。

コントリビューション数閲覧画面

「(技術に対する)人事とエンジニアの理解度の壁が大きかったので、その共通言語を作ることに加えて、算出した偏差値が年収とも相関してくるのが重要だと考えている。英国数理社の偏差値をあげたところで必ずしも収入に繋がるわけではないので、エンジニアのキャリアアップを支援する観点で『このスコアなら、これくらいの年収は目指せる』という目安を作りたい」(山田氏)

山田氏によると、このスキル偏差値を新卒採用などのシーンで使いたい企業もいるようだ。書類選考時など多くの候補者を判断する場合には、採用担当者が学歴(大学の偏差値など)を基準に技術力の高い学生を不採用としてしまい、有能な人材を逃してしまうケースもある。

実際、偏差値自体はそこまで高くない大学に通う学生が中退して就職するべくFindy 転職を使ったところ、数社から中途採用枠で内定が出たそう。スキル偏差値が65を超えるようなエンジニアは「学生だったとしても中途枠で内定が出るし、フリーランスとして時間単価で5000〜6000円稼ぐような人もいる」(山田氏)という。

「Findy 転職」ユーザーにアンケートを取ったところ、スキル偏差値が高いエンジニアは年収も高い傾向となった

エンジニア側のユーザーは腕試しも兼ねて登録しているケースも多く、大手IT企業からスタートアップに務めるエンジニアまで幅広い。特に副業については現職でテックリードを勤めているような人材や、マネジメント業務が多く現場でもっと手を動かしたいというベテランも多く、結果として優秀なエンジニアにアプローチできているそうだ。

スキル偏差値以外に関しては比較的シンプルなプロダクトだが、1企業あたりが1週間に押せる「いいね」の上限数に制限があったり、企業側だけでなくエンジニア側も興味を示していないとスカウトメールが送れなかったりと各機能はエンジニア目線での開発にこだわった。

「エンジニアが、エンジニアユーザー向けに機能を企画して作っているのが1番の特徴と言えるかもしれない」と山田氏が話すように、転職だけではなく普段のOSS(オープンソースソフトウェア)活動を応援する仕組みも実装している。

コントリビューションオブザイヤーの取り組み

スキル偏差値もフックとなって「そこまで積極的に転職活動をしていないエンジニア」も多数登録しているのは1つの特徴だ。ファインディのサービス上で自分が気になる企業が見つかり、転職顕在層になることなく転職するユーザーもいるという。

特にFindy 転職の場合は求人票のアドバイスなど企業側のサポートも徹底的に実施することでマッチングを後押ししている。この辺りは求人票採点サービスで培ったナレッジや経験なども活かされているようだ。

テクノロジーとビジネスを繋ぐ“接着剤”目指す

ファインディのメンバー。前列1番左が代表取締役CEOの山田裕一朗氏、1番右が共同創業者で取締役CTOの佐藤将高氏

ファインディでは今回調達した資金を活用して人材とアルゴリズムへの投資を強化する方針。「コアとなるスキル偏差値の算出やマッチングに関わるアルゴリズムの精度向上に一層力を入れていく」(佐藤氏)ほか、特に大企業の顧客獲得に向けたマーケティング活動にも資金を使っていく。

「かつて日本は技術立国としてハードウェアの領域で優れたプロダクトを生み出し、世界を驚かせてきた。今後はソフトウェアやアルゴリズムの領域でどれだけ戦えるかが重要。テクノロジーが組織に紐づいてきたハードとは異なり、ソフトやアルゴリズムでは個人の力の影響度が大きい。事業を通じて新たなテクノロジーの担い手となる個をエンパワーしていきたい」(山田氏)

現在はアルゴリズムを用いてエンジニア個人のスキルを見える化することに挑んでいるが、ゆくゆくは企業の技術力やカルチャーを評価する指標も開発していく予定。「テクノロジーとビジネスを繋ぐ接着剤になること」を1つの目標に、プロダクトの改善と拡張に取り組んでいくという。