オンライン貸付投資「Funds」と「M&Aクラウド」が提携、ポストIPO企業のM&A資金調達を支援

貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」を運営するクラウドポートと、M&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」を運営するM&Aクラウドは10月10日、業務提携契約を締結し、企業のM&A資金の調達ニーズを連携して支援していくと発表した。

2019年1月にローンチしたFundsは、個人が1円から貸付ファンドの取引ができるマーケットプレイスだ。「資産形成したい個人」と「事業資金を借りたい企業」とを結び、スマホで貸付ファンドの取引ができる。

かたやM&Aクラウドは、M&Aを行いたい買い手が社名や買収条件、買収実績などを公開するプラットフォーム。売り手は買収・出資条件から自社に合った買い手を検索し、買い手候補の担当者に直接売却の打診ができるサービスだ。

日本企業のM&A情報のデータベースサービスを提供するレコフデータによれば、2019年4月の国内M&A実施数は309件で、前年同月の23%増、単月ベースで1985年以降最大となった。M&Aによる企業・事業買収を企業の成長戦略として選択するケースは増加していると見られる。一方「M&Aに向けた資金調達手段に悩む企業もある」とM&Aクラウドは指摘する。「当社の既存、潜在顧客でも、財務負担の大きさからM&Aに向けた一歩を踏み出せずにいる企業は少なくない。顧客の資金調達支援は当社の事業拡大に向けた課題だった」(M&Aクラウド)

Fundsはファンド組成企業の選定基準を、上場企業やベンチャーキャピタルから出資を受けている企業としている。ポストIPO企業には、上場後も積極的な発展を狙い、企業や事業の買収による成長をもくろみつつも、そのための資金の調達手段確保に課題を抱えるところも多い。また投資家の方も投資意欲が高く、Fundsでは1億円のファンドが募集開始1分39秒で満額申し込みを達成するなど、より多くの投資先ファンドが求められている状況だ。

今回の提携により、M&Aクラウドは企業・事業買収のための資金を調達したい企業をFundsへ紹介。またクラウドポート側はFundsを利用するポストIPO企業をM&Aクラウドへ紹介することで、資金調達手段だけでなく、M&A支援の手段も提供できるようになる。

M&Aクラウド代表取締役CEOの及川厚博氏は、提携にあたり次のようにコメントしている。「クラウドポートが持つ『投資資金』とM&Aクラウドが持つ『投資先』は非常に相性が良いと思います。今回の提携により、M&Aクラウド導入企業の投資資金を底上げし、スタートアップのEXIT・中小企業の事業承継が更に加速することを期待しています」(及川氏)

また、クラウドポート代表取締役の藤田雄一郎は「上場後の企業にとってM&Aは重要な成長戦略のひとつです。一方で、M&A実行のためのファイナンスに課題感を感じる経営者の方が多くいます」と述べ、「今回の業務提携により、M&Aを検討する企業にFundsを通じた柔軟でスピード感のある新しいファイナンスの機会を提供していきます。この取り組みを通じて、国内M&A市場の活性化、スタートアップエコシステムの発展に貢献していきたいと思います」とコメントしている。

伊藤忠商事が貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds」運営元に出資、共同で金融商品の組成・販売へ

伊藤忠商事は8月30日、クラウドポートに出資し戦略的事業パートナーになったことを明らかにした。出資額は非公開。クラウドポートは、資産運用したい個人投資家と事業資金を借りたい企業を結ぶ貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds」を運営する、2016年11月設立のスタートアップ。

伊藤忠によると、国内企業の個人向け社債の年間発行額は約1.5兆円ほどで推移しているものの、海外との比較では資金調達手段における社債比率は依然として低く、今後拡大の余地は大きいと考えていたことから、クラウドポートとの提携に至ったとのこと。

Fundsは、予定利回り1.5~6%の貸付ファンドを扱うオンラインマーケットで、ミドルリスク・ミドルリターン型の社債に類似した小口金融商品に投資できるのが特徴だ。現在、個人投資家の登録者数は増加しており、企業に新たな資金調達手法を提供する手段として注目されている。

伊藤忠はクラウドポートの事業パートナーになることで、Fundsにおける個人投資家の拡充を支援するとともに、伊藤忠グループのネットワークを活用して資金調達需要のある企業にクラウドポートのサービスを紹介していく予定だ。さらに、伊藤忠商事の金融事業のノウハウを活用し、クラウドポートと共同で金融商品の組成・販売を検討し、資産運用市場の活性化を目指すとのこと。

オンライン貸付投資「Funds」運営のクラウドポートがシリーズBで7億円調達へ

貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」を運営するクラウドポートは8月5日、VCや事業会社などから、7月31日時点で総額6.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。引き続き調達を進め、現在のシリーズBラウンド全体で総額約7億円の調達を予定しているという。

「行列ができる金融商品」になったFunds

クラウドポートは2016年11月、代表取締役の藤田雄一郎氏と共同創業者の柴田陽氏により設立された。藤田氏はソーシャルレンディングサービス「クラウドバンク」の立ち上げに携わった人物。柴田氏はポイントアプリ「スマポ」など複数のサービスを立ち上げ、売却した経験のある連続起業家だ。

写真前列中央がクラウドポート代表取締役の藤田雄一郎氏、その右隣が共同創業者の柴田陽氏。

クラウドポートでは創業後、ソーシャルレンディング事業者の情報を横断で比較できるサイト「クラウドポート」を2017年2月に公開し、運営していた。ソーシャルレンディングサービスが注目を集める一方で、不適切な貸付審査やファンド募集などが問題視されることもあり、「第三者的な立場でソーシャルレンディングの魅力とリスクを伝えていきたい」(藤田氏)として立ち上げられたサービスだ。

その後、クラウドポートは自ら第二種金融商品取引業の登録を行い、個人向けの投資サービスとしてFundsを2019年1月からスタート。比較サイトのクラウドポートは主とする事業のスイッチにともない、1月17日付で金融メディア「ZUU online」を運営するZUUへ事業譲渡されている。

現在のメイン事業であるFundsは、個人が1円から貸付ファンドの取引ができるマーケットプレイスだ。「資産形成したい個人」と「事業資金を借りたい企業」とを結び、スマホで貸付ファンドの取引ができる。このサービスでは、金融業者であるクラウドポートが資金を集め、定められた基準を満たすファンド組成企業へ送金。ファンド組成企業が自社グループ内で事業資金を必要とする会社に貸付を行うというスキームになっている。

1月23日の正式ローンチ時には、3つのファンドで募集が行われ、募集開始から約15分で総額8000万円超の申し込みを完了。その後も1億円のファンドが募集開始1分39秒で満額申し込みを達成するなど、7社10ファンドで即日完売が続いている。このためユーザーからは「せっかく口座を開いたのに申し込みができない」との声も上がっており、6月からは一部のファンドの投資申込に抽選方式を導入することとなった。

Fundsに登録する投資家は、正式ローンチから半年の6月時点で1万人に達した。ユーザーは20〜40代の男性、年収300万円〜600万円のビジネスマンが中心という。藤田氏は「株やFXと比べて、忙しい人が片手間ででき、1円から投資できる点が評価されている」と分析していて「『行列ができる金融商品』になった」と述べている。

抽選方式のファンド申し込みでは、1億円分のファンドに3億円の応募が集まるなど「プロダクト・マーケット・フィットが成立している」と藤田氏。「老後資金への不安などから、資産形成の意識は高まっており、それを支えるためのサービスにもなる。自分事として投資ができる点も特徴。国民総資産運用時代に、貯蓄から資産運用への流れを後押しするサービスを提供していきたい」と語る。

ポストIPO企業に成長資金の調達手段を

今回の資金調達は、2018年3月に実施した総額3.1億円の調達に続くものとなる。今回調達に参加した投資家は、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、グローバル・ブレイン、三菱UFJキャピタル、VOYAGE GROUPが米SV FRONTIERと組んで立ち上げたSV-FINTECH FundなどのVCと事業会社だ。

「出資企業とは海外ノンバンク事業などの分野で連携を期待している。また、各社が持つさまざまな企業とのつながりを生かして、資金を調達したい企業に新しい手段が提供できるのではないかと思う。三菱UFJグループについては、銀行との連携を強くしたい思いがある。銀行は預金を背景にしていることから企業への出資がしづらい立ち位置にある。我々と一緒に連携して投資できれば」(藤田氏)

先日、神戸で開催された招待制のスタートアップイベント「Infinity Ventures Summit 2019 Summer KOBE」では、ピッチコンテスト「IVS LaunchPad」でFundsが優勝を勝ち取った。藤田氏は「この勢いに乗ってサービス認知、利用者拡大を図りたい。まずは投資家を増やし、事業者も募っていく」として、調達資金をマーケティング強化に充てる考えだ。またサービス強化のための人材獲得にも力を入れるという。

現状は「投資家の投資意欲が旺盛で、事業資金に大きな額を必要とする不動産関連事業へのファンドが多くなっている」というFundsだが、藤田氏は「幅広い産業を取り入れたい」と話している。今後、ポストIPOスタートアップを対象にしたファンドも手がけたいという。

「上場することで運転資金の獲得はできるが、逆にファイナンス手段が限定的になるスタートアップも多い。成長資金がなかなか獲得できないということで、ニーズはある」(藤田氏)

実際に具体的な話が進んでいるポストIPOスタートアップもあるとのこと。実現すれば「投資家も公開株によるものだけでなく、応援などユニークな体験ができるようになる」と藤田氏は話していた。

貸付ファンドのマーケットプレイス「Funds」、正式ローンチから約15分で総額8320万円のファンドを完売

クラウドポートは1月23日、個人が1円から貸付ファンドの取引ができるマーケットプレイス「Funds(ファンズ)」を正式ローンチ。初回の3ファンドは募集開始から約15分で、総額8320万円のファンド申し込みを完了した。

本日募集が開始されたのは、オンライン融資サービスを運営するスタートアップのLENDY子会社、不動産企画・開発や分譲事業を行うデュアルタップ、国内ノンバンク大手のアイフルの3社が貸付を行うファンド3種類だ。

LENDY子会社がLENDYへ貸付を行うファンドでは、募集金額700万円が31秒で申し込みを達成。またアイフルが連結子会社に対して貸付を行うファンドでは、予想利回りが年率1.8%の商品だが、募集金額の5000万円が15分7秒で完売となった。

平均投資申込額はLENDYのファンドで41万1765円、デュアルタップのファンドで28万7912円、アイフルのファンドで22万5225円だった。

投資家の年代では30代・40代が多く、合わせると全体の7割を超えた。20代の若い投資家も11%いたということだ。

クラウドポート代表取締役の藤田雄一郎氏は、2019年初のFunds発表時の取材に対し、「社債のメリットを備えつつ、デメリットを排除してモダン化された投資サービスとしてFundsを立ち上げた」と話していた。

正式リリースから短時間でのファンド完売について、藤田氏は「我々の仮説である社債的な投資にニーズがあるという裏付けを実証するようなものになったのではないか」とコメントしている。

同社は「今後もさまざまな組成企業が募集するファンドを提供していきたい」とし、「次回以降のファンド募集に向け、現在も上場企業をはじめとする複数のファンド組成企業候補となる事業者と協議を行っている」と述べている。

スマホで貸付ファンドに投資できるマーケットプレイス「Funds」をクラウドポートが公開

ソーシャルレンディング各社のサービス比較サイトを運営するクラウドポートが、自ら第二種金融商品取引業の登録を行い、個人向けの投資サービスをスタートする。新サービスの名前は「Funds(ファンズ)」。「資産形成したい個人」と「事業資金を借りたい企業」を結び、スマホで貸付ファンドの取引ができるマーケットプレイスだ。Fundsでは1月8日から登録受付を開始した。

Fundsではクラウドポート自体は自己募集を行わないが、代わりにクラウドポートの定める基準をクリアした企業が、自社グループの事業に必要な資金を調達する目的でファンドを組成する。

この貸付ファンドに対して、ユーザーは投資を行い、分配金を得る。1つの口座で、さまざまな企業の運用するファンドに最小投資単位1円から分散投資が可能。分配金の再投資により、複利効果も期待できる。

クラウドポート代表取締役の藤田雄一郎氏は、Fundsを「個人向け社債と同等の性質を備えつつ、よりインターネット的なサービスを」と構想し、1〜2年かけて試行錯誤しながらサービスとして練り上げた、と話している。

「モダンな個人向け社債」を目指して作られたFunds

藤田氏は「少子高齢化により社会保障費が拡大する一方で税収が伸び悩んでいくなか、個人の負担増が予想され、資産運用というより資産形成による自助努力がますます必要になってくる」という。だが、貯蓄から投資への流れは進んでいない。日本の個人金融資産残高のうち、現預金、保険・年金の比率は高いままで、有価証券の比率は2013年からの5年間、ずっと16〜17%近辺で変わっていないのが実情だ。

資産運用が行われない理由は、余裕資金が不足していること、知識が足りないと感じる人が多いことによるものだと藤田氏はいう。「株式投資やFX、投資信託は相場による値動きがあって、管理の手間がかかる。また勉強も必要で、片手間で投資を行うにはハードルが高い方法だ。また不動産投資は値動きは激しくないのでよいけれども、ある程度の資金が要る。もっと値動きが激しくなくて、コツコツ少額で投資できる方法が必要だ」(藤田氏)

そうしたなかで社債は、「相場に左右されず、安定的なリターンが見込めるので、初心者や忙しい一般投資家に向いている投資方法だ」と藤田氏は述べる。「社債は株式投資と比べて値動きが少なく安定しており、貸し倒れがない限り元本は戻ってくる。また、当初決められた金利以上のものは得られないが、コツコツ資産を増やすことができる」(藤田氏)

実は個人向け社債の新規発行額は年間1.4兆円と大きな市場を持つ。SBIやマネックスなど、人気の社債は数十億〜100億円規模が即日完売するという。

だが、個人向け社債市場には問題点もあると藤田氏は指摘する。「販売方法が旧態依然として、モダン化されていない。いつでも買えるわけでもなく、投資家人気を受けて利回りは1%を切るところまで下がっている。また投資単価が100万円と高額で、PCやスマホだけで売買が完結できるものはほとんどない」(藤田氏)

社債を発行する企業の側にも課題はある。日本企業の社債による調達比率は20%以下。一方米国では半数以上を社債による調達が占める。これは「米国では社債マーケットが発達しているからだ」と藤田氏は説明する。

「日本では社債を発行できる企業が少ない。というのは、既存の証券会社が事実上、JCR格付けでBB以下の社債を取り扱っていないから。BBB格付けのマネックス、SBIなどでぎりぎり証券会社での扱いがある、という状況だ」(藤田氏)

また社債の起債(発行)には、目論見書の作成や格付けの取得など、発行企業の手間やコストもかかる。

そこで、社債のメリットを備えつつ、デメリットを排除してモダン化された投資サービスとして考案されたのが、Fundsだ。

既存ソーシャルレンディングの問題点を審査やスキームで回避

クラウドポートでは、既存のソーシャルレンディングで課題となっている、不適切な貸付審査やファンド募集、運用・管理による利用者の不利益や行政処分を避けるため、Fundsで扱うファンド組成企業に対して厳しいルールを設けている。

前提となる条件は、上場企業、または監査法人の監査を受けている企業、もしくはVCから出資を受けている企業であること。いずれも第三者からのけん制が効いており、上場済み、もしくは上場を目指しているため、不正を起こす確度が低い企業である、としている。

その上で、企業のファンド運営適格性を査定。財務状況をはじめとした審査項目による厳密な審査を行う。またファンド募集時にもファンドごとに審査を徹底。運用中ファンドについても計算期間ごとのモニタリングにより監視を行い、都度ユーザーへ報告をするという。

Fundsローンチ時のファンド組成企業は3社。独立系ノンバンクで最大手のアイフルと不動産販売事業で実績とノウハウを持つデュアルタップ、そしてオンラインレンディング事業を営むスタートアップのLENDY(旧社名クレジットエンジン)だ。LENDYの参加について藤田氏は「東証1部上場企業や500 Startupsなどから出資を受けており、将来性のあるスタートアップ。そうしたスタートアップにもお金を回したい」と述べている。

Fundsでは、1月以降も東証1部上場の不動産会社や空中店舗「フィル・パーク」運営のフィル・カンパニーなどの参加を予定。「1年以内に20〜30社の企業の参加を目指したい」と藤田氏は話している。

審査の厳格さのほかに、投資家ユーザーの不利益を減らすべくFundsで採用されているのが「関係会社貸付スキーム」だ。Funds上で調達された資金は、ファンド組成会社からそのグループ企業に貸し付けられ、その後さまざまな事業に使われる。ユーザーが負う主なリスクは、ファンド運営企業の信用力、そして借り手であるグループ企業からファンド運営企業への返済が正常に行われるかという点になる。

このため、ユーザーは実質的にはファンド組成企業のグループ企業の信用に対して投資をする形となるという。借り手のグループ会社が貸し倒れた場合には連動して投資家の元本が損なわれる可能性はあるが、商品性やリスクは個人向け社債に似たものとなる。

またFundsでは、ファンドの募集はクラウドポートが、運用はファンド組成企業が行う完全分業制を採っている。クラウドポートは顧客対応や営業者審査、プロダクトのブラッシュアップやモニタリングなど「場としてのサービス」に特化。ファンド組成企業は案件開拓や案件審査など、本業のファンド運営に注力することで、より品質の高いサービス提供を可能とする。

また取り扱いとファンド運営を完全に分離したことで「利益相反が起こりにくくなる」と藤田氏は説明する。「これまでのソーシャルレンディングでは、取扱者と組成企業が実質的に同じであることで、問題が起こりやすかった。Fundsではこれを分離することで、投資家目線でサービスを提供していく」(藤田氏)

Fundsは個人向け社債とソーシャルレンディングとの間、利回り1.5〜6%程度の「ミドルリスク・ミドルリターン」の市場を対象とする。相場に左右されず、デフォルトがなければ元本は一定とあって、「マインドシェアが取られない」と藤田氏は話す。

Fundsでは、売買が成立した場合、応募額の1〜1.5%の取扱委託手数料が事業者からクラウドポートへ支払われる。「成果報酬のみで初期費用やシステム利用料は無料。企業はコストをかけずに調達が行える。また審査は厳しいが、ファンド設立にともなう第二種金融商品取引業の登録は不要。投資家集めやシステム構築も不要なので、企業にもメリットがある」(藤田氏)

Fundsにももちろん、リスクはあって、貸し倒れによる元本減少や取扱者、ファンド運営者の倒産リスク、運用期間中は解約できないことや運用期間の延長、早期償還などの可能性もあるため、「基本的には余裕資金で、分散投資を心がけてもらえれば」と藤田氏は話している。

Fundsで調達/投資の新スタンダード目指す

藤田氏は「クラウドポート設立時から、共同創業者の柴田(柴田陽氏)とも事業ブレストをするなかで、ファンド運営の構想はあった。比較サイト運営などで投資家さんたちとコミュニケーションを取っていくなかで、肌感覚を持って課題を知り、今回のサービスにつながっている」という。

写真前列中央:クラウドポート代表取締役 藤田雄一郎氏

「高利回りのソーシャルレンディングでは、企業が仕組みを使って資金調達をするためのコストが高い。そこで15%(の利率)とかで資金を貸すと、問題のある会社がどうしても入ってきちゃう。問題が起こればソーシャルレンディング業界全体が『怪しい』ということになってしまう。Fundsでは個人向け社債の性質に近いものを、ということで構想した。3〜5%の利率で、企業は資金調達ができ、投資家は『聞いたことのある企業に、手の出せる金額で投資できる』という楽しみができる」(藤田氏)

藤田氏はFundsを、インターネット経由、スマホ経由で、ファンドを通じて資金調達/投資ができる仕組みとして「新たなスタンダードとしたい」と語る。

国内には類似のサービスはないが、海外ではY Combinatorのプログラムにも参加したAlphaFlowが同種のサービスを行っており、ベンチマークとして研究したという藤田氏だが、「結果としてかなり違うサービスとなった」ということだった。「Fundsはグローバルにも展開したい。世界で使えるマーケットプレイスを作りたい」(藤田氏)

アプリ調査の「App Ape」を提供するFULLER、2.3億円の資金調達で世界進出へ

FULLERは2月27日、既存株主のM8 CAPITAL FUNDに加え、Global Catalyst Partners Japan、朝日新聞社、インフォテリア、オプト、コロプラ、日本交通およびnanapi代表取締役の古川健介氏ら個人投資家複数名を引受先とする総額2億3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

FULLERは、筑波大学の卒業生(さらに言うと、高専出身者が多い)を中心にして2011年11月に設立。現在は千葉県・柏の葉にあるオープンイノベーションラボ「KOIL」に拠点を置く。不要なアプリを停止したり、アンインストールしてスマートフォンのバッテリー管理をすると同時に「おじさん」のキャラクターを育成する「ぼく、スマホ」や、Androidアプリ視聴率調査サービス「App Ape」を提供してきた。

2014年11月に公開したAndroidアプリの市場・競合調査サービス 「App Ape Analytics」が好調で、開始2カ月で無料会員数2000件を突破。通信キャリアやアプリ開発者、広告代理店などを中心に有料会員も拡大しており、「現在20〜30社程度が有料会員。間もなく単月での黒字化も達成する」(FULLER代表取締役社長の渋谷修太氏)という。

FULLERでは今回の増資をもとに人員体制を強化。App Apeの機能拡充やカスタマーサポートの強化、さらにはサービスの世界展開を進める。またこれと並行して新サービスも開発するという。今回、ベンチャーキャピタルに加えて事業会社や個人投資家からも資金を調達しているが、これについて渋谷氏は「ITという共通点はあるが、BtoBや交通といったさまざまな分野の知識を持っている人たち出資してもらっている。また30代前半で比較的年齢の近い株主から50代のキャピタリストまでいる」と、その多様性をアピールする。ちなみにFULLERでは、2013年に日本交通とコラボアプリ「タクシーおじさん料金検索!」も提供している。そういった交流が今回の調達に結びついているようだ。

新事業に関しては、世界で利用されるスマートフォンアプリのほか、「IoT関連を検討している」とのこと。冒頭でふれたとおり、FULLERには高専出身者も多く、これまでにもハードウェア関連のプロダクトを試験的に制作している。3年前には「Kinectで動くミニ四駆」なんかを制作してイベントで展示するといったこともしていた。