AIを使ってより優れた文章を書く、Grammarlyが約1.4兆円の評価額で約228億円調達

文章の自動編集ツールとして人気のGrammarly(グラマリー)は、Baillie Gifford(バイリー・ギフォード)やBlackRock(ブラックロック)が運用するファンドアカウントなどの新規投資家から、評価額130億ドル(約1兆4800億円)で2億ドル(約228億円)の資金を調達した。同社は今回の投資を、製品のイノベーションとチームの成長を加速させるために使用する予定だ。

「今回の資金調達は、私たちのビジネスの強さを証明するものだと考えています」と、Grammarlyの製品担当グローバル代表であるRahul Roy-Chaudhury(ラフル・ロイ=チョードリー)氏は、TechCrunchのインタビューに答えている。「当社は設立当初からキャッシュフローが黒字でした。今回のラウンドは、コミュニケーションの改善を通じて生活を向上させるという当社のミッションの強さを証明するものでもあります。今回の資金調達は、製品のイノベーションと製品のスケーリングという観点から行われました」。

ラフル・ロイ=チョードリー氏によると、Grammarlyは今回の資金調達を利用して、AI技術への投資を継続する予定だ。自然言語処理と機械学習の技術を進化させて、ユーザーにパーソナライズされたコミュニケーションのフィードバックも提供していく。また、同氏は、Grammarlyがユーザーの信頼を獲得し、強化するための追加投資を行う予定であるとも述べている。

「今後のことを考えると、私は多くの可能性を感じています。なぜなら、最終的にはいつもコミュニケーションの改善という私たちのミッションに立ち返ることになるからです。遠隔地にいる世界中のチームが協力して仕事をするようになり、仕事の進め方が大きく変わりました。私たちは、このような変化の中で、人々がより効果的にコミュニケーションを図れるよう支援することが大きなチャンスだと考えています。今回の新たな資金調達は、そのための取り組みを加速させるためのものです」と述べている。

サービスの将来像について、ロイ=チョードリー氏は、Grammarlyは単に簡潔さ、一貫性、正確さを重視するだけのものではなくなると述べている。今後は、改善提案の対象となるカテゴリーを増やすとともに、ユビキタス化を進めていく予定だ。

今週初めには、Grammarly for MacとWindowsがリリースされ、Grammarlyはすでに製品の規模を拡大し、ユビキタス化の目標を達成している。この新しいデスクトップアプリケーションは、Microsoft Office、Slack、Discord、Jiraなどのアプリで使用することができる。ロイ=チョードリー氏によると、この新しいデスクトップアプリケーションは、ブラウザの拡張機能に関連する技術的な障壁を取り除くことができるようになったため、ユーザーがどこで文字を入力しようとも常にいつでも使えるライティングツールになることを目指しているとのことだ。

画像クレジット:Grammarly

「Mac版とWindows版のGrammarlyによって、私たちはすべてを結びつけ、ユーザーのコミュニケーションフロー全体をサポートすることができます。これにより、私たちはみなさんのコミュニケーションのあらゆる場所に存在し、求めている成果をより効果的に達成する手助けをすることができます」とロイ=チョードリー氏は述べている。

また、Grammarlyは先日、プログラマーがあらゆるウェブアプリケーションにGrammarlyのテキスト編集機能を組み込むことを可能にするテキストエディターSDK(ソフトウェア開発キット)を展開し「Grammarly for Developers」を発表した。このSDKのベータ版のリリースにより、開発者は数行のコードでGrammarlyの自動編集機能のフルパワーを利用できるようになった。対象となるアプリケーションのユーザーは、Grammarlyの顧客である必要はないが、もし顧客であった場合は、Grammarlyのアカウントにログインして、それに付随するすべての機能にアクセスすることができる。

今回の資金調達は、Grammarlyが2019年10月に行った前回の資金調達に続くもので、10億ドル(約1141億円)を超える評価額で9000万ドル(約102億円)を調達した。今回のラウンドは、2017年5月に1億1000万ドル(約125億円)で行われた同社の唯一のラウンドのリードにも貢献していたGeneral Catalyst(ジェネラル・カタリスト)がリードし、前回の投資家であるIVPやその他の無名の支援者が参加した。

現在、Grammarlyは、メールクライアント、企業向けソフトウェア、ワープロなど、50万以上のアプリケーションやウェブサイトで動作している。同社は、より多くの人々がより多くのオンラインプラットフォームでつながるようになった今、個人やビジネスの目標を達成するためには、コミュニケーションを正しく取ることが重要であり、それがユーザーの目標達成を支援することにつながるとしている。

Baillie Gifford(バイリー・ギフォード)の民間企業部門の責任者であるPeter Singlehurst(ピーター・シングルハースト)氏は、声明の中で「世界がデジタル化したことで、人々はこれまで以上にコミュニケーションをとるようになりました。Grammarlyは、この問題を解決することに焦点を当てた、世界でも数少ないビジネスの1つです。私たちが惹かれたのは、会社のビジョンと、より多くの環境でより多くの人がより良いコミュニケーションをとれるように製品を推進するチームの能力です。また、Grammarlyの長期的かつ野心的なアプローチは、我々の投資に対するアプローチと一致しています」と述べている。

Grammarlyはフリーミアムモデルで運営されており、有料会員になると、文法やスペルチェックだけでなく、言葉の選択、文章のリライト、トーンの調整、流暢さ、フォーマル度、盗作の検出など、より多くのツールを利用できるようになる。有料会員の価格は月額12ドル(約1370円)、20ドル(約2280円)、30ドル(約3420円)だ。

画像クレジット:Grammarly

原文へ

(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

GrammarlyのSDKで自動化テキストエディティングを自分のウェブアプリケーションに埋め込み可能に

人気の高い自動編集ツールGrammarlyが米国時間9月14日、Grammarly for Developersのリリースを発表した。同社はこの取り組みをText Editor SDKのベータで開始し、プログラマーはGrammarlyのテキスト編集機能をどんなウェブアプリケーションにも埋め込むことができるようになる。

GrammarlyのプロダクトとプラットフォームのトップであるRob Brazier(ロブ・ブレイジャー)氏によると、このSDKのベータリリースでデベロッパーにGrammarlyの自動化エディティングの全能力にわずか数行のコードでアクセスできる。ブレイジャー氏によると「文字どおりわずか2行のHTMLで、デベロッパーはGrammarlyのアシスタンスを自分のアプリケーションに加えることができ、ユーザー全員に、ユーザー自身がGrammarlyをインストールしたり登録することなく、ネイティブのGrammarly体験を利用できるようにする。

そのような外見の下では、デベロッパーは、人工知能の知識や経験がなくても、高度な自然言語処理(NLP)の技術にアクセスできる。要するにデベロッパーは、Grammarlyがすでに作ったものを利用するだけだ。

デベロッパーが作ったアプリケーションのユーザーはGrammarlyのユーザーにならなくてもよいし、うれしいところだが必要があればGrammarlyのアカウントにログインして、そのすべての機能にアクセスできる。ブレイジャー氏は、次のようにいう。「ユーザーにGrammarlyのサブスクリプションがあれば、そういうユーザーは自分のGrammarlyアカウントをデベロッパーのアプリケーションにリンクできる。彼らはGrammarlyにサインインでき、そのアプリケーション中で直接、サブスクリプションで可能な機能をアンロックできる」。

ブレイジャー氏によると、これ(Text Editor SDK)はあくまでもスタート地点であり、基本的な機能だけにとどめ、フィードバックに基づいて今後加える機能を決めていく。「もっとも単純な機能からスタートして、できるだけ多くのユーザーに使ってもらいたい。だからこれは、相当シンプルなプロダクトだ。今後は徐々に進化して高度なソフトウェアに育つだろうが、コードを2行だけ書けば使えることは変わらない」という。

同社がデベロッパーツールを提供するのはこれが初めてだが、これによってプログラマーは自分のアプリケーションの中でGrammarlyの機能にアクセス可能になり、そんな機能をアプリケーションに埋め込める。Zoomも2020年SDKをリリースしたとき同じことを行い、アプリケーションからビデオサービスを利用できるようにしたが、デベロッパーツールの提供に関してはZoomの方がずっと先輩だ。GrammarlyもZoomも人気が拡大したら次のステップは、そのプラットフォームの強いところを公開することだ。Grammarlyの場合は、テキストエディティングの機能をデベロッパーが自分のアプリから利用できるようにする。実はこの考え方を2007年のForce.comで最初に実装したの、はSalesforceだった。

今後どうなるかいうのは早すぎるとブレイジャー氏はいうが、このやり方は、これまでのサブスクリプションに加えて、Grammarlyの新しい収益源になる可能性がある。いずれにしても今回の発表は、プラットフォームの各部をデベロッパーに公開して、Grammarlyの技術者たちがGrammarlyに込めた成果を利用できるようにする大きな戦略の第一歩だ。関心のあるデベロッパーは、ベータプログラムへの参加を申し込むことができる

関連記事:Zoomがビデオサービスへの参入を支援する新SDKと開発者向けリソースポータルを発表

画像クレジット:Grammarly

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

学生に文章の書き方を教えるプラットフォームNoRedInkがシリーズBで約55億円を調達

「良い文章を書けるようになるためには、自分が書いた文章を声に出して読みなさい」。

これは筆者が最初に聞いた、最高のライティングのコツの1つだ。皮肉なアドバイスだといつも思う。文章を上達させるために、文章を音声にする必要があるというのだから。しかし書いたものを声に出して読むと、誤字や考えの不足が見つかり、さらに文章の構造の中にあるおさまりの悪いフレーズやおかしなリズムといった微妙なことにも気づく。何年経ってもこれは真実だ。そして特に、自分の文章を音読している間に飽きるとしたら、おそらく読者も飽きるだろう。

文章を書くのが大好きな人にとっても、文章を書くことはあいまいなルールの上に成り立つ大いに人間的なアートだ。複雑な問題なので必ずしもテクノロジーによる解決策が求められるわけではないが、サンフランシスコを拠点とするスタートアップのNoRedInkは10年近くにわたって、ライティングを上達させたい学生をソフトウェアで支援している。

米国時間8月24日、NoRedInkはアダプティブラーニングと言葉ゲームのMad Libsのような手法を組み合わせたデジタルライティングカリキュラムが5000万ドル(約55億円)のシリーズBにつながったと発表した。このラウンドはSusquehanna Growth Equityが主導し、True Venturesが参加した。他にGSV、Rethink Education、Kapor Capitalなども投資している。

今回のシリーズBは、シリーズAからおよそ6年経っている。これはNoRedInkが数カ月、数年かけてしっかり成長したいと考えていることの現れだ。しかし同社には解決しなくてはならない最大の問題がある。利用者が増えれば、シンプルにしたいことが複雑になっていくのだ。

創業者でCEOのJeff Scheur(ジェフ・シュア)氏は、シカゴで英語教員だった2012年にNoRedInkを創業した。このサイトでは、提出物に「赤字(red ink)で書き入れる」以上のものを子どもたちが学べるようにしている。これは、教員が子どもたちの宿題によく赤ペンで誤りの指摘やアドバイスを書き入れることに由来する。

シュア氏は「子どもたちは、提出物のフィードバックを見てもどうすればいいのかわかりません。成績は見ますが、その後は捨ててしまいがちです。そこで私は、子どもたちに知って欲しいと思っているが明確には教えていない、習得が極めて難しいスキルを(子どもたちが)使えるようにするにはどうすればいいかを解決するためにツールの開発を始めました」と述べた。

創業以来、NoRedInkはレポートの構成、論点の無駄を省くこと、正しい引用の仕方まで、さまざまなライティングスキルを学生が身につけるための支援を目指している。

画像クレジット:NoRedInk

シュア氏は「ライティングを教える上で大きな課題の1つは、表現の芸術性を損ねることなく優れた書き手になるプロセスを明らかにすることです。そのために子どもたち1人ひとりに合わせた演習を多数提供し、書き方は1つではないことを認識してもらえるようにします」と説明する。

そう考えると、NoRedInkがアダプティブラーニングを採用しているのは納得がいく。アダプティブラーニングとはアルゴリズムを使って学習者の強みや好みといった情報を取得し、それに合うアウトプットを作成する教育法だ。学生に好きなキャラクターやロールモデルを尋ねたら、NoRedInkは1人ひとりの関心に応じたライティングの演習を作成し、軽くサポートしながら文章を書くプロセスをガイドする。

画像クレジット:NoRedInk

シュア氏はNoRedInkのゴールの1つを「習得が難しいスキルを、何段もの足場を付けて分割すること」と表現する。

これまでにNoRedInkの演習エンジンで100億種類以上の演習が学習された。この数字は同社が従来のカリキュラムの問題点やでうまくいかないこと、見過ごされている問題を学区に対して明らかにするために示しているものだ。

NoRedInkには教員が試用するための無料の機能制限版があるが、制限のないプレミアムバージョンも提供している。プレミアムバージョンは学習管理システムや他の教室と統合され、学校や学区が進捗を見ることができる。

ビジネスの拡大に伴い、NoRedInkは市場シェアを増やすために構想をさらに掘り下げる必要があるかもしれない。AIベースの文法・ライティングのユニコーンであるGrammarlyがやっているのと同じように文章のトーンもアドバイスするようになるのだろうか? 今のところ、そうではないようだ。

シュア氏は「Grammarlyは優れたコンシューマアプリで、Microsoft Wordが何年も前にやっていた文法チェックの現代版です。NoRedInkはまったく違います。学校や学区がスキルを教えるために使うものです」と述べた。

関連記事
ライティングのプロに聞く、スタートアップのホームページのコンバージョン率を倍にする方法
英文のメールやメッセージの語調をチェックしてくれるGrammarlyのトーンデテクター
画像クレジット:Malte Mueller / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Kaori Koyama)

スペル・文法チェッカーのGrammarlyがビジネス文書を向上させる新機能を公開

人気のスペル・文法チェッカーのGrammarlyが、米国時間9月29日に有料ユーザー向けの新機能を公開した(Grammarlyブログ)。これまでのツールをさらに進化させ、全体として形の上で正しいだけでなくもっと読みやすい文章を書けるようにサポートする。具体的には、明確になるように文章を再構成したり、読みやすくなるようにフォーマットを改善したりする(たいてい箇条書きを勧められる)のに役立ち、トーンの変更についてもアドバイスする。

さらにGrammarlyのUIもアップデートされ、新たにフローティングサイドバーが登場した。これによりGrammarlyからのアドバイスがすべて読みやすく表示される。

筆者はGrammarlyのNicholas Stanford(ニコラス・スタンフォード)氏から新機能の説明を受けた。同氏は、文章を書く人は、読む人を中心に置くことが重要だと強調した。これは書く人の多くにとって自然にできることではないが、要点を伝えるためには不可欠なことだ。

画像クレジット:Grammarly

スタンフォード氏は「世界中のほとんどの人にとって、書く文章の大半、特に重要な文章の大半は仕事のものだ。プロの書き手でなくても、メールやマーケティング資料、報告書を書くオフィスワーカーは増えている。そして書くことに自信がない人が多いことがわかった。書くのは難しい。理解してもらうこと、メッセージを伝えることは難しい。ちょっとした短いメールを受け取って『この人は私に対して怒っているのか?』と何度思っただろう」と説明した。

Grammarly独自の調査によると、同社のユーザーの75%が誤解されていることを恐れている。その一方で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大して在宅勤務の人が増え、仕事における文章の重要性は増すばかりだ。

今回リリースされたGrammarlyのライティングアシスタントのアップデートは、主に同社のAIをベースにしているがルールベースの部分も一部に残っている。AIに関しては、リライトのための新しいツールがおそらく最も興味深いだろう。一般に、Grammarlyのようなツールは単語レベルに着目し、それ以外では決まり文句を少し扱う程度だった。今回リリースされたツールでは、例えば複雑な文章を見て、もっと読みやすくなるように書き直す提案をすることができる。今後このツールをさらに賢くし、複数のパラグラフにまたがる文脈も理解できるようにする計画であるとスタンフォード氏は述べた。

画像クレジット:Grammarly

同氏は「現在はまだセンテンスレベルだ。我々はそれを拡大しようとしている。センテンスよりも長い文脈を考えないケースは極めて限られているからだ。このようなシステムでは、単に基本的な書き直しや長いセンテンスの分割を提案するだけでなく、長い文脈で見たときにセンテンスの意味が変わらないことが必要だ。これを実現するために、我々はバックグラウンドで動作して変更後のセンテンスが突然まったく違う意味になってしまうことを防ぐ2つ目のシステムを作った」と説明する。

読みやすさの向上については、1センテンスの中の長い列記の代わりに箇条書きを提案して文書の意味をとりやすくすることに主眼を置いている。このツールには日付や締切を検知して太字にし、目立たせる機能もある。

トーンの検出は、Grammarlyがここ最近取り組んでいる点だ。現在では文書がどのようなトーンかを指摘するだけでなく、改善のための提案もするようになっている。

カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Grammarly

画像クレジット:Grammarly

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)