Holmes代表取締役の笹原健太氏
新ソリューション「Holmes Project Cloud」とは
契約書の作成から管理までを一括サポートするクラウドサービス「Holmes(ホームズ)」を運営するHolmesが新ソリューション「Holmes Project Cloud」の提供を開始した。同社はこの展開を「新たなHolmesへのパラダイムシフト」としている。
Project Cloudは、ビジネスに必要となる数ある契約をプロジェクト単位で設計し、最適化するための「契約マネジメントシステム」。
従来のプロダクトでは1つ1つの契約書の作成から管理までを行なっていたのに対し、新ソリューションでは「プロジェクト単位で複数の契約の管理」を行うことが可能だ。
プロジェクトの例を挙げるならば、「開発プロジェクト」「新卒社員雇用プロジェクト」「株主総会プロジェクト」など。
事業が大きくなるにつれ、契約の数も、当然、爆発的に増えていく。
「必要な契約書は全部揃った?」「あの会社との契約どうなってる?」「この契約って、誰がどういう経緯で交わしたの?」などの問題が発生しがちだが、管理プラットフォームとなっているProject Cloudを使うことで、どのようなアクションが必要かは一目瞭然となり、情報や注意点を共有することで、ミスコミュニケーションにより生じるリスクを軽減することが可能だ。
なお、「一連の契約書業務を効率化」する従来のプロダクトは「Holmes Contract Cloud」となるが、今後はProject CloudとContract Cloudのセットがスタンダードプランとして提供される。
「事業は全てが契約」「契約に関係のない人はいない」
Holmes代表取締役の笹原健太氏は、契約は企業の「血液だと思っている」、そういった意味では「Holmesは企業にとっての大動脈となる」と話す。
笹原健太氏
Holmes 代表取締役
東京出身、中央大学法学部へ進学、その後慶應義塾大学法科大学院を中退。弁護士業務に従事し、2013年に弁護士法人 PRESIDENTを設立。「世の中から紛争裁判をなくす」という志のもと、17年にリグシー(現Holmes=ホームズ)を設立。18年末にはジャフコ、500 Startups Japan(現Coral Capital)など著名なVCおよび個人投資家から総額約5.2億円の資金調達を実施。現在は弁護士登録を抹消し、CEOとしてHolmesの経営に力を注いでいる。
「売り上げ、仕入れ、人や物・場所の調達、など、事業は全てが契約だと思っている。契約書の集合体が点。契約書の集合体が事業。事業の集合体が企業。契約書は事業の時間軸の中の、ある1点だ。なのに、これまでは契約書という点だけを解決しようとしていた」(笹原氏)
これまでの電子契約の世界観は「印紙や郵送などのコストをカットしたり、契約の締結の部分だけを楽にしよう」というものだった。従来のプロダクトは法務部など、限られた部署のタスク軽減や時間短縮のためのサービスに止まっていた、と同氏は説明する。
だが、契約には、多くの場合、企業内の複数の部署が関わっている。笹原氏は「契約書は法務部や弁護士が担当するイメージがあるが、契約に関係のない従業員はいない」と言い、以下のように課題感を説明した。
「企業の中には無数の契約があり、その1つ1つの契約の中には、様々な権利義務が存在する。全ての権利が実行されたかどうか、全ての義務が履行されたかどうかを、個人個人が把握するのは不可能だ。現在、契約書を結んでしまったら、それはどこかのファイルに収納してあったり、電子化されていたりしても、簡単に探せる状態にはなっていない。契約の締結後も取引は続いていくのにも関わらず、契約内容を現場がどれくらい把握しているかというと、できていない」(笹原氏)
例えば、賃貸借事業には、入居前、入居時、入居後など、様々な時間軸があり、その様々な時間軸の中には数々の契約書が存在する。そして、そのプロセスには、営業部だけでなく、審査部、総務部など、様々な部署が絡んでいる。
そのような中で「賃貸者契約書の作成から締結までのプロセス」だけが簡単になったとしても、書類漏れが防げないほか、更新されたかどうかは把握できない。だが、Project Cloudでは「どういう書類がどういう部署でどういうやりとりをされたのか、全ての情報が線となり集約されている」(笹原氏)
加えて、「契約書を適切に管理していないと契約情報を認識せずに取引をしてしまったり、契約更新に漏れがあったり」「担当者がいなくなった時に、契約の前後関係がブラックボックス化してしまう」といったリスクも回避できる、と同社は説明する。
プロジェクト単位で契約を管理することは、企業にとってどのようなメリットがあるのだろうか。
「事業成⻑のためには契約を最適化することが不可欠」だと謳うHolmesは、「権利と義務を最適にマネジメントすれば、それだけ事業が伸びる」と説明している。
「最適な権利実現」により「売上UP / 無駄な支出減」、「最適な義務履行」により「顧客満足 / 紛争リスク減」、そして「コンプライアンス」を強化することで「社会的な信用」を失うリスクを回避できると同社は説明する。
「契約書の作成から締結まで」「書類を自動作成」といったサービスを提供するリーガルテック領域のスタートアップが増えてきている中、「事業と契約は表裏一体」と話す笹原氏が率いるHolmesのProject Cloudはより包括的だ。かつ、「事業成長のためのツール」であるといった意味で趣旨が大きく異なる。
「事業」視点で開発されたProject Cloudのリリースで、Holmesは冒頭でも説明したとおり「新たなHolmesへのパラダイムシフト」を迎えたと言えるだろう。