伝説的アナリストのネットトレンド2019の中国特集まとめ

先ごろ伝説的アナリストであるメアリー・ミーカー氏によるインターネットの全体像をまとめたInternet Trendsが発表された。今年はHillhouse Capital編集による中国特集がレポート末尾に付け加えられている。すでに目を通した読者も多いだろうが、相当のボリュームなので以下に特集の内容をまとめてみた。

インターネット全般

現在、世界のインターネット人口は38億人に達し、全人類の半分にまで普及した。これにともないネット人口の伸び率はダウンしている。これはスマートフォンの出荷台数の減少でも裏付けられる。中国は現在のインターネットの普及のトップを走っており、WeChat(微信)は中国国外にも拡大中だ。 WeChatのミニ・プログラムの数は100万を超え、App Storeの半分のサイズに成長した。

中国のインターネットのユーザー数は 8億人で世界のユーザーの21%を占める(2位はインド、続いて米国、インドネシア)。中国の企業は時価総額でネットのトップ企業30社中7社を占める。Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)、Meituan(メイチュアン)、Dianping(シャンピン)、JD.com、Baidu(バイドゥ)、NetEase、Xiaomi(シャオミ)だ。

2018のモバイルユーザーは前年比9%の成長で 8億1700万人となった。 モバイルデータ通信量は前年比で189%アップした。 これは2017の162%という成長をさらに上回る。

今年のレポートでは特に中国市場におけるショートビデオサービスの成長に注目している。2019年4月時点でのモバイルによるショートビデオの総利用時間は1日当たり6億時間だった。このサービスのリーダーはDouyin(抖音、国外ではTik Tok)、Kuaishou(快手)、Haokan(好看)が続く。

またコマース分野ではライブストリーミングも人気だ。Alibabaグループが投資して設立されたTaobao(淘宝)は2018年のライブストリーミングで商品取り扱い高総額140億ドルを記録している。アパレル系ではMoguが24%を占めている。【略】

スーパーアプリの登場

Meituan Dianping(美団点評)のスーパーアプリは次第に巨大化している。すでに30種類のサービスが含まれている(レストランレビューと予約、映画チケット購入、各種レンタル、ホテル・旅行予約、料理・生鮮食品宅配など)。ただしビジネスの主力はレストランと旅行関連関連で、売上の88%を占める。 ユーザー総数は対前年比で26%アップして4億1200万人に達した。

AlibabaのAlipayは単なる支払いアプリから20万種類のミニアプリをダウンロードできるアプリストアに進歩した。ユーザーはAlipayを通じてヘルスケア、投資、請求書、保険その他自動車関係の支払いなどを行うことができるユーザーは10億人、70%が金融関係のアプリ3種類以上を利用しているという。

こうした「なんでも屋」のアプリの登場はGrab、Rappi、Uberのような中国以外で生まれたサービスにも影響を与えている。例えば、Uberはアプリに食品宅配、電動自転車レンタル、セール情報などを載せるようになった。

オフラインとオンラインの融合

中国でもうひとつ注目すべきトレンドは生鮮食品の通販におけるビジネスモデルの多様化だ。これは中国以外の地域にも影響を与えていく可能性がある。

米国における生鮮食品の通販の大部分は2つのビジネスモデルに分類できる。1つは Instacartのように既存の小売業者と提携しアプリで注文を集めて自ら配送するサービスで、もうひとつはAmazon Prime NowやWhole Foodsにように独自に商品を用意し、フルフィルメントも自ら行うものだ。

これに対し中国では、生鮮食品の宅配アプリは4種類に分類できる。1つはAlibabaのが都市部で運営するHema(河馬)ストアから宅配するFreshippoやJD.comの7 Freshだ。これは独自に運営するスーパーを拠点とし、店舗付近のユーザーに短時間で商品を届ける。

Miss Fresh(每日优鲜)、Dindong Maicai(叮咚買菜)は、商品を独自に用意し、フルフィルメント・システムを運営するがストアは持たない。

3つ目のグループはXingsheng Youxuan(興盛優選)、Songshu Pinpin(松鼠拼拼)、Dailubo(呆蘿蔔)などで、地域の生鮮食品フランチャイズと提携し、WeChatなどのミニプログラムを利用して消費者に共同購入サービスを提供する。翌日のピックアップ、配送が可能。

4番目のグループはMeituan(美團)、Alibabaなど大企業と提携し、アプリで注文を集めるサービスでフルフィルメント、配送は提携企業が行う。

オフラインとオンラインの融合というトレンドのもう1つの例は教育分野だ。中国では従来対面で行われてきた教育をデジタル化する例が増えている。オンライン教育の最初のヒットはK-12(幼稚園から高校)の生徒の宿題を助けるホームワークアプリだった。同様に英語やプログラミングを早期に学ばせたいと考える3歳から10歳の子どもたちの両親がスマートフォンアプリを活用するようになった。

中国政府のデジタル化も急速だ。公共サービスがますます多数モバイル経由で提供されるようになった。これには独自に運営されるものに加えて、上で述べたWeChat、Alipayなどサードパーティーのスーパーアプリの1サービスとして提供されるものの双方がある。市民がスマートフォンから利用できるサービスとして、ビザ申請、公共料金支払、病院の順番待ち番号札取得、運転免許の更新など多様だ。こうしたデジタル化で人々は役所から別の役所へと移動しては行列に並ぶ必要がなくなり、非常に便利になった。

画像:Dong Wenjie / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

メアリ・ミーカー、恒例のインターネット・トレンドを発表――全スライドと重要ポイント要約

テクノロジー分野の最新の数字を漏れなく知っておきたいなら朗報だ。伝説のアナリスト、ベンチャー投資家、 メアリー・ミーカーがInternet Trendsの2018年版を発表した。記事末に294ページに及ぶスライド全体をエンベッドしてある。モバイルからeコマースまであらゆるジャンルがカバーされている。ここでは特に重要と思われる点を選んで要約してみた。

  • Internetの普及: 2018年には世界の人口の半数、約36億人がインターネットにアクセス可能になる。これをもたらした大きな要因は安価なAndroidスマートフォンとWifiだ。ただしインターネットの普及が飽和点に近づくにつれ、個々のサービスは新たなユーザーを獲得することが困難になるものと予想される。
  • モバイル利用状況:インターネット・ユーザー数の増加率が低下するとともにスマートフォンの出荷は頭打ちとなった。一方、モバイルの普及によりアメリカの成人がオンラインで過ごす時間は増えている。 2016年には1日あたり平均5.6時間だったものが、 2017年には5.9時間に増加した。
  • モバイル広告: 消費者がモバイルにシフトするスピードは速く、広告費はそれに追いついていない。モバイル利用時間に広告費が比例するためにはさらに70億ドルの支出が必要。各プラットフォームはコンテンツの選別を次第に強め、内容が安全と認められるページに出広する傾向にある。
  • 暗号化:オンラインの暗号通貨はブームを巻き起こしている。Coinbaseのユーザー数は2017年1月以来4倍に増えた。
  • 音声: 音声テクノロジーがいよいよブレークした。音声認識の精度が95%を超えた。また2017年にはAmazon Echoの販売台数累計も1000万台から3000万台に増加した。
  • 1日あたり利用状況: Facebookなどのサービスの売上は1日あたりユーザー数の増加に強く結びついている。つまりユーザーがそのサービスの利用を習慣化するかどうかが収益性のカギとなる。
  • テクノロジー投資: 上場、非上場企業ともテクノロジー投資は過去最高を記録している。上場企業におけるR&D投資プラス資本的支出のトップ6社はすべてテクノロジー企業だった。

写真はMorgan Stanleyのアナリスト当時のメアリー・ミーカー。サンフランシスコで 2010年11月16日に開催されたWeb 2.0 Summitで講演中のもの。現在ミーカーはベンチャーキャピタル、KPCBのパートナーで、今年も11月17日に講演の予定。タイトルは「コントロール・ポイント:ネットワーク経済をめぐる戦い」。撮影:Tony Avelar/Bloomberg/ Getty Images

  • eコマース対現実店舗:eコマースの成長は加速し、全リテール支出の13%を占めるまでになった。オンライン・ショッピングと商品の発送数は急増しており、ショッピング・アプリにはビッグチャンスとなっている。
  • Amazon:ますます多くの消費者が検索エンジンよりむしろAmazonで商品の検索を行うようになった。AmazonのCEO、ジェフ・ベゾスは依然としてFacebookやYouTubeで消費者の購買意欲をかきたてる努力を続けている。
  • サブスクリプション・サービス:契約者数は急増している。2017年には対前年比でNetflixは25%、New York Timesは43%、Spotifyは48%それぞれアップした。フリーミアム・モデルは有料契約へのコンバージョンを加速する効果がある。
  • 教育: 学資ローンの返済額が急上昇するにつれ、雇用者は企業が必要とする新しい能力を学ぶためYouTubeや各種のオンライン・コースを利用する傾向を強めている。
  • フリーランス化:雇用者は在宅勤務を含めて柔軟性の高い労働時間を強く求めるようになった。またインターネットを利用したフリーランス雇用は全雇用の3倍の伸び率を示している。2017年にオンデマンド労働は23%増加した。これはUber、Airbnb、Etsy、Upwork、Doordashなどのサービスの成長によるところが大きい。
  • 運輸交通:自動車の購入台数は減少傾向にあり、長く乗るようになった。交通関連への支出はUberなどライドシェア・サービスにシフトしている。2017年にはライドシェアへの支出は倍増している。
  • エンタープライズ: エンタープライズ向けサービスがより良いインターフェイスを得てコンシューマ・アプリ化している。DropboxとSlackが.このような急成長の代表的な例。
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  • 中国: 中国のユーザーはアメリカと比較してプライバシーと交換に利便性を獲得することをためらわない傾向がある。 これは中国企業の競争力を高めており、インターネット企業のトップ20にますます多くの中国企業が加わる結果を生んでいる。またこれらの企業はAIに巨額の投資を行っている。
  • 中国のeコマース: Alibabaが商圏を中国の外に急拡大している。売上では依然Amazonがリード。
  • 移民:アメリカのトップ企業の56%は移民1世または2世によって創立されており、経済成長にとって決定的に重要な要因となっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+