検索結果で最新ニュースを優遇したいGoogleが複数のニュース企業とデータ形式で提携

Googleが今日(米国時間7/31)、複数のニュース企業と協力して、ジャーナリズムから得られるデータを検索結果に反映していく、と発表した。それは、これらの企業が作りだす大量のデータを見つけやすくし、そしてそれらを、検索結果という読みやすい形式で提示することがねらいだ。

今同社はProPublicaなど数社と協働して、検索の効率的なインデクシングに必要な定型データを作ろうとしている。つまり、たとえばそのデータがテーブル(表)なら、それをインデックスに拾うのもかなり簡単だ。

ProPublicaの副編集長Scott Kleinはこう語る: “ニュースが世界に与える影響をつねに意識しているわれわれのようなニュース企業は、情報を人びとがそれを必要とする時と所に届けることが、最大のミッションだ。たとえばわれわれが苦労して収集し準備しているデータを、何かの意思決定のためにまさにそれを必要としている時点で人びとに提供できれば、それはニュース企業の理想的な社会的貢献になる。そのようなデータ収集が、われわれの得意とするところであり、それを供するためのお皿であるコードを加えることは、われわれから見て(ニュースの収集に比べれば)些細な努力だ”。

そういう、人と社会の役に立っていることを自負しているニュース企業は、Googleのガイドラインに従った定型データを作れば、検索のインデクシングに拾われるようになる。そして検索式が適切なら、それらのデータは検索結果の上位に出る。だからそれは、頑張ってやる価値がある。検索のユーザーにとって、最初の結果がすべてであることが多いからね。

もちろんGoogleはこれまでも、ネット上の大量のデータをインデクシングし、検索結果として光を当ててきたが、ジャーナリズムのプロジェクトを意図的に取り上げる取り組みは、今回が初めてだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AP通信、マイナーリーグ野球の記事を「ロボット」記者が報道

今日(米国時間7/3)Associated Pressは、全国のマイナーリーグ野球(MiLB)の試合記事を人工知能を使って書くことを発表した。人工知能システムは、Automated Insightsのソフトウェア、およびマイナーリーグ野球の公式データ提供元であるMLB Advanced Media(MLBAM)のデータを利用する。

自動生成された記事が配信されるのは、AP Sportsの人間記者が取材も報道もしない、142のMLB協讃チームと13のリーグにわたるトリプルA、ダブルAおよびクラスAの試合だ。

したがって、もしテクノロジーが有望なスポーツ記者から「仕事を奪う」ことを心配しているなら、安心されたい。

APのスポーツ部門副ディレクターのBarry Bedlanによると、APはこのシステムの開発と運用のために、自動化の専門家を雇った。

この動きは全くの予想外ではなかった。この会社は、Zacks Investment Reseachのデータを使って、2014年7月からビジネスおよび金融の報道に人工知能を利用している。

APが、いわゆる「ロボット」報道を拡大する上で心配しているのは何かと尋ねられたBedlanは、「配信される内容は100%正確であることを確かめる必要がある。しかし、ひとたびソフトウェアが適切に設定されれば、正確性の問題はなくなる」。

AP Sportsは、一年をかけてAutomated Insightsのプラットフォーム、WordsmithをMiLBの記事作成のためにテストをした結果、AP Sportsの顧客である地方の放送局や新聞に配信し、彼らの視聴者や契約者に届けることになった。

統合は技術的には難しくなかったが、APでトップクラスの野球担当編集者や記者たちに、自動生成された野球記事の品質をチェック、評価、編集してもらうため一年かかった。

彼らはメジャーリーグを春季キャンプからワールドシリーズまで追いかけているため、捕まえるのは容易ではなかった。

APは、ソフトウェアとAIの利用を野球以外のスポーツにも拡張するに違いない ― 良いデータを早く揃えることさえできれば。

Bedlanは、「可能性はいくらでもあるが…スポーツ団体が正確性100%のお墨付きを与えるのに何時間、何日もかかるなら、新聞や放送やウェブサイトにとってニュース価値はなくなる。

MLBとAutomated Insightsは、MilBゲームのデータを数分以内に提供している、と彼は言った。

Bedlanは、APが記事は自動生成されたものであり人間が書いたのではない時は、そのことを明確に公表すると強調した。そして彼は、自動システムの利用によって、編集者や記者は、もっと調査の必要な大きなプロジェクトに専念できるようにすることが目的だと話した。

ニュース配信の自動化を進めているのはAssociated Pressだけではない。Celeste LeCompteが2015年9月に、NiemanReports.orgで“Automation in the Newsroom”と題してこう書いている。

「ProPublica、Forbes、The New York Times、Oregon Public Broadcasting、Yahoo、その他の会社はアルゴリズムを使ってビジネスやスポーツから教育、機会均等、公共の安全等に関する報道に役立てている。多くの企業にとって取材と配信の一部を自動化することは、記者の負担を減らすとともに、新しいデータ資源を活用する手段でもある」

果たして自動化が進むことによって、記者や編集者にスキルの衰えが起きるかどうか、今後に注目したい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Financial TimesとGoogleがパートナーしてヨーロッパの都市の観光案内に載らない穴場をガイド

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ニュースのパブリッシャーがテクノロジを利用すると、こんなこともできるという例。Financial Timesが今日(米国時間10/30)、Googleとのコラボレーション、Hidden Citiesを公開した。

最初の都市はブラッセルだ。同誌の特派員たちが、バーやレストラン、魅力のスポットなど、秘密の穴場を教えてくれる。地元の有名人も参加している: Paul Dujardin(美術館Bozar)、Alain Coumont(レストランチェーンLe Pain Quotidien)、そしてMartine Reicherts(ECの文科相)。

Google Mapsがベースなので、対話性もある。それはSnow Fallほどのすごいイノベーションではないが、Googleでヨーロッパや中東、アフリカのブランドマーケティングを担当しているRamya Raghavanは、このプロジェクトは良質なコンテンツとテクノロジの‘出会い’を表現しているし、Google Mapsを使っているから実用性もある、とほめちぎる。

Raghavanは曰く、“FT Weekendはいつも読んでいるけど、これならレストラン記事にナビがついてるようなものだから、Google Calendarに入れておく価値があるわ”、だそうだ。

彼女によると、Hidden CitiesはGoogle Mapsの新しい機能も使っている。たとえばHidden CitiesのWebサイトに載ってる位置をモバイルのGoogle Mapsアプリに直接保存できるのだ。

“このプロジェクトはGoogle MapsのAPIを盛大に使っているから、ほかのデベロッパや出版サイトにとっても参考になると思う”。

FT Weekend Magazineの副編集長Natalie Whittleは、Googleとのコラボレーションを“バイクとサイドカーの関係”と表現する。この際、バイクの運転者はどっちかというと、“完全に独立した編集権を持つFTのチーム”だ、と彼女は主張する。それに対してGoogleは、サイドカーの座席から技術的サポートを提供した。

“今のFTのモットーは‘デジタルファースト’ね”、とWhittleは言うが、それは、印刷版を軽視するという意味ではない。この都市ガイドも、同誌の10月31日号の付録になる。Web上のGoogle Mapsから印刷用の版下を作る工程は、“難しいけど良い体験だった”、と彼女は語る。

なぜ、ブラッセルからか? そこにはFTのかなり大きな支局があるし、またパリに近すぎるので旅行案内などでまともに取り上げられる機会が少ないからだそうだ。

“これで、ブラッセルを見直す人が増えると嬉しいわね”、ということだ。

次のHidden Cityはロンドン、11月28日にローンチだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

良質な調査報道をクラウドファンディングで育て維持したいと願うUncoverage

Israel Mirskyは民主主義におけるジャーナリズムの役割を、次のようなアナロジーで説明する: 自由な社会は、強力な免疫系がないと機能しない。調査報道に従事するジャーナリスト(investigative journalists)は、感染を見つけて闘うヘルパーT細胞の役を担う。彼らはたとえば、訴追者や立法者*や世論の注意を腐敗に向けさせる。〔訳注: 訴追者や立法者, prosecutors, lawmakers…ふつうに訳すと検事や議員、となる。〕

しかし、インターネットがニュースのビジネスモデルを変えたため、媒体は記者たちに十分な報酬を支払えなくなり、その免疫系の力は弱くなっている。

今月の初めにMirskyは、クラウドファンディングのサイトIndiegogoで、新しいクラウドファンディングプラットホームUncoverageを立ち上げるための資金募集を開始した。そのねらいは、人びとが直接、調査報道のプロジェクトを支えることによって、今経済的な苦境に立つ新聞や雑誌に依存せずに、記者たちが自分の仕事をできるようにすることだ。記者の企画に資金が集まれば、Uncoverageはその記事を全国紙誌に売り込む。この際もちろん、報酬期待ではなく掲載依頼の売り込みだ。

“ぼくのような、つねに良いニュースに飢えている人間は、今調査報道が経済的に成り立ちにくくなっていることを、怖いと思う”、とMirskyは語る。

ジャーナリズムをクラウドファンディングする試みは、これが初めてではない。2011年にAmerican Public Mediaが買収したSpot.usは、ローカルニュースの充実を目指して2008年に創業された。今年の9月にローンチしたBeacon Readerは、映画/TV番組配給のNetflixのように、有料会員制(月額5ドル)でライターたちの記事を読ませようとする。ジャーナリストたちの仕事を広告収入依存にしない、という試みだ。

Uncoverageは、市民ジャーナリストを対象としない。企画がこのサイトで採用されるためには、その記者が既存のメディアの経験者でなければならない。

また、Mirskyによれば、地域ニュースも対象にしない。Uncoverageに持ち込まれる企画は、世界全体や特定地区(例: “東アジア”)、あるいは国を対象とするものでなければならない。つまり、期待されるオーディエンスが相当大きいこと。また報道写真の企画も単独では対象としないが、ジャーナリストと組んだ報道写真企画は取り上げる。

期限まであと17日の今日(米国時間12/17)現在で、目標額55000ドルに対し12000ドル弱が集まっている。

今後支援者たちは、特定の企画を支援してもよいし、あるいはより広い話題(トピック)を支えてもよい。どちらにも編集者が付き、たとえば経済的~金銭的腐敗を担当する編集者Sharona Couttsは、ジャーナリストたちと協働して企画の評価と彫琢を行う。ただし彼女の役割は、今後変わることもありえる。

また、資金を募る話題も、今後流動的である。Mirskyの頭の中に今ある話題は、経済的腐敗と、ビジネスとしての刑務所などだ。しかし今後の編集者やパートナー次第で、メインの話題は変わっていく。もちろん出資者や読者の意向によっても。

Mirskyによると、取材資金を得るためにUncoverageに持ち込まれる企画の内容や形式は、その完成度を問わない。びっしり書かれた企画書でも、未完の企画書でも、わずか500語のメモでもよい。Uncoverageは出版者と密接に協働するが、出版者側からの給与は出ないので、編集者とライターのあいだ力関係が従来とは変わるかもしれない。

“資金の一部が企業でなく個人から来るということは、全然別の形の会話をもたらすだろう”、とMirskyは言う。

しかし会話が変わっても、それが編集者いじめになるわけではない。

“目標は、記事がメジャーな全国紙誌(+インターネットサイト)に載ることだ。良質な調査報道が、記者にとっても、出版者にとっても、どんどん書けてどんどん載るようになることを期待したい”。

[画像: Flickr / NS Newsflash]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))