AIヘッドハンティング「LAPRAS SCOUT」のLAPRASが3.5億円を調達、ビジネス体制と新規開発リソース強化

AIヘッドハンティング「LAPRAS SCOUT」展開のLAPRASが3.5億円を調達、既存ビジネス体制と新規開発リソース強化

登録不要のエンジニア向けAIヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」を展開するLAPRASは9月14日、第三者割当増資による3.5億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はウィルグループ HRTech2号投資事業有限責任組合。

調達資金は、個人向けのスキル可視化・ポートフォリオサービスの「LAPRAS」、企業向けのエンジニア・ヘッドハンティングサービス「LAPRS SCOUT」のプロダクト開発を強化するための人材投資、また順調に成長するプロダクトのプロモーション、転職エージェントが行っていたキャリアマッチングをウェブ上で自動化するシステム「Matching Intelligence」(β版)をはじめ、新規開発リソースに活用する予定。

既存ビジネスの体制強化とともに、新規プロダクトも同時に進めるため、大きなリソース拡充に資金を投下するとしている。

LAPRASは、「あらゆる選択肢から、その人が最も幸せになれる選択肢をマッチングするシステムを創る」というミッションのもと、LAPRAS、LAPRAS SCOUT、フリーランス・副業エンジニア採用サービスの「LAPRAS Freelance」を運営。LAPRASは、2019年4月公開から1年余りで登録者数1万人となり、LAPRAS SCOUTも累計導入社数250社超となっているという。

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真剣に転職を考える際、多くの人が登録するであろう転職エージェントサービス。まずはキャリアアドバイザーとの面談を通じて具体的な条件や自身の志向性をクリアにした後、候補先となる企業の提案を受けるのが通常の流れだ。

一方でHR Tech企業のLAPRASが開発に乗り出した「Matching Intelligence」はこの“キャリアエージェントによる面談”をシステム化した上で、Web上に公開されている求人情報を集め、その中から個人個人に合った求人を提案する。いわば同社が磨いてきたテクノロジーとデータを軸にキャリアコンサルティングの仕組みをアップデートしようという試みだ。

LAPRASでは2月26日、同社にとって新事業となるMatching Intelligenceの開発を本格化し、今夏を目処にローンチする計画であることを明らかにした。

機械学習とクロリーング技術でキャリアコンサルティングを自動化

TechCrunch Tokyo2017のファイナリストでもあるLAPRAS(当時の社名はscouty)は、個人向けのスキル可視化サービス「LAPRAS」や企業向けのヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」など人材領域で複数のサービスを展開するスタートアップだ。

特徴の1つはオープンデータを収集するための「クローリング技術」。個人向けのLAPRASではエンジニアの情報を集めるのに使っていたこの技術を、Matching IntelligenceにおいてはWeb上の求人情報を収集するのに転用。集めてきた求人をLAPRASのポートフォリオやWebアンケートの結果と照らし合わせ、機械学習を活用してマッチングする。

サービスの流れ自体はシンプルだ。転職を考えているユーザーはまず、オンラインのアンケートに答える。たとえば転職を考えた理由や企業を選ぶポイントの優先順位、希望の勤務形態、興味のある分野、希望年収、好みのカルチャーなど。これはキャリアアドバイザーとの面談でよく聞かれる内容をアンケートに落とし込んだものだと思ってもらえればいい。

Matching Intelligenceではこの回答結果とLAPRASに蓄積されたスキルや志向性データを解析し、Web上の求人情報の中から相性が良さそうなものをピックアップして提案する。ユーザーが提案内容に対してフィードバックを行うことで、その結果がどんどん学習されて提案精度が向上する仕組みだ。

今回本格的に開発に着手する前段階として、LAPRASでは社内でプロトタイプを作り仮説検証を行った。複数のエージェントに協力してもらって標準的な質問事項を洗い出し、共通するものや重要なものを抽出。Googleフォームでアンケートを作り社内エンジニアに回答してもらった上で、実際にクローリングしてきた求人情報を1人数件ずつ提案し、その会社に面談に行きたいかどうかをチェックしてもらったという。

LAPRAS代表取締役の島田寛基氏によると1回目の提案時には面談に行きたい率の平均が約37%だったが、複数回のフィードバックを繰り返すことで最終的に約60%ほどまで精度が改善したそう。磨きこめばプロダクトとして世の中に出せる手応えもあったため、力を入れて開発に取り組むことを決めた。

今後は社外での実証実験を経て、夏頃のサービス化を予定しているとのこと。まずはLAPRAS上で転職意思が高いと表明しているユーザーに対してサービス内でアンケートを実施し、企業のレコメンドやマッチングを進めていく計画。従来のエージェントは担当者が1人ずつ面談を行っていたが、この工程にテクノロジーを入れることでマッチングの効率や精度をあげていく狙いだ。

最も自分に合った求人情報が提案されるサービス目指す

これまでLAPRASではLAPRAS SCOUTやフリーランス・副業エンジニア紹介サービスの「LAPRAS Freelance」を通じてエンジニアと企業のマッチングを図ってきたが、現状では企業側からアプローチをするものが中心。ユーザー側からアクションする手段は自身の転職意欲を示すことくらいに留まる。

要はスカウトサービスであるが故に企業側に依存する部分が多く、特に転職意欲が高まっている個人のニーズを十分に満たせていない側面もあった。また企業の中には採用活動をサポートしてくれるエージェントの仕組みを求める声もあり、スカウトサービスとエージェント型のサービスの両方が必要との結論に達したそうだ。

LAPRASによると、従来の転職エージェントサービスでは自社が契約している企業の採用募集しか取り扱わないため、選択肢が限定され求職者にマッチした募集が他にあっても紹介できないことがあった。加えて多くのサービスが成果報酬モデルを採用していることもあり、一部では本人の志向性を考慮せず給料が高い企業に求職者を押し込むようなエージェントも存在する。

Matching Intelligenceが目指すのは機械学習による解析とクローリング技術によってこれらの課題を解決し「ミスマッチな転職」をなくすことだ。

最終的には「提案の精度」が大きなポイントになるが、個人のスキルや志向性についてはLAPRASで蓄積してきたデータを活かせるのが強み。もう一方の求人情報に関しても“求人票には書かれていない”企業のフェーズやカルチャーなどの情報を補完的に収集することで、マッチングの精度を高めていくという。

「やりたいことはオープンデータや(Webアンケートなどの)クローズドデータを活用しながら、その人に合った求人情報をマッチングすること。いわゆるAIエージェントの概念自体はすでに存在するが、マッチングの部分を研究していくことで最も良い提案ができるサービスを目指す」(島田氏)

公開データからエンジニアのスキルを可視化するLAPRASがフリーランス・副業マッチングの新サービス

オープンデータを用いてエンジニアのプロフィールを自動生成する「LAPRAS」や企業向けのAIヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」を展開するLAPRAS(旧scouty)は10月24日、フリーランスや副業エンジニアと企業をマッチングする新サービス「LAPRAS Freelance」のベータ版を公開した。

LAPRAS FreelanceはLAPRASで蓄積された人材データベースを活用して、フリーランスや副業スタイルで働きたいエンジニアと企業をつなぐサービスだ。

LAPRASは以前から紹介している通りGitHubやSNS、個人ブログなどインターネット上に公開されているエンジニアのオープンデータを収集し、スキルを独自のスコアで可視化するとともにユーザーのプロフィールを自動で生成するというもの。4月より各ユーザーが自身のページを閲覧できるようになったほか、まだ自分のページが存在しない場合にはログインすることで作成できる仕様になった。

LAPRASで生成されるプロフィールページ。独自のLAPRASスコアが算出されるほか、個人のアクティビティのログ(参加したイベントなど)も自動でまとめられる。このページを名刺代わりにボタン1つで共有できる機能も7月に実装された

現在は約143万人のデータが自動で収集されていて、そのうち約5000人が自らデータベースにログイン(オプトイン)している状態。7月からは正社員、副業、フリーランス、インターンシップの中から興味がある雇用形態を選択できる機能が加わり、54%が副業、34%がフリーランス(重複あり)を希望しているという。

LAPRAS Freelanceでは担当者が企業側の要望を聞いた上で、LAPRASに自らログインしていて、なおかつ副業やフリーランスに興味を示しているエンジニアの中から要件に合った人材を提案。企業とのマッチングを図る。

特徴の1つは「企業は求人票の作成、ユーザーは履歴書や経歴書の作成」の必要がないこと。そのためユーザーは登録したその日から紹介を受けるチャンスを得られる。そもそもLAPRASではscouty時代から企業の採用要件にマッチした人材をレコメンドするエンジンを磨いてきているため、今回のサービスでもその技術を活用していく形だ。

企業の利用料金は初期費用無料の完全成果報酬型。1名の採用につき一律で30万円の成果報酬が発生するが、設立登記から3年未満のスタートアップに関しては15万円で利用ができる。またエンジニアに対して不当に低い金額での業務発注を防ぐために案件の最低時間単価は5000円にしているそう。こちらも上述した条件に当てはまるスタートアップの場合は最低3500円から提案が可能だという。

エンジニアのスキルをスコア化した上で、それを副業やフリーランスのマッチングに活用するという観点では6月に紹介した「Findy」の取り組みとも近しい。ただ両社ではスキルを算出するためのソースが異なるほか(FindyではGitHubを解析してスコアを出す)、求職者側との面談の有無や最低単価の仕組みなど、サービスの設計面でも違いがありそうだ。

「正社員採用が主であるLAPRAS SCOUTを運営する中で、フリーランスや副業で働くことを希望しているエンジニアが想定よりも多いことに気づきました。まだ正社員採用をメインとする企業が多いものの、働く側の組織にとらわれない働き方のニーズは増え、業務委託やフリーランス人材を活用する企業も急速に増えてきたように思えます。そういった背景を受け、LAPRAS SCOUTとは切り分けた別のサービスとしてLAPRAS Freelanceをローンチしました」(LAPRAS代表取締役の島田寛基氏)

前々から島田氏が話していたように、今後はエンジニアに限らず人事、マーケティング、コーポレート、デザイナーなど対象となる職種を拡大していく構想。「誰でもアウトプットさえ出していけば副業の誘いのような新しい機会に出会うことができる環境を作っていきたい」という。