巨額赤字のLeEco〔楽視〕ファウンダーに帰国命令――中国証券監督管理委員会が公開状

問題山積みのテクノロジー多国籍企業、LeEcoのファウンダーがさらに新たな頭痛を抱えることとなった。LeEcoグループの負債の処理に関連して中国証券監督管理委員会〔CSRC〕はファウンダーのJia Yueting〔賈躍亭〕に対し12月31日までに帰国するよう命じた。同委員会は月曜日、異例の公開状を発表し、LeEcoグループが債務を返済できないことは、「上場企業として法的責任を果たせないだけでなく、投資家の利益に対する深刻な侵害ととなる。また社会的にも非常に大きな悪影響を与える」と述べた。

LeEcoの親会社、Leshi Internet Information and Technology Corp〔樂視網信息技術(北京)股份有限公司〕は深セン証券取引所に上場しているが、この4月以降、リストラ案を審査するため取引が停止されている。楽視は2004年に賈躍亭によってビデオストリーミング・サービスとして設立された。2016年にはLeEcoブランドの下で野心的な事業拡張に乗り出した。これにはアメリカのテレビ・メーカーVizioを20億ドルで買収する合意が含まれていた(この買収は後にキャンセルされた)。同グループはさらにスマートフォン、スマート自転車その他消費者向けエレクトロニクス製品の製造に進出し、さらにロサンゼルスに本拠を置く電気自動車のスタートアップ、Faraday Futureとも提携した。これらの事業の資金としてLeEcoは 数十億ドルの借り入れを行った。この際に 賈躍亭は自らの楽視グループの株式を担保として証券会社に差し入れたという。

しかしLeEcoの事業拡張は成功せず、債権者からの圧力は日増しに強まっていた。今年7月、賈躍亭は楽視聴の会長を辞任すると同時に、ソーシャルメディア上で「LeEcoの負債は必ず返済する」と約束した。

中国証券監督管理委員会によれば、同委員会は賈に対し、中国に帰国するよう9月から要請してきたが、「現在までこれに応じようとするいかなる行動も見られなかった」という。今月初め、香港のPing An Securities Group〔平安証券集団〕に47000万元(7100万ドル)の債務が返済ができなかったため、賈は中国における債務不履行者の公式リストに掲載された。 先週、LeEcoの香港法人が同地の高等裁判所に精算手続きの開始を申し立てたと香港メディアはと報じた。

われわれはLeEcoに対しメールでコメントを求めている。

画像; Bloomberg/Getty Images

〔日本版〕賈躍亭宛の公開状には「北京證監局關於責令賈躍亭回國履責的通告」(原文は簡体字)とある。『ポケットプログレッシブ中日』は、「zélìng 【责令】[動詞]責任をもって任務を遂行するよう命じる」と説明している。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

LeEcoのアメリカ進出は失敗の典型―中国のコングロマリットの派手な上陸作戦の結果は大量レイオフ

1ヶ月以上前から点灯していた数々の赤信号の末、LeEco〔楽視〕のアメリカでの事業はついに人員の大幅削減に追い込まれた。LeEcoは中国の野心的なコングロマリットだが、アメリカだけで325人の社員をレイオフすることを明らかにした。私が受け取ったメールアドレスの変更通知の数からするとすでにレイオフは実行されているものと思われる。

月曜日のフットボール・ファンのように後知恵で試合を批評するのは簡単だとはいえ、惨事が起きたのは事実だ。しかもこのことは以前から予想されていた。LeEcoがアメリカで重要なスタートアップとみなされていたのはわずか1年前だという点には注意を払うべきだろう。大がかりで派手なプレス・カンファレンスが実施されたのはなんと昨年10月中旬だ。わずか7ヶ月でこの結果に終わるとは驚くべきスピードだ。しかしアメリカ事業には当初から事態を警告するシグナルはいくつも出ていた。

LeEcoはもちろん警報を無視した。同社は300人以上が職を失うという事態を招いたことを惨事とは認めず、何か悪いことが起きるたびに口にされる言い訳を持ち出している。つまり悪かったのは同社の戦略ではなく、資金調達で思わぬ障害を経験しただけだというわけだ。LeEcoはインドでレイオフを実行したときにも同じような声明を出した。

TechCrunchがコメントを求めたことに対する回答は、誰彼となく質問した者全員に送られるテンプレート・メールで、「消費者との間の壁を取り払おうとしたわれわれのビジョンは正しいと信じている。アナリストもこの点を認めている。今回、必要とする資金の調達ができなかったため、われわれはアメリカ事業において段階的アプローチ(a phased approach)を取ることとした」と書かれていた。

しかし「段階的アプローチ」というのは数百人をレイオフした後で使うべき言葉ではあるまい。そもそもこの会社の「スマート・ビジネス」そのものに問題があったというべきだ。国際的に展開して成功を収めた企業なら、中国とアメリカのように根本的に文化を異にする新市場への参入がいかに難しいか教えてくれるはずだ。われわれが掲載したAppleの中国進出の記事を見れば分かる。

LeEcoは「小さく始める」という戦略と無縁だった。無謀で派手な鳴り物入りが同社の本質だった。これが50エーカーに上るアメリカYahooの広大な跡地を高値で買わせ、金のかかった巨大な看板を立てさせた理由だろう。LeEcoの建設計画を聞けばアメリカ本社はまるでテーマパークのようなものになりそうだった。

アメリカで事業をスタートさせるに当たって、LeEcoは安いスマートフォンやテレビを売るだけが目的でないと宣言した。万人にすべてのもの提供するというのだ。いくぶんApple的、いくぶんNetflix的、いくぶんTesla的、いくぶんAmazon的というわけだ。VRヘッドセットやら自転車やら、加えてセレブのカメオにはトランスフォーマー・シリーズで知られるマイケル・ベイ監督まで動員した。同社はマット・デイモン主演の中国を舞台にしたアクション大作『グレートウォール』の製作にも出資し、ハリウッドの映画スタジオ・システムにも参入しようとした。

しかしこうした派手な車輪の回転は突如ストップした。LeEcoは約束のごくわずかな部分しか実現できなかった。LeEcoがスマートフォンを作る約束だけをしていたのならアメリカ市場を研究するチャンスはもっとあっただろう。失敗の可能性も低かったはずだ。しかし出だしで新市場の本質を見誤った場合、取り返すのは不可能だ。イカロスは太陽の側まで舞い上がって墜落したと言われているが、LeEcoはそれどころではない。世界に向かって「これから新しい太陽を作り、新しい太陽系を作る」と宣言した。

同社の今後の戦略がどうなるかは容易に想像できる。。同社はリストラ後、アメリカの中国語を話す家庭向けに「中国版Netflix」のようなサービスを提供しようとするだろう。同社はすでに中国語のコンテンツを持っているからこれは容易だし、マーケットもそれなりに大きい。アメリカ市場への参入の当初からこの道を選んでいればLeEcoの運命もかなり違ったものになっていたのではないか?

LeEcoの声明は大部分が無内容な企業語の大言壮語に過ぎない。企業も政治家も誤りを認めたがらず、失敗を自分の力の及ばない外部事情のせいにしようとする。そこでそうした外向きの発言ははともかく、社内では戦略の失敗を認めて今後の新戦略を立ててもらいたいものだ。どこからか再び資金が入ってくることを期待して小手先の修正でつないで済ませられる段階ではないだろう。

これはアメリカの消費者にとって安いスマートフォンの選択肢が一つ減ったというだけの話ではない。325人がある日突然職を失うというのは重大な事件だ。

画像: VCG/Getty Images

〔日本版〕LeEcoの沿革についてはWikipediaの楽視グループを参照。ただし記事末尾に「2016年 – 米テレビメーカーVIZIO買収」と書かれているが、これは今年4月に入って中止されている

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Faraday Futureの工場建設が中断:電気自動車の出荷にかなりの遅れ

faraday-spy-shot

Financial Timesが木曜日(現地時間)に発表した記事によると、Faraday Futureが2017年に予定していた同社初の電気自動車の出荷が大幅に遅れる可能性が出てきたという。製造工場の建設自体がまだ終わっていなければ、クルマを出荷するのは難しいだろう。Faradayがネバダ州に建設中の工場は4月に着工を開始しているものの、その後の建設作業は中断している。Fネバダ州財務官のDan SchwartzがFTに語ったところによれば、その中断の理由は建設工事費がまだ建設業者に支払われていないからだという。

製造工場の建設を受託しているAecomによれば、この遅れは一時的なものであり、2017年初めには建設が再開される見通しだという。それでも、製造工場の完成が当初の予定よりも大幅に遅れてしまうことには変わりがない。Faradayが予定している製造タイムラインに間に合わせることはかなり難しくなるだろう。Financial Timesが取材したFaradayの元従業員によれば、予定通り2017年に出荷開始するのは「可能ではない」とのことだ。

この問題の原因の1つとして、同社の財政的な後ろ盾であるLeEcoが現金の調達に苦労していることが挙げられる。LeEcoが単独で行う自動車プロジェクトや、Faradayのようなパートナ企業との同様のプロジェクトへの多額の投資が事の発端だとされている。先日LeEcoは6億ドルの資金調達を完了したところではあるが、Faradayが財政面でLeEcoに大きく依存していることを踏まえると、これでLeEcoの現金不足と工場建設の遅延が解決するかどうかは分からない。

Faraday FutureがBatmobileに似たFFZERO1のコンセプトを発表したのは昨年のことだ。その後Faradayは、同社初の電気自動車(トップの隠し撮り写真にうつる車両)を来年1月に開催されるCESで披露すると約束している。このクルマの出荷がいつになるのかは、今後明らかになるだろう。そして、CESでのFaradayの出展品にも大きな注目が集まりそうだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

LeEcoが6億ドルを追加調達、電気自動車プロジェクトには陰りが見える

leeco-brian-hui-1

電気自動車、スマートフォン、スマートTVなどを開発する、中国の野心的なテック系企業のLeEcoに関する良いニュースと悪いニュースが両方報じられた。

同社のCEOでビリオネアのYuenting Jiaが、同社の早すぎる国際展開を戒めるために企業内部に送った手紙がリークしたことで、LeEcoが新たに6億ドルを調達したことが明らかとなった。しかし同時に、同社がアメリカで展開する電気自動車事業にはブレーキがかかっているようだ。

Reutersが報じたところによれば、LeEcoの中国親会社であるLeShiは、10社以上の中国企業から追加で資金を調達している。同社のスポークスパーソンは出資に参加した企業を明かさなかったが、TechCrunchが取材をしたところ、今回の出資者はすべてJiaが通っていたCheung Kong Graduate School of Businessのクラスメートだと教えてくれた。

今月初め、Jiaは同社が抱える1万人以上のスタッフに手紙を送り、複数の新事業を次々に立ち上げることで成り立っているLeEcoの成長は不安定なものであるという旨の警告をしている。LeEcoはスマートTV事業とNetflixに似たサービスを開始したところだが、この他にもスマートフォン事業や、米Faraday Futureと共同の電気自動車事業にも手を広げている。

この手紙のリークによって、LeEcoの米国向けビジネスと、Faraday Futureと共同で展開する電気自動車ビジネスが危機に陥っていると考える者も多い。しかし、LeEcoの北米事業を率いるBrian Huiは先週開催したTechCrunch Beijingに登壇し、この手紙は北米事業に悪影響を与えるものではないと主張している。さらに彼は、電気自動車ビジネスは同社にとって「最重要事項」であり、このビジネスから撤退することはないと強調した。その一方でHuiは、LeEcoが新しいフェーズに突入したことは認めている。つまり、より少ない事業により大きな投資をするというフェーズだ。同社が20億で買収したVizioなどがその例である。

今回の報道によって、打倒Teslaを掲げるLeEcoの電気自動車ビジネスに切実な資金需要があることが分かった以上、6億ドルの資金調達は成すべき時に成されたものだと言えるだろう。

Jalopnikは、LeEcoとFaradayの2社が18億ドルを投じたネバダ州の製造工場の建設工事が中断していると報じた。さらに、その建設業者への支払いも滞っているようだ

私たちはこの工事の状況について尋ねたが、同社はコメントを控えている。Reutersによれば、今回LeEcoが調達した6億ドルのうち、その半分の3億ドルは今月末までに支払いが完了する予定だという。その資金は、Faraday Futureとのパートナーシップ、米国で始まったばかりのLeMall事業、LeEcoのハードウェアを販売するEコマース・プラットフォームに供給される見通しだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter