Appleシリコン「M1」MacでLinux直接起動を目指す「Asahi Linux」、独自ブートローダーm1n1開発

Appleシリコン「M1」MacでLinux直接起動を目指す「Asahi Linux」、独自ブートローダーm1n1開発

Kim Kulish/Corbis via Getty Images

アップル独自開発のM1チップ搭載Macは優れたパフォーマンスが開発者やユーザーから高評価を得ているものの、macOS以外のOSは公式にサポートされていません。そこでLinuxを移植して動かそうというプロジェクトの1つが「Asahi Linux」(Asahiはリンゴの品種名であるMacintoshの和名「旭」から)であり、クラウドファンディング等から資金を募って活動中です(Github)。

その主催者である個人開発者のHector Martin “marcanがブログで初めて進捗報告し、独特すぎるM1のしくみがプロジェクトをどれほど難しくしているかを説明しています。

まずAppleシリコン(M1をはじめアップル独自設計のプロセッサ)搭載Macの起動プロセスは、一般的なPCとは全く違うとのこと。どちらかというとAndroid携帯やiOS端末のような組み込みOSに近く、独自のしくみがいくつも織り込まれていると述べられています。

しかしアップルは起動プロセスを従来のインテル版Macに近づけようと色々な手段を講じており、そのために実際の動作はより複雑になっている模様です。

そのためAsahi Linuxプロジェクトは、「m1n1」なる特注ブートローダーの開発を余儀なくされました。その元になったのはニンテンドーWiiの脱獄研究の一環として作成された「mini」にあり、サードパーティ製コードを起動したり、あるいは開発用コンピュータからリアルタイムでマシンを制御できるしくみも継承されている趣旨が語られています。

そうしてm1n1を通じてアップル独自のシステムレジスタや割り込みコントローラなどハードウェアの文書化に懸命に取り組んできたとのこと。M1チップはArm64アーキテクチャではありますが、独自のシステム周りに関するドキュメントがほとんどなく、自前で分析して資料作りをすることを迫られたわけです。

興味深いのは、Appleシリコンプラットフォームに使われた技術が、どれほど古い製品に由来しているか解き明かされていることです。上記のように起動プロセスはiOS、シリアル通信に使われているUARTチップはサムスン製品、PWRficicentチップに基づくデザインはAmigaOne X1000(2010年に発売されたAmigaクローン。元々のAmigaは1985年発売)でも使われていたというぐあいです。

今後m1n1は強力な研究ツールとなるよう、機能が追加されていく予定と語られています。特に野心的な目標の1つは、その上でmacOSを起動できる非常に軽量なVM hypervisor(仮想マシンを動かすための制御プログラム)に変えて、ハードウェアへのアクセスをすべて傍受すること。これによりアップルのドライバーがどのように動作するか、1つずつ分解せずに調査できて分析が捗ると示唆されています。

このプロジェクトに先行するものとして、すでにM1 Mac上で仮想化なしに「完全に使える」CorelliumによるLinux移植もあります。が、こちらもGPUアクセラレーションは使えず、ネットワーク機能もUSB-Cドングルが必要など、まだまだ実用の域からは遠い感があります。

ほかM1 Mac向け非アップルOSとしては、Arm版Windows 10が挙げられるでしょう。仮想化アプリ上では一歩ずつ実用化に近づいている様子ですが、直接に起動できるBootCampは実現するのか、今後の展開を待ちたいところです。

(Source:Asahi Linux。via:The Register9to5MacEngadget日本版より転載)

関連記事
6.8型液晶ディスプレーも搭載、ラズパイ3対応キーボード一体型PC「DevTerm」が2021年4月発売
これからはchrootツールを使わなくてもChrome OSの上で正規にLinuxを動かせる
Microsoftが新しいIoTサービスのために独自のLinuxカーネルを作った
Apple、iOSとmacOSのARM版カーネルをオープンソース化

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)オープンソース / Open Source(用語)Linux(製品・サービス)

6.8型液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のキーボード一体型PC「DevTerm」が2021年4月発売

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

Clockwork Techは11月20日、Raspberry Pi コンピュートモジュール 3+(CM3+ LITE)を内蔵可能なキーボード一体型小型PC「DevTerm」のプレオーダーを開始した。6.8インチIPS液晶ディスプレーを搭載し、発売は2021年4月予定。組み立てキットの体裁になっており、12歳以上対象としている。

価格は、Raspberry Pi CM3+ LITE搭載モデル「DevTerm Kit RPI-CM3 series」が219ドル(約2万2746円)。ARM Cortex-A53など搭載の独自コアモジュール搭載/1GBまたは2GBメモリーモデル「DevTerm Kit A04 series」が249ドル(約2万5861円)。58mm感熱式(200dpi)サーマルプリンター付きの独自コアモジュール搭載/2GBまたは4GBメモリーモデル「DevTerm Kit A06 series」が319ドル(約3万3131円)。

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

DevTermは、Raspberry Pi コンピュートモジュール 3(Raspberry Pi CM3)をセット可能なclockworkPi v3.14モジュールを内蔵。6.8インチのIPS液晶ディスプレーを搭載するほか、無線機能としてW-Fi(11ac)およびBluetooth 5.0をサポート。別売のリチウムイオン二次電池「18650電池」をセットすることで、バッテリー駆動も可能。

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

独自コアモジュール搭載の場合、OSとしてはDebian 9 ARMhおよびLinuxカーネル 5.2を基盤とするclockworkOS(GameShell OS)を利用。Raspberry Pi CM3+ LITE搭載の場合は、OSはRaspberry Pi OSとしている。このほかにも、Ubntuなどが利用可能という。

Clockworkは、デバイスドライバー、独自コアモジュール含めモジュール類の回路図と設計資料について、GPL v3ライセンスのもとGitHubに公開予定。受動的なメディア消費デバイスではないとうたい、オープンソースハードウェア、オープンソースを強く打ち出している。

  • ClockworkPi v3.14メインボード
  • コアモジュール
  • Ext. モジュール(拡張モジュール)
  • 6.8インチIPSスクリーン(1280×480ピクセル) モジュール
  • clockwork QWERTYキーボード(67キー+ゲーム用キー、トラックボール)
  • バッテリーモジュール(「18650電池」は別売)
  • デュアル スピーカー
  • 58mm 200dpi サーマルプリンター
  • シェルおよびブラケットシステム(筐体など)
  • clockworkOSまたは搭載16GB TFカード(microSDカード)
  • USB-C充電ポート

計4種類のコアモジュール、Raspberry PI CM3+ LITEと、clockworkPi v3.14モジュール

DevTermは、CPUや搭載メモリーの異なるA-0401~A-0604の計4種類のコアモジュールまたはRaspberry PI CM3+ LITEをclockworkPi v3.14モジュールにセットして利用するというモジュラーデザインを採用。コアモジュールを含め、ユーザーが異なる種類のモジュールに差し替えることで、機能をアップグレードできるようにしている。

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

コアモジュールのイメージ

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

コアモジュールのラインナップ

液晶ディスプレーも搭載、ライズバイ3内蔵のA5ポータブルPC「DevTerm」が2021年4月発売

clockworkPi v3.14モジュール

コアモジュールについては、FPGA+ARM、RISC-V、x86アーキテクチャなど、より多くのCPUアーキテクチャの評価とテストも行っており、よりエキサイティングなコアモジュールを間もなくお届けできるとしている。

Ext.モジュール(拡張モジュール)

Ext.モジュール(拡張モジュール)は、冷却用ファン、USB-Aインターフェース、カメラインターフェース(MIPI-CSI)などを搭載。Ext.モジュールについては、AIアクセラレーター、4G/5Gモジュールなどの構想が存在するという。

Ext.モジュール(拡張モジュール)

Ext.モジュール(拡張モジュール)

キーボードおよび制御ユニット

キーボード制御ユニットはArduino STM32との互換性を備えるArm Cortex-M3を採用。Micro USB-UARTポートを介して、キーボードのファームウエアをカスタム化可能としている。

67キー+ゲーム用キー、トラックボール

67キー+ゲーム用キー、トラックボールを搭載

キーボード制御ユニット

キーボード制御ユニット

バッテリーモジュール

バッテリーモジュールは、「短絡・逆極性保護」機能を搭載。別売のリチウムイオン二次電池「18650電池」を2本セット可能としており、信頼できる販売店から18650電池を購入するよう呼びかけている。

また18650電池1本でも動作するものの、不安定になる可能性があるという。長期間使用しない場合は電池を取り外すこと、18650電池を購入時に安全な利用方法を確認することを推奨している。

別売のリチウムイオン二次電池「18650電池」をセット可能

バッテリーモジュールは、別売のリチウムイオン二次電池「18650電池」をセット可能

関連記事
Raspberry Pi 4を組み込んだキーボード型パソコン「Raspberry Pi 400」が2021年日本発売
Raspberry Piが産業利用向けのCompute Module 4を発表
プログラミング教育向けマイコンボード「micro:bit」がバージョンアップ
NVIDIAが価格59ドルの2GBメモリー版「Jetson Nano 2GB Developer Kit」を発表
自分で組み立てて遊ぶポータブルゲーム機「ClockworkPi GameShell」
産業用ニーズに応えるRaspberry Pi Compute ModuleがCM1からPi 3搭載のCM3へアップデート

カテゴリー:ハードウェア
タグ:オープンソース / Open Source(用語)オープンソースハードウェアガジェット(用語)GameShellClockwork TechClockworkPiDebianDevTermプログラミング(用語)Raspberry Pi(組織・製品)Linux(製品・サービス)