サブスクサービスの年間利用料を契約時に一括受領、MF KESSAIがB2B事業者の早期資金化を支える新プラン

マネーフォワードのグループ会社で企業間後払い決済サービス「MF KESSAI」を展開するMF KESSAIは4月30日、BtoBサブスクリプションサービスを運営する事業者の請求業務効率化と早期資金化をサポートする新プラン「MF KESSAI グロースサポート」を開始した。

このプランはMF KESSAIの1つのオプションのような形で提供されるもので、サブスクサービスの年間利用料を本来の支払期限が到来する前に一括受領できる点が最大の特徴。早期資金化によってSaaSを始めとしたB2B事業者の資金繰りや攻めの投資をサポートすることが狙いだ。

MF KESSAIは取引先の与信審査から請求書発行、代金回収までの決済業務を一括代行する“企業間後払い決済サービス”として2017年にスタートしたサービスだ。企業は管理画面(CSVもしくは手動入力)やAPI経由で取引データを入力するだけで取引先の与信審査を実施することができ、承認された場合には一連の業務をMF KESSAIに代行してもらえる。

審査に通過した取引についてはMF KESSAIが債権を譲り受けて請求業務を行う形をとっており、請求先の未入金リスクも同社が負担。利用企業にとっては一連の請求業務を大幅に効率化できることに加えて、回収業務の不安や悩みを解消できることが大きなメリットだ。

本日からスタートするMF KESSAI グロースサポートではそのような特徴を引き継ぎつつ、そこにサブスク事業者のニーズに応えるための仕組みが新たに追加された形になる。具体的には「年間契約分のキャッシュをある意味“前借り”できるような仕組みによって、その資金をどんどんサービスグロースに投資できるようにするサービス」(MF KESSAI取締役の田中謙太朗氏)だ。

SaaSなどを展開する事業者の中には年間契約で顧客にサービスを提供している企業も多い。事業者にしてみれば年間契約時の利用料を一括前入金で受け取り、事業を加速させるための軍資金にできるのが理想だけれど、導入企業側としては稟議やキャッシュフローの観点から月ごとに分割して支払いたいという場合もある。

その結果として年間契約であっても毎月利用料を受領するケースも少なくないそうで「それに伴う請求業務の負担増加に加えて、途中解約や何かしらのトラブルが発生した際の料金回収など将来的な与信の問題を抱えやすい構造である点が課題になっている」(田中氏)という。

実はMF KESSAI グロースサポート自体、第一弾の導入先でもあるカラクリとの商談から生まれたサービスだ。カラクリはまさにAIチャットボットSaaSを展開するスタートアップとして、上述したような課題の解決策を探していたとのこと。MF KESSAIでも解決方法を模索する中で、サブスク事業者とサービス利用企業の間に同社が入れば「利用企業の分割払いの要望にも応えながら事業者の毎月の請求業務や与信業務も代行できる」という手応えを掴めたため、新プランの提供を決めたという。

なおMF KESSAI グロースサポートについてカラクリでは以下のようにコメントしている(本件のリリースより一部抜粋)。

「エンタープライズ向けのSaaSは、契約期間中の売上が確約されているものの、前払いの交渉負荷が高く、資金化までの期間が長いのが問題点でした。本サービスの導入により、取引先へ前払いをお願いすることなく契約期間中の売上金額を先立って受領することができるようになるため、資金調達を必要とするスタートアップSaaS企業にとって、新たな調達手段になりうると考えております」

MF KESSAI グロースサポートはMF KESSAIの資料請求時に同プランを利用したい旨を告げることで使うことができる。全体の利用フローはMF KESSAIと基本的には同じだ。

最初に請求先のデータを入力して与信審査を受けた後、通過した場合には1年間分の請求情報(1年以内であれば半年や9ヶ月などでも可能とのこと)をまとめて登録する。これらのフローが完結すると債権がMF KESSAI側に譲渡され、サイト上から早期の振り込み手続きを行えば最短5営業日後に年間利用料を一括受領できる仕組みだ。

期間が長くなる分、審査は若干厳しくなるとのこと。ただ審査を厳しくしすぎて利用できる企業が限定されてしまうことを防ぐため、利用料率を6%〜10%と通常のMF KESSAIよりも少し高めに設定している(MF KESSAIの場合は0.5% 〜3.5%)。

「これまでMF KESSAIを通じて請求代行の部分を、MF KESSAI アーリーペイメントというファクタリングサービスを通じてファイナンスの部分をサポートしてきた。ただ事業部サイドとしてはこの2つが重なる部分をまだ十分にやりきれてはいなかった感覚で、ファイナンスと請求代行の両機能を自前で持っているなら、それらを融合したサービスにもチャレンジしたいという思いもあった」(田中氏)

特に直近ではコロナウイルスの影響もあって資金繰りやファイナンスをサポートするサービスの需要は高まっている。MF KESSAIのファクタリングサービスの申し込み件数自体も増えてきているそうで、今月にはMF KESSAIとMF KESSAI アーリーペイメントの累計取扱高は200億円を超えたという(両サービスを通じてMF KESSAIが譲り受けた累計債権額)。

スタートアップの資金調達環境も今後厳しくなることが予想される中で、自前の売掛金を早期に資金化して使っていける仕組みには需要がありそうだ。田中氏によると「まずは今年度中に20社への導入を目指していく」という。

クラウド契約サービス「Holmes」がMF KESSAIなどと連携ーー契約書に関わる“すべて”を楽に

契約書の作成から管理までを一括サポートするクラウドサービス「Holmes(ホームズ)」。同サービスを提供するリグシーは6月7日、電子署名サービスの「ドキュサイン」、およびマネーフォワードグループの「MF KESSAI」とのサービス連携を発表した。同サービスはこれにより、単なる“契約書のクラウド作成サービス”からの脱却を目指すという。

Holmesは、クラウド上で企業間の契約書の作成、締結、管理までを一括して行えるSaaSサービスだ。サービス上には弁護士が作成した様々なタイプのテンプレートが用意されているほか、それらの文言を自由に編集することでオリジナルの契約書を作成することが可能だ。

Holmesは契約書を軸にしたコラボレーションツールとしても機能する。契約書の修正やチェックの過程で社員同士がコメントなどを書き込めるほか、各部署間にまたがる承認フローなどもすべてサービス上で完結できる。2017年8月リリースのHolmesは、これまでに約150社の有料ユーザーを獲得。100人以上の従業員を抱える企業がその大半だという。

今回、リグシーがサービス連携を発表したドキュサインは、2003年設立の米国企業。同社が提供する電子署名サービスは約180ヶ国の37万社以上で導入されており、2018年4月にはNASDAQ証券取引所への上場も果たしている。

実は、これまでのHolmesにも独自の電子署名機能は搭載されていた。しかし、「これまでのHolmesでは、相手先に契約締結を依頼する際に自動で送られるメールが日本語にしか対応していないことが、グローバル契約において障害となっていた。また、Holmesのような新しいサービスを導入する際に必要な稟議が通り易くなるなど、ドキュサインの知名度が生かされる可能性もある」とリグシー代表取締役の笹原健太氏は話す。

今後、ユーザーはHolmes上でドキュサインの電子署名サービス選択することができ、英語やフランス語など多言語化された締結依頼メールが送られる。通常は年間契約が必要なドキュサインを、1通あたり600円という従量課金で利用できることもメリットだ。

そしてもう1つ、Holmesがこれまでの“契約書のクラウド作成サービス”からの進化を象徴する連携がある。マネーフォワードグループのMF KESSAIとの連携だ。

これまでもTechCrunch Japanに度々登場してきたMF KESSAIは、企業の与信審査から請求書発行、代金回収などの請求業務を代行するサービスだ。これまで、ユーザーがMF KESSAIを利用する場合、代金の支払日や請求先などのデータを手入力する必要があった。しかし、今回の連携によりHolmesで作成した契約書のデータを自動的にMF KESSAIに取り込むことが可能になる。

笹原氏はこの連携について、「営業にとって、契約書はゴール。でも、経理にとってはスタートになるもの。契約書は業務間をつなぐハブのような存在だ。契約書を作るのも楽だし、その後の関連業務もすべて楽になるというような世界観を今後つくって行きたい」と話す。

MF KESSAIとの連携もその世界観を構成する1つで、契約書を締結した後にやってくる請求業務をサービス連携によって楽にするという考え方だ。笹原氏によれば、リグシーは今後も他社との連携によって、AIによる契約書の自動作成・自動チェックサービスや、企業に溜まった紙の契約書をPDF化して保管するサービスなどを2018年夏頃をめどに提供していく予定だという。

リグシーは2017年3月の創業。同年10月には500 Startups Japanなどから数千万円規模の資金調達を実施している。

マネーフォワード、ソフトウェアテストのSHIFTと共同で新サービス――IT業界の資金繰り改善めざす

マネーフォワードのグループ子会社で、企業間後払い決済サービスを提供するMF KESSAIは4月16日、ソフトウェアの品質保証を手がけるSHIFTと業務提携を結び、IT企業向けの債権買い取りサービス「SHIFT KESSAI」を開始すると発表した。

写真左より、MF KESSAI代表取締役の冨山直道氏、SHIFT代表取締役の丹下大氏、マネーフォワード代表取締役の辻庸介氏

MF KESSAIはこれまで、マネーフォワードグループがもつ財務データと取引データをもとに、企業の与信審査、請求書発行、代金回収などの決済業務を一括して代行する企業間の後払い決済サービスを展開してきた。2017年6月のサービスリリース以降、現在までに数百社程度の利用実績があるという。これまで“請求業務と回収リスクからの解放“という価値を提供してきたMF KESSAIは今後、ソフトウェアの品質保証を手がけるSHIFTと手を組み、新たに“早期入金によるキャッシュフロー改善”という新しい価値を提供する。

MF KESSAIが業務提携を結ぶSHIFTは、2005年の創業以来ソフトウェアの品質保証サービスを提供してきた。同社には、クライアントやパートナー企業を含む約2000社分のIT企業の実績データ、開発案件、エンジニアの実績データなどが蓄積されているという。SHIFT KESSAIでは、そのSHIFTがもつデータとマネーフォワードの財務データを組み合わせることで、財務与信に加えてIT企業の開発力の与信も実施。債権買い取りに必要な与信モデルを構築する。そして、ユーザー企業の売掛債権を買い取り、そこから手数料(3〜9%)を引いた金額を通常より早いタイミングで入金する。ユーザー企業は、この早期入金サービスを利用することで人件費などが発生する以前にキャッシュを手元に用意することができる。

SHIFT代表取締役の丹下大氏は、「案件を受注してから例えば6ヶ月後に入金されるとしても、それ以前に人件費などのコストを支払う必要がある。それによって資金繰りが難しくなってしまうが、IT企業は担保に入れる資産がないことが多く、銀行などから融資を受けることも難しい」と、中小のIT企業が抱える資金繰りの難しさについて話す。

新サービスのSHIFT KESSAIは2018年5月より提供開始される予定だ。MF KESSAI代表取締役の冨山直道氏は、「MF KESSAIでは今後、各業界や産業のプラットフォーマーと協業することで、MF KESSAIのサービスを幅広いユーザーに提供していく」と今後の展望について語った。特に、物流、広告制作・運用、人材派遣、農業、漁業などの分野での協業を進めていくという。

マネーフォワードが新子会社――与信審査と請求業務を自動化する新サービス開始

マネーフォワード代表の辻庸介氏(写真右)と、新会社MF KESSAI代表の富山直道氏(左)

家計簿アプリなどを提供するマネーフォワードは6月20日、新たに子会社のMF KESSAIを設立し、6月20日より企業間後払い決済サービスの「MF KESSAI」を提供開始すると発表した。同日、子会社設立の経緯や新サービスの概要を発表する記者会見が開催された。

新会社のMF KESSAIが提供する「MF KESSAI」は、ユーザー企業が取引データを入力するだけで、新規顧客の与信審査、請求業務、そして売上金の回収までを自動化できる企業間後払い決済サービスだ。請求に関する一連の業務をMF KESSAIが代行するため、バックオフィス業務の負担とコストの削減が可能になる。

取引先の与信審査が通過すれば債権がMF KESSAIに譲渡され、ユーザー企業への入金はMF KESSAIが完全保証する。そのため、ユーザーは自身に振りかかる可能性のある貸し倒れリスクを回避できる。

MF KESSAIにかかる手数料は、サービス登録時に行なわれるヒアリングによってユーザーごとに個別に算出され、取引金額の1.5%〜3.5%のあいだで決定する。また、MF KESSAIは資金回収サイクルを短縮する「早期入金サービス」を2017年秋から開始する予定だが、子会社の代表取締役に就任した富山直道氏によれば、同サービスは通常の料金率プラス1〜3%で提供される予定だという。

MF KESSAIの特徴の1つが、取引データを入力するだけで自動で行なわれるスピード与信審査だ。中小企業には取引先の与信審査を行うだけのノウハウを持たない企業も多く、与信審査に時間がかかって取引をすぐに開始できないという問題がある。一方、MF KESSAIが提供する与信審査は「申請から5分〜半日程度で完了する」(富山氏)という。

このスピード審査は、マネーフォワードの既存サービスによって社内に蓄積されたデータと外部の調査機関との協力によって実現したと富山氏は話す。「与信審査の通過率は98%を想定しており、当初は貸し倒れ案件が多く発生してしまう可能性はあるだろう。しかし、日本の倒産率は1%程度であり、そこに早期に収束させていくことが一番のリスク回避の手段だと考えている」(富山氏)

なお、MF KESSAIはファクタリング・ビジネスと似たスキームを持つが、富山氏は「現在の当社の理解では、特に業法の取得は必要ないという認識。しかし、法規制などが変更されれば業法を取得する必要もあると考えている」と話す。

マネーフォワードの辻庸介氏は、MF KASSAIを社内の新サービスではなく、子会社化した理由を語る。「MF KESSAIはバランスシートに債権・債務をもつことになるビジネス。これまでの”サービス開発”というビジネスから形態が変わるため、子会社化することを決めた。また、若い人材に活躍してもらい、オフィスも完全に別にした子会社をつくることで、社内にベンチャースピリットが生まれるようにしたかった」(辻氏)。

MF KESSAIの代表取締役に就任する富山直道氏は、慶応義塾大学卒業後、あずさ監査法人で会計監査業務および内部統制監査業務に従事した経歴をもつ。マネーフォワードに入社後は、MFクラウドシリーズの事業戦略や新規事業展開を手がけていた。