多重処理を導入したFirefoxは応答性が400〜700%向上、バージョン52/53にかけて順次展開

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この夏の初めごろ、MozillaがElectrolysisというコードネームで、Firefoxブラウザーの多重処理アーキテクチャに取り組んでいることを本誌は報じた。それから数か月後にMozillaは、ユーザー人口の1%を対象とする初期テストを終え、MozillaのFirfox担当ディレクターAsa Dotzlerによると、初期としては良い結果を得たそうだ。

同社の報告によると、応答性は400%改善し、大きなWebページのロード時間は700%改善された。これらの数字は、ユーザーがブラウザーのフリーズや休止、遅れ、クラッシュなどを、もうめったに体験しないことを意味している。Dotzler自身は、これまでのバージョンを“janky”(駄作、二流品)と呼んでいる。

来週はFirefoxユーザーの10%に多重処理が行き渡る。当面、アドオンを使っているユーザーには、この新しいアーキテクチャが配布されない。このような段階的な展開は、配送のバグを避けるために、この業界ではよく行われる。Mozillaは同じテストをニューバージョンのユーザーグループと、従来バージョンのユーザーグループの両方に対して行い、結果を比較している。

今のところ、多重処理は単一コンテンツや単一ブラウジングのプロセスに限定されている。今後のバージョンでは、複数コンテンツのプロセスやサンドボックス化にも適用される。

数週間後にMozillaは、テスト対象として選んだユーザーの全員に多重処理を手渡す。それは、全ユーザーの40-50%に相当する。そして半年後には、ほとんとどのユーザーにこの機能が行き渡る。これらの過程をFirefoxのバージョンで表すと、下記のようになる:

  • Firefox 49: 一部のアドオンを多重処理対応にする
  • Firefox 50または51: サンドボックスとその他のアドオンを多重処理化
  • Firefox 52または53: 複数のコンテンツプロセスに対応

これから数か月かけてMozillaの技術者チームは、力点をセキュリティの改善とWebデベロッパー向けの新しい機能へ移す。

チームはこれまで、長い時間をかけて、新しいブラウザーがなるべく多くのユーザーからアクセスできるよう、努めてきた。意外と手こずったのが、二方向エディティングで、アラビア語のように“右から左へ”のサポートはFirefox 49-51ぐらいになる。

初めのころユーザーが心配したのは、多重処理によってRAMの使用量が増えること、それにより〔RAMの少ないシステム上では〕ブラウザー全体が遅くなることだった。

DotzlerによるとMozillaは過去5年間、MemShrinkと呼ばれるメモリ節約プロジェクトに取り組んできた。それにより、低メモリ消費が実現したからこそ、多重処理も可能になった。プロセスが一つ増えると、オーバヘッドは約20%増える。今の計画では、Webページ一つにプロセスを一つ与える、というやり方はしない。今チームは、今後の展開では最大プロセス数をどれぐらいに限定すべきかを、研究している。複数のページに一定数のプロセスを割り当てる場合、ページの集合をランダムに決めるべきか、ドメインでまとめるべきか、という検討課題もある。

Dotzlerは語る: “競合製品を見ることも、勉強になる。それらは多重処理をRAMの多用で実装しているから、行き詰まることもありえる。それらを反面教師としてMozillaでは、ユーザーのRAMを食い尽くさないアーキテクチャを構築している”。

忘れた人も多いかと思うが、ElectrolisisはMozillaにとって初めての、多重処理アーキテクチャの試みではない。6年前のProject Candleは、モバイルのFirefoxに多重処理を持ち込んだ。でもDotzlerによると、当時のモバイルのシステムでは無理だと分かり、そのプロジェクトは廃案にされた。

Firefoxの今のモバイルブラウザーは単一プロセスで動いているが、スマートフォンの処理能力の向上に助けられている。今および将来の高性能なスマートフォンなら、複数のコンテンツプロセスを動かすことも、可能だろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

モバイル版Chromeの月間アクティブユーザーは8億人

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Googleは今日(米国時間11/17)、モバイル版Chromeの月間アクティブユーザー数が昨年の4億人から倍増して8億人に達したことを発表した。これはAndroidおよびiOSユーザーの合計だ。残念ながらOS別の利用者数は公表されていないが、モバイルにおけるChrome利用の大半がAndroid上であると考えるのは妥当な推測だろう。

GoogleのChromeウェブプラットフォーム製品管理責任者、Alex Komoroskeは今週、これはチームが注目している数値の一つにすぎないと私に話した。Googleは、デベロッパーが新しいウェブテクノロジーをどう受け入れているかにも注目している。

Googleは、ウェブアプリとネイティブアプリは補完関係にあると言っているが、Komoroskeは、ウェブはデベロッパーが大量の利用者に接することを可能にすると信じていることを明かした。「しかし歴史的に見て、サイトにユーザーを呼び込んだ後、彼らを捕獲し関係を築くことは難しい」と彼は言った。

Komoroskeは、ウェブの新しい標準とテクノロジー、例えばサービスワーカー(オフライン体験を向上するため)、ウェブプッシュ通知、あるいはアプリのショートカットをホーム画面に保存する機能等によって、デベロッパーはユーザーとの深いつながりを構築できるようになったと指摘する。

同時にGoogleは、ウェブに新しい段階の革新をもたらそうとしており、それは約15年前のAJAX誕生を彷彿させる。彼は、こうしたテクノロジーの多くがChromeに採用されているが、それらはMozillaをはじめとするブラウザーエコシステムの他の製品と協同設計したものであることを強調した。

「デベロッパーがこれらのテクノロジーを活用するところを見ていると、われわれは何か新しいものの先端にいるように感じる」と彼は言った。「デスクトップでのAjaxのようだ。あれは、テクノロジーを新たな方法で利用するものであり、サイトの挙動に対するユーザーの期待値を高めた」

Komoroskeは、Flipkart Lite等のプロジェクトやGuardianの新しいモバイルオフラインサイト(オフライン時には標準でクロスワードパズルになる)を、今ユーザーが期待してるものの例として挙げた。

Googleは、現在約3.5億件のプッシュ通知が、2300種類のドメインから送られてくると言っている(ただし恐らくその大部分は、Facebook等少数の超人気サイトから来ていると思われる。Facebookは最近モバイルブラウザー向けにプッシュ機能を公開した)。Komoroskeは、現在Googleには毎日22億ページがサービスワーカーを利用しているサイトから送られていることも私に話した。

Googleはこれらの新しい、一層アプリ風なサイトを「プログレッシブ・ウェブアプリ」と呼んでいる ― ウェブの属性を持ちながら、新しいウェブ技術を利用することによってアプリ並のエンゲージメントを獲得するサイトのことだ。これは全く新しい用語というわけではないが、どうやらGoogleはマーケティングでこれを強調し、今後のChrome開発、特にモバイルにおける指針として使おうとしているようだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MaxthonのブラウザがモバイルチップメーカーMediaTekとの契約で2014年には1億のデバイスにプレロード

WebブラウザのメーカーMaxthonが、世界第三位のAndroidスマートフォン用チップセット供給者であるMediaTekの付加価値サービス部門Rolltechとの提携を発表した。その契約の内容は、2014年にMaxthon製のモバイルブラウザが全世界で1億台あまりのスマートフォンとタブレットにプレロードされる、というもの。デバイスのメーカーはLGE、ZTE、TCL/Alcatel、Gionee、Phillips、Techain、Konka、Lenovo Mobile、CKT、LavaMobileなど、きわめて多岐に亙る。

Maxthonの国際事業部担当VP Karl Mattsonは曰く、“ものすごく幅広いOEMたちだから、世界の各地でうちの製品を見ることになるだろう。それを想像すると、ぞくぞくするね”。“ロシアや中国、ラテンアメリカの大部分、それにインドネシアやタイなど、どこもこれからますますおもしろくなる市場だ”。

台湾の企業であるMediaTekは、QualcommやSamsungなどの既成勢力から急速にスマートフォン用アプリプロセッサのマーケットシェアを奪ってきた。それはデバイスメーカーの、なるべく速くなるべく安く製品を市場に出したいという要望に、独自のチップと命令セットとソフトウェアで応えてきたからだ。MediaTekのソフトウェアライセンシング部門であるRolltechは、OEMたちがソフトウェアとサービスを彼らのモバイルデバイスにプレロードする工程を支援している。それによって、彼らの、それでなくても薄いマージンを削ることなく、そのスマートフォンやタブレットの付加価値を高めているのだ。

途上国市場で売られるデバイスにブラウザをプレロードすることは、北京に本社を置くMaxthonの重要な成長戦略であり、今回のMediaTekとの契約はそのユーザベースを大きく拡大することになる(今現在で150か国あまり1億2000万人)。Maxthonは、競合するUCWebOperaFirefoxなどに対して、インターネットの普及率がまだ低い市場に地歩を築くことによって、量で上回りたいと願っている。それらの新興市場では、ブラウザの既存ブランドに対するブランドロイヤリティも希薄だからだ。

“MediaTekとの関係は、二つの点で重要だ。ひとつは、当然ながら、今後の顧客(採用企業)増に寄与すること。しかし戦略的にもっと重要なのは、近未来の成長市場への足がかりを、確実に確保できることだ。インターネットユーザの次の10億が現れるのは、まさにこの市場からだ”、とMattsonは語る。

MaxthonのブラウザはChromiumベースだが、その多様な市場や文化の違いに対してローカライズがしやすいように設計している。たとえばタイではMMORPGの人気が高く、ブラジルではほかの国に比べて非常に多種類のソーシャルネットワーク/ソーシャルメディアが利用されている。Maxthonのブラウザはクラウドベースでもあるので、ユーザが多様なプラットホーム(PC、スマホ、タブレット、…)からコンテンツに容易にアクセスできることも、Maxthonに愛着する重要な動機になる、という。

再びMattsonは曰く、“最新バージョンではブラウザにおけるきわめてロバストなスマートフォン体験を実装している。各市場の特性に合ったやり方でコンテンツとサービスとビデオを集積するため、ユーザはどこでどんなデバイスを使っていても、特定コンテンツのオフライン視聴など、自分がカスタマイズしたWeb体験を損なわれることがない”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))