本稿の著者Cooper Turley(クーパー・ターリー)氏はAudiusのクリプト戦略の責任者。RACやFWBなどのソーシャルトークンを管理する傍ら、有名ミュージシャンやモーションデザイナーのNFTを収集している。The Defiant、Banklessといったweb3パブリケーションのアクティブな寄稿者であり、DeFiニュースレター(This Week in Defi)を指揮している。同氏の活動主体はTwitter。
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NFT(non-fungible tokens、代替不可能なトークン)、別名「トークンのかたちをした希少デジタルコンテンツ」が、クリプト(暗号化)の世界に新たな波を起こしている。
Ethereum(イーサリウム)ブロックチェーンのおかげでアーティスト、ゲーム会社、コンテンツクリエイターなどは、唯一無二を証明可能な仕組みへと進化したトークン標準を活用している。NFTが最初に見出しを飾ったのは2017年で、当時Dapper Labs(ダッパー・ラブス)のゲーム「CryptoKitties(クリプトキティ)」はピーク時にEthereumのネットワーク利用の95%を占めた。デジタルの小猫に17万ドル(約1800万円)支払う人がいるのは異常にも思えるが、現在に起きている事実は、それどころではない。
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Nifty Gateway(ニフティ・ゲートウェイ)、SuperRare(スーパーレア)、Foundation(ファウンデーション)、Zora(ゾラ)といったプラットフォームが、デジタルワールドで収益を上げようとするクリエイティブワーカーのための主要なプレイヤーとして名乗りを上げている。
crypto art(クリプトアート)の推定価値が累計1億ドル(約107億円)を超えたことをcryptoart.io/dataは示している。これは成長を続けるNFTエコシステムの一分野にすぎない。
コレクターズアイテム
物理的なコレクターアイテムにポケモンカードのような新たな分野ができたのと同様、NFTは希少な名作ブランドのが世界がオンラインでどう見えるかを示す手段になろうとしている。
CryptoSlamによると、NBA Top Shot(NBAトップショット)では24時間に1000万ドル(約10億7000万円)近くの取引があり、サービス開始1年以内に1億ドル以上の「moments(モーメント)」を販売した。NBA Top Shotの親会社であるDapper Labsは2億5000万ドル(約266億4000万円)の調達ラウンドを実施する予定で、会社価値は20億ドル(約2131億5000万円)だとThe Block(ザ・ブロック)は伝えている。
希少な特徴をもつ1万種類の収集キャラクターを擁するCryptoPunks(クリプトパンクス)のようなニッチなサイトでも、1体当たり1万8000ドル(約190万円)の値が付いている。つい最近、Punk 4156は650 ETHで売れた。現在のレートでおよそ130万ドル(約1億3850万円)に相当する。
クリプトアート・パラダイム
グラフィックデザイナーや3Dデザイナーは自分の作品を展示する新たなプラットフォームを見つけつつある。Nifty Gatewayのようなマーケットプレイスでは、富裕層向けのデジタルアートを、Supreme(シュプリーム)のようなdrops(ドロップ)として公開している。
Mad Dog Jones(マッド・ドッグ・ジョーンズ)氏は最近、1回の販売で390万ドル(約4億1560万円)の作品を売る新記録を達成し、beepleことMike Winkelmann(マイク・ウィンクル万)氏のドロップ 「Everydays 2020 Collection」は350万ドル(約3億7310万円)を超えた。Christies(クリスティーズ)のような著名アートギャラリーが協力を申し出たのも頷ける。
Bitcoin(ビットコイン)とEtheriumが史上最高値を更新し、投資家が新たな資金投入先を探している中、このクリプトアートムーブメントはクリエイターたちに力を取り戻させた。
さまざまなドロップを巡ってFlamingoDAO(フラミンゴ・ダオ)などの活気あるコレクターコミュニティが形成され、Zoraのようなプロトコルはあらゆる分野でNFTのサポートを開始している。
Linkin Park(リンキン・パーク)のMike Shinoda(マイク・シノダ)氏とFort Minor(フォート・マイナー)氏は、彼らのニューシングル「Happy Endings」 featuring Iann Dior(イアン・ディオール)の戦略の一部としてNFTをリリースした。EDMのDJ・プロデューサー3LAU(ブラウ)氏は、デビューアルバム 「Ultraviolet」をトークン化し、グラミー賞受賞アーティストのRACは「Elephant Dreams」でSuperRareのNFT最高一次販売記録を破った。
私でさえも、Mirrorというクリプトメディアパブリケーションを使ってブログ記事を2 ETH(約4000ドル、約42万7000円)で売った。
それがどうした?
NFTは暗号化技術のクリエイティブ面がプレイして楽しむだけでなく、新しいユーザーが理解して利用できるものであることを知らしめた。ビッグネームたちが自身初のNFTドロップを公開することで、初めてクリプトアートを知った数百万人のフォロワーたちによる新たな注目の波が起きる。
こうしてこの希少デジタルコンテンツの高まる波を捉え発見する特異な立場にいる人たちが生まれる。Showtime(ショータイム)はNFTを収集してInstagram風のユーザー体験で紹介している。近日公開予定の音楽に特化したNFTマーケットプレイスのCatalog(カタログ)はデジタルレコード店を作っている。
Nifty Gatewayのドロップは飛ぶように売れ続けている。クレジットカード支払いと手数料無料のおかげで、新規のコレクターがお気に入りのアーティストやブランドを集める方法となっている。この傾向はこれから何年も続きそうだ。
改善すべき点
売上の数字はNFTの明確な需要を表しているが、課題がないわけではない。
大多数のNFTプラットフォームは、ユーザーがEthereumウォレット、例えばMetaMask(メタマスク)に慣れていることを前提にしている。つまりコレクターは、ETHをCoinbaseなどで購入し、それを長い文字列と数字からなる保護されていないアドレスに送金しないと始めることができない。
そこまできた後、取引を開始して入札するためには最大100ドル(約1万700円)相当の手数料を払う必要がある。同じことがNFTを作ろうとするアーティストにもいえるため、初のNFTを公開するのに必要な運用コストをカバーするために、MintFund(マインドファンド)などのコミュニティファンドが出現している。
幸い、Audius(オーディウス)などのプラットフォームはこうした問題に真正面から取り組んでいる。月間200万人というEthereumアプリの中でも最大のアクティブユーザーを有するAudiusは、eメールとHedgehog(ヘッジホッグ)と呼ばれるパスワードログインウォレットでMetaMaskを置き換えた。キー管理と取引コストをなくしたことで、ユーザーは大きな初期投資なしにクリプトのすばらしい世界にを体験できる。
NFTバブルなのか?
現在NFTエコシステムで起きていることは、仮想通貨の成熟しつつある1つのセクターのパラダイムシフトに他ならない。熱心なコレクターがInfinite Objects(インフィニット・オブジェクツ)などのサービスを使ってデジタルアートを額に入れているように、大部分の購入者が投機目的でここを訪れていることは否定できない。増え続ける需要は関心の高まりを表しているが、市場の崩壊を招いた2017年のICOバブルを想起しないわけにはいかない。
しかし、複数年にわたる下げ相場の中、Uniswap(ユニスワップ)やCompound(コンパウンド)といった基礎を作る企業やプロトコルが登場した。NFTでも同じことが起きるというのが筆者の予想だ。
それまでの間、デジタルコンテンツは価値を持っているのであり、クリプトコレクターたちは未来の最大のコレクションを手に入れようと集まってきていることを覚えていて欲しい。
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画像クレジット:Artyom Geodakyan/TASS
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(文:Cooper Turley、翻訳:Nob Takahashi / facebook )