中国のEVスタートアップたちが投資ゲームに参戦

中国で繰り広げられている自動車関連スタートアップを対象とした投資ゲームは、既存のベンチャーキャピタル会社だけでなく業界のベテランも参加し、競争が激化している。最近、新規ラウンドを完了したモビリティに特化した2つのファンドには、中国を代表する新参の電気自動車メーカーが参加している。

ベンチャーとグロースステージ向けの新しい投資ビークルのRockets Capital(ロケッツ・キャピタル)は、3月初めに2億ドル(約240億円)の初のファンドのクローズを発表し、電気自動車メーカーのXpengがアンカーインベスターを務めた。他の投資家はIDG Capital、Sequoia China、GGV Capital、5Y Capital、eGardenなど中国の大手機関投資家だ。このファンドは、自動車産業のバリューチェーン、クリーンエネルギー、その他の「フロンティアテクノロジー」分野でのビジネスチャンスを探している。

もう1つの大きなクローズは、Nio Capital(ニオ・キャピタル)の申し込み超過となった4億ドル(約480億円)の2回目の米ドル建てファンド「Eve ONE Fund II」だ。投資家は政府系ファンド、保険会社、多国籍金融機関、ファンド・オブ・ファンズ、ファミリーオフィス、年金基金、財団など世界各国から集まっている。

Nio Capitalは、ファンドの名前にもなっているが、XpengのライバルであるNioの創業者William Li(ウィリアム・リ)氏が立ち上げた会社だが、この投資機関はNio自体とは直接の関係はない。人民元建てファンドを米ドル建てファンドとともに運用し、自動車、テクノロジー、エネルギー分野に特化している。

Rockets Capitalは、EV投資家との関係をより公にしている。独立した投資会社として活動する一方で、Xpengの「業界の専門知識とリソース」を活用し「技術革新のインキュベーション」を行う。明言されているミッションを考えると、Rocketsの将来の投資先にもXpengと取引や提携をする企業があってもおかしくはないだろう。

2016年に設立されたNio Capitalは、投資分野では先行している。中国における同社の注目すべき取引には、Bosch(ボッシュ)が支援するMomenta(モメンタ)トヨタが支援するPony.ai(ポニーエーアイ)という2つの大手ロボタクシー企業、それからTemasek(テマセク)が支援するライダーメーカーInnovusion(イノビュージョン、Nioのサプライヤーの1社でもある)、BPが支援するバッテリー交換のAulton(オールトン)、自動車チップメーカーBlack Sesame(ブラックセサミ)などがある。

過去数年間、Nio Capitalは中国の自動車産業における新進気鋭のプレイヤーたちとともに、自らの周りに要塞を築いてきた。Rockets Capitalとその後援者XpengがどのようにNio Capitalに追いつき、市場を再構築するためにどのような提携を結ぶことができるか、注目だ。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国の新興EVメーカーXpengが海外進出、ノルウェーを足がかりに多くの欧州市場を目指す

Nio(ニオ)と同様に、中国の電気自動車メーカーXpeng(シャオペン)も海外展開を開始した。しかし、ノルウェーで派手なキャンペーンを展開したライバルとは異なり、Xpengは2021年10月にスカンジナビアの国で静かにスタートした。

同社はノルウェーで、SUVの「G3」とセダンの「P7」の出荷を開始した。2022年にさらに多くの欧州市場に参入することを目指していると、同社の広報担当者はTechCrunchに語った。

Xpengが海外展開を控えめにしているのは、おそらく11月18日発表した最初の「国際的」モデルであるSUVの「G9」の発売を待っていたからだろう。

「G9は、国際市場と中国市場の両方に向けて一から構想を練って開発された当社初のモデルであり、当社の最も洗練されたデザインを世界中の顧客にお届けします」と、同社の共同創業者で社長のHenry Xia(ヘンリー・シャ)氏は11月19日の自動車展示会で述べた。

このSUVは、Xpengの4番目の生産モデルであり、同社の最新の先進運転支援システム(ADAS)を搭載した初のモデルとなる。Xpilot 4.0と呼ばれるこのADASは、2021年10月のTech DayでXpengが説明したように、都市部での運転を想定して作られている。Xpilot 4.0を乗用車に搭載するのは野心的であり、完全な自律走行に近づくために「車両の始動から駐車まで」を支援することを目的としている。

Xpilot 4.0のコンピューティングパワーは、2つのNVIDIA Orin-Xシステムオンザチップユニットで構成されている。そのハードウェアには、カメラ、ライダー、ミリ波レーダー、3D視覚認識ネットワークが組み込まれている。

言い換えると、G9にはセンサーが何層にも重なっていることになる。しかし、Xpengはそれらを目立たないようにしている。例えば、デュアルライダーユニットはヘッドライトに組み込まれている。従来、ライダーは量産車には高価なものだったが、Xpengや業界関係者はセンサー技術を手頃な価格にすべく取り組んでいる。

この件に詳しい人物によると、G9が中国で発売されるのは2022年の第3四半期で、そのため欧州の顧客がSUVを試すことができるのは2023年以降になりそうだ。

一方、Xpengは、高度な自律走行乗用車を国際展開できるようにするために多くの課題を抱えている。同社は、ターゲットとする市場で充電ネットワークを構築する必要があるが、このプロセスは新型コロナウイルス感染症で中断されがちだ。また、Xpilotは高精細な地図に頼っているため、おそらく中国国内のナビゲーション会社との連携が必要になる。

また、Xpengはスマートカーの安全性について、各国政府から疑問を投げかけられるかもしれない。自動車の自動運転に対する各国政府の姿勢は異なり、Tesla(テスラ)のADASが絡んだ衝突事故の件で、この技術が準備万端かどうか懐疑的な見方が強まった。

Xpengはこの点に関していくつかの準備をしている。例えば、ドライバーにXpilotを起動させる前に、ドライバーをテストして安全性のスコアを与えることにしている。また、車両に搭載されたモニタリングシステムがドライバーの審査を行い、ドライバーが無責任な行動をしていると判断した場合には、Xpilotへのアクセスを取り消すこともある。

その他の仕様

G9は、Xpengの「スーパーチャージャー」に対応している。このスーパーチャージャーは800Vの高電圧の量産型SiC(シリコンカーバイド)で、5分もかからず最大200km走行分を充電することができる。

また、G9には故障カ所を特定できる「故障検知」システムが搭載されている。そして、システムは在庫があるサービスセンターを表示するとともに、修理時間と費用の見積もりも案内する。

最後に、G9にはギガビット・イーサネット通信アーキテクチャが採用されていて、より高いレベルの自律走行、スマート・コックピット、OTAアップグレードのために「通信とサポートを向上」している。

画像クレジット:Xpeng’s G3

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi