音声文字起こし(トランスクライブ)スタートアップのOtter.ai(オッターAI)は、ここ1年ほどの間に、Zoom(ズーム)やGoogle Meet(グーグル・ミート)のような会議アプリに自社の製品を統合することで、リモートワークの未来への投資を強化してきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行により、多くの人が在宅勤務を余儀なくされたことで、行われた投資は実を結ぶこととなった。同社は1億回以上のミーティングの、延べ30億分に及ぶ音声の文字起こしを行い、2020年の収益は8倍に増加した。そして今、Otter.aiは新しい5000万ドル(約53億円)のシリーズBラウンドの資金を燃料にして、次のステップを発表しようとしていている。
今回の新規ラウンドはSpectrum Equityが主導し、既存の投資家であるHorizons Ventures、Draper Associates、GGV Ventures、Draper Dragon Fundなどが参加している。5000万ドル(約53億円)という数字には、2020年発表された1000万ドル(約10億6000万円)の転換社債も含まれている。
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Otter.aiのサービスは、会議を簡単に録音できる方法を提供しているが、それは携帯電話のアプリを使った1対1形式でも、または一般的なウェブ会議アプリとの統合を通じたオンライン形式でも可能だ。しかし、2020年に本当に重要な働きをしたのは、後者のオンライン会議だ。突如、全労働力がオフィスから自宅に移動させられ、終わりのないZoom会議を強いられることになったからだ。
結果的に非常に良いタイミングとなったが、Otter.aiはパンデミック初期の2020年4月にZoom統合機能を追加した。現在ではそのZoomが、Otter.aiのウェブ会議ユーザーの間では最も人気のあるプラットフォームとなっている。
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「パンデミックによって消費者の行動に大きな変化が起きていると思います。特に会合と教育に関わる行動における変化が大きく、どちらもOtterの主要なユースケースとなっています」と語るのはOtter.aiのCMOであるKurt Apen(カート・アペン)氏だ。「ビジネスでOtterを使っているチームを多く見かけますし、たくさんの学生や大学も手に入れやすさからOtterを使っています。私たちはそうした行動の変化が恒久的なものになると考えています」と彼は指摘する。
同社は、ユーザー数や収益について話してはいないものの、Zoomを通して利用しているユーザー数を含まないスタンドアローンの製品だけで「何百万もの」ユーザーを抱えていると主張している。そして、最初Otter.aiの無料サービスに出会ったユーザーたちの多くが、後にプレミアムプランにアップグレードしているという。プレミアムプランでは、より多くの録音時間が提供され、その他のビジネスグレードの機能も提供されている。
これまでのところ、企業に対して直接ではなく、まずは個別の従業員を攻略して企業市場に食い込むこうした裏口戦略は、大なり小なり他の人気ビジネスアプリのやり方を真似たものだと同社は考えている。
「実際、ここ数年の私たちの成長の軌跡を見ると、SlackやZoomの成長の軌跡とかなり一致しています」と語るのはOtter.aiの創業者でCEOのSam Liang(サム・ライアン)氏だ。「なので、これからの数年も成長を続けられることに、かなり自信を持っています」。
つまりOtter.aiの利用はパンデミックによって加速したかもしれないが、2020年に起こったビジネスカルチャーへのより大きな影響は、パンデミックが終わっても消え去ることがないということだ。全員が再びオフィスに戻るわけではない。それでもオフィスに戻る人のためにも、Otterは役に立つ。
同社はプロフェッショナルサービス、製薬会社、金融サービス、従業員たちがタイムゾーンを超えて仕事をしている多国籍企業などで、一定の実績を上げている。長期的には、Otter.aiは、会議の文字起こしを超えて「会話のインテリジェンス」と呼ぶ領域に拡大することで、企業向けのユースケースをより良くサポートできるようになることを目指している。
例えばあるトピックに費やされた時間、声のイントネーション、会話の感情に基づいて、何が重要なのかをシステムに学習させることで、AI技術を活用して文字起こし結果から意味を抽出するといったことが考えられている。それは現在行われている程度の手間で、自動的に行われることが想定されている。
とはいえ、Otter.aiは機密性の高い会話を扱うためのサービスではない。録音された会話は、転送中と保存中は暗号化されているが、処理中は復号化されている。またインデックスを作成するためにも会話を復号化する必要がある。さらに、Otter.aiの文字起こしデータは精度を向上させるためのトレーニングデータとしても使用される。トレーニングはユーザーによる手動修正や新しいアクセントなどを使って行われる。
最終的には、このことがより注意を要するビジネスコンテキストでの大規模な採用をためらわせる要因となる可能性がある。とはいうものの、Otterは、当面ポッドキャストのテープ起こし、Clubhouse(クラブハウス)のようなソーシャルオーディオアプリとの統合、オンラインイベントといった同社の技術を利用できる他の多くの分野よりも、当面は企業内の業務に関連したユースケースに焦点を当てる予定だ。Otter.aiはさまざまな市場にサービスを提供しているものの、より多くの企業クライアントを獲得するためにセールススタッフの準備を行っている。
Otterはセールススタッフに加えて、セールス担当の副社長の採用も考えており、さらに現在25人のチームにR&D、マーケティング、AIサイエンス、バックエンドとフロントエンドのエンジニアリング、デザイン、製品管理の人材を加えることも計画している。2021年末までに同社は、新規採用者を加えて従業員数を3倍にしようと考えている。おそらく、その一部はリモートワーカーになるだろう。
Otter.aiはまたソーシャル検索、コンテンツマーケティング、オーガニックソーシャルなどのチャネルを通じてアプリの認知度を高めるために、新しい資金を投資する。そして無料から有料までの会話を継続して行うことで収益の拡大を図り、技術開発を行う。
Spectrum EquityのマネージングディレクターであるJohn Connolly(ジョン・コノリー)氏が新しくOtterの取締役会に参加した。
コノリー氏は声明の中で「職場環境が進化して、オンライン会議がニューノーマルになる中で、Otter.aiは未来へ向かう仕事のシフトとより効率的なオンライン対話の最前線に位置するものとなります」と述べている。「Otter.aiのライアー氏やチーム全体とパートナーを組むことで、同社の市場における継続的なリーダーシップをサポートできることをうれしく思っています。集中的な製品イノベーションと事業の成長を推進するための、ガイダンスと戦略的リソースを提供できることが楽しみです」。
画像クレジット:Otter.ai
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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)